フレームの載せ替え時期は2つある。ツールドおきなわが終わり、冬の乗り込み時期のタイミング。そして6月のツール・ド・熊野や西日本ロードクラシックが終わった後だ。これは私の年間スケジュールの場合であり一般論ではないが、おおよそ6-7月、11月-12月の2回ではないだろうか。
今回、目指している9月のレースまで2ヶ月有るので3000-4000kmは乗り込めると判断してフレームをTIMEに変えた事は以前お伝えしたとおりだ。気分の問題も有るが偶然TIMEのフレームを手に入れ乗ってみて本当に作りから乗り心地まで気に入っている
インプレ自体は「TIME ZXRSのインプレでわかったタイムフレームの凄さ」を参照してほしい。
私はS-WORKS Tarmacを乗り続けており、別のフレームに浮気をしても結局買い戻してしまうほどのTarmac好きであった。今回もその例に漏れず”浮気”をしてしまった。浮気したは良いが、やはり問題が生じるものである。
Tarmac SL4のXS(49)とTIME ZXRS(XS)は大きくジオメトリが違うのだ。具体的にはZXRSのトップチューブが大きい。今回はジオメトリが異なる2つのフレームにおいて、いくらかの犠牲を払いながらも、なんとかポジションを出すべく計算した結果を紹介したい。
結果は、計算外のところに落ち着ついたのだ。
TARMAC SL4とTIME ZXRSのジオメトリ
私は身長が169.7mm(カタログ値170cm)なのでサドル高さも低い。サドルは高ければ良いというわけではなく「高いパワーを出せる位置」にセッティングするのが望ましい。股下に0.765を掛け算するなどいろいろな方法が有るが、結局はパワーを出せる位置にセッティングしなくてはならない。
結局、ポジションに「最適値」は無く「最適解」としてパワーが出るところを探し続けることになる。
今のTarmac SL4のサドル高はSELLE SMPのサドルの一番凹んだ部分を基準に665mm、ステムのスペーサーは0.5mm挟んでいる。0mmだとどうも上りでハンドルが引っ張りにくい。ステムは100mmの17°で水平にしている。
では実際のフレームジオメトリは以下のとおりだ。
- TARMAC SL4 49 / TOP 518mm / ヘッド角 72.25°
- TIME ZXRS XS / TOP 530mm / ヘッド角 71.5°
角度は大きくなればなるほど90°に近づき垂直になっていく。といういことは、TIME ZXRSの方がヘッドは-0.75°寝ているといえる。この状態においてTARMAC SL4に角度の違う3種類のステムを取り付けた状態を計算した。
当然、ヘッド角やステム角の組み合わせパターンによりステムの突き出し量は変化する。またステムの下がり量もヘッド角とステム角度で変化する。結果的に「100mmのステム」を取り付けたとしても突き出し量や、下ハンドルを持った位置は角度によって微妙に変わってくる。
ヘッド角72.25°(TARMAC SL4)の場合 518mm
- ステム長(mm)/角度(°),突き出し量(mm),下がり量(mm)
- 100mm / 72°/ 58mm / -81mm
- 100mm / 80°/ 47mm / -88mm
- 100mm / 82°/ 43mm / -90mm
- 090mm / 72°/ 53mm / -73mm
- 090mm / 80°/ 42mm / -80mm
- 090mm / 82°/ 39mm / -81mm
ヘッド角71.5°(TIME ZXRS)の場合 530mm
- ステム長(mm)/角度(°),突き出し量(mm),下がり量(mm)
- 100mm / 72°/ 59mm / -80mm
- 100mm / 80°/ 48mm / -88mm
- 100mm / 82°/ 45mm / -89mm
上記の通り100mmのステムといえど、82°と72°で突き出し量の差は14mmもの差が生じる。サドル高さを1-2mmの世界で変える自転車において、14mmとは非常に大きな値といえる。では角度をうまく使いなるべく、組み換えによる差をなくす検討をした。
ステム角度とトップチューブ長
先ほどのステム角度からわかることは「100mmのステム」と、一括りにしてはいけないことがわかる。ヘッド角度とステム角度が非常に重要な要素になる。例えばこんな例はどうだろうか。
