「他社より6倍失敗例ある」レイノルズのカーボンクリンチャー開発者

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2015年にポストした記事です。

カーボンクリンチャーはいまだ発展途上なのか。それとも、既に完成の域に達しているのだろうか。カーボンクリンチャーについて、いろいろと調査したこと、そして1000km以上使ってみて感じた、率直な感想を記そうと思う。

何か特定の製品や機材の感想ではない。「カーボンクリンチャー」を取り巻く機材のネガティブな側面と、使うまでわからなかった利点を記していきたい。

カーボンクリンチャーに対する我々のイメージといえば、「重そう」「壊れそう」「アルミより不安」ではないか。多くはネガティブなイメージである。ところが私自身使って思うことは、カーボンクリンチャーはわりと使えるかもしれない、ということだ。

最近ではアルミクリンチャー(KSYRIUM 125)よりも出番が多い。雨天でもカーボンクリンチャーだ。ただ、ブレーキパッドの選定は様々なものを試した。雨の日を見計らいワザワザ外に出向いてブレーキシューを幾つかテストした。結局一番効いたパッドを今使っている。

カーボンクリンチャーは、未だ発展途上ではあるが非常にメリットも多い。そして、自由度が高い機材機材だ。しかし構造上(クリンチャー)のいくつかの問題を抱えており、実際に破損事例も多い。

今回はレイノルズの技術情報と破損情報を交えながら、どのホイールが良いのか、どこのブレーキシューが良いのか、そしてカーボンクリンチャーは本当にレースで使えるのか記していく。

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LEW RACINGとレイノルズ

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レイノルズ技術革新ディレクターのポール・ルー(Paul Lew)氏が、カーボンクリンチャーについてこう語っている。「レイノルズは他社(lightweigt)よりも6倍もの失敗データーを蓄積している」と。カーボンクリンチャーはカーボンチューブラーと構造が異なる。

すこしでも「カーボンホイール」ついて調べたことのあるサイクリストなら、このポール・ルー氏の”Lew”で何かピンと来たかもしれない。あのPRO VT1という前後で880gの軽量カーボンホイールを生み出した「Lew Racing」の創業者である。

今はレイノルズの技術革新ディレクターに就きレイノルズのホイールの開発に携わっている。

LEW RACINGは、非常に高い技術力(カーボンとボロンを使ったリム)を持っていたが、不況の煽りで会社は傾いた。その時ポール・ルー氏は傾いたLEW Racingの再建を断念し、リムの特許を持ってReynoldsに雇用されることになる。

LEW RACINGは一時期シマノへカーボンリムを供給していた。シマノは卓越した金属加工技術を有しているが、カーボンリムとまでは行かず、LEW RACINGからリムを供給してもらっている。当時のシマノのチューブラーリム(LEW Racing製)は300gを切っていたという。

現在もその繋がりで、シマノのカーボンリムはレイノルズ製というのは周知の事実(私もショップで教えてもらった)である。シマノが選択するリムという所に、どこか安心感を感じる。シマノはリムをレイノルズ、スポークがサピム、ハブはシマノといった構成のホイールだ。

結局「シマノホイール」と一言で言っても、得意な「ハブ」以外は「信用のおける」社外品なのである。話は戻り、カーボンクリンチャーの話しである。

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カーボンクリンチャーは壊れやすいのか

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現在はカーボンの製造と加工技術が進み、カーボンクリンチャーと言えど壊れることはまずない。これから記載することは、改良が繰り返されている現行商品の場合は、当てはまらない場合がある。カーボンクリンチャーの初期製品において、多く見られた事例等を振り返り、壊れやす”かった”原因を振り返ってみる。

チューブラーリムの場合は、リムとタイヤの間に接着剤を用いて双方を「固定」する。かたやカーボンクリンチャーの場合は、タイヤのビード部分をリムの引っ掛け部分(リムフック)に「固定」する。固定力は内圧を高めるほどにリムフックを押しあげ固定されていく。

ただ、この力は固定力に影響するが、空気圧を上げていくとこの「引っ掛け部分」をタイヤが食い破ろうとする。

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上記の写真は、実際に試験的に食い破られたレイノルズのリム(RZR 45万)だ。以下の実験では、タイヤの空気圧を350PSIまで上げている。およそ24BARの空気圧(通常は7~8bar程)である。この事例では、リムサイドをタイヤが膨張することにより食い破っていることがわかる。

