今までロードバイクホイールの頂点に君臨してきたのは究極の回転体Lightweightだった。ハブからスポークまで可能な限りカーボンファイバーを使用し、ニップルなどを使用せずリムとスポークの接合部も一体整形されている。工業立国ドイツが生み出した究極の回転体は最も軽量で、最も頑丈、そして最も高価なホイール”だった”。
長らく続いたLightweight1強のホイール界に今、新しい風が押し寄せようとしている。オーストラリアの材料工学会社Partington(パーティントン)が開発した全く新しい方式のホイールだ。Partingthonが開発したエアロカーボンチューブレスディスクブレーキ仕様のホイールの重量はわずか1,150gだ。LightweightのMeilenstein C 24Dホイールセットの重量が1,380gだから230gも軽量である。
ただ、Partingtonのホイールで注目すべき点は重量ではない。今までどのホイールもなし得なかった革新的な技術が盛り込まれている。1つ目は剛性をカスタマイズできること。2つ目はカーボンスポークがハブに「巻きつけられている」ことだ。ブーメラン状のスポークがハブを取り囲むように引っ掛けられている。
そしてPartingtonのホイール開発にはオーストラリアの英雄カデル・エヴァンスが携わっていた。今までにないホイールの剛性チューニング、新しいスポーク接続方法、超軽量という新要素が詰め込まれた全く新しいホイールと言える。今回の記事は、オーストラリアの材料工学会社Partingtonが開発した39R 44Rホイールを探る。
Partington ホイール
Lightweightを超えるべく生み出したPartingtonの創設者Jon Partington氏は一体どのような人物なのだろうか。Jon Partington氏は、イギリスの自動車産業とモータースポーツ産業で機械設計とエンジニアリングの経験を積んだ。そして、オーストラリア・ビクトリア州のディーキン大学で高度複合材料の博士号を取得した。
Partington社は世界的に有名なCarbon Nexus research facility(カーボンネクサス研究施設)やFerrari 488 Pistaに標準搭載されているカーボンファイバーホイールを手がけるCarbonRevolutionに隣接している。
Partington社の特徴はホイールの構想から、詳細設計、構造分析、材料特性分析、金型設計、金型製造、部品製造、テストまで一貫して自社で行っている。すべての工程を一貫して自社で行うことで、既存の制約に縛られることなく自由度の高いホイールを生み出すことに成功した。Partingtonホイールの開発期間は5年に及んだ。
特殊なホイール仕様
Partingtonのホイールの特徴は、独自のカーボンファイバースポークデザインだ。軽量性よりも今までに存在しなかったスポークパターンデザインが目を引く。Lightweightのホイールとおなじく、Partingtonホイールもリムとスポークが一体化したホイールとして製造されている。
ただ、今までのLightweightやイーサーティンのホイールとPartingtonが異なる点は、カーボンファイバースポーク(U字のブーメラン状のもの)が張力のかかった状態でリムの2点に接着され、その過程で自社製のアルミニウムハブシェルにカーボンファイバースポークが巻きつけられている点だ。
ホイールを一見すると20本のスポークから成り立っている。しかし、実際には10本のブーメラン状のカーボンファイバースポークから構成されている。ブーメラン上に曲げられたカーボンファイバースポークをハブに引っ掛けて引っ張り合うことによって、スポークテンションを非常に高く上げることに成功した。
Lightweightやコスミックカーボンアルチメイトのスポークデザインと言えば、1本のカーボンファイバースポークがハブの側面を横断するように直線的に配置されている。Partingtonのスポークデザインはそれらとは異なりブーメラン状のカーボンファイバースポークが連動してハブを通じて引っ張り合うことでテンションを高めている。
このユニークなスポーク設計は、Partingtonホイールの設計のキモだ。「ハブ引っ掛け式カーボンファイバースポーク」によって異なる3つの剛性オプションを選択できる。Partingtonホイールで最も剛性の高いオプションは、Lightweightマイレンシュタインよりも剛性が高いデータが得られている。中程度のオプションはそれよりも剛性がやや低く、そしてより剛性の低いオプションは、より軽いライダー向けに特別に用意されている。
気になるリムハイトは、フロントが39mmでリアが44mmだ。重量は520gと630gと非常に軽量である。リムプロファイルは前後で異なる形状が採用されている。フロントリムは、横風であおられないように丸みをおびたリムプロファイルを採用した。リアリムは駆動効率を優先し強度と剛性の向上を狙ってわずかに三角形のプロファイルを備えている。
Partingtonホイールはディスクブレーキ専用設計だ。今後リムブレーキ仕様の発売の予定はない。リムの内部は、高密度のPMI(ポリメタクリルイミド)フォームコアが詰め込まれている。この特殊な高密度PMIフォームのおかげで非常に薄いカーボンでリムを作ることが可能になった。
Partingtonによると、カーボンリムの積層を追加するよりも、ポリメタクリルイミドフォームコアを使用するほうが軽量化、強度、剛性のためにより効果的な方法であることがわかっている。
そして、リアとフロントリムともにリム内幅21mm、外側26.5mmプロファイルを採用している。リムプロファイルはMavicのUSTロードチューブレスに適合している。チューブレスタイヤの使用と同様に、クリンチャータイヤやチューブも使用することが可能だ。
まとめ:Lightweightを超えられるか
気になる価格は7,590 オーストラリア・ドルで日本円で57万円だ。価格面では究極の回転体Lightweightにわずかに及ばないが、重量や剛性はLightweightを超える(とされている)。Partingtonホイールの開発にはツール・ド・フランスを制したオーストラリアの英雄カデル・エヴァンスも携わっている。
Partingonホイールのラインナップは39mm,44mmの1種類しか存在していない。しかし、今後はより空力重視のディープホイールや、MTBやCXや用のホイールが今後登場する計画がある。すでにホイールの販売は始まっており、納期は16週ほどだ。Lightweightよりもさらに軽量で剛性が高い究極の回転体をお探しの方は、Partingonホイールを一度検討してみても良いだろう。
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