1年ほど前、UCIのフレームデザインのレギュレーション緩和された。緩和されたUCIの新規定は、フレームを今よりもより薄くできるデザインや、より表面積を増やしたりするデザインが可能になると期待されていた。
オーストラリアのブランドSIMPLONは、UCIの新レギュレーションに沿ったエアロバイクPRIDE IIを発表した。緩和されたUCIレギュレーションを利用し、SIMPLONは「PRIDE IIが世界最速のロードバイク」であると主張している。
未発売のドイツのTOUR MAGAZINE2021年10月号のバイクテストにおいて、SIMPLON PRIDE IIがついに200Wの壁を打ち破る可能性を匂わせる記事が公開されている。実は「世界最速」と主張しているのはSIMPLONとSTORCKなのだがこれはメーカーが独自に実施した風洞実験結果を述べているだけの状況だ。そこでTOUR誌は10月号で、規定の風洞実験プロトコルに沿った結果を発表すると述べている。
筆者自身、同じくドイツの雑誌「Rennrad」を定期購読しているのだがSIMPLON PRIDE IIはキャニオン AEROAD CFRよりも圧倒的な空力性能を備えた風洞実験結果が出ていた。
- Simplon Pride II 59,6 | 65,6 Watt
- Cannondale SystemSix Hi-Mod 73,7 | 72,4 Watt
- Canyon Aeroad 2018 | Rim-Brake 78,2 | 80,2 Watt
- Trek Madone SLR 9 78,9 | 77,3 Watt
- Merida Reacto Team-E 79,0 | 77,4 Watt
- Storck Aerfast.Comp 81,3 | 84,6 Watt
- Giant Propel Advanced Pro 1 81,5 | 82,0 Watt
- Specialized Tarmac SL7 82,9 | 79,2 Watt
- Scott Foil 10 89,6 | 85,7 Watt
フル装備のTarmac SL7よりも20Wもの空力改善を達成しているバケモノエアロロードだ。
上記の「Rennrad」の風洞実験では、新しいPRIDE IIが風洞実験で最速のエアロバイクであることを示しており、SIMPLONの主張をある程度裏付けている(時速45キロ、ヨー0度)。あまりにも新型PRIDE IIが速かったので、Rennrad社は、Simplon社が新型バイクの詳細を自社のウェブサイトで更新する前に、その結果をリークしたほどだ。
TOUR MAGAZINE2021年10月号はまだ未発売であるが、PRIDE IIはTOUR誌においてもキャニオン AEROAD CFRよりも空力性能が高い可能性は十分ありうる。
SIMPLONは新型エアロロードを開発する際、エアロダイナミクスのプロフェッショナルであるSwiss Side社と提携している。開発ではフレームの開発とCFD解析をサポートしたという。CANYON AEROAD CFRの開発にも携わったSwiss Sideと開発のパートナーシップを結んだとあれば、結果は明らかだ。
PRIDE IIのフレームにに組み込まれた新しいデザインと形状は、いわゆる「セーリング効果」や「ネガティブ・ドラッグ」を生み出す。ヨットのように風を受けてバイクが前に押し出されるようなエアロダイナミクス性能を備えていると主張している。
PRIDE IIが特徴的なのは、ヘッドチューブとフォークレッグがより横長になり、さらにボトムブラケット、シートチューブ、ダウンチューブ付近の面積が大きくなっている。いわゆるマンボウフレームだ。
そして、シートチューブとトップチューブの境目にある補正トライアングルや、ヘッドチューブと同じ位置にあるステムクランプから立ち上がる「スプリットステム」を採用している。サーベロのバイクでも同じような仕組みで空力性能が高い構造だ。
ステムクランプ部分はトップチューブと完全に一体化している。前面から流れてきた空気を、スムーズに後ろへと流すエアフローの向上を実現している。SIMPLONのステムデザインは、全体的にサーベロS5に似ている。
ただし、PRIDE IIはペダルなしで7.7kgだ。重量は決して軽くはない。
おそらく、UCI新レギュレーションに沿ったバイクはこれまで世界最速だったバイクの記録を次々と今後も数多く登場するだろう。もちろんDOGMA Fもその1つだ。そして、常に世界No.1を目指すスペシャライズドやTREKが黙っているはずがない。
名作VENGEの再来もあり得るし、TREKのマドンの新型の話もそろそろ聞こえてきそうだ。UCI新レギュレーションの第一号としてSIMPLON PRIDE IIは世界最速になる可能性が非常に高い。しかし、これからグランツールを走るメジャーメーカーが本気を出してエアロロードを開発してくることを考えると、UCI新レギュレーションの記録は次々と塗り替えられていくのだろう。