スポーツ遺伝子検査を受けてみた結果 → 才能が無いと判明。

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「自分にはどんな才能があるのだろう。」と、誰しも一度は自身の可能性に想いを巡らす。絵を描く才能、学ぶ才能、人よりも速く走る才能。人間として生まれ、人間として育っていく中で、だれ一人として同じように成長していくことはない。何かしらの原因で人間には必ず優劣がつきまとう。

小学校、中学校の頃を思いだしてほしい。たとえば100m走だ。一斉に生徒が走り出すと、走ることが速い子、そうでない子とはっきり優劣がわかれてしまう。小学校程度であれば、生徒は特別なトレーニングを積んでいるわけではないため、本人もなぜ足が速いのかよくわかっていないだろう。

はたから見れば、「かけっこの才能のあるやつ」として羨望の的になる。

そのうち本人は、「自分には才能があるのではないか」と思い始める。しかし、それは周りがひどく遅いための相対的な速さなのか、それとも才能が本当にあるのか、すぐに判断することは難しい。しかし、昨今の目覚ましい医学の進歩により、だれでも簡単に、自分自身の才能を知ることができるようになった。

スポーツ遺伝子検査である。

ここから本記事を書き進めていく上で、私は一つだけ伝えておきたいことがある。読者、選手、あるいは様々な競技に取り組んでいる(もしくは始めようとしている)方たちへ向けてだ。それは、たとえ期待していないDNA検査結果が得られたとしても、「変えることのできない結果として受け止め、自身を改善する為の材料にすること」を、頭の片隅に置きながら記事を読み進めてほしい。

これから私が記事内で紹介していく手順をふめば、わずか数千円を払うだけで自分自身の遺伝子を知ることができる(ただし、遺伝子に刻まれた変えようのない事実も突きつけられる)。そのときどのように受けとめるのか、その心構えも重要だと前もってお伝えしておきたい。

今回は、スポーツ遺伝子検査を実際に受ける方法と、私が受けた検査結果を・・・公開する。タイトルにもある通り、私にとっては非常に残念な結果が待ち受けていたのだが、それも1つの結果であり、私なのだ(落胆してしまうが)。さて、もしかしたら決して開けてはならない「パンドラの箱」スポーツ遺伝子検査についてみていこう。

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スポーツ遺伝子検査DNA EXERCISE

今回私が受けた検査は、株式会社ハーセリーズ・インターナショナルが実施している「ハーセリーズスポーツ遺伝子検査」だ。同社はスポーツ遺伝子検査以外にも、太りやすさの遺伝子、アルコールへの耐性に関する遺伝子検査といった様々な遺伝子検査を実施している。

今回私が受けた検査は、スポーツを行う上で特に重要な遺伝子を知ることができるスポーツ遺伝子検査DNA EXERCISEだ。本検査を受けることで、スポーツに関する重要な能力(持久力、瞬発力、etc…)を知ることができる。このスポーツ遺伝子検査DNA EXERCISEで知ることのできる内容は以下の3点だ。

  • PPARGC1A遺伝子
  • ACTN3遺伝子
  • ACE遺伝子

なにやら、聞き慣れない遺伝子に関する用語が並んでいる。それぞれの遺伝子が持つ意味を確認していくと、スポーツをたしなむ人にとっては、とても馴染みのある遺伝子であることが徐々にわかってくる。それぞれの遺伝子の役割を、次章から説明していく。

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PPARGC1A遺伝子とは

PPARGC1A遺伝子は、持久力に関係するミトコンドリアの生成に深く関係している。では、PGC-1aの活性が高いと何が嬉しいのだろうか。活性が高ければ高いほど、運動することでミトコンドリアがどんどん増殖していく。練習を実施することで、人それぞれ能力が伸びていくスピードは異なる。

持久系の練習すればするほど、すぐに持久力が向上する人もいるし、対して練習してもすぐさま持久力の向上がみられず、ゆるやかに持久力を身につけていく人もいる。練習に対する、能力向上のリターンがすぐさま見込めるか、緩やかに伸びていくかの違いを左右している。

毎日同じような練習をしたとしても、この特性により持久力が伸びやすかったり、伸びにくかったりする。ただ、時間をかけて練習を積み重ね続ければ、たとえ活性の低い人だって、同じようにミトコンドリアを伸ばしていける。だから、諦めてはいけない。

