TIME SKYLON インプレッション ZXRSから何が変わったのか

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TIMEユーザーならば、誰もが気になっているマシンがある。TIME SKYLONだ。TIMEの伝統的な製造手法のラグ構造(つなぎ)から、高剛性と軽量化を兼ね備えたモノコック(一体構造)へと変更されている。

発売前からTIMEユーザーの間では、ラグを撤廃したSKYLONへの評価は芳しくなかった。私もそのうちの一人だった。しかし、ある一部のサイクリストによるラグ信仰は、極端に言えば宗教に近いのではないか。SKYLONに実際に乗ったら、「モノコック」と「ラグ」のハイブリッドは別の世界を見せてくれるのではないか。

TIMEはSKYLONをどのようなマシンとして作ったのか。色々な疑問と期待が交錯しながらTIME SKYLONに乗ってみた感想を記そうと思う。前半は「構造面」、後半では「実際乗るとどうか」に分けて、できるだけ細かく書いていく。

果たしてSKYLONにTIMEらしさは残っているのだろうか。1万227文字と少し長くなるが、感じたことを記そうと思う。適宜「pocket」か「ブクマ」してください。

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インプレの環境

まず今回の試乗の環境についてだ。場所は私が毎週走っているチームの朝練のコースで行われた。練習で何十回、もしかしたら百回以上登り下りした道だ。道のどこにクボミがあって、どこが滑りやすいかなど、ありとあらゆる地形が頭に入っている。

山頂は小さな公民館になっている。この日だけ試乗用のTIME SKYLONが何台か持ち込まれた。FLUIDYも有りこの日朝練に来た人はラッキーだと思う。元々はある店舗へ貸し出す為に用意されたマシンだが、朝の短い移動の合間なら乗れるそうで、無理を言って乗らせていただくことにした。

その前に今回いろいろ良いことも悪いことも書いていく。まずこの記事を、「一個人の意見」として受け取ってほしい。当ブログを読まれている方は、ウンザリする程私が言っていることだが「機材の絶対評価はできないので相対評価になる」ということだ。

今回基準となるフレームはTIMEのフラッグシップモデルZXRS。ターマックSL4から乗り換えて、数千キロレースや練習で乗った。今はZXRSというフレームの感触をつかんでいる。SL4からZXRSに乗り換えればZXRSは柔らかい感じるかもしれない。しかしRXRから乗り換えたらば硬いと表現するだろう。

メーカーやイベントの試乗会で嫌らしいのは、タイヤとホイールが固定だということだ。例えば、試乗用に高い空気に仕上げられた試乗車も多い。高級チューブラータイヤが付いたライトウェイトなら、正直どちらの性能を感じているかわからない。

今回もリムワイド化された新型BORA ULTRA 35とハッチンソンの最高級タイヤが着いていた。申し訳ない気持ちも感じながら、すぐに外させてもらった。そして自分が使っているROVAL CLX40のクリンチャーに変更した。

さらに、サラ足で乗ってもフレームの違いがわからない場合が多い。したがって、チーム練習でチーム員といつも通りもがいてから、山頂でTIME SKYLONに乗り換えて試乗するという方法をとった。ちなみに、試乗する前に若干体力の余裕を持たせ、ある程度足は残してある。

当然TIMEユーザーとして、TIME SKYLONは購入したい。よってこのように考えてから試乗することにした。自身の中の基準では、精度の高いフレームの感触が得られている。あとは、どのようにして文章化して伝えられるか、そこにかかっている。出来るだけ具体的に書こうと思う。

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TIME SKYLONの構造

まずは、構造面の特徴をできるだけ詳しく見て行きたい。TIMEの良いところはその作りの美しさにある。自転車とは何か?という問いにTIMEはフレームという形に具現化してきた。時代の流れでモノコックに移行したのも理由があるのかもしれない。

そんな手がかりが見つけられるかはわからないが、構造面を詳しく見て行く。

SKYLONのヘッド

TIME SKYLONのヘッド周りは特徴的だ。他のメーカーより、いくらか長いヘッドチューブは乗り手を選ぶ。TIMEのフレームは、スぺシャライズドやウィリエールといった100mm程の短いヘッドを採用しているメーカーと異なる。さらに独自のヘッドパーツを使っているので、その分ステム位置は上がる。

TIME SKYLONのヘッドチューブは上記写真の通りだ。カーボンは相変わらず無機質に並び、完成度が高いと一眼でわかる。写真で確認できるが、TIMEのロゴはプリントから「立体的なギミック」に変更されていた。

