悪しき「くるくるスピン」は滅びろ。高負荷こそ回転するBIKONE BB インプレッション

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BIKONE、知らないメーカーだ。

しかし、UCIワールドツアーランキング1位のチームであるUAEチーム・エミレーツと、そのエースであるタデイ・ポガチャルが、彼らのColnagoV4Rsに採用しているボトムブラケットがBIKONEなのだ。

この事実は、単なるスポンサーシップを超えた採用の実例として極めて重要である。グランツールで1秒を争う環境下では、コンポーネントのわずかなパワーロスも許容されない。

特にBBのような、一般の認知度が必ずしも高くないコンポーネントが、CeramicSpeedのようなビッグネームを抑えて採用される場合、チームのテクニカルスタッフによる厳密なベンチマークテストと、それに基づく純粋な性能マージンを追求した結果である場合が多い。

2018年にスペインで設立されたBIKONE(ビコン)は、一見すると新興のブティックブランドのように映る。しかし、その実態は、設立50年以上の歴史を持ち、19カ国に拠点を置く大手産業・自動車用ベアリングメーカー「Fersa Group」の自転車部門である。

Fersa Groupは、大型トラック、風力タービン、鉄道車両といった、極めて高負荷かつ高信頼性・低摩擦が要求される分野のベアリングソリューションを主力としている。

BIKONE製品で最も重要な点は、それが単なる自転車部品の延長線上にあるのではなく、「自動車・産業分野からの高度な技術移転」の産物であるという点にある。今回のインプレッションは、BIKONEのBBを実際に導入し、その性能と超高精度の技術に迫った。

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悪しき「くるくるスピン」は滅びろ

BIKONEは、自転車界に蔓延する悪しきプロモーションに真っ向から対決する姿勢を取っている。「ベアリングに負荷がかかっていない状態で、何を回そうというのか」と言わんばかりの開発と設計姿勢は、自動車・産業分野からの確かな経験によるものだ。

自動車・産業分野からの技術移転

BIKONEは新興ブランドいえど、ベースは産業ベアリングの巨人「Fersa Group」である。

Fersa Groupは、例えば大型トラックのホイールハブにおいて「最大50%の摩擦低減」と「最大7.30%の燃費向上」を謳う”FuelEfficient”技術(低摩擦技術)を開発・実証している。

この技術は、単なる材料(セラミック)の変更ではなく、マイクロジオメトリ(微細な形状)の最適化、高度なシール技術、潤滑技術の賜物である。

これらの超高負荷にさらされる対象(大型トラック、風力タービン)では、自転車業界でしばしばマーケティングに用いられる無負荷状態でのフリースピン性能(通称:くるくるスピン)は工学的に全く意味をなさず、無意味だ。

重要視されるのは、設計通りの「高負荷がかかった状態での摩擦低減」と「長期的な耐久性」である。

したがって、Fersa Groupの一部門であるBIKONEの設計思想は、自転車業界で伝統的に行われてきた「フリースピン競争」とは対極にある、「実走行負荷下での効率(パワーロス低減)」を最優先している。

「くるくるスピンで煙に巻いて、ベアリングメーカーとして恥ずかしくないのか」

BIKONEは、そう言いたいのだ。

この背景は、BIKONEが自社の上位モデル(PowerSet)について「フリースピンでスムーズさを評価する方法を変えた」「レースでの負荷がかかった状態でのベアリングの挙動を考慮して設計した」と明言していることと完全に一致する。

BIKONEの根底にある産業的背景こそが、他のブティック系、見せかけのくるくるスピン系BBブランドと一線を画す、工学的な信頼性と開発力の源泉となっている。

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BIKONEの技術

BIKONEのボトムブラケットが持つ競争力の源泉は、その独創的な設計思想と、それを具現化する素材科学、そして厳格な製造プロセスにある。ここでは、中核技術であるDCTechとPowerSetのメカニズムと、使用される素材の特性と製造背景の優位性をみていく。

