ついに・・・、TOUR紙の風洞実験でS-WORKS TARMAC SL8の空力結果が明らかになった。
「世界最速」として登場したSL8の肝心の空力性能は209WとVENGEの208Wを超えられなかった。世界13番目だった。TOUR紙の風洞実験はドイツのインメンシュタッドのGST風洞で行われた。重量、剛性、快適性を考慮した総合的な評価はTOUR史上最高だった。
TarmacはSL7の210Wよりもわずか「1ワット」だけ改善されたという風洞実験結果は、一方で物議を醸し出している。
というのも、Tarmac SL7の210Wという結果は、同社の旧型AEROFLYとTarmac SL7ステムの組み合わせだったからだ。もちろん2世代前のセパレートハンドルのため空力は一体型よりもかなり悪い。カンの良い人はもうお気づきかもしれないがSL8の風洞実験結果は、4ワット改善するという一体型RAPIDE COCKPITでの話だ。
すなわち、今回のSL8の210ワットは純粋にハンドルとフレームを変更した空力改善結果が1ワットだった。この結果から、SL8はフレームの空力性能が悪化している可能性があることが疑われている。なお、最後の救いのSL7のホイールもRAPIDE CLXでSL8と共通のものを使用した風洞実験結果だ。
空力、重量、剛性、快適性の総合的なバランスはTOUR史上最高得点だった。しかし、「世界最速」の名のもと登場したSL8の空力性能は、VENGE(CLX64、AEROFLY)よりも劣る結果だった。さらに追い打ちをかけるように、ライバルのSuper Six EVO4は空力条件が悪い2ピースハンドル、純正SOLO50ホイールの構成で207ワットを叩き出している。
SL8の6.55kgの完成重量はUCIレース以外であればアドバンテージになる。しかし、6.8kgで高速なバイクを求める場合は、他に良い選択肢がある。VENGEもそうだし、AEROAD(202W)を6.8kgに仕上げるほうが良いだろう。
さらに今回の実験で剛性試験では、SL8はSL7よりも「剛性アップ」している結果が出てしまった。しかし、間違えてはいけないのは「剛性」と「快適性」は別物であるということだ。フレームの構造やバランスなど総合的な乗り心地に反映される要素とは異なる。したがって同じ土俵で話ができない。
- ヘッド剛性:10%アップ(SL7比)
- フォーク剛性:3%アップ(SL7比)
- シート垂直剛性:0%(SL7比)
- BB剛性:15%アップ(SL7比)
以上の結果から、SL8の性能をまとめると以下のようになる。
- 空力性能は209Wで世界14番
- SL7よりも空力性能が1W改善
- VENGEよりも空力性能が1W悪化
- SL7よりも全体的に3~15%の剛性アップ
重量以外でVENGEやSL7はまだ現役バリバリで活躍できそうだ。完成車やフレームセットの価格を考えてもSL8に乗り換える理由としては非常に弱い結果だった。
SPECIALIZEDは非常にプロモーションが巧みな企業だ。有名選手や、実験データーを用いて優位性を示し消費者のこころにうまく訴えかける。今回のSL8も「史上最速」だったが、結果はそうではなかった。いったい、何を信じればよいのかわからなくなる話だ。
つまるところ、最後は実際に自分の脚と目で確かめて納得の行く判断をSL8に下すしか無いだろう。今回のTOUR紙の結果は無料で読むことができる。