正直このようなギミックは好きではないが、何かの拍子で吹っ飛んだら、すごく残念な感じになりそうだ。できれば↓以前の赤白ロゴに戻して欲しいところではある。

こちらはZXRSのロゴとメーカーロゴ。いかがだろうか。趣味の問題もあると思うが、やはりこの赤白がTIMEっぽくて好きである。

SKYLONのトップチューブ

もし、雑誌でTIME SKYLONが紹介されるならこの様なギミックはどのように表現されるのだろうか。「細かな作りのみがフランスらしい」とか書かれるのだろうか。正直、TIMEに限らずこの様な装飾は個人的に好きではない。

この手の余計な工夫は、人によって評価や好みが分かれるところである。ZXRSのコブも好き嫌いが別れたポイントであった。したがって、一概に良い悪いは決めつけられない。ただ今回は剛性を考えたコブと異なり、デザイン的な要素であるわけだが。

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フロントワイヤールーティング

TIME SKYLONは「ワイヤー」と「電動」両方使える設計になっている。メーカーとしては、フレームの作り分けの手間が省けて良いはずだ。ただ、ZXRSユーザーの私からすると、電動専用設計はワイヤー用の無駄な穴がない。ZXRSの方がフレームの構造体として好きである。

ZXRSはダウンチューブに電動ケーブルの口が空いていた。しかしTIME SKYLONはトップチューブに電動の穴が空いている。代わりにワイヤー変速用の穴が左右に空いている。ケーブルルーティングは「さすがTIMEだ」と思うが、今回兼用モデルになり、無駄な穴が空いているのはいただけない。

また、トップチューブにロゴの装飾があるならば、ワイヤーの穴を隠すギミックがあっても良のでは?と思えてくるのは余計だろうか。

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ステアリング周り

ヘッド周りをさらに細かく見て行く。少し引いてみると、好きな赤白のTIMEロゴが見えてくる。それと合わせて、ヘッド部に取り付けられたギミックはやはり理解に苦しむ。ヘッドチューブの部分も赤白ロゴが良かったのだが、バランスの問題だろうか。

TIMEのフォークコラムを塞ぐヘッドキャップは特徴がある。無駄なネジで締め込む必要もなく、ただポン入れされた穴を塞ぐパーツが好きだ。私が持っているVX SPECIAL PRO(2002)にも採用されている。ただあちらは、十字のカーボンにスポッとはめているだけなので少し頼りない。

こういう小さい工夫は大歓迎だが、先ほどの無用なギミックは受け入れられないと感じてしまった。

ステアリング周りは純正ステムとハンドルが付いていた。いづれも別売になっている。TIMEのハンドルとステムは素晴らしい。何が素晴らしいかと言われればカーボン自体の「整形精度」だと言える。

ステムのハンドルを挟む場所を見てほしい。ピッタリとその隙間が埋まっている。紙一枚通さないような、ピッタリと密着したステムとハンドルの精度はさすがTIMEだ。ただステムは四万以上するし、角度が10度だけなのでポジションが出ていない場合は、迂闊に買えないだろう。

今回二台のTIME SKYLONがあったのだが、フレームのカラーと塗装に合わせたコラムスペーサーが付属している。この辺の小さな配慮がTIMEらしいと感じる。

特にジオメトリーに神経質にならず、ポジションにも寛容ならばフレームのデザインに合わせてステムもハンドルもTIMEを使ってみたい。ただ、通常のハンドルやステムと違い、倍高い価格を覚悟しなくてはならない。しかし、TIMEユーザーならむしろ揃えてしまうのだろうが。

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シート部の構造

これまでのTIMEフレームはISP(インテグラルシートポスト)という一体型のシートポストが採用されていた。今回の新型TIME SKYLONはそれらとは異なる。可動式のシートポストを採用している。賛否は分かれるところだろうが、利便性は向上したと言える。

リアブレーキのワイヤールーティング

シートポストの部分で気づいたことがある。リアブレーキのワイヤールーティングが変更されいた。まるでキャニオンのCF SLXのワイヤールーティングのようだ。ZXRSで採用されていた、トップチューブ途中から絶妙な角度で放出されるワイヤールーティングではなくなっている。

こちらは私のZXRSだ。ワイヤールーティングが美しい。ハンドルから出たワイヤーは、ワイヤー外装ごとトップチューブに入り途中から抜ける。そのままリアブレーキへと一連の流れとして美しい。本来は見えないトップチューブの中のワイヤーの「流れ」が、容易に想像できる程だ。

