案件でも使いたくないサングラス代表のシマノだけど、これは良い。下のリムが取れるのも新しいし。マジで使えそう。
— TKC プロダクションズ (@tkcproductions) February 26, 2025
テースケさんの👆のポストを見て、シマノサングラス愛用者の私は、記事を出すタイミングを計っていました。2025の新型も使いましたが、やっぱりシマノのサングラスは良いです。OAKLEYのPRIZMの塗装剥がれで困っていて二年前にシマノに乗り換えたところ、プリズムよりめちゃくちゃ見やすいし、スペアレンズ安いし、これは良いと判断したので今回の記事を書きました。
サイクリングアイウェアは、単なるアクセサリーではない。
2025年、シマノから「EQUINOX (ECEEQNX5)」が発表された。EQUINOXは、シマノの最高峰ラインであるS-PHYREから技術とデザイン思想を受け継ぎ、「テクノロジーが注入されたスタイルと多様性」を実現するために設計されたモデルだ。

SHIMANO EQUINOXを使用。
本レビューでは、この新型EQUINOXを多角的に分析していく。素材科学の深淵から、路上での実体験、さらには競争の激しい市場におけるその戦略的地位に至るまで、あらゆる側面を解剖し、このアイウェアがサイクリストにとって何を意味するのかを明らかにする。
EQUINOXの解剖
製品の真価を理解するためには、まずその構成要素を分解し、客観的なデータに基づいて分析する必要がある。シマノEQUINOXのフレーム設計、レンズテクノロジー、そして公表されているスペックを詳細に検証し、その技術的な基盤を明らかにする。
フレーム設計と構造
EQUINOXのフレームは、単なるレンズの保持機構ではない。それは快適性、耐久性、そして持続可能性という現代的な要求に応えるための、緻密なエンジニアリングの結晶だ。その核心には、先進的な素材選択と、機能性を追求した構造設計が存在する。
素材科学:Rilsan® Clear G850 Rnew®の採用
フレームの主素材として採用されているのは、フランスの化学メーカー、アルケマ社が開発した「Rilsan® Clear G850 Rnew®」だ。
これは、再生可能なヒマシ油を原料とするバイオベースのポリアミドであり、その炭素含有量の45%が植物由来であると公表されている。この選択は、サイクリング業界全体で高まるサステナビリティへの要求に応えるものだ。
しかし、この素材の採用は環境配慮だけが目的ではない。技術データシートを精査すると、Rilsan® Clear G850 Rnew®が従来の石油由来ポリマーに匹敵、あるいは凌駕するほどの物理的特性を持つことがわかる。
1.01 g/cm³という低い比重は軽量化に直結し、1600 MPaの高い曲げ弾性率はフレームの剛性を確保する。さらに、-30℃という低温環境下でも11.4 kJ/m²のシャルピー衝撃強度を維持し、優れた耐薬品性と耐紫外線性も兼ね備えている。
これは、シマノが「環境性能」と「技術的性能」をトレードオフの関係ではなく、両立可能なものとして捉えている証左だ。持続可能性という新たな価値基準を、ブランドの根幹である工学的卓越性を一切犠牲にすることなく達成している点は、高く評価されるべきである。
特性 | 数値 | 規格 |
---|---|---|
バイオベース炭素含有量 | 45 % | ASTM D6866 |
比重 (23°C) | 1.01 g/cm³ | ISO 1183-1 |
曲げ弾性率 (23°C) | 1600 MPa | ISO 178 |
引張弾性率 (23°C) | 1640 – 1680 MPa | ISO 527-1/-2 |
熱たわみ温度 (1.8 MPa) | 120 °C | ISO 75-1/-2 |
シャルピー衝撃強度 (ノッチ付き, -30°C) | 11.4 kJ/m² | ISO 179 1eA |
構造とエルゴノミクス
EQUINOXは、レンズを適切な位置に保持するための「剛性の高いハーフリムフレーム」構造を採用している。この設計は、大きな一眼レンズに要求される剛性を確保し、走行中の振動やフレームのしなりによる光学的な歪みを抑制する。
同時に、フレーム下部を開放することで、優れた通気性を確保し、レンズの曇りを防ぐとともに、下方への視野を妨げないという実用的な利点をもたらす。
テンプル(つる)の設計は特に独創的だ。「Zシェイプ」や「カットアウト構造」と表現されるこのデザインは、複数の課題を同時に解決する統合的な構造になっている。
短縮されたテンプル長とオフセットされた形状は、多種多様なサイクリングヘルメットのシェルや後頭部のリテンションシステムとの干渉を回避する。これにより、長時間の着用でも圧迫感のない快適なフィット感が得られる。
さらに、このユニークな形状は、デザイン性だけでなく、通気性を向上させるためのベンチレーションとしても機能する。顔とフレームの間に空気の流れを生み出し、ハーフリム構造と相まって曇りの発生を効果的に抑制する。