選手にとってミトコンドリアが増殖するとうれしいのは、運動するためのエネルギー産生量が高く保持されるので、長時間のマラソンのように多くのエネルギーを必要とする運動に適応しやすくなる。この遺伝子のタイプの特徴は、以下の3つのタイプに分かれている。そして、上位27%の人は非常に活性の高い(練習で持久力が伸びやすい)素質を備えている。

  • G/G型(1型):活性が高い:27%
  • G/S型(2型):活性が普通:50%
  • S/S型(3型):活性が低い:23%

このようにスポーツ遺伝子検査を受けると、ミトコンドリアの活性の良し悪しが判明する。自分自身がどのタイプに属するかは、検査をしなければわからない。練習をおこない、能力の向上がなかなか認められなくても、タイプを知っていれば、諦めずに練習を続けるといったような判断もできる。

S/S型だからダメというわけではなく、地道な練習で改善する可能性はある。すぐに向上する体質(G/G型)だからといって、怠けずにさらに能力を伸ばすといった戦略も立てることができる。

S/S(3型)は練習を重ねても、短期間で能力向上のリターンは大幅には見込めない(相対的に見ると)。ちょっとやそっと運動したとしても能力が伸びにくいタイプと言える。何年も練習してエンデュランス能力の向上が見られない場合はS/S型なのかもしれない。対して、「運動をはじめて1年で表彰台」なんてパターンはG/G型なのかもしれない。

「あいつ、運動はじめて1年でヒルクライムの表彰台なんだって・・・」という人がいたら、G/G型(1型)の可能性は高いかもしれない。いづれにせよ、検査を受けずして、才能なのか、努力なのか判別することはできない。忘れてはならないのは、能力を開花させる為には常に努力と練習が必要になってくる。

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ACTN3遺伝子とは

このACTN3遺伝子は、運動を行う人達が最も気にする遺伝子の一つだ(事実私もこの遺伝子が備わっていることを最も期待していた)。この遺伝子は、私たちにとても馴染みのある「速筋」や「遅筋」の能力と関係している。

注目したいのは、速筋繊維にのみ存在している「a-アクニチン」がという物質だ。a-アクニチンが筋繊維にたくさん存在すると、瞬発力系種目により向いている。100mが速かったり、ダッシュの加速に優れていたり、自転車競技のハロンが速かったりする選手は、「a-アクニチン」が多く存在しているかもしれない。

このa-アクニチンの量の違いは、3つのタイプに分かれる(%は日本人中)。

  • R/R型(1型):a-アクニチンが最も多い(速筋が多い):19%
  • R/X型(2型):a-アクニチンが適度にある(速筋と遅筋が備わっている):50%
  • X/X型(3型):a-アクニチンが少ない・無い(遅筋が多い):27%

このように速筋、遅筋はa-アクニチンのさじ加減で決まっている。

筋トレで有名な東京大学の石井直方教授の書籍「究極のトレーニング 最新スポーツ生理学と効率的カラダづくり」を見ると、次のような一文がある。「速筋を遅筋に変えていくことはできるが、遅筋を速筋に変えられない。」すなわち、もともと速筋がない人・少ない人は、遅筋を速筋に変えることはできない。努力しても変えられない部分はやはり人間には存在しているのだ。

このACTN3遺伝子R/R型は、短距離選手にとても多いというデータがある。 日本経済新聞の「筋肉を作るスポーツ遺伝子トレーニングに生かす」にも記述がある。また、トップのスピードスケート選手や短距離水泳種目の選手を対象に調査した結果、遅筋が多い「XXタイプ」の選手は一人もいなかったという研究結果もある。「スプリンターは生まれつきスプリンターである」と呼ばれるゆえんは、ACTN3遺伝子にあるのかもしれない。

自転車競技のトップスプリンター、マーク・カヴェンディッシュは恐らくR/R型(1型)なのかもしれない。ゴール前でも強いペテル・サガンはR/R型(1型)かつ、ミトコンドリアの量を増やしやすいG/G型(1型)で、エンデュランス能力に長け、ゴール前でも脚を残せているスーパーエリート・・・なのかもしれない。

キッテルやグライペルのように、ゴール前のスプリントに優れた選手も、瞬発系に優れた能力を持つR/R型(1型)の可能性が高い。この上位19%に属する速筋繊維を多く持つ体質の人は、短時間で爆発的なパワーを生み出すスプリンターの素質を持っている。