「そんなことはどうでもいい」と言う方が大半かもしれない。ただ、機材としてワイヤールーティングはこうあるべき、という設計思想を想像させ、かつ見た目の「ワイヤールーティングの美しさ」を感じさせてくれるTIME ZXRSの構造は秀逸だ。

残念ながら、キャニオンのワイヤー取り回しに近くなってしまったTIME SKYLONではあるが、設計上ブレーキの取り付け位置もやや下がって変わっている。このルーティングは、TIMEが出した一つの答えなのだろう。

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SKYLONのリアラグ

TIME SKYLONはフルモノコックではない。一部、後ろ三角はラグ構造である。ただ、TIMEのラグが好きな方から言わせると「それ違うかも」という構造かもしれない。リアブレーキ近くのギリギリまでモノコック構造だ。そこから後ろはつなぎ目が見て取れる。

なぜここまでして、この部分をラグにしたのかは定かではない。何かしらの理由があったのだろう。補修の為か、過去のユーザーを配慮してか、いづれにしろラグ構造は生きている。ただ、モノコックでも良かったのでは?と思えてならない。このあたりの話は、試乗した際に触れている。

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ブレーキの取り付け位置

シートポスト部をもう少し見て行く。構造的にはISPを排除した構造に目が行くが、リアブレーキの取り付け位置が変更されていた。より具体的に言うならば、ZXRSはトップチューブから、シートステイにかけて流れがあった。

TIME SKYLONの場合は、トップチューブはシート部で終わる。そこからいくらか下がった所からシートステーが始まる。写真はZXRSだ。一目瞭然だろう。対してSKYLONはBMCのフレームのようだ。構造を突き詰めて行った結果ここにたどり着くのだろうか。

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少し気になった事がある。大部分の人には当てはまらないが、ZXRSに着いているJBCFのゼッケンプレート。TIME SKYLONのリアクリアランス的にもしかしたら、干渉するかもしれない。この辺は注意が必要である。

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タイヤクリアランス

シートチューブは華奢だ。タイヤとのクリアランスは最近の25cを考慮してか、さらに広げられている。どちらかというと横から見たら薄いと感じるが、前から見るとある程度の太さがある。

ZXRSはタイヤとの差をギリギリまで詰めている構造だった。先ほどTIME SKYLONはブレーキ位置が下がっている。リアホイールに伸びるシート部の角度がいくらか変わっている関係か、タイヤとの間に余裕があるように見える。

余談だが、TTバイクに見られるこの「タイヤとの詰め具合」は小さければよい、というわけではないらしい。最新の風洞実験によると、自転車の速度域であれば微々たる差であるようだ。特段このクリアランスの少しの差は気にするほどでもなさそうだ。

ただ、見た目は詰まってた方がカッコイイのは否定しない。

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SKYLONのBBまわり

一番気にしていたボトムブラケット回りを見ていく。一番改良された部分はもしかしたらBBかもしれない。RXRの初期型はネジきりのJISだった。私が好きな規格だ。トラブルも少なくフレームにも優しい。限定販売されるVXRSもこの規格を踏襲している。

TIME 2015 国内価格発表 VXRSは48万円に

それから、BB30になり今回のTIME SKYLONはBB386になった。大口径が進むフレームの潮流にTIMEも沿ったことになる。さらにモノコック構造はBBまで及ぶ。ただ、見てわかるようにBBからチェーンステイの接合部は以下のような不思議な構造をしていた。

どうだろう、チェーンステイからBB部分はラグ構造だ。ということはTIME SKYLONは数カ所はラグ構造を残している。なぜこの部分をラグにしたのかはTIMEのみぞ知ることだ。

具体的にチェーンステイは左右一つのモノコックで作っているように見える。BBとつながる部分は一体整形であるから、左右のチェーンステイは独立せず、一つのカーボンとして作られているように見て取れる。

というわけで、裏返してみる。

このように、TIMEの特徴でもあったラグは廃止されている。一つ気づくのはチェーンステイは左右異なる形状だということだ。これは聞いた話だが、ドライブトレイン側ではかかる負担が異なるためカーボンの形状や強度を変更しているという。

自転車は右側に重量や、パワーが偏っている。フレームで補える部分は補うという思想らしい。ZXRSも確認してみよう。

どちらかというと、丸みを帯びたボトムブラケットだ。skylonと異なり限界まで広げられていないボトムブラケットだ。限界まで広げられたボトムブラケットは、クランクシャフトを広く支える事ができるので安定性が増すとされている。

