速度が増せば増すほど、転がり抵抗は増える。また、最新のワイドリム化によるリム幅の拡大によりCrr(転がり抵抗係数)が下がることによってさらにタイム削減が見込める。
転がり抵抗は一定の値のように思われているが、速度を上げると転がり抵抗は増す。そこで、転がり抵抗で消費されるワット数はどれほど生じるのかを確認した。ここで言っている「消費される」とは、ホイールを転がすために必要なワット数という意味だ。
ペダルをこぐと、何ワットかの負荷がかかる。例えば、200ワットでペダルを踏んで、転がり抵抗が20ワット生じるとすると、ペダルを踏んだエネルギーのうち180ワットしか前に進めないことになる(抵抗はすなわち、税金のようなものだ)。
転がり抵抗で消費された20ワットは、運動エネルギーが熱や音に変換されることで失われる。転がり抵抗を小さくすれば、失われるワット数が少なくなるためスピードが上がるというイメージはつきやすいだろう。
- v = 速度(m/s)(すなわち、地上速度)
- m = ライダーと自転車の総質量(kg)
- g = 9.81 m/sec2
- Crr = 転がり抵抗係数
簡単な例として、次の値を用いて式を使用してみる。
- Crr = 0.0026
- m = 65kg
- v = 10 mph または 4.4704 m/s
この例では、7.41Wが転がり抵抗によって消費されることがわかる。しかし、これはタイヤ1本分の消費であるため、転がり抵抗による消費電力はライディングボジションによって分散されることを考慮する必要がある。
これは、速度が速くなればなるほど、転がり抵抗によって消費されるワット数が増えることを示している。
転がり抵抗で失われる時間
1ワットがどれくらいの時間に相当するについて、よくある距離40kmのTTを走る場合、1ワットは5.28秒に相当すると考えることにする。これがわかれば、転がり抵抗の値が異なる2つのタイヤの時間短縮を比較することができる。
今回サンプルとして比較する2つのタイヤは以下の通り。
- Continental GP 5000 STR(25mm、6.9Bar、Crr=0.00273)
- Vittoria Corsa Speed G2 TLR(25mm、6.9Bar、Crr=0.00225)
これらのタイヤのCrr値はbicyclerollingresistance.comの実験で得られた実際の測定データーを使用している。
上表は、速度1.6~48.3km/hで転がり抵抗が原因で消費される時間(秒)を示している。スピードが速いほど、失われる時間も増えていることがわかる。例えば、40kmTTで時速40km/hで走り抜けた場合、GP5000 STRよりもVittoria Corsa Speed G2 TLRを使ったほうが18.1秒速く走れる。これは、タイムトライアルの勝敗を分けるだけに十分すぎるタイム差だ。
ワイドなリム内幅とタイム短縮の関係
ホイールのリム内幅を広げることで、タイヤのヒステリシスロスが減少し転がり抵抗を低減させることができる。リム内幅の拡大は0.0004の変化をもたらす。同一のタイヤ(Corsa Speed G2)を使用したとしても、下の表に示すようにワット数と時間の節約に影響する。
ここで重要なのは、これらの時間短縮はCrrだけに関連するものであるということだ。この表には、ワイドリム化による空力最適化による付加的な利点は考慮されていない。リム幅とタイヤ空気圧の違いによる空気抵抗の特性については以下の記事を参照のこと。
まとめ:細かいことはいいから、転がり小さいタイヤ使っておく
転がり抵抗は速く走るために非常に重要な要素である。転がり抵抗を下げるには、ホイールとタイヤ、そしてタイヤの空気圧が重要なポイントになる。例えばBONTRAGERのAEOLUS RSLは転がり抵抗を最適化するように内幅が広く設計されている。
しかし、世界最強のINEOSが使用していたプリンストンカーボンワークスのWAKE6550やMACH 7580は使用するタイヤ幅の想定が25Cもしくは28Cでエアロダイナミクスを最適化されているためリム幅がやや狭い。MAVICのCOSMICもそうだ。
これらは、転がり抵抗よりも空力性能を限界まで上げることによるメリットを追求したホイールと言える。上のGRAPHにもある通り、速度が増せば増すほど空気抵抗が支配的になっていく。
エアロダイナミクス、ヒステリシスロスといった各要素を最適化することができれば、その分、楽に走ることでき、タイムの短縮が勝敗を分けることになる。
数式作成はCloudlatexを使用。