最終戦の桂川の泥が付いたマシンがある。シルベストの林店長のシクロクロスバイクだ。シクロクロッサーにはお馴染みの林さんのマシンを今まで何回も見ていたのだが、以前はシクロクロスに興味がなく何ら目につかなかった。ただ、実際見せていただくとそのアッセンブルに驚いた。
シクロクロスのシリーズ戦後半で同じC2を走っていたのだが、やはり昔からシクロクロスをされているのでバイクコントロールやテクニック面で学ぶ点も多い。さらに機材交換が頻繁に行われるC1のピットには、いつも安定の林店長がおりそのメカ信頼度は厚い。
その林店長が操るマシンを見ていこう。
WILIER MORTIROLO
フレームはWILIERのMORTIROLO(モルティローロ)だ。ウィリエールのロードモデルにも同様のタイプがあるが、こちらはトップチューブの上にケーブルルーティングをするタイプのCXマシンになっている。シクロクロスの場合担ぐ際にワイヤーが邪魔にならないようにトップチューブの上にワイヤーを通す。
WILIERと言えば、COLNAGO、PINARELLOとイタリア車の老舗ブランドだ。モルティローロはある峠の名前から付けられたモデルである。フレーム自体はcarbonだが、シクロクロスの場合重量面でのアドバンテージはロード程ないが、担ぐ降りるを繰り返す際にはやはりcarbonが良いだろう。
ただ、機材ダメージも大きいことからミドルグレードやエントリーグレードのフレームがしばしば用いられる。コストパフォーマンスや乗り手の趣味もあるが、会場でなかなかお目にかかることのないWILIERのフレームは目を引く。
TUFO FLEXUS CUBUS 32チューブラー
タイヤはTUFOのFLEXUS CUBUS 32を用いている。シクロクロスの場合路面グリップを高めるために空気圧は低めだ。空気圧はおよそ1.5BAR程を入れ、コースプロファイルによって変更するとのこと。FLEXUS CUBUSはタイヤ重量330gでTPIは220となっている。
値段は税込みで1本10,800円だ。少々お高いかもしれないが、シクロクロスの場合普段はチューブラーを好まない私でさえチューブラーを使っている。ロードではクリンチャーで良いと思っているが、シクロクロスならば低圧とパンクリスクを考えた場合チューブラー1択だ。
と、チューブラーをあおっているものの、今年林店長はチューブレスも試していたらしい。そのチューブレスタイヤはIRCのSERAC CXだ。最近シクロクロス会場でよく目にするようにしたチューブレスタイヤ。スネークバイトによるパンクリスクも低い。
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ロードではなかなか普及が進まないが、MTBではほとんどチューブレスやチューブレスレディだ。密閉度の関係上、シーラントを入れて使う場合も多い。今後コストパフォーマンスも関係してくると思うが、私もシクロクロスでチューブレスタイヤを使ってみたいところだ。
と、ここまで至って普通のアッセンブルかと思われるが私が感動したアッセンブルについて見ていく。
SUNTOUR XC PRO MDシリーズ
今から22年前の93年に発売されたSUNTOUR XC PRO MDシリーズ。そのクランクを今でも愛用し、競技で実践使用している。日本のもの作りの素晴らしさと「想い入れを持って使い続ける」事の重要さが感じられる逸品である。今でも普通に使えていることは驚いたが、むしろそれくらいしっかりと作られていると言えるのだろう。
フロントギアは42Tを使用している。今では確認できないがチェーンリングの表面に一部他と違う平らな部分(ロゴの横)がある。どうやらこの部分はMDシリーズのロゴマークが入っていたようだ。使い続けるうちに見えなくなってしまったが、そこにロマンがある。
当時(93年)の製品は以下のラインナップになっている。
カタログをよく見てみると、ラインナップにカンチブレーキのがある。このカンチブレーキ、実はこの林店長のマシンでいまだ現役で動いている。以下がそのカンチブレーキだ。いまだうっすらと「SUNTOUR XC PRO」のロゴは見えている。そしてシクロクロスという過酷な状況下でも制動力を保っている。
