私は今まで全く使ったことがないような、新しい自転車のデバイスを手にした。Recon JETというウェアラブルデバイスである。自転車機材の世界は過去数十年にわたり緩やかに進化を遂げてきたが、乗る物、着る物に劇的な進化はそれ程無かった。
ただ、情報化社会と急激なデジタル機器の波は自転車機材にも押し寄せ、スポーツ業界にもウェアラブルデバイスの波が押し寄せつつある。
自転車機材の進化において印象深いのはパワーメーターの登場と低廉化である。パワーメーターといえばプロが使う測定器というのが常であった。そしてペダリングのベクトル解析は大規模な(競輪学校に設置されているような)機械でしか測定出来なかった。
技術革新が進み、電子機器に強い家電メーカー(パイオニアやP2Mのセンサー開発元)が参入しはじめた頃から、誰しもが手の届くデバイス(機材)となった。このデジタル機器の第一波の後に訪れつつある「新たな波」のウェアラブルデバイスRecon JETを詳細にレポートしていきたい。
新たなデバイスを知る前に
今回ReconJETに関してあらゆる側面から検証し記事化していくと決めたのだが、私は一つの心配事を抱えていた。実は私の中でそれらの多くは現段階でも払拭されていない。ただ読み手には全く気にならないことなので不安に思わないで欲しい。
私が気にかけている事は「ウェアラブルデバイス」というジャンルは、いまだ自転車機材として認知されていないのではないか?と、感じている事だ。「ウェアラブルデバイスとはこういうものです」だとか「スマートグラスとは~」といった「デバイス自体の補足」をまず理解できるように記さなくてはならない。
「パイオニアペダリングモニターは~」というような切り口で文章を書き進めても、読み手からすれば「あ、パワーメーターの話しね」といったように認知できる。ただ「ウェアラブルデバイスや~スマートグラスは~」と言っても、一体何なのか、何ができるのかは定かでない。
従って今回は趣向を変えて、まずはそこから話を進めてみたい。ブログのタイトルにも書かれている「IT技術者」が嘘かホントか問われる所だが、なるべく身近な話に置き換えて記していきたいと思う。
ウェアラブルデバイスとは?
世の中は、本当に次から次へと新しい用語が出てくる。困ったものだ。その中でも今回関係しそうな用語を整理しておきたい。知っている人は読み飛ばしてもらっても構わない。もう少し時間が経てばこの記事の下には、ありとあらゆるReconJETの情報が出番を待っている。
ただ私はデバイスの導入部分をしっかりとお伝えしたいので、まずは基本的な疑問から考えてみたい。では、「ウェアラブルデバイス」とは一体なんだろうか。イメージはできるが具体的に言われると少し困ってしまう。身近なデバイスなら最近発売されたアップルの「Apple Watch」なんてのも「ウェアラブルデバイス」だ。
単純明快な表現をするならば「身に付けられる端末」と言える。コンピューター(少し古臭い言い方だが)を身にまとえるなんて昔では考えられなかった。大きな部屋一つまるまる使うような計算機が技術の進歩で小型軽量化され、身につけられるまでになった。
現在では「ウェアラブルデバイス」なんてカッコイイ名前で呼ばれているけど、昔は「ウェアラブルコンピューター」なんて呼んでいた時期もあった。デバイス(端末)という言葉に置き換えられた背景には、急激な携帯端末や情報端末の台頭がある。
”スマート”の時代
ただ、ウェアラブルデバイスという括りも難しいほどに技術は日々進んでいる。日進月歩で日々新しいデバイスが生まれては死に機能が追加される。ユーザーが求める事は次第に大きくなり要求や目新しさのハードルは上がっていった。それらに付随して端末(デバイス)は多機能化していった。
ウェアラブルデバイスと混同されやすいのが「iWatch」で認知度が急激に高まった「スマート○○」という用語だ。「スマートデバイス」だったり「スマートウォッチ」だったり身近な「スマートフォン」と言ったらしっくりくるだろうか。
この「スマート○○」という言葉はあらゆる用途の使用を想定した多機能な端末を指す。どういうことなのか?身近な携帯電話で考えてみる。携帯電話の黎明期は「電話」しかできないデバイスがであった。次にショートメールという機能が追加された。
90年台の半ば画期的なi-mode(もしかしたら今の小中高生は知らないかもしれない!)が登場し携帯電話がインターネットに接続され、電子メールが使えるようになる。さらに携帯電話でWEBのブラウジングができるようになった。
こうなってくると技術は止められないもので、液晶画面、メモリー、記憶装置の大容量化に拍車がかかる。iphoneが初めて登場した時に「こんなん売れるわけない」とタカを括っていた日本の電機メーカーが、今やせっせと真似てAndroid端末を販売していると思うと皮肉な話だ。