BIKONEの技術ポートフォリオにおいて、DCTechとPowerSetは二つの柱をなす。DCTechがシステムの安定性と静粛性の基盤を築き、PowerSetはその上で究極の動力伝達効率を追求する。これらは相互補完的な関係にあり、BIKONEの性能哲学を体現している。

デュアルカップテック(DCTech)の構造と利点

DCTechは、左右のアルミニウム製カップが中央で連結される構造を持ち、アライメントと剛性の両立が目的だ。連結の精度は非常に高く、ブレやガタつきは一切ない。まるで、Wishboneのねじ込み式のような強固な接合感がある。

この設計は、フレームのボトムブラケットシェルに存在する僅かな製造公差や歪みに影響されることなく、左右のアルミカップがBBシェル内で結合し、「ソリッド・センター・ジョイント」を形成する。左右のベアリングの完璧な同心性(アライメント)を強制的に確保することにある。

DCTechの最大の機能は、ベアリングアライメントの自動調整機能である。左右のカップが中央で強固に結合することにより、フレームのBBシェルの左右のネジ切り面のわずかな平行度(アライメント)の誤差を吸収・補正する。

この「ソリッド・ジョイント」は、システム全体を一体化(ユニット化)させ、ベアリングカップがフレーム内で微動(フレッティング)することを防ぎ、異音の発生源を物理的に排除する。

軸方向(Axial)シールを含む徹底した「FullySealed」設計により、水や塵埃の侵入を阻止し、耐久性を高めている。アルミ製のキャップを外すと、特殊な出すとカバーがベアリングを守っていることがわかる。今まで見たことが無いシール構造だ。

DCTechは、スレッドBBにおいてしばしば見過ごされる「アライメント」の問題に正面から取り組み、高剛性と静粛性、耐久性を実現する、極めて堅実かつ合理的な工学ソリューションである。

この構造は、特にプレスフィットBBで頻発する「異音(creaking)」の根本原因を排除する直接的な解決策である。異音の多くは、フレームシェルの左右の穴の芯がずれることでベアリングに無理な力がかかり発生する。

DCTechは、フレーム精度への依存度を下げ、コンポーネント側でアライメントを保証することで、安定した性能と静粛性を実現する。

完璧なアライメントは、単に異音を防ぐだけではない。それはベアリングが設計通りの性能を発揮するための絶対的な前提条件である。摩擦抵抗の低減、均一な負荷分散、そしてベアリング寿命の最大化は、すべて正確なアライメントの上に成り立つ。

したがって、DCTechは異音という症状を抑えるだけでなく、BIKONEが提供する高性能ベアリングがそのポテンシャルを最大限に発揮するための基盤技術として機能している。

PowerSetテクノロジー:複合荷重下の最適化

PowerSetは、BIKONEのフラッグシップ技術であり、UAEチームが採用する技術的優位性の核心である。これはDCTechの筐体設計の利点に加え、ベアリングの作動原理そのものに踏み込んだものである。

PowerSetテクノロジーは、UAEチームエミレーツとの共同開発で生まれた。これは「最大20%のパワーロス削減」という目標を掲げている。その核心は、モノブロック設計、アンギュラーコンタクトベアリング(ACB)の採用、そして最適化されたプリロードシステムの三位一体にある。

モノブロック(ユニボディ)設計は、DCTechの概念をさらに推し進めたものである。ハウジングの平行性と同心性を保証し、システム全体の剛性を極限まで高める。これにより、ペダリング時に発生するBB周りのたわみを抑制し、ライダーの力を無駄なく推進力に変換する。

PowerSetは、標準的なラジアルベアリング(深溝玉軸受)ではなく、「アンギュラーコンタクト・ベアリング(ACB)」を意図的に採用している。ACBは半径方向(ラジアル)と軸方向(アキシャル)の両方の複合荷重を同時に受け止められるよう設計されている