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ACE遺伝子とは

ACE遺伝子は血液の供給量を調整する役割を担っている。血管を収縮させたり、拡張させたりする能力を担っている。運動時の疲れやすさにも関係しており、血管収縮能が高いと、瞬間的に血液を供給する事に優れている。瞬発系の能力にはもちろん短時間で多くの血液を送り込む必要があるから、アスリートであれば血管収縮能力は高い方が良い。

  • I/I型(1型):血管拡張性能が高い:持久系向き、疲れにくい:40%
  • I/D型(2型):血管拡張性能は普通:普通:49%
  • D/D型(3型):血管収縮性能が高い:瞬発系向き、瞬間的に血液を供給:11%

現在でも、ACE遺伝子に関する研究は盛んに行われている。イギリスの研究グループが、山の無酸素登頂(標高7000m以上)に成功した人に対してACE遺伝子を調査したところ、D/D型の割合が非常に少なかった。そして、条件を厳しくした標高8000m以上の無酸素登頂成功者の中にD/D型は一人もいなかったという。

酸素が薄い登山の世界から話題を変え、スポーツについてもACE遺伝子に関する研究は進んでいる。ボート選手や陸上の長距離選手のACE遺伝子を調べた結果、上位の競技者は一般人と比べてI/I型の割合が高い傾向が得られている。

ただし、研究が進むにつれ異なる事例も多数出てきている。トップの競泳選手はD/D型の比率がとても高いという研究結果や、競技者と一般人の間でACE遺伝子の違いは見られない(差がない)、という研究結果も存在している。ACE遺伝子に関する研究は過渡期であり、まだまだ解明されていない部分も多い。

その点をふまえて、ざっくりとACE遺伝子のパターンについて見ていこう。I/I型は血管の拡張する性能が高い。土管が太いから、大量の血液を体に流すことができる。タバコを吸うと血管が収縮してしまい、細くなってしまう映像をTVで見たことがあるが、あれとはまったく逆のイメージだ。

対して、瞬間的に血液を供給する能力が高いのが3型だ。瞬発系の能力を支えてくれる能力といえるだろう。マーク・カヴェンディッシュなんてのは、R/R型(1型)のa-アクニチンが最も多い速筋繊維が備わったD/D型(3型)の血管収縮性能が高く、瞬間的に血液を送り出せる選手なのかもしれない。

このように、スポーツ遺伝子検査を受けることで、スポーツ選手にとって重要な3つの身体的要素を明確に知ることができる。次章では、実際に遺伝子検査を自宅で簡単に行う方法と、その実施内容について紹介していく。

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ハーセリーズスポーツ遺伝子検査

検査方法は至って簡単だ。ハーセリーズが販売しているハーセリーズスポーツ遺伝子検査キットを買って(すぐ届く)、口の粘膜を採取して、最寄りのポストから指定の機関へ送りつけるだけだ。検査期間は2週間ほどに時間を要するが、とてもワクワクした気持つことができる(実は宝くじと一緒で、この時間が一番幸せなのかもしれない・・・。)

購入すると、封筒と検査キットがあなたの家にすぐさま送られてくる。薄い封筒だから、間違って「ピザ二枚目無料!」のチラシと一緒に捨ててしまわないようにしよう。届いた検査キットの中には1本の綿棒が入っている。この綿棒で、口内の左右の粘膜を採取する。そして綿棒を専用のプラスチックケースにしまい、フタをする。

そして、送って終わりだ。

検査は恐らく一人一人検査を行うわけだから、相当手間のかかる作業だ。高価な医療機械を導入するだけでも何千万というコストをがかかる。そのような面を考えても、わざわざ病院にも行かず、診察で長い時間待つ必要もなく、家に居ながらにして、簡単に遺伝子検査ができるのだから、この検査価格は安いと感じる(もちろん保険対象外)。

必要なのはわずかな検査料金と、口の粘膜を取るわずかな時間、そしてポストまで行く労力だけだ。その3点を我慢しさえすれば(楽勝だろう・・・)あなた自身の遺伝子検査結果を簡単に受け取ることができる。

0歳で遺伝子検査を受けようが、80歳で受けようが検査内容はいつだって変わりはない。ワインのように時間が経って遺伝子検査結果が変化するものでもない。だから、一度思いきって検査を受けてしまえば、ずっと有効だ。たとえばお子さんを検査して、得意なスポーツのジャンルを決める、なんて事も海外で実際にあるらしい。