現在Tarmac SL4のTOPチューブ518mmに乗っている。実際に取り付けているステムは100mmの72°だ。この場合ステムの突き出し量は58mmである。仮にTIME ZXRSのTOP530mmに乗り換えたとする。ステムは100mmの72°をそのままとりつけた。その場合TIME ZXRSに取り付けたステム突き出し量は59mmになる。
計算するとトップチューブ長と突き出し量の関係は以下のとおりになる。
- SL4: 518mm + 58mm = 576mm
- ZXRS: 530mm + 59mm = 589mm
- ZXRS – SL4 : 586mm – 576mm = 13mm
上記の通り13mmの違いになる。しかし、組み換えの誤差を減らしたいとする。ステム長を変えずに角度のみ変更した場合、差を極力減らすことができないか。TIME ZXRSのTOP530mmにステムは100mmの80°を取り付ける。その場合TIME ZXRSに取り付けたステム突き出し量は48mmになる。
その場合は、以下のように計算できる。
- SL4: 518mm + 58mm = 576mm
- ZXRS: 530mm + 48mm = 578mm
- ZXRS – SL4mm : 578mm – 576mm = 2mm
ステム角度を80°にしたことにより、突き出し量が短くなった。合計値は13mmから2mmに減らすことができた。大きいフレームに乗ってみたいが、ステムは短くしたくない(ルックス的な意味で)場合は、ステムの角度を変えることにより総合的な長さを埋めることができる。
ただ、冒頭にも書いたが幾らかの犠牲を払う必要もある。肝心のハンドル下がり量まではカバーできない。厳密にポジションを合わせるならば、お気に入りのハンドルから変える必要がある。今回ハンドルは変更しないので、トップチューブ長、ステム突き出し量のみを考える。
実際乗ってみた
先ほどの計算から、フレーム変更誤差が少ない場合で乗ってみた。トップチューブと突き出し量を参考にSL4のステム100mm(72°)からTNIの100mm(80°)に変更した。誤差は2mmだ。やはり非常に違和感は少ない。ただTIMEのヘッドチューブが長いためアップライトに感じる。
犠牲を払う部分はトップチューブの長さによる、サドルからハンドルの落差だ。この部分はやはり違和感がある。TIME ZXRSを500km程乗った時にどうしてもこの「落差」がもっと欲しくなり、100mm 72°に変更することにした。
トップチューブとステム突き出し量の合計は、SL4とZXRSで以下のとおりになる。
- SL4: 518mm + 58mm = 576mm
- ZXRS: 530mm + 59mm = 589mm
- ZXRS – SL4 : 586mm – 576mm = 13mm
この13mmの差は大きい。ただ聞くところによると、ヘッドチューブが長くなることに合わせ、ステムも長くなる事があるらしい。実は私がフレームを変える前に教えてもらったことが現実となった。
まとめ:ステムを侮るべからず
色々と試したが、やはりステムとは非常に重要なパーツであると再認識した。今まで使っていたサイズは、フレームを変えたことにより、異なる感覚を持った別物になる。今回、2009年からほとんど変わってなかったトップチューブとステム突き出し量を変えた。
実際には何ら違和感はない。むしろしっくりきている。ただ、ハンドルの下がり量はそこまで取れていないが、次期になれることだろう。一通りセッティングしたが、最後の調整で、ハンドル送り量は-0.2°だった。
岡メカニックの協力の元、デジタル水平器を用いて0.1の世界まで調整したマシンは精神安定上よろしい。全く違和感無くセッテイングが完了したが、何年か後にはまた新たなポジションが出るのだろう。
自転車の機材やポジションの最適値を求める欲求に終わりはない。ただ間違えてはならないのは、現状の状態がベストだと思わないことだ。考えることや、工夫することをやめたなら、その時点で進歩が止まる。
もし、フレームを変えて違和感がある場合ステムの角度と、長さを計算しなおす事も、やって損はないのではないだろうか。
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