ZXRSは四ヶ所からつながるラグ構造をしていた。この部分が独特な乗り心地を産んでいたのかもしれないが、TIME SKYLONはBB周りに相当な剛性向上を実現しているという。乗ってわかるのかは、後ほど詳しく紹介したい。

なお、カンパの電動用充電口はこのようになる。

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エンド部とルーティング

エンド部は大幅には変わっていないように見えるが、カーボンが占める部分が広くなった。ZXRSは末端までアルミだったが、今回は極力カーボンで作ろうという気配が見える。さらにエンド部を細かく見て行く。

エンド金具のネジは、外からHEXアタマのネジで止められている。過去のモデルと変更されている部分だ。実際裏側からも止められている可能性は高い。過去のモデルはエンド金具を特定のモデルでは共通部品として用いられていた。しかしここにきて、1から再設計されたように見える。

TIME SKYLONの重量

TIME SKYLONの重量は公開されていないがおよそ900gだという。そこまで軽くはないが、闇雲に軽さを求めない姿勢は健在のようだ。ZXRSはフレーム込1490gなので相当な軽量化が図られている。TIMEの良さは闇雲に軽さを求めないところにある。

私はTIMEというフレームにおいて、重量の話題はしなくてもよいと思う。なので重量は900gという驚きもせず、何も思わない部分については数値だけ載せるに留める。次はいよいよ乗った感想を書いていきたい。後半の試乗インプレに続く。

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TIME SKYLON インプレッション

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SKYLONは相性が良ければ購入を検討したい機材だ。したがってできるだけ違いがわかるように試乗した。ホイールも自身のROVALクリンチャーを使った。試乗したコースも知り尽くした練習場所だ。

まず家から2時間はZXRSに乗り、そのあとは登り主体の道で掛け合いながら練習を終える。そして山頂に持ち込まれたTIME SKYLONにすぐさま乗り換える。登って来た道を引き返す形で、まずは下りから確かめた。

SKYLONの下り

TIME SKYLONの下りは、ZXRSと明らかな違いは無かった。要するにTIMEらしい下りの良さだ。もう驚きはしないが、ターマックから乗り換えた時のような感動はない。既にZXRSに備わっている「当たり前」の下り性能だからだ。

驚くほどの違いがあるわけでもなく、下りに感動するわけでもない。ただ、安定して無機質ながらも気持ちの良いくだりが楽しめる。TIMEからTIMEの比較なので違いが感じられない。ただ、他のフレームからの乗り換えならば下りは気持ちが良いかもしれない。

かなりの時間下りを試した。しかし私の中では特に変化無しが結論。次は登坂を開始することにした。

SKYLONの登坂

下り坂をUターンして登り返す。踏み始めると、すぐに感じるSKYLONの特徴がある。「硬い」ということだ。わたしのような素人でもわかる位に硬い。かなり硬い。どこが硬いかと言われれば、曖昧な感覚の話だがダウンチューブからBBにかけて硬いと感じる。

登坂のようなある程度トルクをかけながら登るパターンの場合は、踏んでないと進まない錯覚に陥った。そんな率直な感想を残しておきたい。数値上、十数パーセントBBまわりの剛性を上げると、人間にも判別できるほど硬いと感じることができる。

正直SL4と同じ硬さとまではいかないが、あの剛性に近いフィーリングがある。モノコックのフィーリングなのかは定かでないがすごく似ている。ただ、踏んだ時にSL4はテコでも動かない頑固さがあったが、TIME SKYLONはリア部分がわずかにしなる。

前三角のトップチューブ、ダウンチューブは本当に硬く感じる。ただ、先ほどの構造でもわかったとおり、リア部分はラグだ。もしかしたら、この部分のカーボンを変え、いくらかしなやかな構造にしているのかもしれない。その為のリアラグなのか。

SKYLONのリアラグの意味

「全部モノコックにすればいいのに」が私の乗る前の印象だった。しかし乗って見て、その剛性とのバランスを感じて、いろいろな想像ができる。おそらくクランク周りの剛性は相当だ。その部分を補うため、リアのカーボンはラグで別物(柔らかに)にしているのかもしれない。それにしても、とにかく硬い。

このリアラグだが、TIMEにしてみたら全てをモノコックにするのは容易だったのかもしれない。しかしあえてこの部分にラグを残しているのは、理由があるのだろう。おそらくリアをしならせるため、そう考えている。

