惜しまれるという言葉

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村上メカニック

最近スーパーで目にする野菜を作った生産者の写真。「新潟県の小林さんが作った魚沼産コシヒカリ」というフレーズはよく目につく。人がそれらの情報に何を求めているのだろうか。恐らく「安心」ではないだろうか。

自転車は彼に見てもらっていた。無理難題を言ってきたのは承知のうえだが、おおよそ期待以上の仕事をしてくれていたように思う。手先が器用で難しいこともやってくれていた。その辺が買われていたのだろう。

惜しまれる、という言葉がある。心残りに思ったり残念がったりする言葉だ。ただ、もうひとつ別の意味がある。大切に思ったり、尊重したりする意味だ。今感じている事はどちらなのだろうか。人生、生きて行く上で他人の決断に対し人によってベクトルの向きが大きく異なるようにみえる。

例えば、「自分のメカを見てくれる人がいなくなるので残念」という、自分主体のベクトル。これは、自分から出ているベクトルだ。対して、ここまで「培ってきた技術力がもったない」という人の立場になり発生したベクトル。2通りがある。

2人で飲んだ時に、「重要な話をした時の反応で、大きく2通りの人間がいる。面白いから観察してみたら」と話していたことを思い出す。誰がどうだったのかは知らない。ただ、人間観察していると瞬間的に驚いた時に、素というか根本のところが無意識に出る。

それが本心というやつだ。私はどちらだったのだろうか。

どちらがいいのかは、甲乙付け難い。これは発言した本人の受け止め方であろう。どちらかが良くて、どちらかが悪いというわけではない。

「惜しまれる」という言葉は、その二つをうまく表している。前者は残念、後者は大切に思う事だろうか。ここまで来る話は単純ではないが、今まで自分の思ったオーダーを文句垂れながら組み上げてくれたことに感謝している。

正直無機質な言い方をすると、客と店員の関係だ。お金を渡して仕事をする。対価としてお金を支払う。それ以上でも、それ以下でもない無機質なやりとりだ。彼は組織に属して私の自転車を組み立てている。私は趣味で自転車を楽しんでいる。いわば私からすると本業とは全く違う世界の息抜きの遊びだ。ところが彼は仕事。根本的に大本が違う。

ただ、自分がレースで下りを転んだら死ぬかもしれないスピードで「安心して突っ込める」自転車を組むことを託した。これは、街乗りで少し近くのパン屋へぶらり、とは話が違う。

ほとんどの実業団メンバーが指名で彼に頼んでいたのはどんな理由だったんだろう。多分、機材に対する想いとか大事さか、いや多分人それぞれでチューニングが違っていた。「お前は俺のくせわかるやろ!」と某氏が言っていたことを思い出す。

そこだな。みんなが求めていたことは。

本人も言っていたが、有る程度機械いじりが好きなら「自転車は誰でも組むことができる」と言っていた。だからこそレースで使う側は怖い。有る一定上のモノが出来上がってしまうからだ。

神経質な正確も災いしてか相当細かいセッティングをお願いしていた。SMPのサドルは前上がり0.5°、ブレーキとドロップの間はフルブレーキした時に10mm程隙間があくクリアランスでとか。

ハンドルのネオモルフェは上と下でハンドル幅が違うのだが、下の方のハンドルと水平になるようにブラケットを調整するとか。言わなくてもほとんどやってのけていた。ただ、誰でもできる程度のレベルを彼は求めていなかったのだろう。

今回彼が別の仕事をやることに対して、知らない人が相当いた。まぁ、何も言わず去るのもいいだろう。ただ、原発でも不祥事でもなんでもそうだが、後になって「実はこうでした、すみません」という流れを人はすごく嫌う。痛みを伴うのはなんでも先がいい。後回しにすればするほど、自体がややこしくなり話が厄介になる。

そんな事を気にしながら、今日餞別を渡しに行った。ふと私が持ってた手荷物の中に、私が買った自転車をメンテナンスする本を彼が偶然見つけた。「自分でやるんですか」と言われたけど、まぁ、彼にメカを見て貰うまで機材が好きなので全ての自転車は自分で組んでいた。

まぁ昔に戻るだけだ。

うちに置いてある、プロメカニック用のスタンドは最近は無用の長物だったけど、引っ張り出さないとだな。ドライバーとHEXはPBスイスにしよう。今は何と無く自分でやりたい。まぁ、その方が不慮のトラブルにも対応できるから。

まぁ、今はお疲れさんとしか言えないが、また走ろう。

たまに朝練こいよ。

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