そしていよいよ、次章では私のスポーツ遺伝子検査結果を晒してみたい(・・・誰得)。

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結果

俺ェ氏、才能ォオッww無さハッw過ゥぎィイッww乙ゥゥウww

私は検査キット送ってからというもの、まだか(期待)、まだか(俺天才かも)と、期待と不安を入り交ぜながら結果を待ち望んでいた。しかし、手元に届いたスポーツ遺伝子検査の結果は、私をひどく落胆させた。その結果を以下に記そう。

  • X/X型(3型):a-アクニチンが”無い”らしいので瞬発系苦手(スプリント最弱)
  • S/S型(3型):運動しても持久力つきにくい(持久系には致命的orz…)
  • D/D型(3型):瞬発力ないのに、瞬発力用の血管機能(矛盾(汗))

私は、どこにでも居る、平凡な人間で、そして全項目中、目立った能力もなかった(パターンとしては全部右側・・・)。結果を知らせる紙に、申し訳ない程度に書かれた一文は、次のように記されていた。

ミトコンドリア増殖能は低いため、運動習慣をきちんと身につけることで運動が段々と楽に行えるようになるタイプ。

つ、、、つらすぎるやろ・・・。

私は、心の何処かで、持久系の能力と、瞬発系の能力を併せ持つペテル・サガンのような結果を期待していた。どうやら、私には目立った能力を持ち合わせていないらしい。少しの落胆と、どうしようもない遺伝子レベルで刻まれた、変えようのない事実と向き合いながら、壮大なオチがついたところで、本記事のまとめへと、静かに踏み込んでいこうぅッ
(´;ω;`)・・・。

成果出るの遅いし、結果出るのは先かな・・・。

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あなたの検査結果

本記事を見て、2~3人は遺伝子検査に興味を持ってくれるかもしれない。もしあなたの結果を当ブログに掲載してもかまわないようであれば、データベース化に協力してほしい。自身に関するコメント(運動歴、大会結果、得意種目)を添えて頂けるとより信憑性も増すだろう。

たとえば、フルマラソンのタイムであったり、100m走のタイムでも良い。もしくは自転車競技で言えば、セントラのタイム、ハロンのタイム、個人追い抜きのタイムでも良い。ヒルクライマー、ロードレーサー、いろいろな種目の選手のデータが集まれば、本当に面白いと思う。

もちろん匿名でもかまわない。記事内の本セクションは、「あなたの検査結果」の建設予定地として、今後更新する予定だ。

テンプレ

ハンドルネーム:

PPARGC1A遺伝子:

ACTN3遺伝子:

ACE遺伝子:

コメント:

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まとめ:知らなかった遺伝子を知る意味

検査を受け、望んだ才能が得られなくとも、決してあきらめないでほしい。私の結果を見てほしい。世の中の人間の、さらに言うならば、身体的な能力に恵まれない下位に位置する人間だ。私は自分以外の、「才能のある70%の人」と戦わなくてはならない。ただ、そんな私でも地道に日々トレーニングを続けていくことで、ある一定の能力を向上させていく事はできる。

スポーツ遺伝子検査の検査キットを買って、口の粘膜を取って検査に出せば、今まであなたが生まれてから一度も知ることのできなかった、あなた自身の能力を簡単に知ることができる。その想像している能力は、私が経験したように期待にそぐわない内容かもしれないし、意外なうれしい結果かもしれない。

本記事をここまで読み進めている読者と同じように、私も「自分の能力」を知りたかった。科学の進歩により、昔は病院で精密な検査を行わなくては判別できなかった事までわかるようになった。本来知り得ない自分自身を知ることは、あなた自身の判断に託されている。自分自身に備わった変わらない能力なのだから、後にも先にも、今知っておいて損はない。

知らないよりは、知っていたほうが能力をさらに伸ばせる可能性だってある。逆に知らないまま、何かの可能性にかけることは、遠回りかもしれない(かといって芽を摘むようなこともしないでほしい)。ただ、いくら才能が備わっていても、才能を開花させるための努力は必要だ。その努力の方向性を定める羅針盤として遺伝子検査を使う事も、1つの手段なのである。

ハーセリーズスポーツ遺伝子検査は、自分も知らなかった遺伝子レベルでの能力を簡単に、そして残酷なまでに知ることができる画期的なソリューションだ。自分に備わった能力を知り、その能力をどのように受け止め、どのように活用するのか―――。その道のりの第一歩は、あなた自身が、あなた自身を知ることから始まるのだ。