SKYLONでスプリント

私のようなMaxが1000Wちょっと超える程度の非力な選手にとって、SKYLONは踏み負ける印象がある。もっとパワーがあったら進むかもな、と思ってしまう。思いっきりもがいてみる。ただ、ZXRSのようなバネ感はみあたらない。

ここまで、ZXRSとの相対評価になるが、この感覚は私だけなのだろうかと心配になった。そこで先に販売店試乗でSKYLONに乗った村上メカニックと話すことにした。

SKYLONを使うシチュエーション

自分がSKYLONを使うならどんなシチュエーションか考えた。恐らくロードレースには硬くて使わないだろう。この硬さと軽さは短い時間のヒルクライムには適しているかもしれない。またアタックがかかるシチュエーションも適していそうだ。

ただ、私が出るレースの場合は徐々に力をそがれていくパターンが多い。そのようなシチュエーションはSKYLONよりもZXRSを選ぶだろう。全く異なる二つのマシンは使用用途が異なるように思える。インプレ雑誌のフレーズを使うなら「スパルタン」だとか「ピュアレーシング」だとかそういうフレーズが似合う。

ハードに使うならSKYLONなのだろう。

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私以外のSKYLONのインプレ

硬いと感じたのは、私の勘違いなのかを確認したかった。私がお話しさせていただいた内容をそのまま紹介したい。私よりも多くのマシンを試乗し、レース経験も豊富な村上メカニックとの話は以下の通り。

村上氏:ZXRSより硬くてバネ感がない感じですね。
 FJT:私もそこは同意見です。
村上氏:でも振動吸収性は増してる感があります。
 FJT:そこはわからない、むしろ変わらない気がする。
村上氏:登りは軽いです。
 FJT:確かに、持っても軽く感じる。ただ走りの軽さがあるかと言えば、そうでもない。

やはり私以外の人も、フレームの剛性が上がり硬くなっていると感じているようだ。その硬さがSKYLONの売りなのだろうか。あともう一人あるショップの人と話をしたが「相当硬い」という同じ意見だった。やはり皆同じことを感じている。

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SKYLONとZXRS

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ネットやSNSでSKYLONについての様々な情報を見た。「異次元のバイク」「よく進む」という内容だった。率直に言ってしまえば、私の意見は逆だ。発売前の市場コントロールも幾らか入っているだろうが、自分にはZXRSより踏まないと進まないと感じるし、硬すぎて走らせるのが難しいと感じる。

おそらく、試乗用のホイールを見るとハイエンド中のハイエンドが取り付けられている。その性能をフレームの性能として受け止めている場合も十分に考えられる。

「進む」という単語は単純だが、人それぞれペダリングの癖があり、進ませ方が違う。パワーで進ませる人もいれば、回して軽やかに進ませる人がいる。ここからは重要な結論に近い事を書こうと思う。

SKYLONとZXRSは似て非なるもので、SKYLONの延長線上にZXRSは存在していない。

ここまで色々と書いたが一言で言うと、ZXRSとSKYLONは別物だ。似て非なる、全くコンセプトが違うもののように感じる。例えば、ブラインドテストをしたなら、私はSKYLONをTIMEのフレームと思わないだろう。

ZXRSがTIMEだと思っている私の相対評価だから、SKYLONの絶対評価ではないことは留意していただきたい。SL4よりもガチガチではないし、リアにいくらかのしなやかさを残している。しかし乗り心地は、ZXRS延長上にあると思ったり、ZXRSの改良版だと淡い期待をしていたら、裏切られるかもしれない。

SL4 > 新型TARMAC > SKYLON > ZXRS

硬さで並べるなら上記の通りだ。

少なくとも私は、「ZXRSをさらに良くしたフレーム」という淡い期待を持って試乗した。ところが「似て非なるもの」だと感じたというのが率直な意見だ。かなり偏った意見ではあるが、全く別のコンセプトで1から作られたものがSKYLONと言える。

したがって、どちらが良くて、どちらが悪いという簡単は非常に難しい。むしろ判断は不可能だ。全く異なる別のものを比較することは、何かに軸を置いて(たとえば重量剛性比)数値で表して比較する以外、術は無い。

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TIMEらしさって何だろう

ここで少し考えてみたい。「TIMEらしさとは」と問われたら、TIMEユーザーはどう答えるのだろうか。私は、登りやアタックで踏みやめようとした時、ギリギリの所で粘りを支えてくれるフレームだと言いたい。千切れそうなときに優しかったのはTIME ZXRSだった。

