Effetto Mariposa(エフェットマリポサ)のFlowerpower Wax(フラワーパワーワックス)が、ゼロ・フリクション・サイクリング社のテストにおいて、最高のドリップ式潤滑剤であることが判明した。 実験結果によるとCERAMIC SPEED UFO DRIP V2よりも性能が高くさらに低コストだった。
フラワーパワーワックスは、ひまわりの種から抽出したワックス成分を使用している。水やドロにも強く、チェーンなどの金属部品への親和性も高い。天然ワックスをベースに危険な添加物を含んでおらず、環境にやさしい革新的な製品だ。
Effetto Mariposa社は自社で行った性能試験において、他社製品よりも優れているというデータを得ていた。しかし、性能面を客観的に測定するために第三者機関の研究所に測定を依頼し試験を行った。
依頼先は、自転車用チェーン潤滑剤の評価において、絶対的な権威を持つオーストラリアの「ゼロ・フリクション・サイクリング社」だ。フラワーパワーワックスに対して長期間におよぶ厳しい拷問(テスト)を実施した。
結果は、ドリップ式潤滑剤においてフラワーパワーワックスが最高の製品であることが判明した。テストにおけるすべてのドリップ式潤滑剤の中において、最もチェーンの摩耗が少ない潤滑剤だった。摩耗しないということは、それだけ抵抗が小さく、様々な環境条件に対応する事を意味する。
フラワーパワーワックスは持続性も群を抜いている。6000km以上の走行でもチェーンが完全に磨耗しない数少ない潤滑剤だった。そして、ゼロ・フリクション・サイクリング社でテストしたすべてのドリップ式潤滑剤の中で、最も低コストで運用できる製品であることも判明した。
補足:潤滑剤の種類
摩擦抵抗が小さい潤滑剤は2種類ある。1つ目は「固形ワックス」タイプだ。スロークッカーや鍋を使用してチェーンにドブ着けする手間がある。2つ目は「ドリップ式ワックス」タイプだ。ボトル内で液体として存在しているが、チェーンに塗布すると水分が飛んで固形化する。施工が簡単だ。
それぞれのタイプ別で摩擦抵抗が小さく、主要な製品は以下のとおりだ。
- 固形ワックス:モルテンスピードワックス、シリカホットメルト
- ドリップ式ワックス:UFO DRIP V2、Squirt、フラワーパワーワックス、ABグラフェンルブ
テストプロトコルと結果
- チェーンのリンク内側への浸透力
- 潤滑剤が乾燥(ほこり、砂)または湿潤(泥)汚染に対する抵抗力
- 潤滑剤がセルフクリーニングによってさまざまな汚染を除去する能力
- 極度に汚染(大量の泥)した場合の潤滑剤の性能
ゼロ・フリクション・サイクリング社が行う実験の完全な評価には数ヶ月を要する。各1000kmを6ブロックとする厳格なプロトコルに従っている。これは、実際の条件下でのチェーンの摩耗率を再現可能かつ、制御された方法でシミュレーションできるチェーンにとっての「真の拷問」だ。
試験中、チェーンの伸びは0.01 mmの精度でモニターされる。チェーンが最初の測定値から0.50mm伸びた時点で「100%消費」と判断し、試験を停止する。この伸び率になると、チェーンリングやスプロケットに悪影響を及ぼすため、チェーンを交換する必要がある。
試験機は、家庭用トレーニングマシンを改造したもので、モーターにより毎分100回転し250ワットの一定電力を加えている。6ブロック(計6000km)の試験にわたって、以下の条件下で潤滑剤がチェーンの摩耗率をどれだけ低減できるか、その能力を検証する。
- ブロック1(1000km):汚染なし
- ブロック2(1000km):ドライの汚染:チェーンに5gの砂を乾いた状態で塗布
- ブロック3(1000km):ドライの汚染後、潤滑油のセルフクリーニング能力、追加汚染なし
- ブロック4(1000km):湿式、試験中にチェーンに500mlの水をスプレー、5gの砂を加える
- ブロック5(1000km):湿式汚染後の潤滑油の自浄能力、追加汚染なし
- ブロック6(1000km):極限の汚染、チェーンを完全に洗浄する、次に1000mlの水と10gの砂をかけ、極限の泥濘地でのペダリングをシミュレートする