ブレーキの舟はBBBに変更されているが、いまだ現役で使用されているブレーキシステム(前後共に)の意味は大きいといえるのではないか。SUNTOURを愛用しているサイクリストは未だ多い。どうやら林店長もその一人のようだ。
Campagnolo RECORD
次に目を引くのがドライブトレイン系のCampagnoloだ。変速系をあえてCampagnoloを選択する所にこだわりがある。手の小さい人や、独特のシフト感覚からあえてCampagnoloを使う人も多い。シクロクロスという過酷なレースにあえてCampagnoloを選択する所に自転車愛と機材のこだわりをを感じる。
フロントディレイラーもやはりレコードだ。シクロクロスに惜しみなくレコードを使う人はそうそう居ないだろう。しかし乗り手の想いが結集されたマシンを使うことは走る活力になる。SUNTOURとCampagnoloの組み合わせが中々粋だ。
フロント変速周りで、一番「新しい」と思われる機材を発見した。K-EDGEのチェーンキャッチャーだ。いろいろ試してこのチェーンキャッチャーに行き着いたそうだ。たしかにメカトラが頻繁に起こるシクロクロスにおいてフロントのトラブルは多い。
林店長の整備には定評があるが、その店長が使うチェーンキャッチャーは見逃せないポイントだろう。最終戦でフロントが落ちた私にとって、このK-EDGEが使いたくなったことは言うまでもない。
ROLF PRIMA VCX TU
ホイールはROLF PRIMA VCXのチューブラーだ。一件クリンチャーのように見えるがチューブラーである。ここまでくると一つ一つのパーツがこだわり過ぎていて、さすがだと言わざる負えない。私のように無機質な機材で組み上がったバイクとは一線を画するアッセンブルである。
確かに最新の油圧システムや、ICEテクノロジーを積んだディスクローター、レジンパッド、カーボンディープホイール、そして電動変速システム、と機材としての性能は上かもしれないが、自転車としてのこだわりを見た際に私の機材は面白みのないただ早く走り、正確に止まるだけの機材かもしれない。
このROLF PRIMA VCX TUは重量1595g、スポーク本数16/20でリムハイトは28mmだ。
ちなみに、ちらりと見えるサドルはフィジークのアリアンテだ。サドルは好みによるが、この年代のアリアンテが良いらしい。たしかにそのラグジュアリーなすわり心地を持つアリアンテは飛び乗りをするシクロクロスには向いているかもしれない。
竹之内選手のバイクもたしかコンコールのクラシックなタイプを使用していた。シクロクロスにこだわりを持つ人はクラシックかつ、クッション性やシクロクロスのようなペダリングに特化したサドルを使うのかもしれない。
まとめ:シクロクロスバイクの思いは強く
シクロクロスのレースに出て思うのは、ロードよりも機材への思い入れやこだわりが相当強いということだ。誤解を恐れず極端な言いようをすると、金太郎飴のような似たり寄ったりなアッセンブルが多いロードバイクとは異なるのかもしれない。
ロードの場合早く走る結果がそうなってしまったのだろうが、シクロクロスの基材の場合「俺の乗りたいバイクはこう」と思考を具現化した乗り物として色濃く映る。早く走りたければカーボンディープを使う人もいるだろうし、はたまたシングルスピードの人もいる。
人それぞれが、それぞれの思いを持つシクロクロスのバイクは面白い。林店長の「SUNTOUR & Campagnolo」もその中の思いを持つ至高の逸品だろう。来年はどんなシクロクロスのマシンが見られるだろうか。
少なくとも来年からC1で走るにあたり予備バイクが欲しいところだ。ディスクで行くのか、カンチブレーキで行くのか、はたまたフロントシングルと・・・。そんな妄想をしつついまから11月のシーズン前まで楽しく悩もうと思う。
見て楽しみ、走って楽しむシクロクロスが今後さらに盛り上がることは間違いない。