ブリヂストン アンカー RP9 インプレッション 前編

4.5
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ことばを選ばずにいえば、BRIDGESTONE(ANCHOR)のバイクがこれほどまで騒がれ注目を集めたことは、いままで無かったのではないか。

新型のBRIDGESTONE RP9は性能、価格、完成車のパーツ構成と、どの切り口でも海外ブランドに見劣りしなかった。それどころか、完成車に付属しているパーツ構成と価格を考慮すると、太刀打ちできるメーカーは少数といえる。

直販の海外メーカーと同様、それ以上のバリューをBRIDGESTONEはユーザーに提示してきた。

様々なブランドのバイクを見てきたうえであえて辛辣なことを書くと、BRIDGESTONEが提示した完成車の価格設定は失敗だと思った。もう少し高い価格設定でもユーザーは買い求めたはずだ。

しかし、逆に捉えてみると「安い国ニッポン」のデフレに慣れたユーザーにとってみれば、良心的な価格設定だと思ったかもしれない。それゆえ、すぐにでもRP9を手に入れたいと思ったサイクリストが多かったようだ。

初回分は予約段階で売り切れ、抽選販売にまでなった。次回の入手は2022年だという。

わたし自身、これまでBRIDGESTONEのバイクを買うに至ったことは1度もなかった。埼玉県上尾の社内工場で生み出さていたラグフレームのANCHOR RMZをオーダーしようと候補に入れた程度だ。

「国産メーカー」の「国産工場」でカーボンフレームを製造するという、今では考えられないようなフレームをANCHORは製造していた。ANCHORでほしいと思ったフレームはそれぐらいだ。それでも優先度としては5~6番程度だった。

TEAM BRIDGESTONE ANCHORが全日本選手権ロードで勝利してもANCHORのフレームをほしいとは思わなかった。しかし、新たにBRIDGESTONEがリリースしたエアロロードRP9は違っていた。

RP9の価格とアッセンブルを見た時点で、「確実にいつか値上げされる、買うならいましかない」。いつの間にか、人生初のBRIDGESTONEのフレームを買うことを決めていた。

RP9はVENGEやTARMAC SL7にも見劣りしなかった。トレンドのフォルムやドロップシートステイを備えていた。小出しにもったいぶって公開されたプロモーションでは、風洞実験でおなじみの「40kmのTTで◯◯秒短縮」など、米国ブランドさながらのコピーがずらりと並んだ。

極めつけはプロモーション動画の最後に、「競輪の補助金で開発が行われました」という、日本の競輪マネーで生み出された過去に例を見ないフレームに、やられてしまった。

販売市場を日本国内に絞ってか、フレームのサイズ展開は4種類と少ない。しかし、女性が乗る小さなサイズでもジオメトリがとても美しいのはBRIDGESTONEならではだ。特筆すべきは、限界まで詰めたヘッドチューブ長を備えながらも、適切なトレイル量が確保されていた。

この設計の巧みさは、さすがBRIDGESTONEとしか言いようがない。

今回の記事は、BRIDGESTONE RP9を実際に購入し細部にせまった。実際に手に取って触れながら、構造面、細部の作り込みなどをくまなく調査した。実際のフレーム重量、各部品重量、ボトムブラケットは何を選んだのか、同梱されている小物など細かい部分まで紹介していく。

また、BRIDGESTONEのRP9を買う層は必ずしもレーサーや選手ではないため、記事内で紹介するRP9は非常に基本的な内容かつ、なぜその形状や構造を採用したのかといった平易な言葉でまとめた。

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動画で解説


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特徴的な舟型ボトムブラケット

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RP9で最も特徴的なのは、BB周りの舟形形状だ。水を切り裂きながら進む舟の先端のような形をしている。空気や水も流体であるため、抵抗の傾向は両者ともよく似ている。フレーム全体の空力性能を最適化していくと、空気抵抗が小さくなるような形状になるのだろう。