チューブラーの場合は、リムの上に乗っかっているタイヤの空気圧を上げたとしても負荷はそれほどかからない。リムへの負荷はタイヤが膨張することによるハブ中心側への力だけだ。従って、カーボンクリンチャーのように、ある特定の箇所に負荷がかかることはない。

これらが、カーボン素材のチューブラーリムで空気圧を上げてもリムの安全性を確保できる一つの理由といえる。チューブラータイヤは空気圧を上げやすいというのも、リム構造上の話と、チューブラータイヤの空気圧が均等にかかる特徴に有る。

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過度なブレーキングによる破損例

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カーボンクリンチャーの第一世代(レイノルズによれば1998年~2009頃)と呼ばれるリムで発生していた問題は、ブレーキ時の摩擦による温度上昇だ。例えばヒルクライムの下山時に「下山用ホイール」に変える人もいまだにいる。何を気にしているのかというと、長時間のブレーキングによるリムの破損だ。

カーボンクリンチャーで発生していた破損の大半は、過度な加熱によるリムの融解(溶ける)と、柔らかくなったリムフックをタイヤの内圧がある限界に達した時破壊してしまう。この2点が、カーボンクリンチャーが出始めた時に実際に発生していた問題事象だ(Reynolds: Paul Lew) 。

簡素な構造であるチューブラーリムでも、初期のZIPP等やEDGE(現ENVE)はリムが溶けるという話も昔はあった。現在では昔話だが、カーボンクリンチャーのような複雑な構造(リムフック、チューブのスペース)であれば余計に負担がかかる場所が多い。

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カーボンクリンチャーのデメリット

ここでカーボンクリンチャーのデメリットを考えてみたい。カーボンクリンチャーは構造上、リム重量が重くなることと、アルミよりもブレーキングが劣る場合がある。リム重量はカーボンチューブラーよりも重い場合が多い。同じリムハイトで重量勝負をしたらどうしても負けてしまう。

また、好んでクリンチャーを使うならば近年の軽量アルミ(Ksyrium 125)という選択肢もある。リムハイトも25mmとローハイトリムとミディアムはいとの間くらいだ。実のところ、カーボンクリンチャーはローハイト程、剛性を確保しなければならず、ややリム重量が重くなる。

また雨の日のブレーキングもアルミクリンチャーのほうが秀でている。ここまでネガティブな意見を書いてきたが、ではどのような条件の場合、カーボンクリンチャーにメリットがあるのか。

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カーボンクリンチャーのメリット

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色々使ってみたが、カーボンクリンチャーを選択する場合、私は次のような条件であればカーボンクリンチャーを勧めている。リムハイト30mm以上、リム重量430g以下、ブレーキが良く効く。この3つだ。実の所この条件を満たしているホイールは、非常に少ない。

レイノルズのアタックと、RovalのCLX50、Lightweightのクリンチャーだ。実際ブレーキングに関してはBORA AC3のできが良い。

ちなみにCLX60はリム重量が重く使いたくないので除外した。CLX60を使うならアルミクリンチャーのほうがマシである。あのリムはいくらかおもすぎる。

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まとめ:カーボンクリンチャーを常用するために

以前「今こそカーボンクリンチャーの闇の部分について語ろう」でも書いたがカーボンクリンチャーを常用するためには、いくつかの条件をクリアしさえすれば私は使っても良いと思う。過去に問題視されていた破損の問題は最近のリムに関しては問題ないようだ。特にレイノルズのブレーキ面に関しては、温度が上がりにくく、効きも良い。

あとは、アルミリムにもチューブラーリムにも負けないアドバンテージが欲しい。それはリム重量に左右されるが条件が良いリムも出てきた。今であれば、RovalのCLX50とBORA AC3やMAVICコスミックUSTだ。

あとはレースで使ってみてどうなのかが重要だと思う。

あとはブレーキシューの選定には気を使いたい。私は5種類試して、Campagnolo BR-BO500Xにした。理由は雨天でも効くから。マビックのエグザリット2ブレーキをカーボンクリンチャーで使うと雨天は最悪だ。あれはやめておいたほうが良い。

カーボンクリンチャーにこれから求めるのは、「ディープ」で「軽いリム」のホイールとしての役割だ。このように未だ最適解が無いカーボンクリンチャーは、機材が好きなサイクリストにとって絶好の好物になるだろう。

一度、食わず嫌いにならず練習からレースまで使える万能ホイールとしてカーボンクリンチャーを試してみて欲しい。私がカーボンクリンチャーにどれぐらい本気かというと、カーボンチューブラーを全部売り払ってしまった位なのだ。次回はその話を書こうと思う。

本記事は2015年に投稿した記事です。

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