Mt.富士ヒルのホイール考察とシミュレーション結果 CLX50 / Alpinist / ITLAB45

スポンサーリンク

ccab8aa4eadceab2a05bbbd8f6b4a757

富士ヒルクライム(通称:富士ヒル)で使用するホイールについて、シミュレーターを用いて比較検討を実施した。使用ホイールとしてエアロ系に特化したROVAL CLX50、軽量性に特化したROVAL ALPINIST CLX、開発したITLAB45の3パターンを用意した。

ホイールの空力性能はYaw角の違いで異なる。風洞実験室内で優れていたとしても、自然界で発生する風向きの違いによってホイールの優劣は変動する。また、走行スピードの違いによってもYaw角は変化する。風洞実験室での結果を現実世界にあてはめて考えることが「できない」のはこれらの理由があるためだ。

さらにレースのスタート時間によって、発生する風向きは変化する。6時スタートと8時スタートでは風向きが変化するため場合によって最適なホイールが変わる可能性がある。そこで今回は2021富士ヒルクライムの開催日である2021年6月6日における6:30第1スタート(男子主催者選抜)に合わせた最適なホイールを予測する。

レース当日に発生する可能性のある天候については、Dark Skyのビッグデータからロードした。加重平均計算や風洞実験結果については、以下の記事を参照のこと。

どちらが空力が良い?なぜDragに重み付けをすべきなのか。
「エアロダイナミクス」という言葉は自転車業界で流行語のように使われている。新製品が登場すれば、必ずと言っていいほどDragデータを掲載し、前作モデルと劇的な格差をこれでもかと見せつける。しかし、これらの数値は「どのように計算」され「どれだけ現実的なのか」まで説明されていることはとても少ない。 2021年2月19日、筆者は自身で作成したホイールの性能を確かめるために風洞実験を実施した。風洞施設は、S...
風洞実験結果! ROVAL vs ITLAB45はどちらが空力が良いか?
風洞実験を実施した結果を報告します。当日の試験条件は以下の通りです。 試験日:2021年2月19日 室内の気温:18.4℃ 風速:48.3 km/h(13.4 m/s) Yaw角:0, 2.5, 5.0, 7.5, 10.0, 12.5, 15.0, 17.5, 20.0 タイヤ空気圧 6.6bar タイヤ:GP5000 25C (新品) ディスクローター:SM-RT900 140mm 測定データ...
風洞実験はプロモーションのためなのか?
風洞実験は簡単に実施できるものだと思いこんでいた。風洞実験室の床に設置した治具にホイールを取り付ける。そしてスイッチを押して風を流しはじめる。測定器から得られたDragのデータを「ふんふん」とそれらしく読むだけで、エアロダイナミクスのテストが簡単にできると思い込んでいた。 恥ずかしながら知らなかったのは、エアロダイナミクスの測定結果を変動させる可能性のある要素は無数に存在していることだった。 まず...
Dragを100g減らすと何秒タイムを稼げるか
ホイールの性能を語るとき、切っても切り離せないのがエアロダイナミクスだ。よく知られていることとしてはDragを減らすことでスピードは増し、タイムは短縮し、パワーセーブをしながら走れる。ホイールのエアロダイナミクス性能の重要性は十分すぎるほど理解されているが、わかっているようでわからない漠然とした疑問も数多くある。 例えば、次のような質問をされたらどのように答えれば良いのだろうか。 CFDシミュレー...
スポンサーリンク

パラメータ

ライダーは私自身を想定した。パワーデータ、身長、機材重量等様々なパラメータを入力した。

  • 身長:169.50cm
  • 体重:58.50kg
  • FTP:290W

機材パラメータは以下の通り。

  • Rolling Resistance:169.50cm
  • Mechanical Loss:58.50kg
  • FTP:290W
  • バイク重量1(ROVAL CLX50):6,800g
  • バイク重量2(ITLAB 45):6,610g
  • バイク重量3(ROVAL Alpinist CLX):6,640g
  • ホイール重量1(ROVAL CLX50):1,414g
  • ホイール重量2(ITLAB 45):1,221g
  • ホイール重量3(ROVAL Alpinist CLX):1,251g

