SwissStop Catalyst ディスクローターがマジで良かった件

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良い機材というものは、手でふれた瞬間に違いが伝わってくるものだ。今回の記事の主役SWISSSTOP CATALYSTディスクブレーキローターがまさにそうだ。MTBやシクロクロスでディスクブレーキ式バイクに乗り始めてからというもの、さまざまなディスクローターを試してきたが、本当に作りが良いディスクローターだ。

今までMAGURA、SRAM、SHIMANO、KCNC、ASHIMAのディスクローターを使用したが、作りの部分ではMAGURA、SRAM、SHIMANOが当然のことながら良いローターだった。ただ「140mmで6ボルト」という縛りをすると途端に使ってもいいと思える製品が限られてくる。

ここで「140mmの6ボルト」というローターの縛りをしているが、SWISSSTOP CATALYSTはセンターロック式やローター経も140mm, 160mm, 180mm, 203mmがラインナップされている。

SHIMANOやカンパニョーロ(といっても中身は安心のMAGURA製)はセンターロック式を採用しており、両メーカー(特にシマノは)6ボルト式で140mmのローターの選択肢がほとんどない。こうなってくると、6ボルト式140mmのディスクローターはSRAMやMAGURA、もしくはKCNC、ASHIMAから選ぶ必要がある。

とはいうものの、SRAMの最新型は海外通販でも1万円近い。MAGURA STORM SLローターは厚さが2.0mmなのでシマノのブレーキシステムの場合、ブレーキパッドに干渉する(それに気づかず1時間ほど調整地獄に陥った)。シマノローターの場合は1.8mm前後の厚みでなければ使うことができない。そうなってくるとKCNCやASHIMAがリーズナブルで入手性も高い。

ただ―――。

シマノのディスクブレーキキャリパーとローターをディスクロードで使用して、あの制動力と鳴きの少なさに慣れると、KCNCとASHIMAのローターは止まらないわ、鳴きがひどいわで一気に使う気が失せる。しかし、それは相対的に機材を評価した結果であって、実際のところKCNCとASHIMAのローターを昨シーズン使い続け、当時は不満を感じていなかったのだ。

しかし、いざシマノ純正の組み合わせに慣れてしまうとあのレベルの制動力が標準になってしまう。「十分な性能と感じていた」KCNCやASHIMAのローターは使い物にならないと感じるようになってしまった。

これらの経緯から、シマノ級かつ価格も手ごろな6ボルト式140mmのディスクローターを探していた。そして、やっと見つけた!というのがSWISSSTOP CATALYSTディスクブレーキローターだ。序盤でクライマックスを迎えた感のある文章の滑り出しだが、これからSWISSSTOP CATALYSTの放熱性能、エアロダイナミクス、面取り処理、そしてインプレッションをお届けする。

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CATALYSTディスクローターの開発

この製品名を聞いて私と同業者のサイクリストたちは、きっと違う製品を想像したに違いない。Cisco SystemsのスイッチCATALYSTだ。2960だったり3750だったりさまざまなCATALYSTを使った人も多いだろう。もしくは、RADEONのドライバーAMD CATALYSTを思い出す人もいるかもしれない。しかし、今回の話は自転車のディスクブレーキに使用されているディスクローターのSWISSSTOP製の「CATALYST」だ。

SWISSSTOP CATALYSTは新製品でもなく目新しいディスクローターというわけでもない。2016年にひっそりと発表された。2016年といえばシクロクロスもカンチブレーキのプロがほとんどで、まったくディスクロードが普及していない時代だ。それでも、CATALYSTはMTBのワールドカップやダウンヒルで使用され選手の足元を支えた。

2016年より前の段階で、SWISSSTOPはディスクブレーキ時代を見据えた製品開発を始めている。CATALYSTの開発にはCAE(有限要素法)解析を使ったシミュレーションが行われた。最近の自転車機材の開発やプロモーションの中でCAEやCFDという言葉をよく見聞きするが、CAEはコンピューター上に試作品を作成し、シミュレーションと分析を行う手法のことだ。

昔ながらの「試作品を作っては壊し」の代替手段として開発現場で広く用いられている。設計の初期段階でCAEを導入する理由として、開発の手戻りを減らし、製造するだけでコストが増す試作品や実験の回数を減らすことができる。

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CATALYSTの開発において、現実世界を模擬したシミュレーション環境が用意された。実験では主にディスクローターの宿命である摩擦熱や、ローター形状の違いによる剛性の変化などを測定していった。そして、ブレーキパッドにローターが挟まれている状況下において、ローターのどの部分に応力がかかっているかを解析していった。

シミュレーションでは、何種類ものディスクローターの形状が試された。ローターに摩擦熱を溜めにくく、かつ重量を可能な限り減らす形状と素材の研究が繰り返された。最適解を求め続けたSWISSSTOPは、ローターサイズごとに摩擦熱の傾向を探りながら、ローターの剛性を高める部分と、重量を減らす部分を突き詰めていった。

CATALYSTディスクローターは、外周の金属部分とハブにマウントする部分に分かれた2ピース構造を採用している。この構造は、CAEで構造的な部分を煮詰めていき、次にCFD(数値流体力学)解析でテストした結果から考え出された構造だ。2ピース構造は放熱のために最適な構造であり、実際にCATALYSTを手に取ると外周部分よりもマウント部分は倍の厚さになっている。

