SRMを使ったロードバイクとTTバイクのエアロダイナミクスの特異性について
(Tarmac SL2 vs S-works TTbike)
内灘に向けて頑張る方々へ一つ紹介したい。
今回紹介する内容はエアロダイナミクスが及ぼすタイムトライアルへの影響についてだ。それだけではなく、SPECIALIZED押しの自分としては嬉々として取り上げたい内容になっている。それはTarmacSL2と同社S-worksのTTフレームを用いてどれくらいエアロダイナミクスに影響を及ぼすかという検証内容になっている。現在S-works Tarmac SL4は非常に素晴らしいバイクで来年SL5がでたら脇目もふらずにSL5にするだろう。そこまで良いバイクだ。なのでSHIVが欲しいがそこは金銭面からも無理な話である。
早速脱線したが本題。機材と環境について次のページで説明する。
機材条件と環境は以下のとおりになる。
■機材条件
フレーム:SPECIALIZED Tarmac SL2
ホイール:HED Bastogne wheels, 23 mm
クランク:Dura‐Ace SRM
ジャージ:普通のビブとジャージ
ヘルメット:S-wroks road
フレーム:Specialized Transition
ホイール:HED3 Deep Tri‐Spoke wheels, 21mm
クランク:Dura‐Ace SRM
ジャージ:スキンスーツ
ヘルメット:Specialized TT3 aerodynamic helme
■実験環境
環境1: A2 Wind Tunnel (http://www.a2wt.com/)
環境2:室内トラック(Asheville, 0.5 km)
環境3:室内トラック(Lowe’s Motor Speedway, 2.3 km)
環境1のA2風洞実験であるが結構有名な設備で様々なテストが行われている。
母校の建築学部にも大規模な風洞実験室があったが使っておけばよかった、いや無理だろうけど。
次のページでは試験結果をいきなり載せたい。
■試験結果
いきなりだが、また長い個人考察を書くので時間がない人のために左記に結果を書く。
・ yaw角 0度における速度40km/hの条件下において空気抵抗は33%減少した
・環境2下において1.0kmTTでは 24.1%の出力が低下した
・環境3下において16.1kmTTでは21.7%の出力が低下した
また、同一出力下では4.1km/h速度向上した。
今日もこの手の話は長い。
■各種条件下における風洞実験試験結果
風というものは必ずしもライダーに対して垂直にあたるものではない。むしろ時間によって、地形に寄ってその瞬間ごとに顔を変える。
①風洞実験室における風向きを変化させた場合の検証
では40km/hにおいて風の当たる角度の影響を考えるとどれほどの空気抵抗を削減できるのか
単位(gF)
SL2 TT Savings(%)
25 2464 1525 38.1
20 2519 1501 40.4
15 2594 1544 40.5
10 2600 1607 38.2
5 2484 1651 33.5
0 2455 1670 32.0
-5 2434 1592 34.6
-10 2491 1471 40.9
-15 2496 1442 42.2
-20 2485 1415 43.1
-25 2318 1378 40.6
上記の通り、恐ろしい実験結果だ。およそ38~40%減少する。
これをパワーメーターのSRMで測定した場合どのような出力減少になるのだろうか。そのテスト結果を示したものが次のページから紹介する検証結果だ。
②テスト距離1kmトラック3周の検証
・SL2
速度:40.07(km/h)
平均出力:291.1(W)
・TT
速度:39.92(km/h)
平均出力:220.8(W)
→平均出力が291WかつTT装備の結果
・TT
速度:44.76(km/h)(4.76km/g↑)
平均出力:296.1(W)
③同一速度下(40km/h)における10mile TT時の出力変化
・SL2
速度:40.09(km/h)
平均出力:279.1(W)
タイム:24:01.5
・TT
速度:39.92(km/h)