レース当日のパラメータは以下の通り。

  • レース名:2021富士ヒルクライム
  • 日付:2021-06-06
  • スタート時刻:06:30:00(選抜者クラス)
  • 気温:Dark Skyで算出
  • 気圧:Dark Skyで算出
  • 風速:Dark Skyで算出
  • Yaw角:Dark Skyで算出
  • スタート後のドラフティング:あり
  • IF:0.80

a045

当日の予想される風速は上図の通り。走行距離と共に標高が高くなるにつれて、風速は増していく傾向にある。残り4km区間は風速7mになると予想される。

a046

想定されるYaw角は山岳地帯であるため、-20°から-10°が40%を占める結果だった。このYaw角は市街地や平地ではほとんど発生しない。山岳地帯ならではの傾向である。これらのYaw角の出現率を見ての通り、風洞実験で得られたYaw毎のデータを、決して現実世界にあてはめて考えてはいけないという1つの好例である。

a047

勾配は走行速度に影響を及ぼす。速度が遅い場合のYaw角は±20°付近の出現率が高まる。実際のシミュレーションでも同様の結果になった。

スポンサーリンク

結果:2021富士ヒルクライム選抜者クラスの場合

  1. 01:05:58:ITLAB45
  2. 01:06:16:ROVAL CLX50(+18)
  3. 01:06:18:ROVAL ALPINIST CLX(+20)

a049

風洞実験結果を用いて加重平均計算を実施した空力性能は、ITLAB45よりもROVAL CLX50が1.9W優れていた。富士ヒルクライムのレース当日のスタート時刻と実際のコース走行を想定した場合のタイムは、ITLAB45が18秒速くゴールした。

風洞実験結果! ROVAL vs ITLAB45はどちらが空力が良いか?
風洞実験を実施した結果を報告します。当日の試験条件は以下の通りです。 試験日:2021年2月19日 室内の気温:18.4℃ 風速:48.3 km/h(13.4 m/s) Yaw角:0, 2.5, 5.0, 7.5, 10.0, 12.5, 15.0, 17.5, 20.0 タイヤ空気圧 6.6bar タイヤ:GP5000 25C (新品) ディスクローター:SM-RT900 140mm 測定データ...

CLX50よりも163g軽量なROVAL ALPINIST CLXは一見すると登りのタイムが稼げると思いがちだが、ROVAL CLX50の空力性能とヒルクライムレースの中では特に速いレーススピード、当日のYaw角の影響からCLX50との比較で+2秒、ITLAB45の比較では+20秒遅れる結果だった。

当日の気象条件や、富士ヒルクライムは第10スタートまで細かくスタート時間が分けられていること、当日の気象条件である風速やYaw角、そして走行スピードによってはこれら3つのホイールの優劣は大きく変わる。Dark Skyが算出した結果は、レース日に近づけばさらに精度が増すためレース1週間前に追跡調査が必要だ。

以下、参考記事。

どちらが空力が良い?なぜDragに重み付けをすべきなのか。
「エアロダイナミクス」という言葉は自転車業界で流行語のように使われている。新製品が登場すれば、必ずと言っていいほどDragデータを掲載し、前作モデルと劇的な格差をこれでもかと見せつける。しかし、これらの数値は「どのように計算」され「どれだけ現実的なのか」まで説明されていることはとても少ない。 2021年2月19日、筆者は自身で作成したホイールの性能を確かめるために風洞実験を実施した。風洞施設は、S...
風洞実験結果! ROVAL vs ITLAB45はどちらが空力が良いか?
風洞実験を実施した結果を報告します。当日の試験条件は以下の通りです。 試験日:2021年2月19日 室内の気温:18.4℃ 風速:48.3 km/h(13.4 m/s) Yaw角:0, 2.5, 5.0, 7.5, 10.0, 12.5, 15.0, 17.5, 20.0 タイヤ空気圧 6.6bar タイヤ:GP5000 25C (新品) ディスクローター:SM-RT900 140mm 測定データ...
風洞実験はプロモーションのためなのか?
風洞実験は簡単に実施できるものだと思いこんでいた。風洞実験室の床に設置した治具にホイールを取り付ける。そしてスイッチを押して風を流しはじめる。測定器から得られたDragのデータを「ふんふん」とそれらしく読むだけで、エアロダイナミクスのテストが簡単にできると思い込んでいた。 恥ずかしながら知らなかったのは、エアロダイナミクスの測定結果を変動させる可能性のある要素は無数に存在していることだった。 まず...
Dragを100g減らすと何秒タイムを稼げるか
ホイールの性能を語るとき、切っても切り離せないのがエアロダイナミクスだ。よく知られていることとしてはDragを減らすことでスピードは増し、タイムは短縮し、パワーセーブをしながら走れる。ホイールのエアロダイナミクス性能の重要性は十分すぎるほど理解されているが、わかっているようでわからない漠然とした疑問も数多くある。 例えば、次のような質問をされたらどのように答えれば良いのだろうか。 CFDシミュレー...
Ads Blocker Image Powered by Code Help Pro

広告ブロックが検出されました。

IT技術者ロードバイクをご覧いただきありがとうございます。
皆さまに広告を表示していただくことでブログを運営しています。

広告ブロックで当サイトを無効にして頂き、
以下のボタンから更新をお願い致します。