ペダリング時には踏力(ラジアル荷重)とクランクの横方向へのしなり(アキシャル荷重)が同時に発生するため、ACBは理論上、自転車のBBに最適なベアリングタイプと言える。

このシステムは、「標準的なカートリッジベアリングでは(負荷時に)下側のボールのみが全荷重を支える」のに対し、「全てのボールが均等に荷重を支える」仕組みだ。

ACBの性能を最大限に引き出すには、適切な予圧(プリロード)が不可欠である。PowerSetのプリロードシステムは、全てのボールが常にレース(軌道輪)に接触する状態を作り出す。これにより荷重をより広い面積に分散させ、ベアリングの剛性向上、微小な遊びの排除、摩耗の低減、そして摩擦の削減を実現する。

「20%のパワーロス削減」という主張は、単一の要素ではなく、これら複合的なシステム工学の成果と解釈すべきである。独立機関のテストでは、BB全体の摩擦損失は平均0.77W程度と非常に小さい。

BIKONEの主張は、この微小な摩擦係数の話ではない。

「高負荷がかかった状態でのシステム全体の剛性維持」によるパワー伝達効率の改善を指していると考えられる。ACBとプリロードによる剛性向上がクランクシャフトのたわみを抑制し、結果としてライダーのパワーがより直接的に駆動力に変換されるのである。

ラジアルベアリングの限界

自転車部品で最も一般的なラジアルベアリングは、その名の通り、主としてラジアル荷重(半径方向の力)を受け止めるよう設計されている。しかし前述の通り、BBにはペダリングによるアキシャル荷重(軸方向の力)が常時加わる。

ラジアルベアリングがこの「複合荷重」を受けると、荷重はベアリング内のごく一部のボール(3~4個)に集中する。この応力集中が、摩擦の増大とベアリングの早期摩耗の主因となる。

ACBの採用理由

ACBは、ラジアル荷重とアキシャル荷重の「複合荷重」を同時に受け止めるために設計されたベアリングである。ベアリングのレース(軌道)が意図的に非対称になっており、荷重が特定の「接触角」で伝達される。これにより、アキシャル荷重を効率的に処理できる。

PowerSetの優位性:ACBの「システム最適化」

BIKONEの革新性は、単に「ACBを採用した」ことではない(WheelsManufacturingなど他社も行っている)。Fersa Groupの産業知見に基づき、「自転車のペダリングという特異な複合荷重に対し、ACBの性能を100%引き出すための専用システム(筐体設計とプリロード管理)を構築した」点にある。

「くるくるスピン」なんぞは、無意味なプロモーションであるとわかっているのだ。

ACBは高性能だが、その性能は「適切なプリロード(予圧)」がかかって初めて発揮される、非常に繊細なコンポーネントである。プリロードが弱すぎればガタが発生し、強すぎれば摩擦が急増してベアリングが早期に破損する。

BIKONEのPowerSetの「Unibody」アルミシェルと「特許システム」は、ベアリング(ACB)とハウジングを不可分の一体ユニットとして設計・製造している。

これにより、ライダーやメカニックの技量に依存せず、クランク取り付け時に自動的に最適なプリロードと荷重経路が設定され、BIKONEが主張する「全ボールへの均等な荷重分散」が実現される。

この「システム最適化」こそが、ラジアルベアリング(CeramicSpeed等)や、単にACBを汎用カップに圧入しただけの他社製品に対する絶対的な構造的優位性である。

この設計思想は、「無負荷のフリースピン」ではむしろ”抵抗が大きく感じられる”可能性があるが、数百ワットの「実走行負荷」がかかった瞬間に、応力が全ボールに分散され、摩擦損失が劇的に低下する。

あなたは、無負荷でのくるくるスピン、それとも高負荷での負荷分散による摩擦低減、どちらが良いだろうか。

素材と製造プロセスの優位性

優れた設計思想も、それを支える素材と製造技術がなければ意味をなさない。BIKONEは、航空宇宙グレードのアルミニウム合金と精密な熱処理、そして世界トップクラスの製造基準を組み合わせることで、その設計を現実の性能へと昇華させている。