RP9のBBは横方向にめいいっぱい張り出したプレスフィット86(PF86)を採用している。PF86はシマノが開発したBB規格であるため、BRIDGESTONEが採用したことは何ら疑問ではない。とはいえ、メンテナンス性に優れたスレッド式(T47)を採用してほしかった、というのが本音だ。

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BB周りを舟形にする設計は、BRIDGESTONEのRP9だけではない。CANYONのAEROAD CFRや、CUBEのLITENINGがそっくりな(いやRP9”が”そっくりな)形状をしている。

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AEROADやLIGHTNINGがそうであるように、BB86を使用するために必要なBB幅と高さを確保しつつ、UCI規定の範囲で薄くしたダウンチューブがつながっている。すると、この独特なBBまわりの形状になる。CANYON AEROAD CFRも同じくBB86を採用しているため、空力性能を求めていくと同じような形状になってしまうのだろう。

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BBまわりに限らず、空力性能を高めるためには前方投影面積を減らすだけでは十分ではない。空気の流れをいかにスムーズに車体後方に流せるかも重要だ。

RP9のダウンチューブとシートチューブが繋がる部分は、それ自体がティアドロップ形状だ。非常によく考えられており、ダウンチューブ下部からシートチューブに空気が流れる際、空気の流れを曲げることなくリアホイールまで受け流せる構造であることがわかる。

EMONDA、TARMAC SL7、VENGEのシートチューブ(BB付近)と比較してみても、RP9の舟形の作りは横方向に広がっていない。その分、空気の流れをねじ曲げる必要がないため、空気の流れがスムーズであることも見てわかる。

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エアロロードの代名詞になったVENGE DISCのBB周りと比較してみる。直球で言うなら、RP9はVENGEのBB周りについた無駄な贅肉を削ぎ落とした感じだ。

当初、「RP9はVENGEとよく似ている」と言われていた。しかし、RP9を手に取り組まなく見ていくと、VENGEではなくCANYON AEROAD CFRと全体的によく似たフレーム形状だということがよくわかる。

ドロップシートステイとシートチューブのつなぎ目の形状も、CANYON AEROAD CFRと瓜二つだ。AEROADもおなじくBB86を採用したフレームであるため、空力性能を突き詰めていくと、またもや似たような形状になったのだろう。

SWISS SIDEとBRIDGESTONEが同じような「舟形形状」にたどり着いたのは偶然なのだろうか。それともBB86という条件の縛りの中で、空力性能を最適化した結果、両者ともにたどり着いた形状なのか。

BB86で空力性能を高めた結果、行き着く先はRP9やAEROAD CFRの舟型形状なのかもしれない。

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BB86は「残念」か

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BB86が残念、ということは誰しも思ったはずだ。しかし、ブリヂストンが求めたBBまわりの剛性はBB86を用いてボリュームを確保せねばなし得なかったようだ。事実として、JIS(BSA)式の場合はBBカップが外に張り出す分、BBまわりのフレームの作りは一回りサイズダウンするため、幅を確保できないというデメリットがある。

BB86かBSAを選択するということはメンテナンス性を優先するか、それとも剛性を優先するかのトレードオフの関係にある。ブリヂストンはBBまわりの剛性確保を優先した。ドライブトレイン側はパワーメーターのセンサーをつけることを考慮してギリギリまで細められた。対してノンドライブサイドはできるだけボリュームを確保した。

これまでネジ切り信者だったのだが、最近では考え方が変わってきている。というのも、横幅を最大限広げられるBB86に使うBBに面白い製品が出てきた。

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このBB86用のBBは、削り出しのモノコック構造の「1本の筒」だ。ネジ山はおろか分離すらしない。左側に出っ張りがあり、右側にはBBに入るだけの最低限の経で削られている。この1本の筒を片側から圧入する。圧入していくと出っ張りで止まる仕組みだ。ある種、ネジ切りの更に上を行く完全剛体のBBだ。

ベアリングはNTNが標準搭載されている。「音鳴り」という概念自体がそもそもなくなる「1本の筒」なのだ。BB86の幅広設計と、BB86の横幅をめいいっぱい使った一本の筒はさらに剛性を高め、嫌な音鳴りを解消してくれる。

