泥が生み出す進化の形 CANYON INFLITE インプレッション

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シクロクロスのバイクメーカーをいくつか想像してみてほしい。TREK、RIDLEY、STEVENS、FOCUS、SPECIALIZED、というブランドが真っ先に思い浮かんでくる。一方で、「CANYON」と言うシクロクロッサーは、一昔前まではそれほど多くなかった。多くの人は、CANYON」というブランドを想像すらしなかった。

しかし2018シーズンを境にして、CANYONはその名のとおり、大きな渓谷となって他社メーカーを谷底のスミに追いやってしまうかもしれない。

それには理由がある。熱狂的なシクロクロッサーなら大筋同意してくれると期待しているが、2018年にシクロクロスシーンが一変したニュースがあった。今シーズンワールドカップ最多勝利を上げたマチュー・ファンデルプール(当時のバイクはSTEVENS)がバイクブランドをCANYONにスイッチした。

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昨年CANYONは「2018年の1月にトップ選手と契約する予定だ、しかしまだ契約上公開できない。」と語っていた。当時は誰もがまさかマチューのことだとは夢にも思わなかったのである。

シクロクロスシーンを牽引する選手がCANYONにスイッチするのだから、注目が集まらないわけがない。そして新年早々、ワールドカップで優勝してしまい、CANYONとマチューはさい先の良いスタートを切った。記念すべきデビューウィンを飾ったバイクの名は、CANYON INFLITE(インフライト) CF SLXである。

そして、2018から2019年のシクロクロスシーンで最も多くの勝利数を上げることになった。

今回は、シクロクロスシーンを根底から変えてしまうかもしれない、CANYONの「ピュアシクロクロスバイク」の細部に迫っていく。そして、奇抜なフレーム形状の使い勝手や、日本人ライダーでも扱えるのか、実際のシクロクロスコースを使って判明した、CANYON INFLITE CF SLXのインプレッションをお届けする。

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独特な「ひし形」デザイン

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バイクに”祖先”なんてものは存在しないのだが、あえてシクロクロスバイクの祖先をひも解いていけば、ロードバイクにたどり着くのだろう。もともとローディたちが寒い時期の遊びとして始めたのがシクロクロスだった。悪路をバイクで走り、走りにくいシューズで”足”でも駆け回る。泥で覆われた未舗装路や、山道、はたまた雪が降り積もった滑りやすい道へと、「バイクと身1つ」で突き進んでいった。

パッと、その光景がイメージができないのならば、サンタクルーズのプロモーションビデオを一度見てほしい。すぐに納得していただけるはずだ。

シクロクロスが競技として進化していく過程では、ロードバイクをベースにした機材の改良も進んでいった。泥が詰まりにくいカンチブレーキや、フレームのトップチューブ上部を通るケーブルルーティングが考案された。「ロードバイクをベースにして、クロスできるバイクを作る」という思想をもとにして。

遊びの出発点は伝統的なロードバイクだった。確かに伝統的なバイクも良いが、現代のシクロクロッサーたちは、使い古された伝統なんてものに、そろそろ退屈し始めてきたのかもしれない。そんなとき、突如として現れたCANYON INFLITE CF SLXは「どこか新しいな」と、私は心のどこかでひそかな興味を抱いた。

フレームという有機体が、シクロクロッサーとしての何かを揺さぶってくるだなんて、初めての経験だった。そして今、こうやって記事を書いている。ただ、こうも思う。奇抜なカラーや奇抜な形、CANYONというブランド”だけが”そんな気持ちにさせているだけ、なのだろうかと……。

言ってしまえば、CANYON INFLITE CF SLXは生まれも育ちも純粋なシクロクロスバイクだ。「純粋」って?INFLITEの祖先はロードバイクではなく、INFLITE自体が起源だ。回りくどい言い方を抜きにすれば、ロードバイクを祖先に持たない、まじりっ気のない純粋なシクロクロスバイクだ。

レース会場でしばしばINFLITEを見かけ、もっと知りたいという欲求は高まっていった。誰しもが経験する、思春期を迎えた若者たちが抱く”あの感覚”と似ている。「電車で見かけたあの子は一体誰なんだろう……」と。乗り物は違えど血気盛んな男子たちは、いつだって乗り物が好きだ。さて、冗談はこれくらいにして、肝腎のINFLITEに話を戻そう。

INFLITEが、ロードバイクの延長線上で設計されたようなシクロクロスバイク「ではない」のならば、「CANYON INFLITE CF SLX」とは一体何者なのだろう。もともと、同社のプロダクトの中にはアルミ製のINFLITE ALという「グラベルロードバイク」は存在していたが、決してシクロクロスのレースに投入したい、と思わすようなバイクではなかった。ロードバイクの延長線上で悪路も走れますよ、程度のバイクだったからだ。

ところがCANYON INFLITE CF SLXは、見た目からすでに一線を画している。

独特のフレーム形状は、単に熱狂的な観客の目を引くためだけではない。通常のバイクと言えば、トップチューブが緩やかにシートポスト部につながった、トラディショナル(伝統的な)カタチだ。対して、CANYON INFLITEと言えば、トップチューブがシートポスト部にたどり着く手前で、方向を変えてリアハブまで直線的に伸びている。このINFLITEのひし形フレームは、シクロクロスをより快適に走るために考え出された進化の形だ。

