冬が近づき次第に寒くなってくると、練習に行くのがおっくうにななってくる。早朝は寒いし、暗いし、体の動きもにぶい。せっかくの休日であっても室内ローラーでメニューをこなしていたほうが幸せだと思うときもある。寒い時期にそんな事を考え始めるのも無理はない。だって寒いんやから。
とはいえ、冬場のシクロクロスやロードトレーニングに長年取り組んでいると、ウエア以外の防寒と合わせてオイルを使った寒さ対策がけっこう使えるということがわかってきた。
はじめは、オイルなんて効果が有るのか無いのか正直良くわからなかった。具体例をあげると、スポーツバルムや、ELITE、その他様々なオイルを使ったが寒さ対策として自分に合うオイルはなかなか見つからなかった。問題は、オイルの「何の成分」が「どのようにして」体を温めるかだ。その仕組が重要だった。
体を温める系のオイルは、成分の違いで大きく2つに分けられる。一つはカプサイシンを使った刺激でヒリヒリ感を感じさせ温める方法。もうひとつはジンジャーで血流を促して体を温める方法だ。前者は刺激による表面的な温めであり、後者は血流量を増やすことでカラダの中から温めるアプローチだ。
ハバネロ(カプサイシン含有)で温まるか、ショウガ湯(ジンジャー)で温まるか食べ物の例であればイメージしやすい。
ハバネロ法かショウガ湯法、どちらが自分にあうのかは試してみないとわからない。ただ、私はジンジャー系オイルで体を温める方法が自転車には向いているという結論に至った。その理由をふまえながら、3種類の製品をとりあげ、オイルの使いわけをまとめていく。
おばあちゃんの知恵 ショウガ湿布
このタイトルは誤記ではない。実例を交えて体が温まる仕組みを確認していこう。
例えば室内ローラーだ。ローラーを始めると次第に体が温まってくる。はじめこそ汗も、体の温まりもないが、ローラーを回していると徐々に体温が上がってくる。そして、扇風機や冷房が必要になるほど体は温まってくる。私は冬でも工業用扇風機を使用している。ただ、朝一発目は寒くてダウンジャケットを着てローラーを回している。しかし、後半はそれが嘘のように暑すぎて扇風機無しではローラーができなくなる。
しかし、なぜ体は温まっていくのだろうか。
運動することで体温が上がる仕組みは筋肉の伸縮が関係している。筋肉が動くことで熱エネルギーを放出したり、筋肉の収縮に伴い血流を促進させる。結果的に体温は上昇していく。特に下半身の筋肉は、上半身に比べて大きいため、大きなエネルギーを生み出す。
体温を手っ取り早く効果的に上昇させるためには、下半身の筋肉を中心に運動するとよい。また、血液は下半身にとどまりやすいため、下半身を動かすことで全身に血液が巡るようになる。ふくらはぎが血液を送り返すポンプの役目をしているが、動かさねば機能しない。
この体の自然な働きをブーストする方法はとして、おばあちゃんの知恵「ショウガ湿布」がある。
生姜には血流を高めて熱を作る「ショウガオール」という成分が含まれている。ショウガオールは血流を高め、深部の熱を作り出す効果が有る。冷えを改善するので、ショウガは古くから漢方薬に使われている。生姜を使った湿布は、強い血行促進と保温効果で、冷え・こり・むくみ・血行促進・倦怠感などに効果的がある。
ここまでくればジンジャー(ショウガ)系オイルが、ウォーミングアップや寒さ対策に効果を発揮することがうすうすわかってくる。「ショウガオイル」と言われると、なんとなく温かくなりそうだと感じる。
いや、それはショウガの効果を理解したからであって普通に「ショウガオイル」とだけ書かれた製品があったとしてもかっこよくないし、オシャレじゃないし誰も買わないだろう。その上でジンジャー(しょうが)を配合した3つのオイルを紹介していく。
おそらく自転車競技選手たちの間で最も使われているオイルだ。ところが、冬場用やCXシーズン中に使用するオイルとしてはあまり紹介されていないように思う。そこで一挙に3種類の紹介と使い方をまとめた。ちなみに私は、条件に応じて3種類すべて使い分けている。
気温で使い分けるよりも、「どのようなシチュエーションで使うのか」という事を考えてみよう。自分に合致する使い方があれば、それだけを選択するといい。だからASSOSやパールイズミのウエアのように、気温の違いで使い分けるという考え方は一旦おいておこう。