とはいえ、「T47で良いのでは」という疑問には全くそのとおりだと思う。幅も確保でき、スレッド式でメンテナンス性も高く音鳴りもしにくい。圧入式の行き着く先は一本の筒を入れることかもしれないが、T47には到底及ばないだろう。

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アシンメトリックチェーンステイ

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フレームの設計はBBまわりを基準とし、フレームを構成するそれぞれの部位を1つ1つ煮詰めていく設計が行われるという。名作TIME ZXRSのBBまわりもそうであったように、BBを起点としてすべてが始まっていく。

BBが起点になってしまう理由は、BBの規格寸法だけは守らねばならず、フレーム開発において切り離せない制限になってしまうからだ。そのうえでさらにUCIのレギューレーションを遵守していく必要がある。

それゆえ、BBから4方向(ダウンチューブ、シートシートチューブ、右チェーンステー、左チェーンステー)に伸びるフレームの各部位は、それぞれ独立して最適な構造を確立していく必要がある。

RP9のフレーム部位を見ていくと、クランクにパワーメーターのセンサーを搭載できる考慮がされている。マグネットの配置などフレームに搭載される他の機材との相性問題(クリアランス)も考慮する必要がある。

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そのためRP9ではドライブトレイン側のチェーンステーは細く、ノンドライブ側のチェーンステーは太く設計されていた。

リアホイールを外した状態にすると、左右非対称(アシンメトリック)チェーンステーがよくわかる。ワイドタイヤにも対応するように、ある程度のクリアランスを備えつつも、できるだけボリュームを稼ごうとした努力が垣間見れる。

チェーンステーの作り込みは、CANYON AEROAD CFRよりも華奢だ。それゆえAEROAD CFRは4iiiiのセンサーが取り付けられないが、RP9は4iiiiのパワーメーターも取付可能なクリアランスを確保している。

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うつくしいヘッドチューブ

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正面からRP9を見ると、前方投影面積をできるだけ小さくすることを意識して作られていることが良くわかる。特にヘッドチューブ周りの作り込みが洗練されていた。ヘッドチューブ自体の短さもさることながら、ヘッドキャップ(ダストカバー)の強烈な薄さは他社製品でもなかなかお目にかかれない。

RP9はトップチューブとヘッドキャップがツライチになるように、ヘッドチューブの長さを絶妙に調整している。SPECIALIZEDのエアロフライ2ハンドルも空力性能を高めるために、バーテープとハンドルに段差をつけた方式を彷彿とさせる。

RP9は、これまで見てきたヘッドチューブまわりの造形で最も美しく見える。

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ヘッドキャップは、空力性能を高めるためだけに薄いわけではない。ハンドルを限界まで下げられることも意味しており、攻撃的なポジションを取るために一役買ってくれる。同一サイズ帯のフレームで比較してみると、VENGEよりも15mm、SL7よりも13mm短い。

440サイズに至っては、ヘッドチューブ長はわずか89mmしかない。

同一サイズであればおよそ1cm以上もハンドルを下げられる。快適性を求めたポジションを取れないことはないが、RP9は純粋に速く走ることを想定したレースバイクということがヘッドチューブの設計1つ見てもよくわかる。

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ダウンチューブ

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ダウンチューブの形状は空力性能を高めるうえで最も重要な部分だ。フロントホイールで撹拌された空気が次に通過する部分であり、フレームを構成する部位の中で特に大きな面積を占めている。

風のヨー角が0°ならば、フロントホイールに隠れているダウンチューブの形状はそこまで気にすることはない。しかし、ヨー角が0°以上の風向きになるとダウンチューブの形状次第で空力性能は大きく変わってしまう。

これまでテストしてきたフレームの中で、最も縦方向に分厚いダウンチューブを備えていたのはCANYON AEROAD CFRだ。次にVENGE、次いでRP9だ。RP9はVENGEよりも横方向にやや短いダウンチューブという印象がある。

