世界最速のディスクロード CANYON AEROAD CFR 実験で明らかに

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GSRウィンドトンネルを使った実験においてCANYON AEROAD CFRが世界最速のディスクロードバイクに躍り出た。これまで最速の座を譲らなかったデイモン・リナード氏の作品Cannondale SYSTEMSIXの記録をついに塗り替えた。

GSRウィンドトンネルを使用して行われたDISCロードの頂上決戦は、エアロダイナミクスと軽さのそれぞれで優れた性能を叩き出した「S-WORKS TARMAC SL7」と「CANYON AEROAD CFR」に絞られることになった。空力性能と重量を加味した総合的な性能は、他のDISCロードバイクを大きく引き離していた。

S-WORKS TARMAC SL7は世界選手権や、ツール・ド・フランスで勝ち過ぎなぐらい勝利数を重ねている。対してCANYON AEROAD CFRは、日本でも大人気のマチュー・ファンデル・プールがクラシックレースで勝利するなど注目度も高いモデルだ。

CANYON AEROAD CFRはTARMAC SL7(ROVAL RAPIDE)よりも、8Wほどエアロダイナミクスに優れている結果だった。しかし、重量を考慮するとAEROAD CFRのフレームセット重量はSL7よりも146g弱重いというデメリットもある。とはいえ、数値データを知れば知るほど「S-WORKS TARMAC SL7」か「CANYON AEROAD CFR」のどちらを選べばよいのか、という結論に収束していく。

今回の記事は、世界最速の記録を塗り替えたCANYON AEROAD CFRに迫る。実験データから得られた数値は、いったい何を物語るのだろうか。

世界最速を塗り替えた

キャニオンは現在販売されているディスクロードバイクにおいて空力性能が最も高い「最速のレースバイク」を生み出すことに成功した。事実として、TOUR MAGAZINE(ドイツ)の風洞実験でCannondale SYSTEMSIX(元Cerveloエンジニアデイモン・リナードが開発)を抜き去った。CANYONはエアロダイナミクスに定評のあるSWISS SIDEと連携し4年以上の歳月をかけて新型AEROAD CFRを生み出した。

2021年現在、名実ともに世界で最もエアロダイナミクスに優れたディスクロードバイクが「CANYON AEROAD CFR」だ。また、エアロダイナミクスに優れたバイクTOP6の風洞実験結果は以下のとおりだ。なお、TOUR紙のポリシーで使用するホイールはメーカーのハイエンドモデルに搭載されているコンプリート状態のままを採用している。

  1. 202W:CANYON AEROAD CFR(DTSWIS 1100 DICT 62mm)
  2. 203W:Cannondale SYSTEMSIX(KNOT 64)
  3. 206W:Cervelo S5 DISC(ENVE SES)
  4. 208W:S-WORKS VENGE DISC(CLX 64)
  5. 210W:S-WORKS TARMAC SL7 DISC(RAPIDE CLX)
  6. 212W:TREK MADONE DISC(AEOLUS XXX6)
  7. 227W:(参考)TREK EMONDA SLR DISC(RSL 37)

時速45km/hにおいて、新型AEROADは旧型AEROADよりも平均5.4Wもエアロダイナミクスが改善された。エアロダイナミクスの改善はエアロの専門家であるSWISS SIDEと共同開発が行われた結果だ。SWISS SIDEはホイールをメインに開発しているブランドだが、F1の車両開発出身のエンジニアたちは古くからGSR風洞実験設備を使用してさまざまな実験を行っている。

CANYONはSWISS SIDEとの蜜月の開発協調・協力をしながらも、使用するホイールは容赦なくDTSWISSを採用するという無慈悲っぷりにCANYONとAEROAD CFRへの本気度が感じられる。というわけではなく、DTSWISSの1100 DICUTの開発にもSWISS SIDEが協力している。要するに3社ともWIN-WINの関係にある。

