国産メーカー2社がタッグを組んでトレーナー用タイヤを生み出した。タイヤメーカーのiRC TIREと、ホームトレーナーや革新的なデバイスを開発するGROWTACの共同開発だ。
ZWIFTやコロナ禍によって、自宅で手軽におこなえるホームトレーナーは人気が高まっている。これまで室内トレーニングを行う人はガチ勢だとされてきたが、エンターテインメント性が高まり急速にユーザーが増えている市場だ。
ホームトレーナーには大きく分けて、ダイレクトドライブ型とタイヤを直接負荷装置に接触させる2つのタイプが存在している。タイヤ接触型ローラーはタイヤを負荷抵抗装置やドラムに押し付けて動作させる。
使用方法や使用機材にもよるが、外で使用するタイヤをそのままホームトレーナーで使用した場合、騒音が大きくなるばかりか、タイヤについたホコリで滑ってしまうため安全面に問題があった。そのため、ホームトレーナーを使う場合は専用のタイヤとホイールを別に用意して運用するライダーも多い。
これまで、コンチネンタルとヴィットリア社のホームトレーナーを個人的に使用してきた。それぞれの製品を10年近く使用してきたが、どちらも満足のいくものだった。そして、予備のホームトレーナータイヤも所有していたため、あえてiRC ROADLITE HOME TRAINERに変更する必要はないと思っていた。
しかし、国産メーカーのiRCと愛用している4本ローラーの開発元GROWTACが開発したタイヤということでどんな製品に仕上がったのか単純に興味が湧いた。そこで、「iRC ROADLITE HOME TRAINER × GROWTAC」がリリースされたため、すぐさま購入して「実走テスト」を行った。
まず、コンチネンタルホームトレーナーと比べて明らかな違いがわかったのは以下のポイントだ。
- グリップが高い
- もがいても滑りにくい
- ゴツゴツ感がない
- 振動が減少
- 抵抗感が増加
- 質量は軽いが重く感じる
- 実走に近い乗り心地
タイヤというと、「転がり抵抗が小さい」という事がこれまでは注目されてきた。しかし、iRC ROADLITE HOME TRAINERはホームトレーナー専用設計がゆえ、外で使用するためのタイヤとは全く方向性が異なっていると感じた。
まず、タイヤの抵抗が増すことがすぐにわかった。GROWTAC社のGT-Roller Q1.1(4本ローラー)をずっと愛用しているが、ローラーの負荷設定で「25」必要なところ「15」で同等の負荷に感じた。負荷15でも、負荷25で出すパワーに到達してしまった。
また、インターバルトレーニングで30秒もがきを実施する際に、コンチネンタルのホームトレーナーはスリップしてしまうことが度々発生していた。iRC ROADLITE HOME TRAINERの場合は、「べたーっ」と張り付いたまま高いグリップを保持しつつダイレクトに力が伝わっている感じが得られた。
さらに、回転中に嫌なノイズが非常に少なかった。タイヤの精度が高いためか、タイヤが回転することによって発生する「コツコツ」や「コン、コン」といったアタリのような問題がほとんど発生しなかった。
タイヤのつなぎ目を平滑にすることで、振動やゴツゴツとした不快感を削減する「SMOOTH ROTATION」という製法が用いられており、使ってみてもその効果がよくわかった。非常に精度の高い真円のゴムが無機質に回転していることがよくわかる。
ケーシングは180TPIの高密度の繊維を使用しているため、取り付け前は絹のようにしなやかだった。それゆえ、しなやかな乗り心地と静粛性を実現しているのだろう。特に静音性は増しており、チェーンの干渉音のほうが大きく聞こえるほどだった。
耐久性に関してはこれから継続的に試していかねばわからないが、トレーナーに最適化した独自配合のコンパウンドによって従来品の1.5倍以上の高耐久を実現しているという。
価格は5,753円と高価であるが、静音性が増したこと、グリップ力が高いためパワーが伝わりやすいこと、振動が減ったことが明らかに体感できた。また、ZWIFTのインスブルックの上り手前で一気に掛けた時にダイレクトドライブのようなかかりの良さがある。ZWIFT用の「決戦用タイヤ」としてもメリットがある。
ホームトレーナーでトレーニングを行っている方は、他社から乗り換えても十分満足できるタイヤだ。
- サイズ 700×25C
- ビード仕様 フォールディング
- 空気圧 600-800kPa / 6.0-8.0kgf/㎤ / 90-115PSI
- 重量 195g