RP9のダウンチューブの形状は、お手本のようなカムテール形状だ。RP9のダウンチューブはエアロロードのトレンド(というよりも空力的なメリットのとおり)の設計である。

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ドロップシートステイ

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エアロロードと名乗るのならば、ドロップシートステイは欠かせない設計になった。見た目や乗り心地とのトレードオフになるが、シートステイを下部方向に下げることによってシートステイ自体を短くする。わずかながら、前方投影面積も減らすことができる。

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ドロップシートステイを採用しているバイクはどれも似たような印象を受ける。しかし、各社違いが分かれるのがシートステイとシートチューブが交わる部分だ。SPECIALIZEDのVENGEやSHIVの場合は、シートチューブからいったん横に張り出してからシートステイが伸びていく。

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ドロップシートステイは各社の設計思想が垣間見える部分である。WINSPACEの場合は、翼のような形状をしたシートステイが特徴的だ。RP9はCANYON AEROAD CFRと同じく直線的に伸びた無駄のないシートステイだ。

構造を最小限にすることでシートステイ自体の重量を減らせるばかりか、前方投影面積を減らすことができる。

RP9は「BRIDGESTONEのトラックバイクのノウハウを落とし込んだ」という触れ込みだったが、新型のTS9(短距離用)やTE9(長距離用)で採用された翼型のドロップシートステイは採用されていない。RP9のドロップシートステイはトラックモデルを完全に踏襲せず、独自にシートステイが設計されていた。

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シートチューブ

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シートチューブといえば、BRIDGESTONEお得意のタイヤに沿ったカウル形状だ。しかし、RP9ではその影を潜めている。新型のトラックバイクやTTバイクには、シートチューブのカウル形状が継続的に採用されている。

RP9のようなドロップシートステイを採用したバイクにカウル形状を採用しても、カウルの縦幅の量は必然的に小さくなってしまう。そればかりかフレーム重量が増してしまうため、空力効果とのバランスを考えても相性が良いとは言えない。

ドロップシートステイを優先し、空力を高めるアプローチはSPECIALIZED SHIVだ。カウルはおろか、ほそいシートチューブがほんのすこし残っているだけの構造だ。対して、カウル形状を優先させて空力を高めているのはcerveloのP5だ。

cerveloのP5はドロップシートステイではなく思い切って、シートステイを可能な限り上方向に持ってきている。TTバイクは設計思想が分かれるところではあるが、RP9の場合はわずかながらカウルの要素はほとんどなく、TARMAC SL7に近い形状だ。

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フォークとトレイル量

RP9のフォークも例にもれず、カムテール形状を採用している。作り込み自体は非常にシンプルで、無駄のないスッキリとした構造が特徴的だ。フォークレイク(オフセット)は以下の通りだ。

  • 440:48mm
  • 490:48mm
  • 510:45mm
  • 530:45mm

BRIDGESTONE(ANCHOR)のバイクは、小さなサイズでも美しいジオメトリを描くことで知られている。トレイル量を最適化するためのこだわりは、北米のブランドには真似のできない国産ブランドならではの(日本人ライダーのことを考えた)設計だ。

RP9のトレイル量は掲載されていないが、タイヤ外形(700x25C 672mm)における各サイズのトレイル量を算出した結果は以下の通り。

  • 440:59mm
  • 490:58mm
  • 510:59mm
  • 530:59mm

どのサイズも、美しい値を示している。タイヤ外形を23Cで考えると58mmや57mmのトレイル量を確保している。56サイズを基準とした海外メーカーの場合、小さなサイズはトレイル量が大きい傾向にある。

その点、日本市場しか意識していない(と、言ったら失礼かもしれないが)BRIDGESTONEのバイクはまさに、日本人が設計した、日本人ライダーのためのバイク、といっても過言ではない。フレームのジオメトリ設計1つみても、小さなサイズの設計に一切妥協がない。

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シートポスト

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シートポストもカムテール形状だ。しつこいようだが、RP9でカムテール形状が施されていない部分を見つけるほうが難しい。フレームのヘッドカバーやステムのコラムキャップ、コラムスペーサー全てがカムテール形状だ。