昨今のディスクロードバイク開発には傾向がある。いくつかのブランドはエアロダイナミクスと軽量化を1つに収束するパッケージ(TARMAC SL7など)に開発方針のかじを切った。しかし、CANYONは「エアロロードバイク」という明確な線引きをし、軽量バイクを残しつつエアロダイナミクスを限界まで高める開発に注力した。

AEROAD CFRの開発にはこれまでの7倍以上のCFD(数値流体力学)解析を実施したという。バイクの細部の領域まで特徴を明らかにしながら、空力性能を最大化するための改良が繰り返された。最速のフレーム部品がCFD解析で決定されたあとは、おなじみの風洞実験である。風洞実験は南ドイツのGCTウィンドトンネルで検証された。

試験は、ヨー角が±20度の範囲で水平姿勢と垂直姿勢の状態の両方で行われた。ダミー人形(回転する脚を持つ)を乗車させた場合や、フレーム単体でもテストが行われた。ライダーの分厚い脚はバイクの気流に大きな影響を与える。AEROADの開発では、脚の動きで生じた乱流の影響も考慮した。

新型AEROAD CFRと旧型AEROAD CF SLXとのエアロダイナミクス比較では、時速45kmとヨー角-20度~+20度の範囲において、平均5.4ワットの空気抵抗削減を達成している。この実験データは、ダミー人形とボトル2本が含まれている。ボトルなしの場合は4.4ワットの削減だ。すなわち、脚の動きやボトルの取り付け位置を考慮した状態でAEROAD CFRはエアロダイナミクスの最適化がなされている。

興味深いのは、AEROADが「UCIの新ルールでエアロダイナミクスを最大化しなかった」ということだ。3:1のルールにそえばシートポスト付近のカムテールをさらに大胆な形状にし空力性能を改善できたはずだ。しかし、それらを見送り乗り心地の改善を施した。実際にTOUR MAGAZINEが測定したシートポスト垂直剛性の結果にもあるとおり、数あるフレームの中でも非常に剛性が高く仕上がっている。

言い方を変えれば、数値上もコンフォートではなく、純粋なレース用途のフレームに仕上げられている。

剛性

剛性の話と切り離せないのが使用するカーボンと製造方法だ。CANYONはAEROADの新型にあの「新しいカーボンファイバー」を採用した。TREKの新型EMONDAの軽量化に貢献し、マイナーチェンジしたMADONEにも採用されたカーボンファイバー「TORAY M40X」である。強度を保ちながら軽量化できる夢の素材だ。

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その恩恵は数値にも現れているのだろうか。実際に確認してみよう。シートポスト剛性は以下のとおり(値が高いほど硬い)。

  1. 261(N/mm):S-WORKS VENGE DISC
  2. 188(N/mm):CANYON AEROAD CFR
  3. 156(N/mm):S-WORKS TARMAC SL7
  4. 128(N/mm):TREK EMONDA SLR(2020)
  5. 104(N/mm):S-WORKS TARMAC SL6

BB剛性は以下のとおり(値が高いほど硬い)。

  1. 76(N/mm):S-WORKS TARMAC SL6
  2. 74(N/mm):CANYON AEROAD CFR
  3. 67(N/mm):S-WORKS VENGE DISC
  4. 58(N/mm):S-WORKS TARMAC SL7
  5. 49(N/mm):TREK EMONDA SLR(2020)

フォーク剛性は以下のとおり(値が高いほど硬い)。

  1. 65(N/mm):S-WORKS TARMAC SL6
  2. 53(N/mm):CANYON AEROAD CFR
  3. 53(N/mm):S-WORKS TARMAC SL7
  4. 48(N/mm):TREK EMONDA SLR(2020)
  5. 46(N/mm):S-WORKS VENGE DISC

ヘッド剛性は以下のとおり(値が高いほど硬い)。

  1. 107(N/mm):CANYON AEROAD CFR
  2. 105(N/mm):S-WORKS TARMAC SL6
  3. 98(N/mm):S-WORKS TARMAC SL7
  4. 91(N/mm):S-WORKS VENGE DISC
  5. 83(N/mm):TREK EMONDA SLR(2020)

