2024 全日本選手権 シクロクロス MM40 3位 最後尾でも諦めずに。

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Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

第30回 全日本自転車競技選手権大会 シクロクロス MM40に参加。栃木県宇都宮市・道の駅うつのみやろまんちっく村内で開催された。砂、シングルトラック、芝、キャンバー、舗装路、砂利、3段坂とシクロクロスに求められるすべての要素が詰め込まれたコースだ。

優勝者には日の丸ジャージが送られ、1年間カテゴリの日本チャンピオンとして着用が義務付けられる。サイクリスト誰もが憧れる名誉ある「日の丸」であり、この日を目指して練習を積み重ねるライダーも多い。

私自身も過去に何度も全日本のCX挑戦しているが、全日本は毎回この日に合わせた魔物が出場するので簡単には表彰台には登れない。以下の通り、あと一歩というのがここ数年続いている。

  • 2021:5位
  • 2022:4位
  • 2023:4位

2024年の全日本は2023年と同じロマンチック村のコースだ。昨年もこの日に合わせて一時は先頭を走っていたが、後半に失速。終盤はゴローさんに追いつかれ、4位だった。というわけで全日本は魔物が住んでるし、相性が悪い。

photo: ARIHIRO

1週間前のE1のレースではなんとかフルラップしたが、調子の上がり方が芳しく無く手応えもなかった。出場するのをやめようと思っているとレース後書いたが、不思議と全日本前に調子が上がってきてFTPも調子がいい時まで戻った。

十分に回復して起床時の安静心拍も久しぶりの29を記録した。これは最近では一番良い。フィジカルは整っていそうなので、せっかく準備してきたしダメ元で往復1260kmの長旅に単独で出かけた。

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ろまんちっく村コース

ろまんちっく村内に設定されたコースは、シクロクロスのあらゆる要素が詰め込まれている。砂、芝、キャンバー、磨かれたドロ、3段の直登坂、MTBコースの一部を使ったシングルトラック、下り、階段、砂利、舗装路とすべてが盛り込まれている。

スタート直後には人工的に設置された砂が配置されている。決して深くはない砂なのだが、ワダチに差し込むとスピードが出る。逆にワダチを逃すと一気に減速する。数秒の差が出ることもあるので、いかに33mmのワダチに33mmのタイヤを突っ込めるかのテクニックが鍵になる。

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

この砂場を超えたあと、足を休めるまもなく三段の直登芝上りがある。単純にスピードを付けないと最後まで直登は難しい。レース後半になると疲れるため試走の段階で登れていたとしても、足つきをしたあとのことを考慮しておく必要がある。

そのあとは、シングルトラックを下るがあえてイン側を通らずに外側から勢いをつけて走り抜けたほうが早い。最短ルートが必ずしも早いとは限らない。MTBをやっていたからなのか、今年は自然とラインが見えた。

ラスボス感があるマリオ氏 Photo: @kaytoyoshitaka

下りきったキャンバー区間の登り返しは乗車できないこともないがレース中や前の選手がいる場合は走り方を変えなくてはいけない。また、最速を求めるのか、最善を求めるのか走りの方向性で乗るか、降りるかを都度判断する必要があるセクションだった。

トレイルを抜けて平坦区間に入ると一旦休みたくなるが、この区間で休んでしまうと他の選手を抜くタイミングはシケイン後の砂利だけになる。今回のレースもこの区間で多くの選手を抜いた。

Photo: @kaytoyoshitaka

ピット前を通り、キャンバー区間へ。朝のうちは乗車できたが、午後になると磨かれた泥が滑り出したためあえて乗車にこだわらず下車してクリアした。年代別優勝したゴローさんにスタート前に聞いたラインを忠実に守り、レース中ノーミスで走り抜けたのは今回のリザルトを支えていたのかもしれない。

砂利区間を通ってスタートへ。様々なセクションが刻々と変化しながら、常に判断が求められる難コースだ。

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全日本CX MM40-49 3位

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

昨年はマッドコンディションだったが、今年もレイアウトの90%は同じだったものの路面状況はドライ。しかしやけにコーステープが狭く感じた。さらにボコボコとした路面状況に空気圧のチューニングに悩まされた。