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実際にシクロクロス走ることを想像しながら、この形状と向き合ってみたい。シクロクロスのレースを走っているとフレームの前三角部分は走りに大きな影響を及ぼす。ひし形デザインのメリットは2つある。1つ目は乗車が困難な砂地やキャンバーセクションや、激坂に差し掛かる手前で、「バイクをかつぎたい」と思う場合だ。

フレーム前三角が大きいと、単純にかつぎやすい。独特な斜めの形状が肩から背中にかけて「たすきがけ」のように密着する。そしてフレームを面で支えられるから、体にかかる圧を分散してくれる。シクロクロスを始めた当初の悩みは、フレームを肩にかつぐことが痛い、ということだった(当時、肩パッドを入れていたことは内緒だ!)。INFLITEの独特な形状はシクロクロスを始めた人にとって、「かつぐ」という特殊なテクニックの敷居を下げてくれる。

ひし形デザインの2つ目のメリットは、「かつぐ必要はないが、走ったり押したりする」場合だ。4連ステップ区間や、スリッピーな切り返し区間、キャンバーの切り返しで「無理に乗車するくらいなら降りた方が速い!」と判断する場合だ。たとえば、トップチューブを持って、フレームを抱えながら走るシチュエーションを考えてみよう。この場合、トップチューブの位置が高く設計されている方が、体にフレームが近くなりバイクを抱えやすい。

※注釈:トップチューブが高く設計されているということは、シクロクロス特有の「飛び乗り」がしにくいのでは?という疑問を持つロードバイク乗りの方がいる(いた)。それは間違いなのだが、シクロクロッサーたちから見れば飛び乗りの際に影響を及ぼすのはサドルの高さだけ、ということはわかっている。念のため記載するが、トップチューブの高さは飛び乗りに影響しないから、ロードバイク乗りの方たちは全く気にする必要はない。

シクロクロスという競技には、面白い特徴がある。乗車しても下車しても「誰よりも速くセクションをクリア」できれば勝ちだ。このテクニックの引き出しの数が、シクロクロスという独特な勝負を支配している。レースに出ると、下車して「かつぐ」、「抱える」、「押す」という3つの動作を、こなさなくてはならない。特にシケインが来れば和田良平選手(RINGOROAD)以外はC1でも乗車できる人はそれほど多くない。

INFLITEの特殊なひし形デザインは、シクロクロスという特殊な競技に挑むシクロクロッサーたちにとって、最高の飛び道具になってくれる。まさに”INFLITE!”その名のとおりだ。決して、ギャラリーたちの視線を引き付けておくためだけではない。「奇抜なひし形」はシクロクロッサーを速く走らせる、進化のカタチなのだ。

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最新規格が盛り込まれたバイク仕様

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過去にサンタクルーズの全部入りシクロクロスバイク、STIGMATAを紹介した。当時は早熟だったようで、やっと時代が追いついてきた。スーパープレスティージュやブリコクロス、UCI シクロクロスの開幕から私は機材をウォッチしているのだが、どうやら「ディスクブレーキ規格」の乱立期はいったん収まり、デファクト・スタンダードが生まれつつある。

フラットマウント、前後140mmローター、フロントは100m x 12mmスルーアクスル、リアは142mm x 12mmスルーアクスルが標準になりつつある。もしかしたら早々とBOOST規格が採用されて、SRAMが12SPEED化をぶち込んできそうな気もするが、当分先だろう。今シクロクロスバイクやディスクロードを買うなら、この規格が主流だ。

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ディスクブレーキのロードバイクや、シクロクロスバイクの規格において、ダイレクトマウントがポストマウントを駆逐していくことは間違いない。大手(ジャイアント、スペシャライズド、トレック、CANNONDALE)のメーカーがフラットマウントを採用しているのだから、他社も追従しないと生き残れない。シマノとCAMPAGNOLO、SRAMだってダイレクトマウントで業界を動かしているわけだから、もはやこの流れは、誰にも止められない(ただ、肝心のロードバイクのディスクブレーキ化はまだ先だ)。

本章では「最新規格が盛り込まれたバイク仕様」と記したが、2018シーズンの後半を迎える頃には「標準規格」になるだろう(と、予想している)。これからシクロクロスバイクやロードディスクブレーキの購入を検討している人は「フラットマウント」、「140mmローター」、「12mmスルーアクスル」の3つを抑えておきたい。なお、ポストマウント式のディスクブレーキはフラットマウントに取り付けることはできない。

「じゃぁ、何でITさんは160mmローターを使っているんだよ!」と言うコアなユーザーがいるかもしれない。ENVE好きならわかると思うがENVEのCXフォーク(QR)は160mmローターより小さいものを付けられない。次買うなら160mmは不要だから、140mmと断言しておこう。

ホイール選択が悩ましい

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標準で附属しているホイールはレースにも使用できる。ただ、スペアホイールは予備を1つくらい持っておきたい。それには、INFLITEの規格に合うハブが必要だ。安くて良いものを選ぶのならWiggleやCRCで売っているPRIMEホイールが良い。さまざまなハブ規格に対応しているディスクブレーキ仕様のホイールだ(ハブはNOVATEC製)。カーボンクリンチャーやカーボンチューブラーも選択できる。