平均出力:218.5(W)
タイム:24:04.3
→平均出力が279.1W相当かつTT装備の結果
・TT
速度:44.18(km/h)(+4.1km/h)
平均出力:280.4(W)
タイム:22:03.8
ここまででエアロダイナミクスの優位性のデーターがとれたわけだが、
実スケールを用いた測定ではどうだろうか。
その内容を次ページで紹介する。
■実スケールを用いた測定と考察
エアロダイナミクスは、同一出力の条件下とした場合、距離とタイムに多大な影響をおよぼす事がわかった。出力を上げた時にどれほど有効速度になるのかが重要であることも理解できたと思う。ではそれを踏まえ実際のレーススケールにあわせエアロダイナミクスの重要性をさらに考えてみたい。
環境3:室内トラック(Lowe’s Motor Speedway, 2.3 km)
における280W平均出力の場合のタイムトライアル試験結果
SL2 TT Saving
平均出力(W) 280 280 0
平均速度 40.09 44.18 4.09
1km TT 0:01:30 0:01:21 00:09
16.1kmTT 0:24:05 0:21:51 02:14
“40kmTT
(Olympic)” 0:59:52 0:54:19 05:33
“90kmTT
(Half Iron)” 2:14:51 2:02:22 12:29
“180.2km
(Ironman)” 4:29:42 4:04:44 24:58
エライコッチャやで。次ページでは本結果からのまとめと考察だ。
■まとめ
プロではない、クラブレーサーまず風洞実験室を使うことができない。そのような場合は実際にデーターを取った人の情報を漁るほうが費用対効果を考えると、何倍も徳だ。そして自身で考えた事を加味して機材やフォームをつめて行かねばならない。
少なくとも、ノーマルバイクでも変わんねーよという僻みはもうしないでおこう。実験上得られた結果からその優位性は明らかである。データーから分かる通り驚異的な値だった。先日の白浜TTのように100分の一秒の世界で戦う人たちからしたら重要なことも理解できる。
ヒルクライムであれば当然抵抗はW/kgであるパワーウエイトレシオであるが、タイムトライアルであれば抵抗はCdAをいかに小さく出来るかである。CdAについて軽く触れておくと、 今回空気抵抗の対象をフレーム、ホイール、フォームなどの形状が異なることによる抵抗係数をCdとし、前面投影面積Aの積がCdAである。この値が小さいほど空気抵抗が小さいという事になる。
私はTTの知識が0で勉強してから少し誤解していた事があって、TTは単純な出力勝負ではないということ。
「ある時間あたりに最高平均速度を出した人が勝つ」
競技と置き換えることができる。
そのためには出力あたりのCdAの減少に取り組まなくてはならない。目的がわかれば一つ一つ抵抗を減らすための努力をする必要がある。ヒルクライムのように体重を減らすことのようにCdAを減らすための方法を考え無くてはならない。体重であれば単純に減量すれば良いが、CdAを減らすためには情報をかき集めてホイールでもディンプルがよかったり、ゼンティスがよかったりというよに色々と探る必要がある。またポジションの最適化こそがタイム短縮の近道であるが、ポジションの最適化というのは私が思うに出力とのバランスである。出力が出るけどCdAが大きい、CdAが小さいけど出力が出ない。
という事だ。
一ついい忘れた。
つまるところ、もっと考えなくてはいけない重要なことが有るのを忘れてはいけない。
実際の所、CdAと引き換えに犠牲になる
「お財布レシオ」
も我々リーマンは考える必要がありそうである。
次回の話題を次のページで。
次回の◯ザエさんは
TTフレームを風洞実験室に突っ込んだ場合のCdAのベンチマーク結果を紹介したい。
パワーメーターの時もそうだけど、自分に関係のある話だと調べ尽くさないと気が済まなく長い文章になることをご了承ください。
比較対象:
– Cervélo P4 Evo
– Giant Trinity Advanced SL
– Specialized Shiv
– Trek Speed Concept
– Scott Plasma3 Premium