航空宇宙グレード合金:6061と7075アルミニウム

BIKONEはBBカップの素材として、主に7075アルミニウム合金を使用している。7075合金は亜鉛を、6061合金はマグネシウムとシリコンを主成分とする。T6熱処理を施した状態(T6質別)で比較すると、7075-T6は6061-T6に対して機械的特性で圧倒的に優れる。

BBカップはベアリングを保持し、フレームとクランクからの強大な応力を受け止める構造部品である。そのため、7075-T6が持つ高い強度と硬度は、変形を防ぎ、ベアリングのアライメントを長期にわたって維持するために極めて重要となる。

BIKONEが、加工が難しく高価な7075-T6を敢えて選択していることは、コストよりも性能と耐久性を優先する明確な設計思想の表れである。

6061-T6 vs 7075-T6 アルミニウム合金の機械特性比較
特性 6061-T6 7075-T6 特性
降伏強度 (MPa) 276 503 約1.8倍の強度。高負荷時のカップ変形を防ぎ、ベアリング性能を維持する。
硬度 95 150 約1.6倍の硬度。ベアリングシートの摩耗を防ぎ、長期的な精度を保つ。
被削性 良い 普通 7075は加工が難しいが、BIKONEは性能のために敢えて採用している。
耐食性 良い 普通 適切な表面処理(アルマイト)により、実用上の問題は解消される。
コスト 低い 高い 性能を最優先するハイエンド製品としての位置づけを反映している。

T6熱処理による性能最大化

BIKONEは使用するアルミニウム合金にT6熱処理を施している。T6熱処理は、溶体化処理と時効硬化の2段階プロセスからなる。このプロセスにより、合金元素が金属組織内に微細に析出し、素材の強度と硬度を飛躍的に向上させる。

例えば6061合金の場合、T6処理によって降伏強度は約5倍に増加する。この処理は、BBカップがペダリングの負荷によって変形するのを防ぎ、ベアリングシートの精度を維持するために不可欠である。

品質の礎:Fersaグループの製造基準

BIKONEの品質を理解する上で最も重要な点は、同社が50年以上の歴史を持つヨーロッパの大手ベアリングメーカー、Fersaグループの一部であるという事実である。Fersaグループは、自動車産業のOEM(相手先ブランドによる生産)やTier1サプライヤーとして、極めて厳格な品質基準の下で製品を製造している。

その製造プロセスにはインダストリー4.0の概念が導入されている。IoT、AI、デジタルツインを活用したリアルタイムの品質管理、全数検査、完全なトレーサビリティが実現されている。これにより、欠陥率の大幅な削減と高い生産効率を達成している。

この背景は、BIKONE製品の寸法精度、公差管理、そして製品ごとの品質の均一性が、一般的なサイクリングブランドのレベルを凌駕している可能性が高いことを示唆する。

これは、サイクリング業界の基準ではなく、より厳格な自動車産業のOEM基準に基づいているからである。この製造基盤こそが、DCTechやPowerSetといった精密な設計の性能を保証する上で決定的に重要な要素となっている。

純粋なベアリング性能を

ボトムブラケットの性能を語る上で、ベアリングそのものの議論は避けられない。BIKONEはスチールとセラミックの選択肢を提供するが、その選択がもたらす真の意味を、BIKONEが提供する科学的データと耐久性の観点から探る。

スチール vs. ハイブリッドセラミック

BIKONEは、ABEC-5等級のスチールベアリングと、グレード3の窒化ケイ素(Si_3N_4)セラミックボールを使用したハイブリッドセラミックベアリングの2種類を提供している。