フィット感の微調整を可能にするリバーシブルノーズパッドや、汗をかいても滑りにくい非毒性のTPE製テンプルチップも、ライダー中心の設計思想を体現している。
レンズテクノロジーの核心:RIDESCAPE
アイウェアの心臓部はレンズだ。
EQUINOXには、シマノ独自のシーン特化型レンズテクノロジー「RIDESCAPE」が搭載されている。この技術の根底にある思想は、特定のライディング環境に合わせて光のコントラストと透明度を最適化し、ライダーの視覚情報を最大化することにある。
EQUINOXで利用可能な主なRIDESCAPEレンズは3種類。それぞれが異なる路面状況に特化してチューニングされている。
- RIDESCAPE RD (Road): 舗装路での使用に最適化されている。アスファルトの質感や路面の細かな凹凸、白線などのコントラストを高め、危険を早期に認識できるよう支援する。可視光線透過率(VLT)は21%で、晴天から曇天まで幅広いコンディションに対応するカテゴリー2のレンズに分類される。
- RIDESCAPE GR (Gravel): グラベル、ダート、アスファルトといった多様な路面間の微妙な変化を際立たせるように調整されている。刻々と変わる路面状況への迅速な対応を可能にする。
- RIDESCAPE OR (Off-Road): 木漏れ日の中など、日向と日陰を頻繁に行き来するトレイルライディングを想定。眩しさを抑えつつ、岩や土、木の根といった障害物の視認性を高める。
これらに加え、光量に応じてレンズ濃度が自動的に変化する「フォトクロミック(調光)グレー」レンズも選択可能で、一つのレンズでさらに幅広い状況に対応できる。レンズ素材には、軽量で耐衝撃性に優れ、高い透明度を誇るポリアミド(PA)を採用している。
表面には撥水性を高めるハイドロフォビックコーティングと、傷を防ぐアンチスクラッチ処理が施されている。
特筆すべきは、シマノの技術説明が常に「ユーザーが何を見るか(路面)」という視点から語られている点である。競合他社が光の波長制御といった技術論を前面に出すのに対し、シマノは「アスファルト」「グラベル」といった具体的な使用シーンを起点に技術の利点を説明する。
これは、サイクリストが直面する現実の課題解決を最優先する、シマノならではのユーザー中心的な開発哲学の表れと言えるだろう。
スペック総覧:数値で見るEQUINOX
これまで分析してきた技術的特徴を、客観的な数値と共に一覧表に集約する。これにより、EQUINOXの製品プロファイルを一目で把握することができる。
項目 | 仕様 |
---|---|
モデル名 | EQUINOX (ECEEQNX5) |
フレーム素材 | Rilsan® Clear G850 Rnew® バイオベースポリアミド |
レンズ素材 | ポリアミド (PA) |
公称重量 | 25.2 g |
実測重量 | 26 g / 27 g |
レンズオプション | RIDESCAPE RD, GR, OR / フォトクロミックグレー |
スペアレンズ | クリアレンズ(RIDESCAPEモデルに付属) |
フレームカラー | マットブラック, マットホワイト, スモーキーピンク, ティール, トランスパレントグレー等 |
価格(税込) | 13,200円 (RIDESCAPE) / 15,400円 (フォトクロミック) |
主な特徴 | ハーフリムフレーム, カットアウトテンプル, UV400完全保護 |
付属品 | アイウェア本体, スペアレンズ(該当モデルのみ), rPET製ソフトポーチ |
インプレッション – 実走での真価
技術仕様や数値データは製品のポテンシャルを示すが、その真価は実際の使用環境、すなわち路上でこそ問われる。インプレッショでは、技術的な知見を踏まえつつ、EQUINOXを装着してペダルを漕いだ際の感覚、視界、そしてバイクとの一体感を、より臨場感のある形で解説する。
装着感とフィット:サイクリストとの一体化
EQUINOXを手に取ると、まずその軽さに驚かされる。実測で26gという重量は、顔に乗せるとほとんど意識できないレベルでだ。
しかし、その軽さとは裏腹に、フレームには確かな剛性感があり、厚みのある一眼レンズと相まって、安価な製品にありがちな頼りなさは皆無だ。むしろ、品質の高さが伝わってくる。
装着すると、そのフィット感の良さが際立つ。
柔らかく滑りにくいTPE製のテンプルチップと、リバーシブル構造のノーズパッドが、顔の形状に合わせて優しく、しかし確実にアイウェアを保持する。荒れた路面を走行しても、アイウェアがずれたり跳ねたりすることなく、顔の一部であるかのように安定している。
これは、長時間のライドにおいて、集中力を維持する上で極めて重要な要素である。