シートポストを背面から見ると、メモリが付いているため調整がしやすくなっている。もはや定番の形状と設計で、後ろから見るだけならVENGEやTARMAC SL7と見間違えるほどだ。

カムテール形状のシートポストは空力性能が高く、シートポストをセンタリングをする必要がないという調整面でのメリットもある。ただし、縦剛性が上がることがTOUR紙の実験で明らかになっている。そのため乗り心地は悪くなる。

対比としてTREKのEmondaは、昔ながらの丸シートポストであり乗り心地は優れているが、エアロ効果は期待できない。さらにサドルのセンタリング出しがシビアであるため、VENGEやSL7、AEROAD CFRと比べてみてもEmondaの作業性は悪いと言える。

これまでのBRIDGESTONEのフレームのように、シートポストを社外品に頼らずフレーム専用で設計したということは大きい。それだけ空力性能を高めることに対して、一切の妥協が許されなかったのだろう。

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インターナルルーティング

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RP9はDi2ケーブルや油圧ホースを全てフレーム内に内装する方式(インターナルルーティング)を採用している。ハンドルの前面にホース類が存在すると、それだけで空力性能が悪化してしまう。RP9はフロント、リア方面のホースは全てフォークコラム前面から引き込まれる仕組みだ。

ヘッドキャップに3つの穴が空いており、さらにその下には各種ホースを保持するためのアルミ製の専用部品が備え付けられている。ヘッドキャップとこの専用部品は、ちょうど噛み合うように重ね合わせにできる。そのため、ヘッドキャップと3つ穴の専用部分がずれる心配はない。

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導入口の穴は3つ空いているが、新型Di2の場合はブレーキホースで2つ使うだけでよい。フロントフォークへのインターナルルーティングの仕組みは、TARMAC SL7やEmondaといったフレームと同じく、フォークコラム途中に開いた穴から導入する仕組みだ。

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インターナルルーティングはメリットばかりなのかと思われがちだが、ホース類がダウンチューブ内で暴れてひどい音鳴りが生じる場合がある。そのためRP9は、インターナルルーティングで生じる音鳴り問題を解消するために、あらかじめホースを包み込む純正の緩衝材を同梱している。

フレームメーカーの中には、この緩衝材が同梱されていない場合が多々ありメカニックがモノタロウで類似品をわざわざ用意する必要があった。BRIDGESTONEの細かな気配りは見えないところにまで行き届いている。

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重量

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RP9の重量は1,360gだ。カタログ重量は未塗装であるため実測値は重くなる。440サイズの実測重量はフレームセットが916.5gでフォークが354.5g、シートポストが176.4gだ。実測の合計重量は1,447.4gだ。最近のバイクの中では軽いバイクとは言えない。

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しかし、RP9は軽量バイクのカテゴリではなく、オールラウンド寄りのエアロロードであるため妥当な重量といったところだろう。その他のRP9の主要部品の実測重量をひとつひとつ確認した。

  • フレーム(ボルト、リアハンガー込):916.5g
  • フォーク(カット前):354.5g
  • シートポスト(やぐら込):176.4g
  • ヘッドカバー:12.5g
  • ヘッドアルミカバー:8.0g
  • ヘッドベアリング上下:21.2 + 21.2 = 42.4g
  • スルーアクスル前:29.3g
  • スルーアクスル後(レバー込、取り外し可能):65.2g

カタログ重量の1360gとの差87.4gに関しては、フレームに必要なディレイラーハンガーやボルト類の重量が主だ。フロントとリアのディレイラーハンガー、ボトルケージのボルト、BB圧入用のアルミスリーブを抜くと、重量誤差は限りなくゼロに近づいていく。

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RP9はオールラウンド寄りのエアロロードとしては標準的なフレーム重量だ。競合他社のエアロロードと比べてみても、重量は良い勝負をしているといっていい。他社ブランドの主要モデルとの重量比較(一例)は以下の通りだ。

