KSYRIUM SLRをインプレしてわかった剛性

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私は今まで様々なホイールを使ってきた。のむラボホイールや、好きなのはシマノのホイールだ。今回比較対象として、幾種類使い悩み考えた。そして完組ローハイト中特に剛性が高いキシリウムSLRに乗り換える決心をした。

購入の一番の理由は、ドイツのインプレッション雑誌”Tour”でホイール剛性を数値化したデータを知ったからだ。そこで、MAVICの横剛性の高さや、構造の素晴らしさを知り、KSYRIM SLR WTSを選択した。

私が購入までに調べ、悩み、考えたその過程を記す。

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ネットに蔓延る『一枚軽い』ホイールとは

私は半年ホイールを探していた。しかし、検索で見つかるインプレッションはこうだ。『一枚ギアが軽い』だとか『巡行が上がった』といったありきたりな情報しかない。余談だが、WH-9000でも、Ksyriumでも、Racing Zeroの三大巨塔において確認できる事例は『一枚軽い』だ。

残念なことだが、人は無意識のうちに『相対評価』をする。

『何かと比べて』一枚軽いのだ。それは、ホイールの性能を表していない。多くの記事が下位グレードから最上位ホイールに履き替えた結果『一枚軽い』という記事を書く。批判ではなく客観的に見て、評価するための至極当然の事実である。

機材の絶対評価

ウエブ上でホイールを数値データーで示した結果は皆無だ。そこで見つけたのがドイツの基幹雑誌TOUR 2011年4月号だ。自転車好きなら知ってる本雑誌。私は高額なものを買う時に必ず読む。エアロダイナミクスに特化した、フレームを選ぶ際も参考にした。

本誌で調べ特に空力特性と、剛性が高いデータで示されていたのがSCOTT FOILだ。昨年購入したFOILの理由はそこにある。TOUR Magazineはフレームやホイールの剛性、エアロダイナミクスを数値で示す。

どうしても人間がインプレッションをすると”あいまい”になる。なぜなら、人間があいまいな生き物で、絶対的な指針がない。だから自身の経験から相対評価をする。

人間が数値で表せないインプレッションを、本誌は測定機材を用い科学的なアプローチでインプレッションを行う。重量以外の剛性やエアロダイナミクスを、数値化し表す数少ない雑誌だ。また余計なことを書きましたが、そろそろ本題入ります。

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ホイール剛性を数値化する

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photo credit: Roman Schmitz via photopin cc

以下に、ある条件下におけるMAVICの製品横剛性一覧を引用表記する。

  • Mavic Cosmic Elite:65 /51 N/mm
  • Mavic Ksyrium Elite:53 / 50 N/m
  • Mavic Ksyrium SR:51 /58 N/mm

TOUR MAGAZINE 4/2011

http://www.tour-magazin.de/services/qtr/epaper_4_2011/page88.html#/94

上記データーからわかることは、KSYRIUMは非常に高い横剛性を有していることがわかる(Mavic自体が高剛性傾向)。ほかにも上記URLをクリックすると、いろいろなホイールの横剛性値がオープンアクセスで見られる。

見ていただくとわかることは、他のホイールよりも剛性が高いことだ。

しかし、上記データーを参照するとKSYRIUM SLRの値がない。ほかのサイトを探してみたが、KSYRIUM SLRの横剛性値はない。ではどうしたのかというと、調べてKSYRIUM SLRが高剛性である裏付けをまとめることにした。

自分の納得こそが購入の決断になる。自分自身を納得させないとどうも購入することはできない。

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キシリウムの情報を得る

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探すとのむさんのページが出てくる。

某メーカーのキシリウムK10のオーバーホールをしました

参考: のむラボ日記

キシリウムの情報や組み方はのむさんのブログが日本で一番詳しい。リムはK10だが、組み方の話などは海外のサイトに書かれていない。スポークテンション左右差の是正についての話は参考になった。

キシリウムシリーズのDS側の組み方はモデルによって異なる。何故モデルによって組み方が異なるのか。私は調査するまで理解できなかった。そこでスポークテンションの左右差是正の話だ。

