【書籍レビュー】自転車に乗る前に読む本 生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」

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「自転車に乗る前に読む本」

自転車なんて乗れる、って人にこそ本書を読んでほしい。本書は、ロードバイクのみならず普段乗るママチャリまで、生理学に基づいたデータを引用し「乗る前」の知見を紹介している。

本書の要は「生理学データで読み解く」のタイトル通りだ。自転車上で行われる運動が身体にどのような影響を及ぼすのか、実際に得られた身体の血中乳酸値の変化、筋放電量、酸素消費量など様々な反応生理学データを用いて紹介していることにある。

例えば、

  • ケイデンスが筋放電量率と酸素消費量に及ぼす影響
  • サドル位置(高い、低い)による血中乳酸値変化の影響
  • サドル位置による疲れにくさの影響

など、生理学データを引用して紹介している。サイクリング雑誌のような感覚的で古めかしい伝統的なセッティングなどは一切出てこない。無機質なデータが並んでいるが、ママチャリに乗る人にもわかるように読みやすい内容で書かれている。

また、運動生理学以外にも、「転がり抵抗」「空気抵抗」「重力抵抗」などの説明もある。

著者の髙石 鉄雄氏は、名古屋市立大学大学副学長、システム自然科学研究科の教授だ。『自転車運動に対する身体適応および日常的自転車使用による健康づくりの可能性』 博士号(人間・環境学/・京都大学)などの論文がある。

髙石 鉄雄 | 名古屋市立大学大学院 理学研究科 総合生命理学部
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髙石氏は、研究のためにシマノと協力して「SRM搭載のママチャリ(カゴ付き)」を製作し、NHKのためしてガッテンにも出たことがある。このママチャリは、SRMだけでなく、ペダルに踏力計(踏み込みのトルクを測定)やクランク角度計も搭載し100万円を超えるママチャリだという。

ヴァージョンアップ

このような、「キテレツママチャリ」を用いて様々な研究を行っている著者が執筆したのだから内容が面白くないわけがない。

「自転車に乗る前に読む本」は自転車を初めて乗る人から、自転車に乗ることで体の中にどのような反応が起こるのか運動生理学を知りたい方まで幅広く知見を得ることができる内容に仕上がっている。

価格も1100円と安く、192ページと薄いため一気に楽しく読めた。すでに自転車に乗っている方で、生理学データで自転車の運動を読み解きたい方は必見の書籍だ。

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