RP9のフレーム重量比較は以下の通り。

  • CANYON AEROAD CFR比:916 – 991 = -77g
  • VENGE比:916 – 960 = -46g
  • TARMAC SL7比:916 – 860 = +56g
  • EMONDA SLR比:916 – 780 = +136g

RP9のフォーク重量比較は以下の通り。

  • CANYON AEROAD CFR比:354 – 438 = -84g
  • VENGE比:354 – 385 = -31g
  • TARMAC SL7比:354 – 365 = -11g
  • EMONDA SLR比:354 – 354 = 0g

RP9のシートポスト重量比較は以下の通り。

  • CANYON AEROAD CFR比:176 – 176 = 0g
  • VENGE比:176 – 189 = -13g
  • TARMAC SL7比:175 – 189 = -13g
  • EMONDA SLR比:175 – 129 = +46g

言い方は悪いがRP9は、

(VENGE + TARMAC SL7)/2 = RP9

といった、きれいな立ち位置に見える。

重量面に関しては数値として現れるため、サイクリストが非常に気にする情報だ。エアロロードの場合は空力性能を引き出すために、横長になりフレームの表面積が大きくなる。そのため重量も増す。それでいて、フレームの剛性を確保する必要もあり重量増はエアロロードの宿命といえる。

その上でRP9の作り込みを見ると、当初はもう少し軽いバイクなのかと思っていた。しかし、剛性の確保のためか、フレーム自体のカーボンの積層は分厚く(押しても凹まない)フレーム自体が肉厚であることがすぐにわかった。

RP9に関しては重量面に関しては過度な期待はしないほうがいい。適度な重量で、VENGEよりも軽く、SL7よりも重い。絶妙な重量バランスだ。純粋な軽さでいえばTREK Emonda SLRには及ばない。

現代のロードバイクシーンでベンチマークとされているTARMAC SL7と合計重量で比較してみると、RP9は32g重い。重量差はわずかだ。TARMAC SL7で6.8kgの機材選定をすれば、RP9でも同様に6.8kg前後の完成車がビルドできることを意味している。

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ジオメトリ

ジオメトリに関してはBRIDGESTONE製なのでどのサイズを選んでも納得の行く設計だ。サイズ展開は4種類と非常に少ない。しかし、国内での販売が主であるため小柄な女性から、(日本人としては)やや身長が高い人までカバーできるサイズ展開といえる。

先程も示したとおり、海外のロードバイクフレームにありがちな、おかしなトレイル量の心配もない。小さいサイズにはトレイル量の人権が無いが、RP9にはサイズ別に正しいトレイル量が確保されている。

ジオメトリからロードバイクとしての機敏性やステアリングの良さが、はっきりと読み取ることができる。サイズ別の適正身長と股下サイズ(カッコ内)は以下の通り。

  • 440:155~168cm(69.8~75.7cm)
  • 490:165~175cm(74.4~78.9cm)
  • 510:170~185cm(76.7~83.5cm)
  • 530:178~188cm(80.3~84.9cm)

リーチは以下の通り。

  • 440:376cm
  • 490:384cm
  • 510:390cm
  • 530:394cm
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あえて440サイズを選んだ理由

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170cm前後の方は、フレームサイズを440か490で悩むと思う。

筆者の身長は169.5cmであるためサイズは440と490で悩んだ。どちらでもポジションが出せる。ただし、ステム長は変更する必要が出てくる。440の場合はステム100mmになるし、490mmの場合は90mmのステムを使用することになる。

SPECIALIZEDやTREKのサイズでいえば、440が49サイズ、490が52サイズ相当だ。それぞれのサイズを乗ってきたが、どちらかといえば小さいサイズの方を選択するほうがしっくりときた。

その理由は3つある。

  1. 股下が短い。
  2. idmatchでは440相当が適正。
  3. スタックが低いほうが空力面で優位

まず、身長は490が適正範囲であるものの単純にわたしは脚が短い。そのため、股下では440サイズが適正であった。またSL7やVENGEの52だとヘッドチューブが長く、ベタ底ステムでもまだ下げられる余裕があった。