Winterオイル
冬場のトレーニングはWinterを使う。先ほど紹介したジンジャー(ショウガ)が配合されており血流を上げて体を温める。CXオイルと違うのは、心臓をアゲアゲにする成分が入っていない。そのため、練習やオールシーズンのエンデューロに向いている。トレーニング用に「塗る寒さ対策」を考えているのならば迷いなくWinterオイルだ。
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CX
CXはシクロクロス・インターバル・冬場のレースで使う。
私の場合、一番消費量が激しいのがCXオイルだ。もう5~6本消費している。CXオイルが良いところは、血流を上げることに特化しており、心臓アゲアゲ成分も入っている。そのため、90分以内のレースやインターバル練習の際に使用する。CXと書いてあるが寒い時期のヒルクライム(伊吹山)や、クリテリウムなどに適している。
実際に、雑賀選手が堺クリテリウムの出走直前にCXオイルを使用していた。ただ、CXオイルは60分一本勝負のようなシクロクロス、クリテリウム、ヒルクライム向けに作られているため、ガツンと心拍が上がる分、ガクっと落ちる場面が人によって経験する場合がある。それほど強力なオイルだ。だから長距離練習のトレーニングには適さない。
したがって、普段の練習にはWinter、寒い時期のレースやインターバル練習にはCXと両方必要で使い分けると効果的だ。
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VeryHOT:4倍界王拳
Winterよりも4倍のジンジャーが入っているのがVeryHOTだ。「4倍しょうがオイル」という製品名ではだれも買わないと思うが、「igname VeryHOT」という製品名だとどこかそれっぽくて使ってみたくなる。ネーミングセンスはとても重要だ。Winterでは寒く「今年一番の冷え」や「ワシは寒がりや」という方はVeryHOTを使うといい。
ただ、4倍ジンジャーが入ってるからと言って4倍温かくなるわけではない。ただ明らかにWinterよりも「ほっこり」がます。実はVeryHOTは準備していなかったのだが、ある日「今週末は今年一番の寒さです」という予報を見て注文した。たしかにWinterよりも温まる。WinterやCXと異なり常に使用しないが、小さなビンタイプを常備しておきたいオイルだ。
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まとめ:寒いのは「しょうがない」と諦めない
・・・。
イナーメのカラダを温めるオイルは、どれもジンジャーを中心に含有している。確かにカプサイシン系のオイルも良いかもしれないが、カプサイシンは水分に反応するため汗やお風呂で(表面だけで)ひりひりするのが難点だ。カプサイシン系のように塗った箇所だけがポカポカとカイロのように温まるタイプではなく、ジンジャー系のようにからだ全体を温めるほうが自転車乗りには向いている。
イナーメのオイルは自然の成分を使用している。そして血液にジンジャーを乗せることで体全体をゆっくり温めていくタイプのオイルだ。様々なタイプの冬用オイルを使用してきたが、長く愛用してその効果を実感して(個人の感想です←でた常套句)いる。
もしも買うものを悩んだら、一番小さなタイプのWinterとCXを買うのがいい。もちろん販売元のイナーメからすると大瓶を売りたいかもしれないが、オイルは常に鮮度が良いほうがいい。したがって、冬の時期に使い切る量で考えておこう。とはいえ、一番小さな30mlでもCX1シーズン程度であれば余裕で足りる。5月のクリテリウムまで使えた。
寒いのは「しょうがない」と諦めてはならない。この言葉を言いたいがためにジンジャー(ショウガ)を配合したオイルの記事を書いたわけではないのだが、まずはWinterとCXを揃えてこの冬は「ぬる寒さ対策」であたたかく冬を乗り切ろう。
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