前日試走の段階でSERAC CXはフロント1.55 bar、リア1.65 barでアタリが出た感じ。実際当日の試走では普段からフロント1.59 bar(+0.04bar)、リア1.67bar(+0.02bar)におちついた。烏丸で調子が良かったセッティングに近い。前後タイヤは迷わずSERAC CXにした。

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

レース前に村田さんや斎藤さんと試走をした。「関西勢で表彰台乗りたいね」と話していたが、過去のリザルトや今回のメンツを見ても自分が乗れる確率はほぼ無いだろうなと言う感じ。というのも今回のメンバーは濃い。

パッと名前が思いつくのは村田さんをはじめ、田崎さん、白石さん、佐藤さん、石川さん、太田さん、片岡さん、斎藤さんらが強いだろうと。

Photo: ARIHIRO

白石さんや石川さんには今年負けてしまったし、おーたさんは後半の追い上げが強い。田崎さんはロード、ヒルクラ界では知らない人はいない。

まともにやったら勝てない。フィジカルは白石さんと並び一番あるだろう。佐藤さんは東京CXで上手くて速いのを覚えている。斎藤さんは言わずもがな。

Photo: ARIHIRO

そう考えると、このメンバーにまぎれて先頭で展開しなければどんどんおいて行かれるのは目に見えている。早めにパックを形成して消耗戦で後半まで粘って走れるかが鍵か。

ウォーミングアップ時はかかりがよく、普段の1.2倍掛かる感じ。30秒インターバルで10倍が3発ほど出たので調子は悪くない。心拍の上がりもいい。ウォーミングアップ時は晴れて暑いぐらいだったが、スタート前になると雲が出てきて寒くなる。脱いだインナーを着直した。

スタートは2列目。左側田崎選手の後ろに。ちょうどゴローさんがいらっしゃったので、良いオーラ、ツキをもらうために握手した。良いオーラを吸い上げたい。キャンバーセクションの走り方やラインを聞いてなるほどと思い全部下車することを決めた。

Photo: @kaytoyoshitaka

100点の最速よりも、80点の最善を選択することに。ウェアを受け取ってくれるひとがいなかったが、ゴローさんが結んで固定してくださった。小さな気遣い、ひと手間、お作法がきれい。ゴローさんありがとうございます。

スタートは定刻。カウントダウン通りだった。

クランクを2転目した瞬間、真ん中から人が吹っ飛んできて落車。柵をなぎ倒すほどだった。完全に巻き込まれて足止め。足つきストップした。スタート直後で全体の勢いがあったため後続も巻き込まれた。

スタート直後、最後尾まで落ちる。後ろには数名。Photo: @kaytoyoshitaka

この時点で最後尾にまで落ちた。

正直、終わったと思った。

あぁ、ここまでやってきてコレかぁ・・・終わった。全日本選手権終了だこれは。何たる不運。13番ゼッケンはやはり呪われている。本当に、本当の最後尾だった。とはいえできるところまで走ろうと思って踏み直す。

Photo: @kaytoyoshitaka

先頭は見えなくなり、完全に想像していたレースは終わっているが「コースを楽しもう」と考え方を変えた。楽しんで、限界で走る。もう自分のレースは終わっているので、レースはしない。一つ一つのセクションを楽しむことにした。

はじめの砂区間の半分に行く頃、三段坂をふと見るともう先頭おらんような状況だが、丁寧に一人ひとり抜いていく。トレイル区間でもラインが良いのかわからないがどんどん抜いたのは大きい。

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

後方から追い上げて行くが、案の定キャンバー区間は大混雑で足止めを食らう。降りて処理した。以外に早く皆がバラけてきたので抜くのも楽になった。キャンバー区間も丁寧に処理して後ろを見ずに突き進む。

泥のキャンバーは下車して丁寧にクリアする。上まで登ると滑るので真ん中の芝があるところを走った。もう、一人で走るしかないのでコースを楽しむことに専念。まぁ、また来年がある。ラップタイムや速そうなラインを楽しんで走った。