また、先日行ったidmatchの計測でTREKの49(50)サイズで100mステムを使用する結果が得られた。以上の3つの理由から440が適当とした。ジオメトリは非常に難しく、答えは1つではない。しかし、以下の「間違った方向性」だけは思考から排除している。

  • 小さいサイズはフレームの形がかっこ悪いから、ワンサイズ大きくした。
  • 長いステムを使いたいから、ワンサイズ小さくした。
  • ◯◯選手のサイズと同じサイズにした。

ほんらい、唯一無二の自分自身の体にフレームを合わせることが最も優先度が高い。しかし、見た目や、かっこよさ(長いステム、不格好な小サイズ)を優先してしまっては本末転倒だ。490サイズが最もバランスが取れた見た目であることは間違いないのだが・・・。

事実としてRP9は、440サイズよりも490サイズのほうがフレームとして美しく見える。できれば490サイズを選択したかったが、バイクとして体に合わせることが本来の選択基準だ。機材として体になじませる事を考えると、idmach上も、これまで乗ったバイクも、総合的に考え440が最適と判断した。

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RP9はエアロロードなのかオールラウンドなのか

RP9が発表された際、「エアロロード」なのかそれとも「オールラウンド」なのかという疑問が湧いた。ぱっと見は、トレンドのエアロダイナミクスに優れつつも重量面を考慮したいいとこ取りのバイクという印象だ。

つまるところ、一台で何でもこなすことを考えた「空力性能が高められたオールラウンドバイク」だ。方向性はTARMAC SL7やDogma Fと一緒だ。それでいて、トラックバイクで培ったダイナミクスと高い剛性を備えたバランスの良いバイク設計がなされている。

それゆえ、純粋なエアロロードであるVENGEやAEROAD CFRよりは空力性能は劣るだろう。RP9は見ての通り過度なエアロ設計は施されてはない。ただ、TARMAC SL7ほどダウンチューブが丸いわけでもない。

RP9が「エアロロード」なのか、それとも「オールラウンドバイク」なのか。という2択の問いに対しては、「どちらとも言い難い。」というのが現段階での答えだ。ギリギリまでエアロロードに寄せたオールラウンドバイクがRP9、と表現するのが適切だと考えている。

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VENGEではなくAEROAD CFRに近い

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製品を開発する際、他社製品を参考にすることは多々ある。もちろん唯一無二のバイクとしてRP9を開発したはずである。しかし、RP9の登場が噂されてからというもの「RP9はVENGEによく似ている」といった声を何度も聞いた。

ブラックベースで、ホワイトのロゴを切り抜いたバイクは”見た目は”VENGEだ。ドロップシートステイはどのバイクでも似たりよったりなバイクの印象を与える。ただ、実際に細部を細かく見ていくと大枠はVENGE(というより昨今のエアロロード)に見えるものの、細部はAEROAD CFRとよく似ていた。

ドロップシートステイの簡素さや、BBまわりの造形はVENGEとはまた違う。シートチューブがストンとBBまで落ちた造形は、やはりAEROAD CFRとよく似ている。そして、BBまわりやドロップシートステイの付け根はAEROAD CFRと見分けがつかない。

「RP9はスリムなAEROAD CFRだ」と言うと、どちらのブランドに対しても失礼かもしれないが。RP9は空力性能を改善するために、数多くの形状を試したという。限られたUCIのレギューレーションの中で空力性能を突き詰めていった結果、両者が似たような形状や構造になってもなんら不思議な話ではない。

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設計は1世代古い?

