書籍「スマホ脳」の著者が、自国スウェーデンで67万部売り上げ、ベストセラーになったのが書籍「運動脳」だ。読了したので書籍レビューを行った。「スマホ脳」はスマホ依存やスマホに取り憑かれる理由がわかりやすく、かつ医学的にまとめたられた良書だった。
SNSやスマホは、依存性の高いドラッグと同様の効果があるという。私は以前から、職業柄SNSのインターフェースや作りに疑問に感じていたことがあった。「SNSの更新はなぜ読み込み時に行われず、手動スワイプ更新なのか」ということだ。
どうやら、このおかしな仕組みは、ギャンブルのスロットと同じ効果を狙っており、”スワイプ”がスロットのレバー(トリガー)で、いいねや書き込みが「アタリ(777)」という方式と同様であるということだった。ハズレの確率は高いが、アタリがあると脳からドーパミンがでる。
この繰り返しで脳をスマホ依存症に導いていくという。
¥2,156 (コレクター商品)
書籍「スマホ脳」は素晴らしい書籍だった。本書のお陰で、私のスマホはグレースケールに変更し(詳細はスマホ脳を参照)、それ以来スマホの使用頻度を激減させることに成功している。その著者が、「運動」と「脳」の関係に関してまとめたのが本書「運動脳」だ。
本書は様々な章から分かれているが、どの章においても「有酸素運動で前頭葉は大きくなり、海馬の細胞が増える」という医学的な事実が並んでいる。
毎日トレーニングを積んでいる私としては、嬉しい情報ばかりだった。従来、脳は成人後、衰える一方だとされていた。どんどん細胞は減り、衰えていく。脳の老化は止められない。それがこれまでの”常識”だった。
そう、これまでは。
しかし、成人後も脳内の前頭葉が大きくなり、死の直前でも海馬の細胞数が増えた人たちがいる。共通していたのは「有酸素運動」を日常的に行っていたこと、ただそれだけだった。
アンデシュ・ハンセン氏の書籍の内容が面白いのは、皮肉のようでいて的確な視点を持ち合わせていることだ。「なぜこれほどまでに効果がある有酸素運動が広まらないのか?」という観点に対しては、医師として本書内で次のように明言している。
「金にならないから」
身体に効果があるサプリメントやクスリは膨大な広告費と開発費が投入される。そのリターンとして、企業は利益を得るわけだが、無料でかつ今からでも実践できる「有酸素運動」には誰も金を払う人はいない。やったとしても、シューズメーカーやサングラスメーカーが広めても良いとはおもうが、直接的にある特定の製品が売れるわけではない。
そのような、マーケティングや健康に関する企業との利害関係などの話も本書に記載されている(まるで、どこかの輪界のような話だ)。
本書の内容に戻ると、ウォーキング、ランニング、サイクリングがどのように脳に作用するのか、具体的には学力・集中力・記憶力・創造性といった脳のが司るあらゆる力を伸ばす効果がある。具体的な運動の内容なども本書にまとめられているため、サイクリストは必見だ。
そして、私のようにこれから加齢と戦う必要のあるサイクリストにとって、夢と希望のある内容が記されている。「何歳からでも効果がある」という有酸素運動のちからが記されている。
本書が良いのは、なにか特別なサプリメントや器具が一切出てこないことだ。書かれている事は、自分自身の心拍数を一定以上高めること。ただ、それだけだ。だからこそ、有酸素運動を行っている方に、その効果を科学的知見で証明した内容を是非知ってほしい。
脳は成長しない、というこれまでの常識に対して、最新の科学的知見が本書には盛り込まれている。サイクリスト、いや、10代を過ぎた全ての現代人の脳に「運動脳」は必見だ。
(目次より)
- 第1章 現代人はほとんど原始人
- 第2章 脳から「ストレス」を取り払う
- 第3章 「集中力」を取り戻せ
- 第4章 うつ・モチベーションの科学
- 第5章 「記憶力」を極限まで高める
- 第6章 頭のなかから「アイデア」を取り出す
- 第7章 「学力」を伸ばす
- 第8章 健康脳
- 第9章 最も動く祖先が生き残った
- 第10章 運動脳マニュアル