上記モデル以外にも数多くのバイクがもちろん存在している。上記は、補足説明がしやすいように使ったことがあるバイクを選出している。

剛性についてこれだけ確かな結果が出ているものの、「バイクシステム剛性」に対して支配的なのは、タイヤである。より厳密に言えば空気圧である。言ってしまえば、空気圧がすべての剛性をあっさりと変えてしまう。しかし、空気圧が一定条件の場合はフレームやホイールを変更することでバイクシステムの剛性は大きく変化する。

各社フレームサイズによって剛性に関してはチューニングが施されていることがほとんどだ。スペシャライズドのライダーファーストエンジニアードやTREKの身長別のフレーム設計変更しかり。CANYONは昔から高剛性路線を貫いている。新型AEROADも同じく、前作よりもさらに剛性を高めてきた。

剛性値に関しては、今までテストしてきたバイクを参考に列挙している。バイクインプレッションは相対評価だが、ほぼ数値とおりの感触だ。1つ1つ剛性について確認していく。乗り心地、いわゆるサドルに座っている際にライダーが感じる「突上げ」や「乗り心地」と言われるものを左右するシートポストの剛性からだ。

シートポスト剛性

  1. 261(N/mm):S-WORKS VENGE DISC
  2. 188(N/mm):CANYON AEROAD CFR
  3. 156(N/mm):S-WORKS TARMAC SL7
  4. 128(N/mm):TREK EMONDA SLR(2020)
  5. 104(N/mm):S-WORKS TARMAC SL6

S-WORKS VENGE DISCのシートポストは群を抜いている。正直ここまで硬かったのか!と疑うほどだったが、VENGEの発表の際にスペシャライズドが「FACT 11Rカーボンでも十分な剛性を引き出せる」と言っていたのが違う形で証明された。VENGEは数値が示すとおり、フラットな舗装されたコースはレールの上を走るように進むが、いざ路面状況が変わると突き上げは顕著に感じる。

AEROAD CFRは次いで剛性が高い。数値的には、VENGEとS-WORKS TARMAC SL7の間の剛性であるが、どちらかといえばS-WORKS TARMAC SL7寄りの数値だ。VENGEよりも(相対的に)剛性が低く、SL7よりも(相対的に)剛性が高い。

意外なのがS-WORKS TARMAC SL6だ。TREK EMONDA SLRよりもシートポストの柔軟性が高い。TREK EMONDA SLRがエアロフォイル形状を採用しなかった理由として「乗り心地をよくするため」とあった。とはいえ、剛性の数値上は「エアロフォイル形状のSL6のほうがコンフォート」という結果は見逃せない。

TREK EMONDA SLRがエアロダイナミクス的な観点で評価が下がるのは、シートポストがトラディショナルな丸型ということだ。この丸型はエアロダイナミクス的に最悪の形状であり、昨今ではどのフレームでも積極的に採用しなくなった。TREK EMONDA SLRで不満があるのがこのシートポストの形状だが、おそらく既存のシートマストを踏襲したいがゆえエアロフォイル形状を見送ったのだろう。

TREK EMONDAで改良がされなかった円柱のシートマスト、そしてドロップシートステイを採用しなかった理由の中でさまざまな確認をしたが、エアロダイナミクスよりも乗り心地を優先し、ドロップシートステイはわずかに空力が向上することも認めていた。この「わずか」を追求するか否かはフレーム開発の方向性で変わってくるのだろう。

そしてバイクを選択するライダーもしかり、である。

事実として、EMONDAのエアロダイナミクスは昨今登場したバイクの中でも優れてはいない。EMONDA SLRはZIPP404相当のエアロダイナミクス性能を備えたRS 37を組み合わせても、SL7と比較して13W増、AEROAD CFRと比べて25Wの抵抗増だ。

TREK EMONDA SLRは細部にエアロフォイル形状を配置したが、すべての原因とは言い切れないもののシートマスト部分の円柱やドロップシートステイ非採用が、今回のGSRウィンドトンネルの実験結果に表れたのかもしれない。