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RP9はUCIレギュレーション緩和”前”の設計だ。AEROAD CFRやTARMAC SL7もしかりである。最近になって、徐々に注目されてきているのはUCIの新レギュレーション(設計の縛りがゆるい)に合わせたエアロロードだ。

緩和後の新レギューレーションでは、チューブの厚さをいままで以上に減らすことができ、かつチューブの深さも増やすことが可能になった。これまでの制限がなくなり、空力性能をより向上できること示唆している。

ホイール開発でも同じく、空気がリムから剥がれるタイミング(剥離抵抗)をできるだけ後方にすることで空力性能を高めることができる。フレームも同じく、できるだけ薄くマンボウのような形にしスムーズな空気の流れを作り出すことで空力性能を高めることができる。

そのため、レギュレーション緩和後の基準で設計されたエアロロードは、空力性能が異常に高い。これまで世界最速であったCannondaleのSYSTEMSINXやAEROAD CFRよりも優れたエアロダイナミクス性能を備えていることが明らかになっている。

Simplon、RIBBLE、STORCKといったこれまで目立ただなかったブランドのバイクは、いち早く緩和後レギュレーションを取り入れ設計を行った。その結果、大手ブランドの主力エアロロードの性能を大幅に上まわり、優れたエアロダイナミクス性能を手に”入れてしまった”。

今後、「エアロロード」と呼ばれるバイクは「UCIレギュレーション緩和後の世界最速」を目指し開発が行われることは必死だ。

VENGE DISC発表から長らく沈黙し続けるSPECIALIZED、新型Madoneの発表が待たれるTREK、世界最速から転落したCANYONと、開発力と資金力があるビッグブランドはまちがいなく新レギュレーションのエアロロードを投入していくるだろう。

RP9は「現段階」では、非常にバランスの取れたバイクである。とはいえ、純粋なエアロロードではなく、世界最速を目指したわけではない。しかし、リリースの時期が新旧のUCIレギュレーションが入り交じる時期であったため、RP9は「旧レギュレーションの設計」と言わざるを得ない。

それゆえ、RP9を純粋な「エアロロード」として位置づけせず、エアロロードバイクとして”空力だけ”の勝負をあえて行わなかったのは、BRIDGESTONEの英断だったのかもしれない。

世界最速のエアロロードか!? SIMPLON PRIDE II 新UCI規定を採用
1年ほど前、UCIのフレームデザインのレギュレーション緩和された。緩和されたUCIの新規定は、フレームを今よりもより薄くできるデザインや、より表面積を増やしたりするデザインが可能になると期待されていた。 オーストラリアのブランドSIMPLONは、UCIの新レギュレーションに沿ったエアロバイクPRIDE IIを発表した。緩和されたUCIレギュレーションを利用し、SIMPLONは「PRIDE I...
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製造国は日本ではなく、Made in …

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RP9はフレームもフォークも中国製だ。はっきりと「Made in China」の赤い刻印がある。開発と研究は日本人が日本で行ったことは揺るがない事実だ。あとは、製造コストや量産体制、ノウハウなどは中国の工場に頼ったのだろう。

いまや、ロードバイクのカーボンフレームで台湾や中国以外で製造されたモデルを見つけるほうが珍しくなった。世界中のカーボンフレームの技術がこの2拠点に集中していると言ってもいい。

玉石混交、アリエクスプレスに売っているような粗悪品からハイエンドカーボンフレームまでほとんどがアジアで作られている。中国製といえど、RP9の最終的な検品は日本で行われており、もちろん日本人の名前が記載された品質管理の証明書が同梱されていた。

バイクの品質に関しては中国製であるものの、BRIDGESTONEの製品であるため全く心配していない。とはいえ、量産前のプロトタイプは国内で製造されたというから、プレミアムモデルとして数台国内製造のRP9がリリースされても面白いかもしれない。

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前半のまとめ

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いま、BRIDGESTONEのRP9は国内のユーザーから異常なまでの注目を集めている。別の見方をすると、注目を集めているのはカタログスペック、パーツ構成、見た目といった「イメージ画像」「文字」「数値」といった情報の範囲内だ。

しかし、紙の上やWEBの上だけでは測れないものは数多くある。バイクは実際に走らせてこそ見えてくるものもある。「出てきた情報の範囲で注目されているRP9」に実際に乗り、走らせても思い描いている期待どおりの結果なのか。その続きは次回の記事でお伝えする予定だ。

CYCLE SPORTS (サイクルスポーツ) 2022年 2月号 [雑誌]
CYCLE SPORTS編集部(著)
八重洲出版 (2021-12-20T00:00:00.000Z)
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