この「多機能」で「様々な用途」に使用できる電話を「スマートフォン」と呼んだ。スマートに込められた意味は明確な定義が有るわけではないのだが「多機能な」という意味で捉えておいて大きな間違いはない。「多機能電話」なんて呼んでもあまりカッコイイとは思えないので、やはり「スマートフォン」に落ち着いたのだろう。
では「身につけられる」「多機能な」「端末」と考えると「ウェアラブル・スマートデバイス」なんて今後呼ばれるのだろうか。
「ウェアラブル・スマートデバイス」なんて言葉は決して流行らないと考えている。現に多機能化は当たり前になり「スマートデバイス」と呼ぶのが慣例になりつつある。いつか「スマデバ」なんて略称になるのかもしれない。「携帯電話端末」が「携帯電話」になり「携帯」と略され「ケータイ」と呼ばれるようになったことを考えてもあり得ない話ではない。
とここまでデバイスに対する基本的な概念を考えてきたが、ReconJETは「多機能」な「サングラス」だ。ここで冒頭のReconJETを「ウェアラブルデバイス」か「スマートグラス」どちらで呼ぼうかと冒頭で悩んでいた話に戻す。今後は多機能なサングラスという認識の通り「スマートグラス」一択で呼びたい。
ReconJETはスマートグラスだ。ここまで読んでくれた方は、スマートグラスと言われたら何のことなのか大体理解できていたら嬉しい。では「スマートグラス」のReconJETとはどのようなデバイスなのだろうか。
スマートグラス Recon JETとは
実のところスマートグラスと呼ぶよりも「スカウター」の方が日本人(いや世界的)に馴染み深いかもしれない。ただしある程度の年齢や男子に通じる用語でしかないから、世間一般的には「スマートグラス」の方がキャッチーな呼び名といえる。
このスマートグラスを極端な物言いで表現するならば「サングラスにディスプレイをつけた」デバイスである。右目前方に映し出されるディスプレイに様々な情報が表示されるという仕掛けだ。ロードバイクにより身近な考え方をすると「サングラスとサイコンが一体化したデバイス」と言って良い。
このスマートグラスの「スマート」に当たる部分といえば、我々が自転車に乗る際のありとあらゆる情報をディスプレイに写し出してくれる事だ。ざっと確認できる例を上げても見慣れたデーターが並んでいることだろう。
- 地図(ルートなど)
- パワー
- スピード
- 心拍数
- ケイデンス
今まで我々は、ステムやハンドルに付いていたサイコンを目線を下に落として情報を確認していた。しかし、サングラスの目の前に映しだされれば、下を向かなくて済むようになる。ただ、サングラス自体にこれらの表示機能、多種多様なデーターを盛り込もうとするとデーター処理や、バッテリー持続時間など様々なことが懸念される。
実際にReconJETはどの様な性能諸元を備えているのだろうか。以下のとおり主要な機能を並べた。
- 1GHz Dual-Core ARM Cortex-A9
- 1GB RAM(メモリ)
- 8GB FLASH(記憶領域)
- 3D加速度計
- 3Dジャイロスコープ
- 3D磁力計
- 圧力センサー
- IRセンサー
- GPS
- Bluetooth 4.0
- ANT+™
- Wi-Fi (IEEE802.11a/b/g/n)
- Micro USB 2.0
- WQVGAディスプレイ(16:9)
- 仮想画像サイズ:30インチHDディスプレイ(約2mの距離から)
- 駆動時間:4時間
上記の通りありとあらゆる測定器や、液晶デバイスが盛り込まれている。CPUは一般的には聞き慣れないARMであるが、組み込み型の機器や低消費電力を狙っている機器に多く用いられるメジャーなCPUである。身近な所でARMを使用しているデバイスを上げると、携帯電話におけるARMのシェアはほぼ100%だ。
あとはニンテンドーDSなんてのにもARMは使用されている。本Recon JETに搭載されているARM Cortex-A9というCPUはiPhone4SやPS Vita等に使用されており、処理能力には問題はない。ただし、それと引き換えに動作時間は4時間だが、扱う情報量や、デバイスの大きさを考えると妥当とも思える。
しかし、本音を言うとライディング時間等を考えるといくらか頼りない(この点については後述する)。
ANT対応ということで、ありとあらゆるデーターを確認することが出来る。もちろん、対応しているスピードセンサー、ハートレートモニター、ケイデンスセンサー、そしてパワーメーターをお持ちであればペアリングを行い、使用することが出来る。
次は、実際にそれらを操作をする外部スイッチを確認していく。
JETシステムの「エンジン」