実際に末永くINFLITEと付き合っていく人には、もう少し背伸びをしてほしい。CAMPAGNOLOのBORA DBがおすすめだ。写真家の辻啓氏もINFLITE & BORA DBの仕様で走っている。他にはMAVICも良い。ZONDA DBも魅力的だ。シクロクロスという特殊な競技においてチューブラータイヤはスタンダードだから、もしもINFLITEでチューブラーを使いたくなったら、PRIMEかBORAを私は選択する。


Prime – RP-38 カーボンクリンチャーディスクロードホイールセット

シクロクロスという伝統を重んじる競技において、ディスクブレーキ仕様は大きなパラダイムシフトだった。ただし、タイヤは海外のトップ選手はチューブラータイヤを使用している。確かにチューブラータイヤの方がしなやかでよくグリップして、よく走る。だからINFLITEでシクロクロスを積極的に走るならば、チューブラーホイールを1セットは用意しておきたい。

交換部品の有無

INFLITEを注文するとしたら、ぜひ合わせて用意しておきたいパーツがある。エンド金具だ。最低5つは持っておきたい!私は今シーズン1つ飛ばしてしまった。予備パーツを同じチームの和田選手が持っていたから本当に助かった!シクロクロッサーなら、「高圧洗浄機」と「エンド金具」は必ず用意しておこう。

私のおすすめは、INFLITEの注文時にエンド金具も合わせて大人買いすることだ。あとから注文すると、エンド金具と同じくらい送料が取られるのでおすすめできない。それでもエンド金具がなくなった場合は以下のURLから注文できる。できれば安いAirMailで送ってほしいのだが・・・。

可能なら日本の代理店で、アフターパーツの余剰をストックしておくといったアフターにも力を入れてほしい。備えあれば憂いなし。シクロクロスをやっていると、いつかエンド金具は必ず飛ぶから、5個は言いすぎだが、3つは用意しておこう。

公式サイト:「DERAILLEUR HANGER FOR ROAD DISCBRAKE MODELS/INFLITE CF SLX/ROADLITE CF/ROADLITE AL SL

重量

ディスクブレーキ仕様のバイクというと、重量が重いという先入観を持ってしまいがちだ。実際にINFLITEの重量はどれほどなのだろうか。フレーム重量は約940gでフォークは約360g、合計1300gがカタログ値だ。これにシートポスト200gほどがプラスされ、1500gほどになる。それでも新型S-WORKS TARMAC SL6とほぼ同重量(1568g)、TIME ZXRS(1500g)とほぼ重量が同じ”ディスクブレーキ仕様のシクロクロスフレーム”である。。

「シクロクロスフレーム = 重い」という先入観はINFLITEには全く当てはまらない。実際の実重量はというと、ホイールを外した状態で「4760g」だった。実はこれはめちゃくちゃ軽い。スプロケ200g、TUホイール1300g、CXタイヤ2本900g、ローター2枚で200g、とすれば、トータル7.36kgだ。

7.1kgは私の新型TARMAC SL6とROVAL CLX50、電動アルテグラの仕様とほぼ同じ重量である。そして私のTIME ZXRSのアルテグラ電動仕様と同じ重量である。困ったものだ。シクロクロスバイクも、ここまできた。INFLITE、恐ろしい。

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ジオメトリーと650Bの意味

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INFLITEの700Cサイズで最も小さいのはXSだ。このサイズに乗れるのは身長170cm前後だと思う。リーチが376mmほどだから、160cm前後の人も乗れるが、少し大きいと思う。実際に170cmの私が乗るならXSだ。もしも自分の身長で適正サイズがわからない場合は、CANYONのサイトで判別できるので試してみてほしい。

さて、先ほど「700Cサイズで最も小さいのはXS」とあえて記したのには理由がある。INFLITEには650Bというサイズもラインナップがされている。ランドナーの方には懐かしい大きさだ。サイズについて少々触れておこう。みなさんがお使いのロードバイクのホイールは700Cというサイズだ。

数字で言うなら26型=559mm、650B(27.5)=584mm、700C(29)=622mmである。650Bのメリットと言えば、小さなサイズでも狙ったヘッド角やトレール量が確保できることだ。700Cで小さなフレームサイズになるとトレール量が長くなってしまう。

実はTIMEやCOLNAGOの小さなサイズにおいて、フォークのトレール量が長くなる傾向が強い。フランス車のまともなサイズはMからだと思う。最近トレール量やヘッド角をまともに確保したジオメトリーで売られているのは、スペシャライズド、トレック、キャノンデールといったアメリカブランド(製造はほとんど台湾)だ。

設計上、超えられない壁をCANYONは650Bという規格で乗り越えた。確かにホイール選びや、使いたいタイヤが少ないといった課題も多い。またスピードを競うシクロクロスにおいて、コントロール性は高いが、走破性の面では650Bは700Cに劣る。たとえ身長が低くても、C1やL1ならどうにかXSに乗ってほしいところだ。ただ、楽しむという観点で女性やお子さんが使うなら650Bで良いと思う。

トレール量やヘッド角の重要性についてはアンカーの設計思想が最もわかりやすい。こと、シビアなコントロールが求められるシクロクロスだから、「ヘッド角」「トレール量」は重要である。実際、ロードだけに乗っているとヘッド角が1度違ったからと言って誰も騒ぎ立てない。私は、オフロード系のバイクに乗って初めてその意味がわかったぐらいだ。

