歪められたトレーニング。

あの日、現場にいた誰もが熱狂し涙した。

サイスポの小坂選手の記事を楽しみにしていた。ところが実際読み進めると「小坂選手のトレーニング」というよりは、小坂選手を餌に使ったパワートレーニング始めましょう的な内容だった。いち読者として、ハメられたと思った。そして、編集側もうまく書くなぁ、とも思った。

立ち読みでわかっていたら、買わない内容。

ひと回り大きくなったのは筋トレだと聞いている。レジスタンストレーニングの話や、あらたに取り組んでいると聞いているマウンテンバイクでのクロストレーニングの話。。。シクロクロッサーにとって、知りたいことは山ほどあった。そして、購入したが、、、。

クールな小坂選手はあまり多くを語らないのは、よけいに知りたいと思わせる。魅力的だ。読み物、コラムは面白いと思う。しかし、本来雑誌として期待されていたのは、この内容だったのだろうか。知りたいトレーニングの内容について突っ込んだ話が無かった。

小坂選手が、というよりは編集側、作成者側の意図してたことは何だったのだろう。

小坂選手のレース期間中のTSS300とか、、、まぁ書いてあるから嘘ではないんだろうけど、シクロクロッサーたちが知りたかったのは「本当の練習量」と「練習内容」ではないだろうか。練習量は、もっと多いと思う。じゃないとtraingpeaksのCTL一向に上がっていかない。そして、TSBも上昇していくだろう。

ある期間における移動平均なのだから、ある週が300TSS/週なら、ほかの週はもっとボリューム稼がないといけない。私が本を読む前に妻が、「小坂選手一週間のTSS300だって!少ない!そんなトレーニング量で強いのはすごいね」と、驚いていたが、レースシーズン中の話であって、トレーニング期に毎週TSS300はまずありえないと補足した。

そして、ある週だけのTSSが重要ではなく、ある期間の移動平均値で考えるようにと、ボリュームの本質的なところを話した。

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トレーニングの本質

おそらく週700は最低するだろう。雑誌は裏を読まなくてはならない。妻にはTSS700を課している。TSS300は、「レース期間中であって、トレーニング期のはなしではない」と補足するべきだ。情報の媒体は、知識のない人に分かりやすく正確な情報を届けてほしい。以前、西薗良太選手が「15分で強くなる」というキャッチーな特集記事に異論を申していた。

本当に鵜呑みにしてしまうサイクリストがほとんどだと思う。ブログも、記事も目をサラにして読んでくださる方は少ない。だから、ユーザーもいいカモにされないように、理論武装する必要がある。「ツール・ド・おきなわ月3000km神話」も書かれていたが、確かに距離にフォーカスして批判している。距離神話は私も否定的だが、神話として意味がないと整理するのならば、例えばこんなアプローチはどうだろう。

3000km走ったうち、L4,5,6の時間はそれぞれ、x,y,z時間だった。ただ、残りのa時間(2000km分)はL1-2が締めている。したがって、時間のないサイクリストは1000km分で取り組んだL4-6の強度を重点的にトレーニングすれば、より時間効率の良いトレーニングができるだろう。

といった、文章のアプローチをしてはどうだろうか。「3000km意味ない」なんて、書くよりはよほど有益な思考のアプローチだ。物事を否定するのは簡単だが、「ではどうしたらよいのか」の考え方部分も私は大事にしたい。

好ましくないのは、自分が信仰するトレーニングに対して盲信することだ。そして気づかぬうちにバイアスがかかり、パワートレーニングと対岸にある距離神話を叩く。そうではなく、より有効とされるパワートレーニングという魔法のツールを使って、距離で損をしているトレーニングをどう改善するのか、そのアプローチを語りたい。それ以外のトレーニングをこき下ろすことで、信仰するトレーニングの価値を上げるアプローチは誰でもできる。

私もそうだが、数字とばかり付き合っていると人間味がなくなってくる。考え方、ものの捉え方、バイアスがかかって、物事を歪めて捉えていないか。賢いトレーナーや、数字が大好きな科学者が陥りがちなバイアスは、いつの間にか純粋な選手や読者までも、歪めかねない。だから、ユーザー側も幅広く知見を広げ、情報の取捨選択をする目利きを備えておく必要がある。

CYCLE SPORTS (サイクルスポーツ) 2018年 3月号
CYCLE SPORTS編集部
八重洲出版 (2018-01-20)