Recon JETのシステムは「エンジン」と呼ばれる部分がある。正面から見て左側、ディスプレイが取り付けられている部分だ。実際の操作は全てディスプレイが取り付けられている部分(エンジン)周辺のスイッチに集約されている。操作は「タッチパッド」「選択」「戻る」の3つを用いる。
上の画像のエンジン側面に付いている四角い部分がタッチパッドだ。このタッチパッドは主要な操作を行うために使う。タッチパッドはヌルヌルサクサクとまでは行かないが、サクサク動作してくれる。初めは違和感が有ったが、次のように考え方を変えるとしっくり来た。
ReconJETのOSは携帯電話でお馴染みのAndroidを搭載している。ReconJETでも同じように今お使いのスマートフォンの画面を撫でるように操作すると良い。唯一の違いはスマホの画面を触るような感じではなく、目の前に映しだされた画面を操作する点だ。この点を慣れると操作の違和感はなくなる。
タッチパッド下に付いているのが「選択」、「戻る」ボタンだ。タッチパッドで任意の項目に移動した後に決定する際は「選択」を押す。2つのボタンしかないが、初めて使った時はどちらが「選択」か「戻る」かがわからなかった。しかし何度も使っていくうちに操作は無意識のうちにできるようになるので心配することはない。
エンジン部のカメラ
ReconJETにはディスプレイ部と合わせて、静止画および動画を撮影可能なカメラが搭載されている。もちろんカメラモードをの場合は目の前のディスプレイに撮影する対象が映し出される。デジカメの綺麗な液晶というよりは3世代前の程の液晶を見ているかのようだった。
まず、カメラモードを起動する。そうすると目の前のディスプレイには撮影する対象が映し出されるが、対象を定めるには少し工夫が必要だった。通常我々がカメラのファインダーを覗いて使う場合は撮影対象を直線的に見ることができた。しかしReconJETの場合は、カメラ搭載位置と、ディスプレイ位置の関係で顎を上げる(見下すような)感じで前を見なくてはならない。
おそらく、対面から見た人は少し滑稽に思えるかもしれない。ディスプレイとカメラ位置が固定されているから、頭の振りで撮影対象を定めなくてはならない。これは静止画の場合は良いが、ライディング中の動画撮影は非常に厳しいと言えるだろう。実際に静止画を撮る際も自転車からおりて撮影した。ランニングでも使ったが撮影しながらの運動はお勧めできない。
バッテリーは4時間
バッテリーは4時間だ。正直なところ、自転車のライディングを考えると物足りなく感じてしまう。私はまず初めにランニングで使用したが、この場合は動作時間に不満を持つことはなかった。ただ、バッテリーは取り外し可能であるため予備バッテリー(7800円)を備えておけば交換も可能である。しかし、利便性を考えると4時間は満足のいく使用ではあるとは言い難い。
充電はエンジン後部に取り付けられたマイクロUSBを使用する。携帯電話と同じように充電するわけだが、充電中はエンジンサイドのLEDが点灯する仕組みだ。なお、バッテリーをReconJETに組み込んだ状態でないと充電はできない。充電時間はおよそ1時間で完了する。4時間という動作時間はサイクリストにとっては死活問題で有るかもしれないが、短いトレーニングや予備バッテリーを備えていれば事足りるだろう。
【9/18追加】セッティングと視認性
Recon JETを使って感じたのは初めのスタートアップがいかに重要かということだ。初めのセッティングを怠るとなんとも使いづらいデバイスになる。せっかく魅力的なデバイスなのに、台無しにしてしまうほど初期設定は重要だと感じた。まずは、サングラスを掛けた時にご自身の骨格と鼻の高さに合った調整をしよう。
このときやってはいけないのは、高ぶる気持ちを抑えきれずディスプレイをオンにして、右目に映し出されるお目当ての液晶を見てしまうことだ。まずメインディッシュは最後にとっておき、ご自身にフイットするサングラスの設定を行っていただきたい。何事も順序が大事である。
フィッティングが済んだら次はいよいよディスプレイの設定だ。上の写真をご覧いただきたい。エンジン下に小さな突起物があるのが確認できるだろうか。これは、右目に映し出されるスクリーンの位置を変えることができる「調整ツマミ」である。グリグリ動かすと、ディスプレイが縦横無尽に動く。
先ほど次のようなことを述べた。「自身の骨格に合わせてからディスプレイをセッティングすること」と。この前フィッティングの段階が正しくできていないと、お目当てのディスプレイ位置に収まらなかった。事実私は「我慢できずに先にディスプレイを調整した」我慢のできない男だったことを明かしておこう。
無駄な時間を過ごさないためにも、ReconJETを正しく体験するためにもかならず「フィッティング」→「ディスプレイ調整」の順番は守って欲しい。
頭は動かすな!