※前のブロック5でチェーンの摩耗が100%に達することが多いため、ここまで到達する潤滑剤はほとんど存在しない。(これまで残った潤滑剤は、Molten Speed Wax Original Formula、Ceramic Spd UFO Drip V2、Effetto Mariposa Flower power wax(今回の対象))
ブロック1では、伸び率がわずか2.3%だった。フラワーパワーワックスは、これまで行われた数多くの潤滑剤の中ランキングのトップに立ち、最高級品と肩を並べることになった。CERAMIC SPEED UFO DRIP V2も2.3%だった。
ブロック2(乾燥汚染)以降の試験においても、フラワーパワーワックスは他の追随を許さない。フラワーパワーワックス6つのブロックすべてに合格しただけでなく、ブロック6ではチェーンが完全に摩耗することなく、80%の伸長率でテストを完遂した。
1回の塗布で何キロ走れるか
フラワーパワーワックスは、1回の塗布で何キロ走れるかについてもテストされた。この過酷な試験でチェーンの伸びを抑えたことにより、チェーン自体の摩耗が少なくなったことがわかる。結果として、チェーンの寿命が長くなった事を意味している。
1回の塗布でどれだけ走れるかという試験においても、フラワーパワーワックスがトップであることが証明された。実験室での値を、実際の使用で走行可能なキロ数に換算すると以下のとおりだ。
- ドライ/ロードコンディション:フラワーパワーワックスを1回塗布した場合、650kmまで。
- ドライ/オフロードコンディション:フラワーパワーワックスを1回塗布した場合、450kmまで。
- 過酷な条件/泥:フラワーパワーワックスを1回塗布した場合、100kmまで。
使用コスト
使用コストに関する評価は、あまり直感的に理解できない部分がある。「チェーンの摩耗量」と「潤滑油の購入価格」のこれら2つ関係は、サイクリストの機材使用コストに直接影響する重要な変数といえる。一定の走行距離を想定した場合、交換が必要なチェーンや駆動系部品の数は、潤滑剤の効果に大きく依存している。
チェーンの消費(チェーンの摩耗)を抑制する潤滑剤があれば、「交換するまでの走行距離」を増やすことができる。さらに、1回の使用で何キロも「効果が持続する潤滑剤」は、潤滑剤を使用する量が少なくて済む(持ちが良ければ何度も塗布する必要がないわけだ)。
この2つの変数を組み合わせると、たとえ非常に高価な潤滑剤であっても、1回の塗布で何キロもの走行を保証できる。すなわち、チェーンの寿命を延ばすことができれば、チェーンの早期の摩耗を防ぐ事ができる。したがって、頻繁に塗布しなければならない安価な潤滑剤よりもコストパフォーマンスに優れているとといえる。
ゼロ・フリクション・サイクリング社では、路面状態(ドライとウェットの混合)、ドライオフロード状態(砂などのドライな汚れ)、ウェットオフロード状態(ウェットな汚れ、基本的には研磨性の泥)を区別して、こうした観点から評価も行った。
10,000km走行時のコストでは、フラワーパワーワックスは、3つの用途でテストしたドリップ式潤滑剤の中で、「価格」と「ドライブトレインの寿命」の組み合わせで最高比率を達成し歴代1位だった。これは、1回の使用での走行距離の長さ、チェーンの摩耗を抑える効果、相対的なコストの最適なバランスによる。
補足:ドリップ式潤滑剤以外ではモルテンスピードワックスが最もコストパフォーマンスが高い。
インプレッション
これまでCERAMIC SPEED UFO DRIP V2を愛用してきた。耐久性と抵抗の小ささ、そしてチェーンが汚くならない点などパーフェクトに近い潤滑剤だった。潤滑剤としてのコストは高いものの、フラワーパワーワックスが登場するまでは、UFO DRIP V2以外使うことは考えられなかった。
インプレッション前にゼロ・フリクション・サイクリング社のテスト結果を知っているがゆえ、UFO DRIP V2とフラワーパワーワックスの差がほとんどない事は理解していた。実際に使ってみると、ほとんど差はわからない。脚あたりも変わらず、抵抗が軽くなった感じもなく、重くもなった感じもしない。
