フランスの高級自転車ブランド「TIME」が誇るロードバイクScylon(サイロン)は、2014年の初代発売以来、速度とパフォーマンスを追求し進化を続けてきた。
2025年モデルとなる第2世代「Gen.2」では、軽量化・空力性能・剛性・強度・乗り心地・職人技という「6つの性能特性」を極限まで高め、TIMEの新たな伝説を作るために生み出された。
全く新しいTIME Scylon Gen2は、一体何が進化したのか。
6つの性能特性が進化
TIME Scylon Gen2は、6つの性能特性すべてが極限まで高められた。
- 重量
・フレームサイズごとに100g以上の軽量化を実現。
・東レ「M46J超高弾性繊維」と「T800高強度繊維」を70:30の比率で組み合わせ、強度を維持しつつ軽量化を両立。 - エアロダイナミクス
・CFD解析を駆使したチューブ形状の最適化で、空気抵抗を12%低減。
・新型インテグレーテッドエアロフォークにより、フォーク周辺の抵抗を4%削減 - 剛性
・編組カーボン構造(BCS)の進化により、ねじり剛性を9%向上。
・「方向性モーフィング」技術で、シートチューブに柔軟性を、フロントトライアングルに高い剛性を付与。 - 強度
・多層編組構造を採用し、ボトムブラケットからヘッドチューブまで連続したカーボンファイバー配置で耐久性を強化。
・内部リブ構造(RTM成形)を導入し、パワーポックスチェーンステーの重量を20%削減しながら強度を維持。 - 乗り心地
・32mm幅タイヤ対応と改良ジオメトリにより、路面の衝撃吸収性を向上。
・専用シートポストシステムでサドルの前後調整範囲を拡大(-20mm、+10mm)。 - 職人技
・25年の編組技術の集大成として、54種類の編組構成と18種類の繊維を最適化。
・ケーブル完全内蔵デザインを実現し、美観と機能性を両立。
TIMEといえば、カーボン繊維を使った優れた編組技術が有名だ。今回のScylonでもその技術が発揮されている。
最先端素材の東レM46Jを使用
Scylon Gen.2で採用した「M46J超高弾性繊維」「T800高強度繊維」「BCS(編組カーボン構造)」は、単なる素材の組み合わせではなく、自転車フレーム設計の常識を覆す技術的ブレイクスルーだ。
これら3つの要素が如何に軽量性・剛性・強度のトリレンマを解決したのか。
昨今のフレームは、エアロダイナミクスの向上とケーブルの内蔵により、表面積の増加やカーボン繊維構造の重量増加につながっている。そこでTIMEは、材料選定と編組技術の高度な組み合わせによって、層ごとに繊維の角度を変えて配置する方法を取り入れた。
このTIME独自の技術により、設計基準を満たす、軽量性、剛性、強度、 乗り心地に優れた究極のフレームセットを開発することが可能になった。M46J/T800ハイブリッド繊維によって、超高弾性とを併せ持ち、剛性・軽量性・耐久性のバランスを達成している。
また、 BCS(編組カーボン構造)でボトムブラケットからヘッドチューブまで、カーボン繊維を途切れることなく編み上げている。これにより、従来のプリプレグを貼り合わせた構造で生じる継ぎ目の弱点を排除することに成功した。
そして、方向性モーフィング技術により、1つの編組層内で繊維角度を45度から30度に徐々に変化させ、部位ごとの応力分布に最適化している。シートチューブは柔軟性を、前三角は剛性を強化しステアリング剛性を高めている。
パワーポックスチェーンステーシステム
TIMEがScylon Gen.2で採用する「パワーポックスチェーンステーシステム」は、駆動効率とハンドリング安定性を両立する独自技術だ。
東レM46J繊維をチェーンステー全体に使用し重量を20%削減している。従来の剛性と強度を維持したまま軽量化を達成を達成した。TIMEお馴染みのRTM(レジントランスファーモールディング)技術により、内部には微細なリブ構造を形成している。
効率的なチェーンステーによって、ペダリングの力をロスなく後輪に伝達する。剛性バランスを最適化し、高速コーナリング時の挙動を安定化することによって、 ハンドリング安定性が向上している。
最大32mm幅タイヤに対応。グラベル走行や悪路での快適性を向上している。
エアロダイナミクス = 剛性と重量のバランス
エアロダイナミクスは「重量」と「剛性」の完璧なバラン スを取ることに主眼が置かれた。エアロを追求しすぎてバランスが崩れるバイクも多い中、TIMEらしいアプローチである。
チューブ断面を大きくすると構造面積が増加し重量が増える。前面の面積を小さくすると剛性が低下する。Scylon Gen.2では、剛性、強度、乗り心地を維持しながら、エアロダイナミクスを向上させるバランスの取れたアプローチが採用されている。
TIMEバイクの特徴である軽快でシャープなハンドリングを継続するために、標準的な翼型ダウンチューブとシートチューブをベースに改良が加えられた。
チューブ形状は、NACA翼プロファイルがベースだ。剛性を維持しつつ空気抵抗を削減するため、ダウンチューブとシートチューブに適用している。3つのフレーム部位(ヘッドチューブ 、ダウンチューブ、 シートチューブ)の抵抗分析を行い、 「迎え角」ごとの空気抵抗を計測し最適化を実施している。
インテグレットエアロフォーク
TIMEといえば、優れたフォーク設計が有名だ。
TIMEが25年のフォーク製造経験を結集して開発した「新型インテグレーテッドエアロフォーク」は、Scylon Gen.2の空力性能と信頼性を飛躍的に高める革新的なフォークだ。ロードバイクのフロントエンドにおける抵抗削減と剛性維持を両立し、高速走行時の安定性を追求した設計が特徴である。
ケーブルを完全内蔵することで、空気の剥離(剥離抵抗)を最小限に抑え滑らかな空気の流れを実現している。フォーク周辺の乱流を抑制するエアロ形状を採用し、従来比で空気抵抗を4%低減した。
鍛造カーボンファイバードロップアウトを採用し、接合部の強度を向上させつつ軽量化を達成。内部リブ構造(RTM成形技術)により、フォーク全体のねじり剛性が強化された。
多様なライディングスタイルに対応するために、フレームごとに43mmと50mmのフォークオフセットを使い分けている。高速コーナリングから長距離ライドまで、用途に応じたハンドリング特性を提供する。
ケブラー繊維で補強した、1-1/2インチから1-1/8インチのラウンドテーパードステアリングコラムを採用し、ヘッドチューブとの接合強度を向上している。
新型シートポスト
Scylon Gen.2では新型シートポストが採用されている。フレームセットと同じ素材と製造技術が用いられており、フレームとの完璧な一体感と美しさを実現した。特許取得のシートレールクランプシステムは、7mm円形シートレールと7x9mm楕円形シートレールに対応する。
サドルのセットバックは、-20mmか+10mmで調整可能になっている。専用アルミシートクランプは、多軸CNC加工で軽量性と精度を両立した。
ジオメトリ
カラーは3種類
NUDE
PEARL
BRILLIANT RED
まとめ:TIME伝統の職人技と先端素材の融合
Scylon Gen.2は、TIME伝統の職人技と先端素材の融合によって、軽量性・剛性・空力性能のトリレンマを突破した。ロードレースにおける「速さ」の定義をTIMEの設計思想で再構築する。
Scylon Gen.2は3月から随時販売が開始される。
TIMEが再び自転車界の頂点に立つきっかけになるかもしれない。