70°と66°でたった4°の違いしかないが、オフロード系バイクにおいては全く別ジャンルだ。前者70°がクロスカントリー系のバイク、後者66°がオールマウンテン系だ。ヘッド角はジャンルを分けてしまうほど重要で、ヘッド角が立てば立つほどハンドリングもクイックになってくる。ロードバイクの場合は素早いハンドリングが必要だから、およそ72°程がスタンダードだ。

INFLITEのヘッド角72.5(Mサイズ)と、ヘッド角は立っている。この角度がハンドリング操作にどのような影響を及ぼすのかは、次章のインプレッションでお伝えしたい。

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インプレッション

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INFLITEを普段の練習コースや、実際のレース会場で乗り込んでテストした。また、関西シクロクロス日吉ステージの試走でも使用した。日吉ダムのコースレイアウトは、横の小高い丘に設営されたアップダウンが織りなす、きついコースである。下り区間は50%、上り区間は50%で小高い丘を行ったり来たりする。

他にも短いシングルトレイル、舗装路の上り、スリッピーな泥区間がある。コース難易度はやや難しい。そして、何より体力が必要になってくる。体力を減らしながらも、ライン選択を間違わない集中力と判断力も試される。裏を返せば、総合力が試されるから、INFLITEを試すには打ってつけのコースだ。

早速、INFLITEに乗る前の「準備段階」で感じたことがある。率直な感想をそのまま包み隠さず書き出してみたい。まず、フロントホイールの準備に手間取った。フロントホイールを外す際には、六角レンチを使用してスルーアクスルのシャフト部分を抜き出す。しかし、リアホイール側シャフトは簡単に手で回して外すことのできるオリジナル(DTSWISS製?)だ。前後で統一されていないのは、少し利便性に欠ける。

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六角レンチを持っていないと、フロントの着脱ができないのは少々誤算だった。レース会場に工具を忘れたり、ふだんの練習中に工具を忘れてパンクをしてしまったら、悪夢以外の何物でもない。後輪にも使用されている「手で回せるシャフト」に、すぐに変えたいと思った。バイクとホイールの分解はできるだけ工具を使わずに、速やかに着脱ができることが望ましい。

と、書いたがどうやら私の知識不足だったようだ。


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スポーンって抜けます。と、というよりあの辻啓さんご本人からコメントいただけるとは(汗

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こちらはご本人のINFLITEです。やはり、黒にBORAはイケてる。

レースで代車を用意できる選手は少数だと思う。しかし、予備ホイールを持っているという人は多いと思うから、ピットでホイールだけ交換したい際に少々手間取ると思う。なのでフロント側のシャフトは、DTSWISS等の手で回せるタイプに変えるのが良いだろう(実際に規格が合うかは不明。)

今後INFLITEにアップデートがかかるのならば、「ホイールをいかに素早く外せるか」についても、メーカー側は考慮してほしい。確かに簡素な構造であれば接触の際の巻き込みもない。しかし、利便性やピットでのホイール交換を考えると、アーレンキーがないとホイールが外せないから、余り好ましくない構造だ(スペアバイクで良いという正論もあるが、普通は予備バイクを用意できない人のほうが多数だ)。

もしくは、ピットに電動ドリルを置いておき一気に引き出す、なんて用意も面白いかもしれない。

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さて、実際に重要なのは使い勝手だ。乗る前にやってみたかったのは担ぎだ。私が期待していたのは、あの独特な「ひし形」が体にうまくフィットするかだった。シクロクロスになじみのない方にとって、あの「担ぐ」というスタイル自体が、そもそもどうやっているのか理解に苦しむかもしれない。「担ぐ」は体とバイクを3点で支持している。

大柄な海外選手や三船雅彦さんはトップチューブ側から腕を通すが、日本人はダウンチューブ側から腕を通す場合が多い。「肩とトップチューブ」、「腕とダウンチューブ」、そして「手でハンドルエンド」を持つ。ハンドルを引っ張ることで、より強固に固定する。そうすることでバイクを担いだときの安定性を増している。

「ひし形」の部分が、担ぎにどのような影響を及ぼすのかが楽しみだった。まず、肩にフレームの三角を放り込む際にすでに違いを感じる。ダウンチューブをつかんで肩に入れ込む際、ひし形形状は肩に到達するまでに余裕が感じられる。余裕がありすぎて、違和感も感じた(僕の体ごと通り抜けられるんじゃないかってぐらい!)。

何度も繰り返して理解したことは、少し背中に余裕を持たせ、ヘッドチューブに胸を寄せるイメージを持つと素早く担げる。INFLITEを担ぐ際に、いま使用しているBOONEと同じように担ぐと、手がハンドルに届かなかった。原因はINFLITEのTOPチューブの高さにある。

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冒頭でも紹介した特殊なひし形は、持ちやすいようにトップチューブを高めに設計している。ダウンチューブとトップチューブの距離が離れているので、前三角(というよりひし形)も大きくなっている。したがって、担ぐ際には通常よりもやや前方で担ぐ必要が出てくる。

慣れてしまえば何ら問題はないが、構造を理解せずに「今使っているバイクのイメージ」で担いでしまうと、「なんかハンドルまで遠い!担ぎにくいフレームだ!」という猫に小判状態になってしまう。エポックメイキングなフレーム構造をきちんと理解した上で、バイクを堪能する必要がある。