セラミックボールはスチールよりも硬く、真球度が高く、軽量であるため、”理論上”は摩擦抵抗が低く、耐食性に優れる。

しかし、独立した摩擦テストによれば、BB全体の摩擦損失において、ベアリング素材の違いによるワット削減効果は非常に小さい(0.1W未満)ことが示されている。摩擦損失の大部分は、ベアリングの「シール」と使用される「潤滑剤」によって決まるためである。

ハイブリッドセラミックベアリングには耐久性に関する議論も存在する。非常に硬いセラミックボールが、相対的に柔らかいスチール製のレースを摩耗させ、かえって寿命を縮める可能性があるという指摘がある。

これに対し、BIKONEの強みは、Fersaグループの背景を持つ高品質なベアリングを、完璧なアライメントとプリロードを保証するシステムに組み込める点にある。

この完璧なシステム下では、セラミックベアリングの僅かな利点(特に高負荷・高回転時の安定性)が最大限に引き出され、同時に早期摩耗のリスクも低減される。

したがって、BIKONEのセラミックオプションは、「セラミックだから低摩擦」という単純な話ではない。「BIKONEのシステムだからこそ、セラミックの真価が発揮される」という、より高度なエンジニアリングの文脈で理解すべきである。

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BIKONEインプレッション

BIKONEの技術的な優位性が、実際にどのような体験価値をもたらすのか。

ここでは、実際にバイクにBIKONEを搭載しテストを行った。また、UAEなどプロレースでの実績を基に、BIKONEボトムブラケットの実用的な性能を評価し、市場における競合製品との比較を通じてその独自性を明らかにしていく。

とにかく、作りが良い

BIKONE製品は「作りの良さ」と「競合プレミアムブランドに対する価格競争力」が一貫して評価できる。特に、DCTech構造に由来する静粛性と回転のスムーズさは、BIKONEのボトムブラケットでしか感じられない重要なポイントだ。

左右から中央のスリーブを押し込んでいく、一切の誤差が無く全く動かなくなる。今まで手にしてきたBBの中で最も優れており、精度の高さは圧倒的である。ベアリングをユーザー自身が交換できる点も好意的に受け止めている。

これは、長期的なメンテナンスコストを抑え、製品寿命を延ばす上で大きな利点となる。特に、プレスフィットフレームの解決困難な異音に悩むユーザーにとって、BIKONEはHambiniやWheels Manufacturingと並ぶ有効な解決策になる。

これらのユーザー体験は、前半で分析した技術的特徴と見事に一致する。DCTechによるアライメント確保が異音をなくし、滑らかな回転感に繋がり、Fersaグループの製造品質が「作りの良さ」という評価に結びついているのである。

最高の権威付けは、ポガチャル選手のColnago Y1Rsに「BIKONE Ceramic DCTech」が搭載されているという事実である。プロのメカニックは、グランツールのような過酷な環境下で、信頼性、メンテナンス性、そして僅かな性能向上を求めてコンポーネントを選択する。

BIKONEの採用は、これらの厳しい基準をクリアしていることを明確に示している。

競合製品との比較分析

BIKONEの市場での立ち位置を明確にするため、主要な競合製品と比較する。CeramicSpeedはセラミックベアリングの代名詞であり、プロモーションと実績で市場をリードする。しかし、価格が非常に高く、定期的なメンテナンスが性能維持に不可欠である。

BIKONEは、産業用ベアリング製造の背景を持つ信頼性と、より競争力のある価格設定で差別化を図っている。

一方、Chris Kingは自社製造の高品質なスチールベアリング、伝説的な耐久性、そして美しい仕上げで知られる。これは「一生モノ」としての価値を提供するクラフトマンシップの製品である。

BIKONEは、これとは異なる、より工業的でシステム工学的なアプローチで高性能と信頼性を追求している点で対照的である。

これらの比較から、BIKONEは独自のポジションを築いていることがわかる。それは、ブティック系ハイエンドブランドと大手量産ブランドの間に位置する、「産業技術系プレミアムブランド」とでも言うべき立ち位置である。