  • Mavic Ksyrium Elite リア横剛性:50 N/m
  • Mavic Ksyrium SR リア横剛性:58 N/mm

ホイールの剛性は、

  • リム
  • スポーク
  • ハブ
  • 組み方

を総合した結果生まれる。Mavicの場合はあるパターンによって組み方が変化する。

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MAVICの主力ホイールの組み方まとめ

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MAVICのクリンチャーモデルにおけるリアの組み方をまとめる。以下の通りハイプロはすべて組み方が”同一”だ。しかし、ロープロはある境目を持って明確に組み方が分かれている。

MAVICクリンチャー組み方一覧

ハイプロ(リムの高さが高い)

  • COSMIC CXR 60 C: RIM60MM、DSタンジェント、NDSラジアル
  • COSMIC CARBON 40C: RIM40mm、DSタンジェント、NDSラジアル
  • COSMIC SLE: RIM52mm、DSタンジェント、NDSラジアル
  • COSMIC SLS: RIM52mm、DSタンジェント、NDSラジアル
  • COSMIC ELITE S: RIM30mm、DSタンジェント、NDSラジアル

ロープロ(リムの高さが低い)

  • R-SYS SLR: DSタンジェント、NDSラジアル
  • R-SYS: DSタンジェント、NDSラジアル
  • KSYRIUM SLR: DSタンジェント、NDSラジアル
  • KSYRIUM SR: DSタンジェント、NDSラジアル
  • KSYRIUM SLS: DSラジアル、NDSタンジェント
  • KSYRIUM ELITE S: DSラジアル、NDSタンジェント
  • AKSIUM S: DSラジアル、NDSタンジェント

という分類になる。

剛性は組み方とリムハイトそして、

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先ほどの剛性実測値を改めて確認し、組み方と突き合わせる。

  • Mavic Cosmic Elite:51 N/mm: DSタンジェント、NDSラジアル
  • Mavic Ksyrium Elite:50 N/m: DSラジアル、NDSタンジェント
  • Mavic Ksyrium SR:58 N/mm: DSタンジェント、NDSラジアル

ここからわかることを3点あげる。

  1. ハイプロはDSがタンジェント組である
  2. ロープロのノーマルスポークはDSがラジアルである
  3. ロープロのトラコンプ仕様はDSがタンジェントである

上記の事実より剛性に関する考察をする。MAVICのホイールは左右テンションの是正のために組み方を変えていると、のむさんのブログで確認した。では上記3パターンで組み方と実測値が異なっているのでその理由について場合分けをして考える。

High-DS-タンジェント(気になる度:★★★)

リムは高い、その分だけスポーク全長が短くなる。したがって、長いものよりもトータルの剛性は高くなる。左右の是正を考えてDSをタンジェントにした。と、書きたいところだ。

しかし、コスミックシリーズはカーボンのフードをかぶせている”だけ”の構造なので実際のリムハイトはロープロと大差ない。ただ、ハブの構造がロープロの、それと異なる。したがって、追加考察としたい。C40などはエクスターナルだが。

Low-DS-ラジアル(気になる度:★★★)

リムは低い、その分だけスポーク全長が長くなる。したがって、長いものよりはトータルの剛性は低くなる。左右の是正を考えてDSをラジアルにした。

Low-トラコンプ-DS-タンジェント(気になる度:★★★★★)

問題はこのパターン。なぜ、2と同じパターンなのにDSをタンジェントにしたのか。理由はトラコンプのカーボンスポークにあると考える。円柱のスポーク自体剛性が高いためDSもタンジェントにした、と結論づけた。

左右差の是正のために、NDS側は高い剛性なのでDS側をタンジェントにした。このように考える。とすればMAVICの組み方は左右の是正を基準にし、組み方を変えていると私は考えた。

したがって、Tour紙の剛性を確認するとSRの剛性が58N/mと抜きんでている。MAVICにおけるロープロファイルクリンチャーで一番剛性が高い構成は、トラコンプ仕様のDSタンジェントである。TOUR紙の数値データも同様の結果も頷ける。

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KSYRIUM SLRのリム

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先ほどのK10のリムはサイドが削られており、KSYRIUMというよりはR-SYSのリムに近い。細かなニップル穴の詳細部分は異なる。KSYRIUM SLRの場合素材はアルミリムだ。しかしその加工方法に違いがある。