実際にINFLITEを使ってみるとさまざまな発見がある。バイクの重量配分が的確だ。持ち上げてみれば、すぐにバイクセンターがわかる(後述するが、乗ったときの感覚は異なった)。担ぐ際の軌道が素直だ。ありがちなのは俗に言う「ガチャガチャしてる」というやつで、無駄の多い動作をしてしまう。ただINFLITEは「このダウンチューブを持ち上げて、これぐらいで担げば、このぐらいの体の位置に来る」というイメージを持ちやすい。

バイクのバランスがそうさせているのか、独特なひし形の余裕がそう思わせるのかは定かではない。このバランスの良さは、初心者にはうれしいバイク重量配分だと思う。さて、バイクにまたがる前の段階で、多くの文字数を消費してしまった。ここからは、肝腎のバイク性能について確認していこう。

BOONEとINFLITE

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幾ら担ぎが良くても、95%は乗車だ。ステアリングまわりや、バイクコントロールのしやすさが本来私が知りたかった部分である。そしていつも思うのは、「ひと踏み目が重要」ということだ。

私が乗っているTREK BOONEは、INFLITEとはまた違うアプローチで先端を行くシクロクロスバイクだ。シートポスト部分に、ISOSPEEDというショック・アブソーバーを搭載している。このISOSPEEDのおかげで、リアのトラクションがかけやすく、何よりボヨンボヨンと乗り心地も良い。

ネイスや、私が好きなラース・ファンデルハールといった選手もBOONEに乗っている。おそらくUCIシクロクロスやスーパプレスティージュにおいて、最も使用率が高いバイクの1つだ(蛍光イエローはあれすべてTREK BOONE)。というわけで、比較対象のバイクとしては最も良い一台だと思う。

ただ、シクロクロスの場合は特に、しっかりと書いておかねばならないことがある。タイヤが違うと(マッド、オールラウンド、スリックetc…)バイクの印象も全く変わってしまうことだ。リム材質、リム重量、リム幅、空気圧(何度も言うが空気圧が一番重要)の違いでバイクの印象はさらに変わってくる。今回スルーアクスル式のチューブラータイヤが用意できなかったので、INFLITEのタイヤをBOONEにも入れ替えてテストした。これで差分はほぼない。

余談だが、某ロードバイクメディアで面白い記事があった。TIMEフレームのインプレッションでライトウェイトとCompetitionのチューブラーなんて、「究極の機材」が取り付けられた状態で「TIMEらしさ出てますね~」というあの記事だ。本当にネタとしか思えない。Lightweigthをはいたら、硬すぎてフレームの良しあしは帳消しになる。(TIMEとLightweightの代理店が一緒だから、この組合せになったのだろうけど・・・。)

余談はさておき、お気に入りのBOONEをまずはじめに乗る。ふむふむ、自分のバイクは慣れているだけあって特に無駄な点が見つからない。では結構乗ったあとでINFLITEだ。舗装路を進んだ感覚は何の違いも見当たらない。この時点で「このフレームはっ違うっっ!」と、なったらもはや測定器である。

スルーアクスル

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難しいことは抜きにして、普段練習しているキャンバーを通り、お気に入りのサンドセクションにコースインした。キャンバーセクションに差し掛かった瞬間だった。私の中の「最高であるはずのバイク」という認識が刷新されてしまった。トラクションのかかり方が特別だった。別の言い方をすれば、フロントタイヤにかかる圧がよく伝わってくる。

少しずつ理解したことがある。BOONEとINFLITEのフォーク規格の違いだ。BOONEはクイックリリース仕様であるのに対し、INFLITEは12mmスルーアクスル仕様のフォークだ。規格の性能差はSORAとDURAACEぐらいの違いがある。キャンバーで安定感のない私の走りは、フォークのせいだったのだ!(←んなわけない)。

いままでスルーアクスルを使ってキャンバーをゴリゴリ走っていた人は、シメシメと思っていたに違いない。いや、キャンバーなんてテクニックだろ!と、思われる人もいるかもしれない。しかし、どちらか選べと言われたら、スルーアクスル選ばせてください。お願いします。

スルーアクスルという規格は、ディスクブレーキバイクの標準的な装備になることは目に見えている。これはINFLITE独自の性能というよりも、今後デファクト・スタンダードになっていくであろう、シクロクロスバイクの規格の一部として捉えなくてはフェアではない。

スルーアクスルはもはや鉄板だな!と気分をよくした私は、INFLITEの性能をさらに追求してみたい、という欲求が増していった。

剛性

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砂場に短いコーナーをいくつか作って、インターバルを繰り返す。そのうち、だんだんと体がINFLITEの挙動を理解してくる。明らかにINFLITEは硬いフレームだ。わずかながらINFLITEというフレームから感じ取れたのは「硬さ」だった(何度も言うが、タイヤ空気圧の違いのほうが、踏み込んだときの違いが大きく、印象の違いもはっきりとしている)。

何かに似てるなぁ、と思ったのがTREKのロードモデルDOMANE SLRだ。スライダー式のギミックを調節すると、フレームのフレックスが変わる特殊なバイクだ。DOMANE SLRのスライダーを一番硬くしたときの感覚とINFLITEの感覚は似ている。DOMANEとBOONEは兄弟みたいなものだ。本質的には近い。とするとだ、私が感じた「硬さ」とは、