Googleグラスはやや頓挫した感じがある。また、海外のサイトで紹介されていたが、いまだ認知度が低い本スマートグラスは使う側にとっても未知数だ。セッティングする時に人間が無意識にやってしまう変な行動がある。なぜか、ディスプレイを見ようとして頭を動かしてしまうことだ。
ところが悲しいかな、まさにウェラブルデバイスという、身体に一体化している特性上いくら頭を動かしても目の前に映し出される映像の位置を変えることができない。ガジェット好きの私の父に使わせたところ、なぜか右を見たり左を見たり、上を見たりと面白い行動をした。
さらには、ボクサーが気絶する時の目が裏返るような仕草もし大爆笑であった。だから、見た目的にも、デバイスに振り回されないためにも頭を動かさずに使わなくてはならない。ではどうすれば良いのだろうか。
私が導き出した答えは「顔の位置を固定し目線だけ下げる」それだけだ。特に難しいことではない。意識だけと問題と言ってもいいだろう。イメージ的には「歩きスマホ」をしている厄介なヤツを想像して欲しい。かれらはうまく目の前を把握(しているつもりで実は危険だ!)しながらスマホのスクリーンを器用に見ている。
それらのうまく目線をずらしデバイスを少し見ながら使う事が出来れば快適に情報を把握することができるだろう。では、次に視認性などインプレッションに移って行く。
ReconJET レビュー
ジョージヒンカピーが着けているこのReconJETであるが、実際にはどのように見えるのだろうか。ここで残念なお知らせをしなくてはならないのだが、私が今見ているスクリーンを文章で表現することは難しい。本デバイスは、私の文才の無さと表現力の限界を超える位置に存在しているからだ。ただ、それでは意味がないので、できる限り記したいと思う。
本デバイスのプロモーションでは上に示したような「目の前の空間にディスプレイが映し出される感」があるが、実際には少し違う。どちらかといえば、小型の液晶モニターが目の前に備わっていると言った方が正しいだろうか。ディスプレイのサイズは仮想画像サイズ:30インチHDディスプレイ(約2mの距離から)である。この仮想というサイズを検証した。
部屋に置いてある液晶テレビから二メートルほど離れて立つ。そして、ReconJETをかけて見比べて見た。そしたら確かに「目の前に映し出されるスクリーン」は30インチほどだった。どういうことだろうか。例えばこんな風に表現したらどうだろう。
自分の指を目の前5cmほどに近づけてみる。その指を見ながら後ろにある物体を見てみよう。そうすると小さな指は、向こう側に見える指よりはるかに大きい物体と同じくらいの大きさに見えるはずだ。要するに遠近法である。今新幹線の中で本記事を書いているが、私の指はペットボトルよりも太く、そして長い。
しかし、遠近法によるものである。
ReconJETで見える世界は、これら遠近法で見える世界をうまく利用している。目の前に見える本当に小さなスクリーンは2m離れることにより「仮想30インチ」になる。これらは実際に使うと違和感がなくなり落ち着いて見えてくる。
ReconJETの視認性
初めにオススメしておきたい使い方がある。当ブログはサイクリストが閲覧する機会が多い。だがいきなり自転車に乗りながら使うのは危険だと先に言っておきたい。なぜなら、注意散漫になり危険だからだ。もともと人間はシングルタスクしかできない。マルチタスク(かのように思われている)人間の動作は全てシングルタスクだ。
この辺のマルチタスクの話は「集中力と時間管理の話」で記しているので時間がある方は見ていただけたら幸いだ。
話を始めて使う際に戻そう。まず本デバイスに気を取られない程になるまではランで慣れてみよう。ランなら大抵の危険は事前にわかる。速度も自転車よりは出ていないし、もしなにかあっても大事には至らない。ただ、信号などある場所では、信号無視に気をつけたい。
本サングラスはディスプレイを見ながらの操作になるため、視界がやや狭まる。また、右を振り向く際にディスプレイが視界を邪魔してしまう場合があることに気づくだろう。これはReconJETのデバイスを作った国の道路事情にある。日本は左側通行だが、右側通行用に適した設計と言わざる負えない。