EXALITH(エグザリット)加工とは

エグザリット加工とは、アルミリムに施す特殊処理技術を指す。処理方法はアルミリム自体を特殊な溶剤に漬け込む。溶剤に漬け込んだあとの化学反応により、耐摩耗性と強度の向上を生む。

表面の強度の向上 = リム剛性の向上と置き換えてよいかは私は存ぜぬ。しかしエグザリットの概念は逆転の発想だ。何が逆なのか、ブレーキはリムとブレーキシューの摩擦により制動する。この時、リムのブレーキ面をブレーキシューで”削り”制動する。

リムは摩耗し劣化する

ところが、エグザリットの基本概念は逆だ。ブレーキ面で、ブレーキシューを削る。そうすることで、リムの形状変化を抑え長らく使用することが可能だ。ということは”強度が高いリム”と置き換えられる。

エグザリット加工を施したKSYRIUM SLRのリムは未加工のリムよりも強度が高いと考えている。したがって、KSYRIUM SRよりも横剛性が高いホイールに仕上がる。ただ、一つ懸念点がある。

SRとSLRのDS側スポークの違い

KSYRIUM SRの場合はDS側のスポークが円柱だ。KSYRIUM SLRのDS側スポークはややきし麺状のスポークだ。円柱のほうが剛性が高いのは形状からわかる。円柱と平たい差がどれくらいあるのかが唯一の疑問だ。

それらを除いてもKSYRIUM SLRはSR並みの58N/mと同等かそれ以上の剛性があると考えている。したがって、SRでもいいかな?と揺れたが、”不確かな机上の期待”から価格\194,250円のホイールを購入したのだ。

私はとにかく横剛性が高いホイールがほしかった。ここまでが、KSYRIUM SLRに関する考察だ。

付属品やブレーキシュー減りなど

ネットに蔓延する取るに足らない話題だが、しっかり書いて行きます。
ブレーキシューについて

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当初気にしていたのはシューの減りだ。ヤスリで消しゴムを削る様。と称されるが実際はどうか。実走し結論付ける。エグザリット2のブレーキシューはあまり減らない。練習や走り方もあるが、ブレーキは下り以外あまりかけない。私の使い方もあるが、特段減る印象はない。

ブレーキ音
ブレーキ音はカーボンホイールに比べたら相当静かだ。特段気になることない。ただ音色が違う。「ピュー」となるが気にならない(個人差があります)。あとは、雨で制動力高いそうなのでぜひ雨のレースで使いたい。また、ブレーキシューのごみが出ないのはすごくいい。フレーム汚れない。

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・MAVICのクイックは最高だ。→しかし角度はどれくらいでしめるのがよいのか不明

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・意外とWTSのタイヤがよい。→これはまた別途レビューする。

まとめ:KSYRIUM SLRは気に入った(というより納得した)

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今回は、『一枚軽い』だとか、『巡行が上がった』だの抽象的な事を言わず、私が選ぶまでに考えたことをまとめた。ここで振り返る。いわば、剛性が高いホイールを求めた軌跡だ。

TOUR紙でMAVICの剛性を知り、MAVICホイールの組み方を考える。組み方で剛性が変わる事を知り、NDSトラコンプのDSタンジェント組みは高剛性ということを知る。そして、エグザリットは表面強度高い。ならばMAVICのロープロで一番剛性高いと判断した。

ここまでの内容に異論もある、当然だ。インプレは多種多様な表現の方法がある。私がMavic Ksyrium SLRについて一番言いたかったのは、『どのような考え、Ksyrium SLRの購入に至ったか』である。

性能は人それぞれ相対評価になると冒頭に書いた。ならば、私はKsyrium SLRについて調べたり、考えた内容をブログに載せる。それが、KSYRIUM SLRについて知りたい人の判断材料になればうれしい。そう考えている。

読むのも苦労する、しかし書くのも一苦労だ。長くなりましたが、KSYRIUM SLRのインプレとさせていただきます。

話はKSYRIUM SLR付属のマビックのイクシオンタイヤに続きます

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