BB剛性

  1. 76(N/mm):S-WORKS TARMAC SL6
  2. 74(N/mm):CANYON AEROAD CFR
  3. 67(N/mm):S-WORKS VENGE DISC
  4. 58(N/mm):S-WORKS TARMAC SL7
  5. 49(N/mm):TREK EMONDA SLR(2020)

BBまわりの剛性が高いのはSL6だ。さらにBB剛性が高いモデルも存在しているがテストしていないため割愛している。AEROAD CFRはSL6に迫る剛性を備えている。しかし、BB部分が変形することによる熱エネルギーは推進力に対して影響をほとんど及ぼさないという事実が明らかになっている。

バイクシステム剛性として考えた場合、最も変形するのはタイヤだ。タイヤの変形が最も支配的でありBB剛性だけを切り出して剛性を語るのは少々乱暴である。そして、それ以外の剛性にも言える話だ。そのうえで、BBまわりの剛性は「高ければ良い」「低ければ悪い」という単純な話ではない。

LOOKのトラックバイクは死ぬほど硬いが、ヒルクライマーが愛したLOOK595はウィップ感に富んだしなやかな剛性が魅力的だった。競技種目に合わせた”適切な剛性”と、実際に乗るライダーが何を求めているのかでフレーム剛性の味付けは大きく変わる。CANYON AEROAD CFRやSL6が目指した剛性と、SL7やEMONDAが目指した剛性は異なっていても何らおかしな話ではない。

また、BB剛性だけがバイクの脚アタリを決定するわけではない。特に顕著なのがチェーンステイ長だ。トラックバイクやタイムトライアルバイクは、できるだけかかりをよくするために400mm以下で設計してある。リムブレーキ式ロードバイクの魔法の数字405mmはディスクロードバイクになってから姿を消し、410mmに落ち着いた。

シクロクロスバイクはコントロール性能と33Cタイヤを使用する都合からか425mmという魔法の数字がある。かかりをよくするために中には420mmの設計のバイクもあるが、正直シクロクロスでは使いたくない。このように、BB剛性だけが足当たりに対して支配的ではないものの、個人的に最もフィーリングが合うのがVENGEだった。

先日、EMONDAからVENGEに乗り換えて久しぶりに使ってみた。やはり、平坦は本当にVENGEがいい。よく進んでくれるバイクだ。もっさりとしているVENGEの性格が「進まない」と感じるライダーも中にはいる。最終的には本人との相性問題になる。

VENGEの代わりになる優れたエアロロードを探しているのならば、CANYON AEROAD CFRはとても良い選択になりうる。ある程度硬く、エアロロードとしての汎用性が光る。

フォーク剛性

  1. 65(N/mm):S-WORKS TARMAC SL6
  2. 53(N/mm):CANYON AEROAD CFR
  3. 53(N/mm):S-WORKS TARMAC SL7
  4. 48(N/mm):TREK EMONDA SLR(2020)
  5. 46(N/mm):S-WORKS VENGE DISC

参考として、フォーク重量は以下のとおり。

  1. 426(g):CANYON AEROAD CFR
  2. 413(g):TREK EMONDA SLR(2020)
  3. 404(g):S-WORKS VENGE DISC
  4. 374(g):S-WORKS TARMAC SL7
  5. 343(g):S-WORKS TARMAC SL6

下りやステアリングに対し、重要な役割を担うのがフォークだ。興味深いのは、実際の重量とフォーク剛性が比例していないことだ。今回の比較対象の中で最も軽く、最も剛性が高いのはSL6のフォークだった(もちろん、さらに剛性が高いモデルも世の中に存在している)。

エアロ形状になるとフォーク重量がかさみ、剛性が落ち込む傾向にある。CANYON AEROAD CFRは重量はかさむものの、剛性に関しては十分に確保されている。VENGEと比較しても剛性は高い。CANYON AEROAD CFRのフォークは段差がつけられており、エアロダイナミクスを追求している。