特にリバーシブルノーズパッドは秀逸な機能だ。前後を入れ替えることでレンズと顔の距離を微調整でき、鼻の高さや好みに応じて最適なフィット感を得られる。
これにより、通気性を重視するか、より広いカバー範囲を求めるかといった、ライダー個々の要求に柔軟に対応できる。数時間にわたるライドでも圧迫感や不快感はなく、まさに「装着していることを忘れる」という、優れたギアが持つべき理想的な特性を備えている。
視界の質:RIDESCAPEが描く世界
EQUINOXを通して見る世界は、裸眼とは明らかに異なる。
ここではRIDESCAPE RD(ロード)レンズを例に、その視覚体験を記述する。まず印象的なのは、その圧倒的な透明度と歪みのなさだ。大きなシリンドリカルレンズの周辺部に至るまで、視界はクリアで、光学的な収差は感じられない。これは高速走行時に、正確な状況判断を行うための大前提となる。
RIDESCAPEの真骨頂は、コントラストの向上にある。アスファルト上では、路面のひび割れや補修跡、マンホールの蓋といった注意すべき対象が、背景からくっきりと浮かび上がって見える。
これにより、ライダーはより早く危険を察知し、余裕を持って回避行動をとることができる。これは単なる快適性の向上ではなく、安全性に直結する重要な機能である。
明るい日差しの下からトンネルや木陰に入るといった、急な光量変化への対応も良好だった。VLT 21%のRDレンズは、極端に暗い環境でなければ、視界を失うことなく走行を継続できる。
もちろん、光量変化が激しいルートではフォトクロミックレンズに分があるが、標準レンズでも十分な汎用性を持つ。夜間や悪天候時には、付属のクリアレンズに交換することで対応可能であり、レンズ交換も容易なため、一つのパッケージで多様な状況をカバーできる。
ヘルメットとの調和と空力性能の考察
現代のサイクリングにおいて、アイウェアはヘルメットとのシステムとして評価されるべきだ。
EQUINOXは、この点においても優れた設計がなされている。短く、薄く、そしてわずかにオフセットされたテンプルアームは、テストした複数の最新ヘルメットのリテンションシステムの下にスムーズに収まり、干渉や不快な圧迫感を生じさせなかった。
EQUINOXのデザインには、空力性能を意識した特徴が随所に見られる。大きく顔を覆うラップアラウンド形状の一眼レンズは、二眼レンズに比べて空気の流れをスムーズに後方へ導く。ヘルメットとの隙間を最小限に抑えるフィット感も、不要な乱流の発生を抑制する上で有利に働く。
これらの設計は、定量的な数値がなくとも、ライダーの全体的なエアロダイナミクスにプラスに寄与すると推察できる。
市場におけるEQUINOXの位置付け
EQUINOXの真の価値を測るには、製品単体の評価だけでは不十分だ。ここでは、競争が激化するパフォーマンスアイウェア市場の文脈の中にEQUINOXを置き、主要な競合製品と比較分析することで、その独自のポジションを探った。
レンズテクノロジー三国志:RIDESCAPE vs. Prizm vs. HiPER
現代の高性能レンズは、単に光を減衰させるだけではない。特定の視覚情報を強調するために、光を積極的にコントロールする。この分野では、主要ブランドがそれぞれ独自の哲学に基づいた技術を競い合っている。
- シマノ RIDESCAPE: 「路面特化型チューニング」というアプローチをとる。ライダーが「何を見ているか」(アスファルト、グラベル、トレイル)という問いに直接答える、極めて実用的な思想である。
- オークリー Prizm: 「色彩特化型フィルタリング」を特徴とする。特定の環境で重要となる色を強調し、視覚の妨げとなる「ノイズ」的な光を抑制する。これは「ここではどの色が重要か」という問いに答える技術だ。
- 100% HiPER: 「色彩重複領域の除去」という独自の手法を用いる。人間の目が赤、緑、青を認識する際に生じる重複領域をフィルタリングすることで、歪みをなくし、より鮮やかな色彩と高いコントラストを実現するとうたう。これは「目への信号をいかにクリーンにするか」という問いへの解答である。
また、カールツァイス社と共同開発されたPOCのClarityレンズも、天候条件(晴れ、曇りなど)に合わせた高度なティントでコントラストを高める技術として注目される。各社のアプローチは異なるが、いずれもライダーの視覚体験を向上させるという共通の目標を、異なる技術的経路で追求している。
主要競合モデルとの比較
市場でEQUINOXと直接競合するのは、スタイルとテクノロジーの両面で市場をリードするオークリーのSutroや100%のHypercraftといったモデルである。これらの製品とEQUINOXを比較することで、その価値提案がより明確になる。
項目 | シマノ EQUINOX | オークリー Sutro Lite | 100% Hypercraft |
---|---|---|---|
価格(参考) | 約13,200円 | 約24,000円 | 約25,000円 |