ある意味、UFO DRIP V2と違いが無いという事実が素晴らしいと思う。
測定器にかければ明確に違いが生じる。しかし、人間が体感できるレベルの差はない。UFO DRIP V2もフラワーパワーワックスも、ドリップ式潤滑剤において最も優れている製品であるからその差は非常に小さいといえる。
抵抗の低さや、耐久性に関しては不満はない。デメリットといええば、UFO DRIP V2よりも、フラワーパワーワックスのデメリットはチェーンが汚れやすい。雨天でも走行したが、確かにチェーンから嫌な音が発生しなかった。さらに、ワックスがチェーンに残り続け水を弾き続けていることが確認できた。
実際に使っていると、心なしかフラワーパワーワックスのほうが耐久性が高く、泥や砂といった悪いコンディションに強いと感じた。ロードならまだしも、シクロクロスやMTBにはフラワーパワーワックス以外使う必要はないとさえ思うほどだ。
シクロクロスを行う方は、過酷なコンディションを考慮するとフラワーパワーワックス一択だと思う。ロード用で考えても、塗布する回数やランニングコストを考慮すると、入手が難しく高額なUFO DRIP V2を使うシチュエーションは少なくなるだろう。
コスト面に関しても、フラワーパワーワックスは優秀だ。
国内におけるUFO DRIP V2の販売価格は、10,537 円(税込み)だ。値上に値上がされてしまい、もはや簡単に手が届く潤滑剤ではない。Wiggleでは¥4598でわりと安いが、長らく欠品中である。価格に関して、UFO DRIP V2とフラワーパワーワックスを「100mlあたり」で価格比較した結果は以下のとおりだ。
- フラワーパワーワックス:1,650円(国内正規定価)
- UFO DRIP V2:2,554円(海外Wiggleで購入の場合)
- UFO DRIP V2:5,853円(国内ショップで購入の場合)
- ※参考 Squirt:1,583円(国内)
フラワーパワーワックスはフタバ商店が扱っており、日本国内でも1650円で入手できる(値上げされる可能性は非常に高い)。UFO DRIP V2は入手性が悪く、在庫の不安定さもあるため常用することを考えた場合、少々手を出しにくくなった。
価格と特性的に競合するSquirtはフラワーパワーワックスよりも67円安いが、性能試験においてブロック4までしかテストをクリアできなかった。あえて67円をケチってまでSquirtを選ぶ必要はない。フラワーパワーワックスはUFO DRIP V2を凌ぐ性能を備えているのだから。
価格、性能、入手性すべてを考慮するとUFO DRIP V2からフラワーパワーワックスに乗り換えるほうが合理的といえる。あのゼロ・フリクション・サイクリング社のデータでも証明されているとおり、性能も、価格も不満はない。
まとめ:最も抵抗が小さく安価な潤滑剤
これまで、CERAMIC SPEED UFO DRIP V2がドリップ式潤滑剤で最も優れた製品だった。モルテンスピードワックスの固形ワックスタイプを除くと、ライバル不在だった。そこにフラワーパワーワックスという、かわいらしい名前のドリップ式潤滑剤が登場した。
価格、性能、環境への配慮とどれをとっても優れた性能を備えている。国内での入手性も高く、海外で購入するほうが高くつくほどだ。UFO DRIP V2と比べると液体の粘度が低く、さらりとしており、塗布する際にチェーンからこぼれやすいというデメリットはある。
また、UFO DRIP V2と比べてチェーンが黒くなりやすい。それ以外は、デメリットというデメリットが見当たらない。フラワーパワーワックスは、これまでワックス系のドリップ式潤滑剤を使用した事がない方にもおすすめできる製品だ。
私は決戦用チェーンにはモルテンスピードワックスを使用し、適宜UFO DRIP V2を塗布していた。これからは常時フラワーパワーワックスを使用する。値上げされる可能性があるため、7本ほど買った。これでもUFO DRIP V2の国内定価ほどだ。
なお、フラワーパワーワックスはAmazonでは販売しておらず、Yahooショッピングや楽天では送料が780円かかる。調査したところ、ヨドバシ.comが送料無料かつ、さらに10%のポイントが付くので最安だった。