クレストヨンドの「チタンの鎧」は、フリクションの低減やパーツの耐久性が向上する効果があり、サイクリストに人気の施工だ。決して眉唾な技術ではなく、施工を行ったチェーンとギアを用いた実験でもフリクションが低減する結果が得られている。
チタンの鎧や実際の効果をご存知ではない方のために改めてチタンの鎧の効果を紹介する。
実験は、非施工品、チタンの鎧施工品を用意し、一定速度に必要な電流値(電力値)を電力値から求める方法が用いられた。実験にはテスターが用いられている。
電動モーターを一定速度にタイヤを回転させ、そのときに投入された電力値を測定する。電圧が一定(5V)のため、電力値の相対値は電流値から把握できる(電力=電圧×電流)。
実験は重量30kgの重りをリアホイールに負荷をかけておこなわれた。実験結果は以下の通り。まずは30km/h走行を想定した結果だ。
- 非施工品:1.75-1.8A
- 施工品:1.65-1.7A
次に60km/h走行を想定した結果は以下のとおりだ。
- 非施工品:2.8-2.9A
- 施工品:2.75-2.8A
測定電流値幅の中心値を計算に採用すると、
- 30km/h想定では、およそ5%(1-1.675/1.775=0.056)改善した。
- 60km/h想定では、およそ3%(1-2.775/2.850=0.026)改善した。
チタンの鎧は主にチェーンや、チェーンリングといったドライブトレイン全般に使用する場合が多い。特に1000分の1秒を争うトラック競技や競輪選手の愛用者が多いという。
フリクション低減ばかりが目立つが、一方でチタンの鎧には「自浄効果」もある。酸化還元反応による自浄効果により、ドロや汚れが付きにくくなる。たとえドロが付いても水で流すだけで落ちやすい特徴がある。
この「フリクション低減」と「自浄効果」が最も発揮される好例を紹介する。
サスペンションにチタンの鎧を
「フリクション低減」と「自浄効果」が求められるパーツとしてこれまでチェーンばかり施工していたのだが、チタンの鎧の効果がより発揮され、必要とされているのがサスペンションだ。
今回はFOXサスペンションにチタンの鎧を施した。サスペンションはスタンション(内筒)が外筒と摺動することによってショックを吸収する。伸縮する際に、できるだけ抵抗が少ないほうがサスペンションの入りや戻りがスムーズになる。
チタンの鎧をスタンション部分に施工することによって、サスペンション摺動時の抵抗が減る。スタンションはホコリなどを防ぐダストシールと接触しているがチタンの鎧を施工することによって少しでも抵抗を減らすことが可能だ。
また、チタンの鎧の「自浄効果」はトレイルなどを走行する際に生じるホコリや汚れが付きにくくなる。スタンション部分や、ダストシール付近の汚れも溜まりにくくなるメリットがある。
これまでチェーンやチェーンリングなど、ドライブトレイン部分に主に使用されていたチタンの鎧は、サスペンションに必要とされている「フリクション低減」と「自浄効果」が得られる一石二鳥の施工と言える。
また、チタンの鎧はチェーンでの使用例にもある通りオイルや潤滑油との併用も可能だ。スタンションに吹き付けるシリコンやテフロン系のスプレーとの相性もよく問題なく使用することができる。
チタンの鎧を施工したサスペンションを実際に使用したところ、元々のFOXサスペンションの性能が高く、さらにカシマコートの性能が相まってスムーズにサスペンションが動くため、明確な違いは確認できなかったが、確かにドロの付着はしにくいと感じた。
そして、気持ち初動のサスペンションの入りの抵抗が減った感じがした(個人の感想です)。チェーンのみならずサスペンションをお持ちの方は、ぜひチタンの鎧をサスペンションにも試してみてほしい。