私の場合、その印象がTIMEというフレームの「一つの特徴」として上げられる。

また、機材としての美しさやケーブルルーティングも重要だ。ここまで書いてZXRSがやっぱり好きだ。結論はSKYLONよりZXRSが良い(私の場合は)。雑誌のインプレなら悪くてもダイレクトに書けないし、自分本位の書き方はできない、さらにメーカーとの付き合いもあるだろう。

もう少し吐露させてほしい。いまだにZXRSで感じる「乗ってて楽しいな」や「ZXRSを見ながら飲む酒がうまい」がSKYLONには感じられなかった。本当にSKYLONに試乗させていただいた所、本当に申し訳ない気持ちを感じながらキーボードを打っている。

なのでいち個人のWEBの片隅に書かれた「一つの感想」として受け止めてもらえたら幸いだ。

もし、紙面にSKYLONのインプレが載る日がきたらもう一度見返してみたい。「TIMEの正当進化」と書かれていたら私はTIMEというフレームを間違えてとらえていたのだろう。そしてZXRSのTIMEらしさも感じ取れていなかったに違いない。

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まとめ:SKYLONはAKTIV仕様が本命か

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SKYLONは非常に悩ましいフレームだ。TARMAC SL4から新型TARMACは「正当進化」だった。TARMAC SL4の延長線上にTARMAC SL4.5として新型ターマックが存在していた。非常にわかりやすいフレームだった。ところが、今回のSKYLONはどうか。

ZXRSを乗って、その想像や乗り心地そのままにSKYLONに乗ると別物だと感じる。要するにZXRSの延長線上にSKYLONは無い。今回の試乗は、自分自身の中でかなり条件の良い環境下で乗らせていただいた。明確にZXRSと別物だと言い切れるフレームだ。

結果的に、この硬さと乗り心地は「私の場合」合わなかった。

ただ誤解してほしくないのは、試乗している人の話を聞くとこのフレームを「良い」と言う人のほうが多いということだ。恐らくフレームに求める「良さ」が人によって違うのが原因だろう。ただ単純に「私が」好きな感触ではなかっただけだ。

SL4からZXRSに乗り換えた時に感動した、どこかバネ的(表現が難しいがウィップといえば良いか)な気持ちの良い乗り心地はSKYLONには無い。代わりに硬さは増し、パワーのある人が乗るならより性能が引き出せるかもしれない。

突き詰めて考えると、もしかしたらSKYLONとZXRSというよりも「モノコック」というフレームの特徴と「ラグ」という特徴の差を感じていたのかもしれない。少なくとも私はZXRSと異なるその感触を「良い」と判断できないタイプのサイクリストのようだ。

ただ、一つ言えるのは万人に合うフレームは無いということだ。同じメーカーでも設計思想や、構造やコンセプトが変わってしまえば別物になる。今回別物と感じたSKYLONはもしかしたら「進化」ととらえても良いのかもしれない。

そして、今回試乗したモデルはAKTIVフォークでない無印のモデルだ。TIMEが本来見せたかった、一番力を入れている2015年の技術部分ではない。機会があればその性能も確認してみたい。いずれにせよ、自身で乗り、その価値を感じてから判断しても遅くないはずだ。

最後に一つ個人的な意見を。2014年のZXRSは「型落ち」で安くなっているなら買って乗ってみてもよいかもしれない。少なくともフレーム購入の選択肢として2015年もZXRSはアリだと捉えている。ZXRSは私の好きなフレームの一つだ。

新型モデルに乗って、旧型が気に入るという事は珍しいケースと言える。それ程までに歴代のTIMEは、それぞれが、それぞれの特徴を持っているのだろう。SKYLONに乗って思うことは、良い悪い表現することは非常に難しいという事だ。

恐らく、明確にZXRSとのすみわけをしているようにも見える。できればモノコックのSKYLONと、ラグのZXRS系統を併売してほしい。可能であれば、2014年のZXRSとSKYLON双方を乗り相性の良い方を選択してほしい。

ZXRSとSKYLONは全く別物である。新型だから良い、という理論は必ずしもTIMEには存在しないのだ。

参考
TIME ZXRSのインプレ 「いつかはタイム」の意味
TIME ZXRSのインプレでわかったタイムフレームの凄さ
TIME 2015 国内価格発表 VXRSは48万円に
新型Tarmacインプレッションもはやターマックではない
世界限定300台 TIME VXRS Limited Edition

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菊地 武洋
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