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あとがき:才能を開花させるために必要なこと

先日、私はカナダへ向かう飛行機の中で2冊の本を読んでいた。フライトは往復で20時間をゆうに超えるから、本を読みながら時間をつぶすにはちょうどよかった。一冊は継続する努力にフォーカスした「GRIT」という本と、もう一冊は全日本選手権を優勝した西薗選手が紹介していた「限界的練習」を題材にした「超一流になるのは才能か努力か?」という本だ。

私は、スポーツ遺伝子検査の事実を表向きには認めつつも、受け入れるだけの余裕と、納得させるだけの理解ができていなかった。

というのも、自分には才能が無いなりに、継続してきついトレーニングを続けていれば、自分のような人間でもある一定の身体的能力の向上が見込める、という身体的な実感があった。そして継続することで得られる自分のフィジカルの変化に、強い関心を持っていた。人間には遺伝子レベルで刻まされた能力の差はたしかに存在している。ここまで紹介した3つの能力以外にも、人種レベルで見ても能力差は多く存在している。

その不平等(と呼ぶには議論の余地はあるが)とは異なり、誰しもが練習を積み重ねることで、次第に能力や技術は上達し、パフォーマンスが向上するという仕組み自体が単純におもしろいと思った。おそらく、特別何かに秀でているわけではない(むしろ才能ない)私にとって、この事実は、わずかに残された希望に見えていたのかもしれない。

これらの私が抱いていた疑問と、体の中で何が起こっているのかをわかりやすく解決してくれたのが、この2冊の本だった。読み進めていくと、この一文に目を奪われ、私はすべてを悟った。

才能というのは絶え間ない限界的練習の末、初めて知ることができるギフトなのだ。

この一文を読み、気づかされた。いつのまにか、物事を考える視野が狭くなっていたのかもしれない。たしかに、遺伝子検査で判明する3つの要素は、スポーツをおこなう上で、とても重要な内容であることは間違いない。才能や身体的な優位性は人それぞれ異なっている。そして、才能を開花させるためには、それ相応の辛くて受け入れがたい練習が必ず必要になってくる。

「才能だ、才能だ」なんて嘆いていたり、「才能がない」なんてしょげているうちは、「才能」という言葉を自分の都合のよい言葉に解釈して、「物事をやらないための言い訳」にすり替えているだけだ。

たとえば、ツール・ド・フランスを優勝できる才能がある人間だとしても、もしかしたら今この時、コーラを飲みながら、ピザを食べながら、ツール・ド・フランスの中継をソファで寝転がりながら見ているのかもしれない。

書籍「GRIT」には、愚直に、諦めず、日々継続して物事を続けることの重要さを実例を交えながら、知ることができる。継続して努力を重ねるという、根性論(ただし方向性が明確に定められた)とも受け取られてしまいがちな内容だが、継続することで得られる多大な恩恵の実験記録と研究を知ることができる。

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私が毎日、毎日、トレーニングを欠かさずに行える意志の根底が、本書に隠されている。

「才能か、努力か」は、全日本選手権のタイムトライアルを優勝した西薗選手が紹介していたことで知った書籍だ。本書の中で紹介されているもっとも重要なキーワードは、「限界的練習」である。多くのアスリートにとって特に重要な考え方で、目からウロコだった。

この「限界的練習」は昨今のパワートレーニングの思想と似ていて、徐々に限界値を向上させていく、という能力向上の考え方と近しい。実際に限界的練習を「継続して実行し続けられるか」で、1つの分かれ道があるようにも思う。

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もしもスポーツ遺伝子検査を受けて、私のように期待する才能が備わっていないと知ったとしても諦めないでほしい。少しの希望と、本質を見落とさないために、ここで紹介した2冊の本にも目を通してほしい(とはいいつつも、切り口を変えれば、能力のある選手の能力をさらに引き出すための指南書でもあるのだが・・・。)

私は何の取り柄も、特別な能力も備えていないただの凡人だった。しかし、その凡人の持ち合わせている能力をどこまで引き出せるかは、自分自身、あなた自身が切り開いていくしかないし、挑戦は、誰かが代わりに取り組んでくれるものでもない。

ハーセリーズスポーツ遺伝子検査は私の知らなかった、私自身の能力を残酷に教えてくれた。知らぬが仏、知らないことのほうが幸せなんて言葉もある。しかし私は、自分の能力の無さを知り、自覚する所から始めようと思う。そしてこれからもトレーニングを継続して重ね、自分自身の「才能」の限界までいつかたどり着こうと思うのだ。



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