重量 | 26 g (実測) | 32 g | 23 g |
フレーム素材 | バイオベースポリアミド (Rilsan®) | O Matter™ (独自開発樹脂) | TR90 (ポリアミド) |
レンズ技術 | RIDESCAPE | Prizm | HiPER |
持続可能性 | 高 (45%バイオベース) | 低 (石油由来) | 低 (石油由来) |
付属品 | スペアクリアレンズ, ソフトポーチ | ハードケース, ソフトポーチ | スペアクリアレンズ, ハードケース, ソフトポーチ |
この比較から、EQUINOXの強力な価値提案が浮かび上がる。競合と同等以上のレンズ技術と先進的なサステナブル素材を採用しながら、価格は大幅に抑えられている。重量も十分に競争力があり、唯一の明確なトレードオフはハードケースが付属しない点である。
サステナビリティという新たな価値基準
EQUINOXが採用するRilsan® Clear G850 Rnew®は、単なる一機能ではなく、2025年の市場における重要な戦略的差別化要因である。サイクリング業界では、環境に配慮した素材や製造プロセスを重視する傾向が強まっており、消費者の意識も高まっている。
この先進的なバイオベースポリマーを提供するアルケマ社は、ツール・ド・フランスの公式パートナーを務めるなど、スポーツ分野における高性能素材のリーディングカンパニーだ。Rudy Projectのような高級ブランドもRilsan®をフラッグシップモデルに採用しているが、その価格はEQUINOXの2倍以上にもなる。
シマノは、その巨大な生産規模と製造ノウハウを活かし、この高性能なサステナブル素材をより多くのサイクリストが手に取れる価格帯で提供している。
これは、最先端技術の「民主化」に他ならない。シマノは、持続可能性という新しい価値基準において、単なる追随者ではなく、市場の普及を牽引するリーダーとしての役割を果たしているのだ。
メリットとデメリット
これまでの分析を基に、シマノEQUINOXの長所と短所を明確に整理する。これは、購入を検討する読者にとって、客観的な判断材料となるだろう。
メリット
- コストパフォーマンス: フラッグシップ級のレンズ技術と先進的なバイオポリマーフレームを、ミドルレンジの価格帯で提供している。
- 先進的な持続可能性: 45%バイオベースのRilsan®フレームは、この価格帯における環境配慮性能の新たな基準を確立している。
- 実用的なレンズ性能: RIDESCAPEテクノロジーは、特定の路面に合わせた明確で直感的な利点を提供し、ユーザーにとって非常に分かりやすい。
- 軽量性と快適なフィット感: 26gという軽量性に加え、調整可能なノーズパッドや考え抜かれたテンプル設計により、長時間の快適性を実現している。
- 高い汎用性: スペアのクリアレンズが付属するため、日中のライドから夜間走行まで、一つのパッケージで幅広く対応できる。
デメリット
- ハードケースの欠如: 多くの競合製品では標準装備となっている、保護用のジッパー付きハードケースが付属しない点は、最大の欠点と言える。
- 限定的なブランド威信: コンポーネント市場の巨人である一方、アイウェア分野ではオークリーや100%のようなファッション的なブランド威光はまだ確立されていない。
- デザインの主観性: 機能性に裏打ちされているものの、「Zシェイプ」のテンプルやレンズ側面の拡張といったユニークなデザインは、一部のライダーにとっては好みが分かれる可能性がある。
まとめ:EQUINOXが示す未来
シマノEQUINOX (ECEEQNX5)は、単なる新作サングラスではない。
それは、実用的な革新、堅牢な品質、そしてユーザー中心の設計という、シマノの核心的な哲学を体現した、緻密な工学製品である。このアイウェアは、サイクリストが直面する現実の課題に真摯に向き合った結果、生み出されたものである。
EQUINOXの真の革新性は、三つの重要な要素の統合にある。すなわち、高性能な光学技術(RIDESCAPE)、先進的な持続可能素材(Rilsan®)、そして多くの人が享受できる価格設定である。これは、最先端の技術や素材は高価でなければならないという、これまでの市場の常識に対する力強い挑戦に他ならない。
結論として、シマノEQUINOXは2025年の市場における強力な競争相手であるだけでなく、業界の未来を示すベンチマークとなる製品だ。
それは、パフォーマンス、サステナビリティ、そしてバリューが、もはや互いに排他的な要素ではなく、一つの魅力的なパッケージとして統合され得ることを証明している。このアイウェアは、専門知識を持つライダーが自身の機材に何を期待すべきか、その基準を新たな高みへと引き上げたのである。
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