バイクの前面部分に位置しているフロントホイールや、ハンドル、フォークというパーツはエアロダイナミクスを左右する重要な役割を担っている。そのうえ、ステアリングや操作感覚、安全性にも影響を与える重要なパーツであるため重量やエアロダイナミクス性能をどこに落ち着けるかはメーカーの力の見せ所だ。

M40Xカーボンを使用したCANYON AEROAD CFRとEMONDA SLRが軒並み重量が重い部類に位置しているのは何か理由があるのだろうか。M40Xカーボンは強度は高いもののT1100Gといったカーボンよりも高弾性であるという特徴がある。フォークの剛性は、フレームほど形状の自由度が確保できないため、ある程度の積層を持って剛性を高める方法が採られたのかもしれない。

TREKの開発側も述べていたとおり、M40Xを採用することで「強度」が高まるが「剛性」が高まるわけではない。「強度」と「剛性」はまったく別の話である。

ヘッド剛性

  1. 107(N/mm):CANYON AEROAD CFR
  2. 105(N/mm):S-WORKS TARMAC SL6
  3. 98(N/mm):S-WORKS TARMAC SL7
  4. 91(N/mm):S-WORKS VENGE DISC
  5. 83(N/mm):TREK EMONDA SLR(2020)

ヘッド剛性はあればあるだけ良いと思っている部分だ。平坦を走っている場合はそれほど恩恵が得られないが、下りのバイク安定性能に大きく影響を及ぼしている部分だという。より厳密に言うと、ヘッド剛性はフレームの「前後バランス」を決定する重要な役割を担っている。

正直な印象を書くと、最も下りの走りが良かったのはSL7だ。とにかくバランスが良い。剛性だけですべての要素は決まらないが、エアロダイナミクス性能と下り性能が最も優れているのはSL7だと思う。相対的な感覚を言うと、VENGEとEMONDA SLRはアンダーステア気味(外に膨らむ)になる。

最も中庸なのがSL7だった。ヘッド剛性だけで下り性能を語るのは少々乱暴である一方で、ツール・ド・おきなわやニセコクラシックのダウンヒルを考えると最低でもTARMAC SL7のような安定感はほしい。TREK EMONDAに対して忌憚のない感想を書くと、前後バランスよいものの下りはSL7のほうが安心できる。

CANYON AEROAD CFRは最も剛性が高く、合わせてフォークの剛性も高い。これらの要素から実際に乗ってみるとどのような反応を示すのかは未知数であるものの、数値上は非常に期待できる仕上がりだ。ヘッドアングルもオフセットもTARMACと近いことから相対評価を1度は行ってみたいバイクである。

重量

CANYON AEROAD CFRは軽量ではないものの、エアロロードとして考え、空力性能を加味するとすごく重いというわけでもない。エアロダイナミクスと軽量化はトレード・オフの関係にある。それゆえ、SL7のようなバイクが登場するわけだがCANYON AEROAD CFRの重量はどのようにとらえるべきだろうか。

フレーム重量(組み上げに必要な小物を含む)は以下のとおり。

  1. 1037(g):S-WORKS VENGE DISC
  2. 951(g):CANYON AEROAD CFR
  3. 857(g):S-WORKS TARMAC SL7
  4. 850(g):S-WORKS TARMAC SL6
  5. 706(g):TREK EMONDA SLR(2020)

フォーク重量は以下のとおり。

  1. 426(g):CANYON AEROAD CFR
  2. 413(g):TREK EMONDA SLR(2020)
  3. 404(g):S-WORKS VENGE DISC
  4. 374(g):S-WORKS TARMAC SL7
  5. 343(g):S-WORKS TARMAC SL6

フレームセット重量は以下のとおり。

  1. 1,441(g):S-WORKS VENGE DISC
  2. 1,377(g):CANYON AEROAD CFR
  3. 1,231(g):S-WORKS TARMAC SL7
  4. 1,193(g):S-WORKS TARMAC SL6
  5. 1,119(g):TREK EMONDA SLR(2020)

