「中華ホイール」
中華という言葉は粗悪品の代名詞だった。しかし、現在では中国製品の品質や作りは玉石混交ながらも、中には優れた製品も存在している。いまやスマホ部品のほとんどが中国製だし、ハイブランドのカーボンフレームも中身は中国製が多くなってきた。
中国はいまや「世界の生産工場」になっている。身近に存在するあらゆるモノが中国で作られ、集約されているのだ。そして、中国企業のどれもが大手からの下請けで収益を得ている。同時に、技術やノウハウも中国企業に集まってきている。
中国と言えば模倣品の問題も取り沙汰されるが、世界中のものつくりの技術や知見が集まってきていることの裏返しと言ってもいい(賛成はしないが)。
中国製品が世界中に氾濫するなか、自転車用品も中国製の機材が数多く登場している。フレームのみならず、クランク、ホイールと数えたらきりがない。このように、じわじわと中国製の機材が注目され始めているのには理由がある。
安くて、スペックが(見た目は)良いのだ。
欧州、北米、日本メーカーでは考えられないような価格でハイエンドな製品に仕上がっている。しかし、冒頭でも述べた通り中華製品は玉石混交の状況にある。良いのか、悪いのか、見た目だけでは判断できないのだ。
そんな魑魅魍魎の中華ホイールに対して、焦点をあてた一冊がある。
『中華ホイール普及学』だ。
今回は書籍の中華ホイール普及学をレビューしていく。
中華カーボンホイールという選択肢
- ロードバイクの高性能化と高価格化
- カーボンホイールで走りをアップグレード
- 高品質化した「中華カーボン」
- 大手メーカー製品との比較
- 中華ブランドの注意点
本書の導入部分では、中華製品で特にホイ―ルが注目されるようになった背景や、シマノなど大手メーカー製品と中国製品を比較しながら、性能・品質・価格等の違いを著者の機械工学の知識を交えながら分析していく。
中華ホイールを評価するとき、これまで市場を席巻してきた大手ブランドと何が違うのか、中華ホイールは「劣っている」のか、それとも「優れている」のか。十把一絡げに中華製品を「粗悪」と判断するのは、もはや時代遅れの考え方だと思うだろう。
しかし、中華ブランドはまだまだ注意すべき点がある。本章では数多くの中華製品を使ってきた著者の知見から、怪しい中華製品をつかまないポイントなどを知ることができる。
ホイール選びの基礎知識
中華ホイールにとどまらず、ホイールという機材に求められる性能についても紹介されている。ローハイト、ディープリムは何が違うのか、基本的な知識が網羅的にまとめられている。ホイール選びに悩む初心者でも読みやすい内容だ。
ホイールのスペック表を読み解きながら、乗り味や使い勝手を推測する方法も紹介されている。今後のホイール選びの参考にもなる内容だ。
- ディープリム化ローハイトリム化
- リム
- スポーク
- ハブ
中華カーボンホイールのリアル
- 中華カーボンホイールのリアルに迫る
- YOELEO
- Nepest
- ICAN
- SUPERTEAM
「で、中華ホイールどうなのよ?」という話題から「どの中華ホイールがよいの?」というサイクリストが最も知りたい本題について、中華ホイール大手4社(YOELEO、Nepest、ICAN、SUPERTEAM)を実際に取り上げて紹介している。
各製品のパーツ構成や組み立て品質、実際のスポークテンション、乗車感のレビューは必見だ。
「製品の向こう側」にいるメーカーの方に直接インタビューした模様もまとめられている。ブランドの戦略やホイールづくりの思想に迫った内容は、製品を使うだけではわからない設計側、売る側の本音が垣間見れるだろう。この情報はどこにも載っていない。
本章を読めば、あなたに合う中華ホイールがきっと見つかるはずだ。
まとめ:玉石混交で玉を見極めるために
中華ホイールが注目されているのは、自転車機材の異常な高価格化が進んでいること、日本人の所得が減っていること、様々な要因がある。日本人が好きな「安くて高性能」も後押ししている。
しかし、安かろう悪かろうという言葉にもあるとおり、中華機材はいまだ玉石混交の状況にある。その善し悪しや見定めを行うとき、本書を読まずしてどのように判断したらよいのだろうか。
わたしには、本書を読む以外に明確な答えを持ち合わせていない。
本書を読み進め読了したとき、ふと理解できたことがある。「中華ホイール」という製品と販売方法が消費者に対してどのような影響を与えているのかだ。
中華ホイールを購入する際は、ショップを通さずに直接ユーザーに販売される通販方式が主流だ。それゆえ、中華ホイールを購入する際は、事前に使用用途、特性、リムプロファイルなどを明確にし、ユーザーが見定める必要がある。
しかし、そこには障壁がある。実物を見て手にするのは家に届いてからだ。だからこそ、実物を使い検証した「手引き」が必要になるのではないのか。それが本書だ。
中華ホイールといえど100,000円以上するのだ。本書を読み進めれば、粗悪品やホイールの善し悪しを見極める確かな知見が、あなたの中に永遠に蓄積されるのだ。それを考えれば、わずか1,000円という値付けは十分に投資しがいがある。
中華ホイールを検討中の方、ホイールの目利きを高めたい方、ホイールを使うあらゆる人に本書は必須の一冊に仕上がっている。
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