自動車産業レベルの品質管理とR&Dをサイクリング製品に適用し、同時にDCTechやPowerSetといった革新的な専用技術を開発することで、大手量産ブランドとも一線を画している。この「産業技術の応用」と「サイクリング特化の革新」の組み合わせが、BIKONEの独自の競争優位性を生み出している。

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メリットとデメリットの総括

これまでの技術分析とユーザーレビューを統合し、BIKONEボトムブラケットのメリットとデメリットを客観的に評価する。

メリット

  • 静粛性と回転性能: DCTechによる完璧なベアリングアライメントが、特にプレスフィットBBの異音を根本的に解決し、非常にスムーズなペダリングを実現する。
  • パワー伝達効率: 特にPowerSetモデルでは、アンギュラーコンタクトベアリングと最適化されたプリロードシステムがシステム全体の剛性を高め、パワーロスを最小限に抑える。
  • 製造品質と信頼性: 自動車産業OEM基準を持つFersaグループの製造背景が、高い寸法精度と製品ごとの品質の均一性を保証し、長期的な信頼性につながる。
  • 高品質な素材選定: 強度と硬度に優れる7075-T6アルミニウム合金とT6熱処理の採用により、長期的な耐久性と性能維持が期待できる。
  • プロツアーでの実績: 世界最強チームであるUAEチームエミレーツによる採用が、極限状況下での性能と信頼性を客観的に証明している。

デメリット

  • 価格: Shimanoなどの純正品や多くのサードパーティ製品と比較して高価であり、導入には相応の投資が必要となる。
  • セラミックベアリングのコストパフォーマンス: 科学的データに基づくと、セラミックベアリングによるワット削減効果は限定的である。その高価格を正当化できるかは、コンマ秒を争う競技者など、使用目的に大きく依存する。
  • スペーサーキャップの素材: クランクとのインターフェースとなるスペーサーキャップがデルリン等の樹脂ではなくアルミニウム合金製である。長期的な摩耗の観点から議論の余地がある。
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まとめ:あなたのバイクにBIKONEは必要か

BIKONEのボトムブラケットは、単なる高性能パーツではない。異音やパワーロスといったサイクリストが直面する根本的な問題を、システム工学的なアプローチで解決しようとする製品である。

その核心には、産業用ベアリング製造で培われたFersaグループの技術力と品質管理があり、DCTechやPowerSetといった革新的な設計思想を堅牢に支えている。

この製品が特に推奨されるのは、まずプレスフィットBBの解決不能な異音に長年悩まされている方、高負荷での低摩擦を求めるサイクリストである。

次に、コンマ1秒を争う競技者や、パワー伝達のダイレクト感を最大化したいパフォーマンス志向のライダーにも最適である。

そして、コンポーネントの技術的背景や製造品質に価値を見出し、信頼性の高い製品に投資したいエンジニアマインドを持つユーザーにも強く推奨できる。

あなたのペダリングから異音とパワーロスを追放したいのであれば、BIKONEは検討すべき最有力候補の一つである。特に、フレームの精度に左右されない安定した性能を求めるなら、DCTechテクノロジーは決定的な解決策となりうるだろう。

UAEチーム・エミレーツおよびタデイ・ポガチャルによる採用は、この設計思想が世界最高峰のレベルにおいて、机上の空論ではなく、測定可能かつ実用的なアドバンテージをもたらすことを強力に実証している。

BIKONEは、自動車・産業界の厳格な工学的手法を自転車界に持ち込んだ、真のエンジニアリング・ブランドであると言える。子供だましのフリースピンで喜ばせるようなブランドとは一線を画した、真の工学的なボトムブラケットがここにある。

負荷がかかった状態で最高の回転を求める方には、BIKONEのBBだ。

BIKONEのBBはAmazonで国内正規品が購入が可能だ。スチールベアリングは1.1万円、

セラミック仕様でも3.5万円

UAE限定仕様でも3.9万円と現実的な価格である。

その他の規格は以下のリンクを参照してほしい。

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