ここで冒頭でこき下ろしたASHIMA、KCNCは1ピース構造だ。対してシマノやSRAM(AXS世代)は2ピース構造だ。大手メーカーのローター構造はどれも2ピース構造で作りられていることがわかる。ASHIMAやKCNCのディスクローターの一部のモデルは、1枚ものの押出加工であるため初期フレがひどかった。

調整器具で直して使えば良いのだが、はじめからSWISSSTOP CATALYSTを買っておけば良かったと今さら後悔した。

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放熱性能と剛性のバランスを最適化していく過程で、パッドの振動を最小限に抑える形状も模索していった。ディスクローターは、金属のパッドに挟まれ振動することでブレーキの鳴きが発生する。振動が減るということは、ブレーキ時に発生する鳴きも減少し静かになるということを意味している。

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CATALYSTは競合モデルよりも少ない力で制動し、かつ停止距離が短くなることというデータをSWISSSTOPは提示している(リリース時点のラボテストにおいて)。制動力を高めるため、ブレーキ面に材料を追加している。そのため重量が140mmで100gと少し重めだ。しかし、高いフォーマンスを生み出すためには数グラムの重量増には価値があるといる。

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スペック

CATALYSTで使用している素材はブレーキ面がSUS410ステンレススチールで、アルミニウムスパイダーは7075T6だ。SUS410は耐食性と機械加工性に優れた鋼種だ。刃物にも使われている。ディスクローターと刃物というキーワードを並べると恐ろしいイメージがあるが、CATALYSTのブレーキローターのフチ(エッジ)は丁寧に丸められている。

性能もさることながら、手で止められるほど安全性が高められている。どれくらい丸められているかというと、ホイールをぶん回しても余裕で手のひらで止められるほどだ(良い子は真似しないでねという常套句も無駄に思う)。ハブのマウント方式は「6ボルト式」と「センターロック式」の2種類。市場に出回るディスクブレーキ用ハブに対応する形だ。ローター経と厚みは以下のとおり。

  • 140mm: 1.85mm
  • 160mm: 1.80mm
  • 180mm: 1.80mm
  • 203mm: 1.85mm

できればシマノローターと同じく140mmも1.8mmに統一してほしかった。しかし、ブレーキキャリパーの調整を正しく行えば干渉することはなく使用することが可能だった。すべてのローターでレジンとメタルに対応している。しかし、最も最適化されているのはやはりSWISSSTOP純正のEXOthermブレーキパッドだ。

シマノ純正よりも効果を高めたい場合はパッドを交換しても良いだろう。いずれEXOThermもテストしてみたい。

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エアロダイナミクス

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CATALYSTはCAEによる構造解析と合わせてCFD解析も行われた。コンピューター上で流体のシミュレーションを行うことによって、ローター上の気流も考慮された。シマノのディスクローターは見るからにエアロダイナミクスに優れていそうな形状だが、CATALYSTも十分にエアロダイナミクスが考慮されている。

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秀逸なインジケーター

ディスクローターの宿命である摩耗についてもよく考えられている。「いつローターを変えたら良いのか」について明確な基準がないように思えるが、シマノの場合は「ディスクブレーキローターが摩耗して厚みが1.5mm以下になるかアルミニウム面が出てきた場合、ただちに使用を中止し販売店または…」ということが説明書に書かれている。

ただ、デジタルノギスで測らない限りそんなものはわかるはずがない。シマノのディスクローターで不親切なのは摩耗のインジケーターがないことだ。

SWISSSTOP CATALYSTには「ウィートアウトインジケーター」というローターの摩耗度合いがわかる目印が組み込まれている。しかも、見えない裏面にも数箇所インジケーターが仕込まれており、ブレーキトラックの摩耗を監視することが可能になっている。さらに驚くべきことは、競合他社と比べて最大10倍の摩耗耐久性があることを主張していることだ。

実際に10倍の耐摩耗性があるかは不明だが、メーカーがわざわざ主張してシマノローターと引き合いに出してまで公表するのだから、その性能には絶対の自信があるのだろう。SWISSSTOPという信頼のブランドということを考えても期待して良さそうだ。

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まとめ:マジおすすめや!

最後は語彙力の乏しいタイトルで締めようと思う。6ボルトで140mmローターを探しているなら本当におすすめや!と。6ボルト140mmローターに限らず、デファクトスタンダードになりつつあるセンターロック式もラインナップされている。

ディスクロードを購入したばかりのユーザーは、すぐにローターを交換する機会は来ないだろう。しかし、摩耗したり、破損したり、サイズ変更をする場合はCATALYSTローターを強くおすすめしたい。本当に作り込みが美しいローターだ。CATALYSTはUCIの承認も得ており、ロード、シクロクロス、クロスカントリー、ダウンヒル、eバイクまで公式に対応しているディスクローターである。

特に6穴ハブユーザーで手ごろな良いローターを探しているのならばSWISSSTOPをおすすめしたい。今までさまざまなメーカーの機材を使用してきたが、SWISSTOPの製品と質感が気に入ってしまった。ASHIMAとKCNCのローターはヤフオクに1円スタートした。この記事を見た人は買わないかもしれないが、どれだけ違うのかサンプルで試しても面白い。

SWISSSTOP CATALYSTは、シマノにまったく劣らない優れた作り込みのディスクローターである。シマノやSRAM以外で品質の良いローターを探しているのならば、SWISSSTOP Catalystを候補に入れてみてほしい。

なお、Wiggleが一番安く購入できる()
Swissstop Catalyst 6 Bolt Disc Rotor

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