INFLITE > BOONE

という相対評価として整理できる。ガチガチなTARMACのような硬さというよりは、しなやかさも併せ持つ、シクロクロスバイクにしては「やや硬」のフレームと表現してみたい。ではINFLITEを砂場から引きずりだし、芝と舗装路も走ってみることにした。

INFLITEを乾いた芝で乗り込んでいくうちに、CANYONの設計思想が徐々に現れてくる。まるで、乾いた泥の中から浮き上がってくる水のように。CANYONは長時間楽しめるようなグラベルロードバイクを作ろうと思っていない。INFLITEの設計思想の根底にあるのは、競技時間60分の間でいかに速く、遠くへ、思い通りに進ませることができるか、その1点にある。

その1つを尖(とが)らせたシクロクロス競技用のバイクが、INFLITEだった。

INFLITEは60分間でクタクタになってしまうような、「嫌な硬さ」ではない。しかし、シクロクロスバイクにしては高い剛性感がある(BOONE比)。どちらかと言えば、何度もアタックの応酬を繰り返すような、クリテリウムで威力を発揮するタイプで、かかりの良いバイクといえばわかりよい。細かな緩急を伴ったシチュエーションで、ダッシュを繰り返すような想定をしているのだろう。

立ち上がりでダッシュするときの感触はINFLITEの方が好印象だった。ただ、何回もやっていると疲れるかもな、と感じた。

お恥ずかしい話だが、最近やっと「自分がバイクのどこに乗っているのか」を理解し始めた。タイヤ1本分のワダチに対して、フロントタイヤをねじ込む遊びを何度もやって気づいたのだ。リアタイヤを滑らせながら曲がったり、スライドさせたり、バイクの方向を変える方法はステアリング操作以外でもできるのだ!と、遊びながら学んでいった。

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リアタイヤの微妙な操作感覚は、バイクによって異なるし、人それぞれ受ける感覚も違う。私の感覚で言えば、BOONEはやや後ろ寄りに重心があると感じる。バイクとしてはオーソドックスな印象だ。対してINFLITEは、BB付近にバイクを操作する重心がある(気がしている)。

実際にバイクの重心位置を測定したら、もう少し違う結果が出るはずだが、INFLITEを片手で持って「真ん中はここ」という簡素な位置は、ちょうどあの独特なトップチューブの変形部分だ。正直なところ、リアタイヤを滑らせながら方向転換する方法は、TREK BOONEの方がやりやすい。理由は慣れているからだろうし、どうやったら操れるかを知っているからだ。

マイバイクの慣れの差が、本来INFLITEを評価すべき性能面に対して、正確な評価を下せていない、ということを正直に申し上げておきたい。なので、「バイクに乗り慣れる」という作業も必要なのだ。バイクを体に合わせ、体をバイクに合わせる。時間をかけてゆっくりと関係を築いて行く必要がある。

ステアリング

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INFLITEの特徴的な点をもう1つ上げろと言われれば、ステアリング操作にある。CANYONはジオメトリーをしっかりと考えており、トレール量や、ヘッド角度を最適化している。ヘッド角度から、とてもクイックな設計なのだろうと想像していた。

先程も少し触れたが、マウンテンバイクであれば、XC用は69.6~70.5°ほど、オールマウンテンは67°前後、下り系になると~66°と、ヘッド角度はバイクの特徴をよく表している。ロードバイクはクイックな操作が求められるから、72°ほどとヘッド角が立っている。INFLITEのXSサイズも同様に72°ほどとヘッド角が立っており、クイックな操作感になっている。

ステアリングは、上半身から抑えこむように、上から圧をかける操作イメージを抱いた。しばしばシクロクロス会場で見かけるハンドルをしゃくりあげた、アップライトなハンドル位置とは真逆を行っている。あの独特なハンドル位置だと、ハンドルを前後に動かすような操作イメージがある。

あのしゃくり上げは……見た目は「シクロクロスバイクっぽい」が……実際はどうなんだろう。ワールドカップでも、関クロでも「しゃくり上げ」を最近見なくなった。もしかしたら、日本独自の「あの人がやっているからそうした」的なガラパゴス設定だったのか……。実はあの特異な「しゃくり上げ」を私も試した(もちろん真似だ)が、上からフロントタイヤを押さえ込みづらかったので、すぐやめた。

それよりもフロントタイヤにしっかりと圧をかけられるステム長と、ハンドルリーチ、ハンドル幅を調整した方が良いと気づいた。INFLITEの操作感覚は「クイック」そのもので、敏感な印象だ。私はどちらかというと、バイクを傾けつつ(ハンドル操作はなるべくせずに)曲がっていくことを好むから、あまり切れ込んでほしくない派だ。

ただ、フレームの操作感覚は慣れなので、INFLITEを操作していくうちに次第に慣れていくのだろう。ステム長とリーチの話が出たところで、次はINFLITEのXSに附属していた、シャークヘッドのような一体型ハンドルを見ていこう。

一体型ハンドル

一体型のハンドルは賛否両論あると思う。ハンドルのシャクリ量を変えられないからだ。ただ、シクロクロスの場合は全く問題ないと考えている。まず、下ハンドルを握る機会は本当に少ない。それでも、もしもハンドルが合わなかったら、別のハンドルを使えばよいだけである。

最近のシクロクロスワールドカップで使用されている機材を見ると、特に参考になるのは身長が低い(170cmほど)ラース・ファンデルハールのジオメトリーだ。ハンドル幅は420mmで広い。全体的にシクロクロスのハンドルのトレンドは、「幅広」「リーチ短め」「ステム短め」で来ているようだ。