フレームセット重量単体で見た場合のAEROAD CFRとの重量差は以下のとおり。

  1. +64(g):S-WORKS VENGE DISC
  2. ±0(g):CANYON AEROAD CFR
  3. -146(g):S-WORKS TARMAC SL7
  4. -184(g):S-WORKS TARMAC SL6
  5. -258(g):TREK EMONDA SLR(2020)

今回のAEROAD CFRをくまなく確認すると「軽量化」の道を捨てたわけではなさそうだ。最上位のCFRモデルはM40Xカーボンを使用することで、剛性を確保しながら重量を削減した。可能な限り6.8キロのUCI重量制限に近くなるように設計されている。

とはいえ、「隠れ重量」としてハンドル、ステム、サイコンマウント、そしてBB自体の重量も考慮せねばならない。AEROAD CFRは一体型の可変式ハンドルCP0018を採用しており重量は375gだ。AEROFLY2 236gでS-WORKS SLステムの100mmがおよそ115gだ。SL7やVENGEの場合はステムとハンドルを合わせて351gであり、CP0080と比較しても24gほどの差しかない。

VENGEとAEROAD CFRの重量差は64gだ。ハンドルが異なることにより24gを十分吸収できる。

VENGEの重量ハックで重要なのがBBとクランクだ。S-WORKSクランクとセラミックスピードBBに変更することで6.8kgも達成可能だった。AEROAD CFRに採用しているBBはプレスフィット式でありスレッド式ではない。BBを軽いものに変更すればあと数グラムは削減できる。

CANYON公式でもアナウンスされている情報として、とても残念なのが4iiiiのパワーメーターは干渉してしまうため使用できないということだ。軽量な4iiiiのパワーメーターは魅力的だが、QUARQやSRMといったスパイダー式のパワーメーターを選択せざるを得ない。そして、AEROAD CFRに付属してくるDTSWISSの62mmハイトホイールは重量が1620gを超える。ここは空力性能とのトレードオフで軽量な1400g台のROVALを使用しても良いだろう。

あとは、ラテックスチューブやスルーアクスルシャフトを軽量化することによって6.8kgのAEROAD CFRも十分視野に入ってくる。パーツチョイスしだいでは6.8kg最速のディスクロードバイクが作れるかもしれない。そのような淡い期待を持ってさらに興味深いデータを見ていこう。

エアロ VS 軽さ

この表は、2種類のコース条件を元にさまざまな種類のバイクが走破した場合のシミュレーションタイムが記されている。75kgのライダーが200Wで次の2つのコースをそれぞれのバイクで走った場合のシミュレーションだ(リムブレーキは割愛、ディスクロードバイクだけ)。なお縦軸にはバイクシステム重量も読み取ることができる。

  1. 100km, 500mUPのコース
  2. 100km, 2000mUPのコース

1.100km, 500mUPのコースを走った場合のタイム。※詳細なタイムはグラフを参照のこと。

  1. 2021 CANYON AEROAD
  2. 2019 Cannondale SYSTEMSIX
  3. 2019 Cervelo S5
  4. 2020 S-WORKS TARMAC SL7
  5. 2019 S-WORKS VENGE

2.100km, 2000mUPのコースを走った場合のタイム。※詳細なタイムはグラフを参照のこと。

  1. 2020 S-WORKS TARMAC SL7
  2. 2021 CANYON AEROAD
  3. 2019 S-WORKS VENGE
  4. 2019 Cervelo S5
  5. 2020 Cervelo S5

結果として、平坦メインならばCANYON AEROAD一択である。ただ、ツール・ド・おきなわやニセコクラシックのような2000mオーバーのヒルクライムを含むロングレースとなると、CANYON AEROADかS-WORKS TARMAC SL7の2択になる。とはいえ、VENGEも非常に優れた性能を備えており、廃盤になったものの依然として現役だ。