日本に輸入する場合、道路事情を考慮した設計で販売する方が良かったと思うが、なかなか難しいところであったのだろう。ただ、ある、工夫で対して問題なく違和感を取り払う使い方ができる。それは「センサーとフレームの間」をうまく見て使えば、振り向きざまに後方を確認することができる。
視界が完璧に阻まれることは無いが、初めはどのように見えるのかあらかじめ確認しておくことが必要だろう。代理店はこれらの注意喚起(マニュアルには書かれている)をするとともに、日本の道路事情に合わせた設計での販売も視野に入れて欲しいと要望を出しておきたい。
快適に使えるデバイスこそ受け入れられる第一歩と言えるのではないだろうか。
ReconJETの重さ
実際に身につけてみるとわかることはディスプレイやエンジンといったデバイスの重量が有ってもさほど重さを感じなかったということだ。なかなか伝わりにくいかもしれないが、左右のバランスをうまく取っている。バッテリー部とエンジン部は左右独立しており、どちらかかが重くて、どちらかかが軽いということはない。
実際に走りながら使ってもずれたり、バランスが悪いと感じたことはなかった。重さも感じなかったので、サングラスとして普通にかけていても違和感はないだろう。本デバイスの重量を気にしない程にコンパクトに収められ、詰め込まれた技術力には感嘆するばかりだ。
充実のスマホアプリ
恐らく数あるフィットネスアプリの中で群を抜いて完成度が高いのがReconJET Engineだ。見ているだけで楽しく、そして使いやすい。正直な所デバイスの完成度よりアプリの完成度の方が高いのでは!?と思えるほどだ。GPSとうまく連携し様々な情報を出してくれる。
もちろん、デバイスで見られる情報やどこを走ったか?という状況もすぐさま把握することができる。
当日の天気や、獲得標高、消費したカロリーをハンバーガーを使ってうまく表示してくれるので見ていても飽きないだろう。記録された情報は月や週で見ることができるのでトレーニング後の管理に役立てることができる。
まとめ: 目指すは脱サイコン
本デバイスが目指す先はどこにあるのだろうか。推測するに、サイクルコンピュータの役割を取って代わろうとしているのではないだろうか。今や当たり前のように備わっているサイコンであるが、ありとあらゆるデバイスが発売され飽和状態にある。目新しいデバイスもなかなか出て来ない。
それらの牙城を崩す一つのデバイスとしてこれから発展して行く可能性がある。自転車機材はコモディティ化(似たり寄ったり)がかれこれ何年も続いてきている。その中で、パワーメーターであったり、ペダリング解析機能であったりと、技術力のある企業は独自技術を駆使し他社と差別化を測ってきた。
今回紹介した、スマートグラスのようなニッチな機材はある種競合他社(Googleグラスも気になるが)が少ないうちにある程度の土台と揺るがない地位を築くべきだ。車業界で言うならばテスラのようなガソリン車とは一線を画する、いままで見たことがないような路線を突き進むのも良いだろう。
一度は開発中止になったGoogleグラスも先ごろ新たに「Project Aura」として開発が再スタートしている。開発は「Amazon Fire Phone」の元開発者たちが参加している。
Google Glass Gets a New Name and Hires from Amazon
今後もこの市場は間違いなく伸びて行くだろう。
ただ、我々サイクリストが望むのは安全で使いやすくユーザビリティに優れたデバイスだ。いつかサイコンにとって変わるかもしれないスマートグラスであるが、この黎明期をうまくしのぎ、サイクルコンピュータの牙城を崩すことこそ本カテゴリーがうまく生き延びる方法ではないだろうか。
そのためには、使い勝手や重量、道路事情を考慮した視認性など課題は山積みである。
なお、私が住む関西圏であればベックオンで取り扱いがあるようだ。恐らくサンプルも置いてあるらしい。確かに輸入も一つの手だが、計算するとドルのレートの関係で価格内外差のデメリットはなくなっている。万が一の保守費用や手厚い日本語マニュアルのサポートを考えると、国内で買った方が賢いと言えるだろう。
未来感が漂う新たなスマートグラスというデバイスは、これからサイクリストにどのような体験をもたらすのだろうか。携帯電話がスマートフォンに移り変わって行ったように、いつかサイコンが過去のものになる日もそう遠くはないのかもしれない。