海外選手はロードの場合「ステム長め」という印象を持っていた。しかし情勢は刻々と変わってきているようで、シクロクロスに限ってはそれほど長いステムを使用していない。オフロード系バイクのステム長も短い傾向にあり、オールマウンテンだと50mm~60mmほどで短い。

どうやらCANYONも短めのセッティングで攻めてきているようで、XSに附属していたステム長は80mmだった。なお、私がレースで使用しているハンドル幅も420mmで、ステム長は80mmだ。INFLITEに附属しているステムとハンドルは、カーボンハンドルだが、実際に使ってみて合わなければ、別のサイズを注文した方が良いだろう。

余談だが、ロード系の人で400mmを使っているなら420mmを使ってみてほしい。下りが安定して抜群に楽になる(腕立て伏せを想像してほしい。胸ほど狭い手の位置と、肩幅なら、ワイドな方が体を支えやすい)。シクロクロスのハンドルはワンサイズ大きめ、リーチ短めが良いと思う。

ただ、STIのリーチも気にした方がよい。初期型のR785タイプのDi2油圧式は、リーチが余計にプラスされるのでおすすめしない。個人的な話題だが、ポジションにはまだ改善の余地があると思っていて、ステム長をもう少し短く、75mmか70mmにしたい。

トラクションのかけやすさ

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レース会場で「INFLITEはトラクションはかけやすいですか」という質問を受けた。正直に答えてしまうと、「トラクションなんてテクニックしだいだ」と答える。バイクやフレームを変えたら、途端にトラクションが掛かるなんてことはまずありえない。

そんなものは、重心位置と、リアタイヤへのグリップ、最適なペダリングトルク、そして路面状況でトラクションは無限に変わってしまう。

滑るか滑らないか、登れるか、登れないかの瀬戸際、クセのあるフレームだと扱いづらいというのは確かにある。CANYONはもともとオフロードバイクの色が強く、設計自体を考えても、「トラクション」云々を気にする必要はない。それよりも、INFLITEを使い倒して、バイクを操る感覚を磨いた方がいい。リア・サスペンションのように、トラクションコントロールをバイクが補ってくれることなど無いのだから。

ただ、実際に乗ってみるとBOONEよりもやや後ろめでも、しっかりとリアタイヤがグリップする印象がある。

しかし、シクロクロスの難しいところはタイヤ選定、ペダリングスキル、重心移動とフレーム以外のテクニック部分が、フレームの性能”程度”を吸収してしまう。「弘法筆をえらばず」がまさにそのとおりになってしまうのだ。現実を突きつけてしまえば、INFLITEを使ったからといって、マチューのようにブッ飛ぶようには走れないし、リアタイヤを滑らせながら強烈なリカバリーも、突然できるようになったりはしない。

泥との戦い

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この話題に触れずに、INFLITEの何に触れようか。INFLITEと泥は「相性が悪い」。読者の方は、この日本語の意味を注意深く読み取ってほしい。相性が悪い、すなわち泥はINFLITEを嫌う。要するに、泥がフレームにまとわりつかない。シクロクロスは泥との戦いである。ロード乗りには理解できないが、コースを1周してきたら「車重が500g増す」なんてのはザラだ。

たとえば、リム重量を10g軽減するために、リムテープを改良するだなんて「アホらしい」事などシクロクロッサーは気にしない。

リム重量を450円で軽量化する方法 400g→378g Notubeリムテープ
ROVAL CLX 50のフロントは630gですが、魔法をかけると、、、 608.5gまで落とせます。実は単純にリムテープを純正品から変えただけなのですが意外と「リム重量は気にするのにリムテープは見てみぬふり」という人も多いのではないかと思います。というか、私がそうでした。 最強に軽いリムテープ のNOTubeのテープを見ていきます。 Notube リムテープ もともとMTB用とCX用のTL化の為...

特にリム外周重量なんてものは100~200gは変わるかもしれない。キレイ好きなローディーにとって、にわかに信じられないかもしれないが、シクロクロッサーからすると普通のことだ。とはいいつつも、担いだり、登ったりするわけだから、車重は軽い方が良い。

駆動系の泥の付着は仕方が無い(泥の付着でエンドがモゲルなんてことも避けられない)が、ダウンチューブ下やBB周りにはなるべく泥は付着してほしくない。このシクロクロスを象徴する泥対策については、INFLITEは考え込まれている。

まず、BB周りはとても簡素だ。余計な形状が無く、とてもシンプルだ。簡素すぎてどこか物足りないくらいだ。ただ、結果的に泥が付きやすい部分でもあるので、これくらいシンプルな構造が良い。

もう一つ気づいたことは、ケーブルルーティングである。そういや、ケーブル類がほとんど外に出ていない。意外と盲点なのだが、シクロクロスのスタート直後のカオス状態の際には、選手のバイクが絡まってしまうことがある。ほとんどがホイールだが、まれにケーブル類が絡まってしまう場合がある。

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INFLITEを手に取ると違和感があるのは、「シンプルさ」「無駄のなさ」が大きく影響している。とにかく「何もない」のだ。それはボルト一つ一つにまで及んでいて、シートポストを調整するボルトもフレーム内側から締める仕組みだ。当初、ボルトがどこにあるのかわからなかった。