昨今のツール・ド・おきなわでも、強い選手が優れた機材であるVENGEを使ってアドバンテージを稼いでいた理由もデータからも読み取れる。もしもバイクを1台しか所有できず、レースメインで考えているのならば S-WORKS TARMAC SL7かCANYON AEROADを使いこなすほうが得策といえる。

それ以外のバイクは、残酷な言い方をすると単なる足かせでしかない(エアロダイナミクス性能と軽さだけで考えた場合に限っては)。結果として出てしまっては反証が出せない以上認めざるを得ない。

このような残酷なデータが出回ってしまうと、軽さとエアロ性能すべてを備えたディスクロードバイクとして、いかにSL7とAEROAD CFRが優れた存在であるかが如実にわかる。乗り心地や、脚あたりといった感性部分、そして価格を抜きにして、無機質な数値だけで考えるとSL7かAEROAD CFR以外のバイクを選択する理由を見つけるほうが難しくなる。

「エアロと軽さをすべてを1つのバイクに。」

SL7がリリースされた際、一見すると「ありきたりなプロモーション」が行われ、さらにVENGEがディスコンになった衝撃もあり「またか」と思ってしまった。しかし、時間が経って確かなデータが出揃ったいま、もはやSL7の存在と開発の方向性、そしてスペシャライズド自身が下したVENGE不要論に対し、疑う余地はなくなってしまった。

実験結果や数値的な話において、SL7に対抗できる性能を備えたディスクロードはAEROAD CFR以外見当たらないのが現状だ。おそらく、6.8kgに仕上げたAEROAD CFRはSL7を脅かす存在になりうるだろう。

さて、ここまでAEROAD CFRやSL7を持ち上げたあげく、私が好んで使っているのはEMONDAだ。バイクの性能としてはSL7やCANYON AEROADに劣ることは間違いない。それは認める必要がある。数値データ上も疑いようがない。ただ、価格や脚あたりの良さや脚の残り具合を加味すると、(軽さは群を抜いているにせよ)エアロダイナミクスとのトレードオフだ。

とはいえ、日本国内の2大レースである「おきなわ」と「ニセコ」を考えると、純粋なレースマシンとして選択すべきはAEROAD CFRとS-WORKS TARMAC SL7だ。認めがたいが、EMONDAは(登るだけなら良いが)平坦メインや高速巡航でアドバンテージを稼ぐほどの数値データは得られていない。真っ向から空力性能勝負をすると確実に負ける(ライダーが高出力を出せる場合は別として)。

また、エンデューロやJBCFのようにロード、クリテリウム、タイムトライアルがミックスされた大会であったとしても、AEROAD CFRとS-WORKS TARMAC SL7を選ぶことが最も合理的な判断であるいうことは否定する余地がない。こうなってくると、VENGEのときのように皆が皆同じバイクを求める自体が発生することは容易に想像できる。

機材がコモディティー化すると問題なのは、機材アドバンテージが無くなることだ。バイクだけで20W以上の差が生じる時代だからこそ、1/100の世界で上位争いをするトップ選手であればあるほどなおさら、「パワーを出せばいいんだよ」とは簡単に言えない状況がアマチュアの世界でも起こってくる。

パワーメーターの普及と効率的なトレーニングメニューの進歩によって、ライダーのフィジカルが極限まで高められたとしても、機材差によってあっけなく台無しにされてしまう可能性も十分ありうる。

「カネで速さを買える」

という時代になってしまったことは否定できない。しかし、レース目的でないにせよ逆に捉えれば「少ないパワーで遠くまで走れる」とも言い換えられる。速さと軽さは一見するとレーサーだけに限った話に聞こえるかもしれない。一方で、見方を変えると技術革新はより遠くへ楽に走る楽しみも与えてくれる。

バイクに何を求めるのか。何を重要視するのか。それは、人それぞれ異なる。そのなかで多くの人が気にしているであろう「エアロダイナミクス」と「軽量化」に対し、SL7とAEROAD CFRはそれぞれ異なる方向性を導き出した。

Aeroad CFR
Aeroad CFR ★ Canyon史上最軽量のエアロロードバイク。&#26368...
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