確かに、一度ポジションを出してしまえば、頻繁にサドル高さを調整することはないから、このギミックはうれしい。通常のシートクランプはネジ部で横から締め付けるタイプが主流だ。しかし、高圧洗浄機を使う際にもろに水を受けてしまう。その点INFLITEの構造は、シクロクロス特有の厳しい洗車のことまで考えて設計されている。

また、純正でチェーンキャッチャーを備えている。私も装着しているが、フロントシングルであれば必要だと思う。そしてこのチェーンキャッチャーも非常にシンプルで、美しい。私が使用しているものはウルフトゥースの樹脂製だが、少々無骨だ。

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ここまでINFLITEを使用してきたが、一番心残りだったのは泥にドブつかりするような激しい泥で使えなかったことだ。どちらかと言うときれいなコースで使用し、路面コンディションも良かった。泥がまとわりついて、毎周バイク交換、なんてシチュエーションでINFLITEを使用しないと本来の価値は引き出せない。

ただ、昨今のシクロクロスワールドカップを見ていると、マチューはメカトラなく走り終えている。その点を考慮すると、世界トップレベルのサーキットでも全く問題のない性能を持っていることが証明されている。

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価格

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INFLITE CF SLX フレームセットの価格は219,000円だ。個人的な感想だが、CANYONは完成車を買った方が良い。大手メディアでは絶対に書いてくれないが(書く必要もないが)、必要のないパーツは売って代わりのものに交換すればいい。INFLITE CF SLXの完成車ラインナップは以下のとおりだ。

INFLITE CF SLX 9.0 PRO RACE

  • コンポーネント:SRAM Force 1
  • 価格:449,000円(※税別、送料等別途)

INFLITE CF SLX 9.0

  • コンポーネント:Shimano Ultegra R8000
  • 価格:359,000円(※税別、送料等別途)

INFLITE CF SLX 8.0 PRO RACE

  • コンポーネント:SRAM Rival 1
  • 価格:309,000円(※税別、送料等別途)

自分で使うならDi2で組むのでフレームセットを買う。しかし本記事で期待されているのは、これからシクロクロスバイクを買う人や、始めたい人に向けて、大事な1台選ぶことだ。どれを選んでもフレームは同じだ。したがって、コンポーネントだけが大きな違いである。結論を言ってしまえばアルテグラ仕様のバイクをおすすめしたい。

なぜなら、シクロクロスはバイクを破壊してしまう確率が高いから(初めは特に)、国内でアフターパーツが手に入りやすく交換がしやすいシマノが良いと思う。SRAMはMTB界ではメジャーだ。もしも自分がシクロクロスのレースに出るなら、やはり機材はシマノが無難だと思う。

以前はSRAMの代理店がダートフリークだったが、MTBとROAD機材で代理店が分かれてしまった。ROAD機材はインターマックスがSRAMを取り扱っている。いろいろ含みを持たせた書き方をしてしまったが、今シーズン練習を含めたら50回は転倒しているし、エンド金具は折れ、ディレイラーを破壊し、STIは曲がったから、安くて、すぐに交換できるシマノを選んでおきたい。

言ってしまえば105で十分である。というよりオーバースペックぐらいだ。

なお、シクロクロスのレース会場で手配できる販売部品もシマノ製品が多い。そして現場でシマノのスペアパーツを持っている可能性も高い。さらに「昨日のレースでディレイラー壊れました。誰か使っていない機材を(略」とSNSに投げかければ誰かが機材を分けてくれるし、私はよく部品を分けている。という実際にレースを走って感じた総合的な判断である。

MTB組むならSRAMのコンポーネントだが、シクロクロスバイクはシマノで良いと思う。なお、それぞれの納期は在庫によって変わるから、実際にメーカーのサイトを見てほしい。自分のコンポーネントで組みたいのならばもちろん、INFLITE CF SLX FRAMESETを選択することが最善だ。

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まとめ:INFLITEという起源へ

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2018年シクロクロスワールドカップにおいて、INFLITEはマチューファンデルプールと共にトップへ上り詰めた。世界選手権前のレースで、早々にワールドカップリーダーを決めてしまった。しかし最も期待された世界選手権では優勝を逃し、アルカンシェルをまとうことはなかった。

それを差し引いても、2017年に本格的なシクロクロスレースバイクをリリースしたばかりのCANYONは、1年も経たないうちに世界のトップへと駆け上がっていった。CANYONやマチューにしてみれば、世界の頂点へたどり着くことは夢物語でも、何でもなかったのだろう。世界一の座は来年に持ち越しになってしまったが、間違いなく最高峰のステージで戦えるポテンシャルを秘めている。

冒頭に私はこんな1文を記した。「バイクに”祖先”なんてものは存在しないのだが、あえてシクロクロスバイクの祖先をたどっていけば、ロードバイクにたどり着くのだろう」と。いや、本当にそうだろうか。ここまでの道のりを振り返ると、INFLITEは決してロードバイクやマウンテンバイクの延長線上には存在していなかった。

CANYONが創造したINFLITEという存在こそが、純粋なシクロクロスバイクの起源になるのではないか。そして世界最高峰のシクロクロッサーと共に、CANYON INFLITE CF SLXは新たな時代の幕を開けようとしている。

CANYON INFLITE CF SLX スペシャルサイト:TAKE FLITE

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