Photo: @kaytoyoshitaka

それでも、ピーキングは上手く行っているのか体は調子が良く頑張ろうとしている。心拍数は最大196bpmなのだが、終始188〜191bpmに張り付いている。それでも辛くない。多分ゾーンに入っている感じだった。

1周目が終わり、ホームストレートに戻って来ると先頭集団がゴール付近を走っているのが見える。もしかしたら、追いつけるんじゃないかと思ってペースを上げる。相当な差であるが、本当はあのパックに入ってレースをしたかったとも思った。

周回数は6周に決まった。

2周目、3周目は覚えていないがとにかく最速ではなく最善の方法とペースで走った。集中していてあまり覚えていないが、どんどん人に追いついてパスできた。ラップタイムも安定していたように思う。

Photo: @kaytoyoshitaka

途中、おーたさんらをパス、石川さんに追いついたので一緒に強調できないかと思って声をかけた。この日は風が強かったので、できればパックのほうが速いと思った。石川さんと佐藤さんと何分か走る。

Photo: @kaytoyoshitaka

その後、白石さんが見えてくる。ペースが落ちているのかはわからないが脚はあるだろうし、できれば白石さんともパックで走ったほうがペースが上がって有利そうだと思った。

ただ、白石さんは先頭集団で消耗していたせいか速度差があったので、「白石さん後ろについて!」と声をかけて一緒に走ることにした。白石さんほどの人であれば、パックであれば回復して休めるだろうと。トレイル区間やセクションも絶対に速いし、ライン見たかったw

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

その後、記憶が曖昧なのだがひたすら先頭固定で走ると田崎さんが見えてくる。三段坂付近でパスして、そのまま走る。5周目もペースを落とさずほぼ限界で走っていると、気がつくと佐藤さんと二人のパックになっていた。

ラスト2周、ここからがまじで辛くなった。最大心拍に張り付いて心拍が落ちない。

ただ、妙に応援が聞こえる。キャンバー区間のすくみずや、マリオ、ピット前のところでは、スキー選手時代の10代の頃からお世話になっている、りえさん。

10代のときからお世話になっているりえさん。Photo: @kaytoyoshitaka

シケイン前でも応援が聞こえる。もう完全に走ることを楽しんでいたので気にしていなかったが、表彰台圏内らしい。

正直、最後尾からスタートして先頭の状況がわからず、自分の前に何人いるのかさっぱりわからなかった。気づいたら3番手まで上がっていたらしい。

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

ラスト1周、超ベテランの佐藤選手が後ろに居ることに気づく。とはいえ、ペースを変えるわけでもなく、コースを楽しんだ。10秒だった差は12秒まで広がった。最後はいつも一緒に走っている村田さん、斎藤さんが見えてきた。

最後のゴール前コーナーギリギリまで攻めると、ゴール前は沢山の人。全開で追い込んで、ゴール。なんとか1位まで18秒差までタイムを縮めることができた。

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

ゴールをすぎると本当に村田さんと、斎藤さんしかいない。予想外の3位だった。ただ、これは全日本選手権だ。1位以外の順位には意味はない。ただの数字でしか無い。ロードをやってきた頃からそれはよくわかっている。

ただ、スタート直後からの混乱から、40分。18秒まで縮めた。ここまで走ってきた物語を振り返ると、これ以上に無いくらい、意味のある3位だった。

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レースを振り返って

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

レース後、関クロの仲間たちが集まってきてきてくれて、自分のことのように喜んでくれた。矢野さんご夫妻とも握手した。確かに村田さんと絡んで走りたかったというのもあるし、もう少しレースらしいレースをしたかったというのもある。

ただ、今回のレース直後の条件からすると、スタート時点ですでに勝負できる状況ではなかった。ひたすら人を追い抜き続けなければならなかった。最後尾から、1位と2位以外は全員抜いたわけだけど、いつも書いている通り、やっぱり人とレースがしたかった。

淡々と、ひたすら限界で踏み続け、平均心拍は190bpm前後でもがき苦しんだだけだった。確かにリザルトは3位で、走行中のミスも1度もなく、走り自体は今シーズン一番良かった。

救いなのは、色んな人が喜んでくれたのが予想外に嬉しかった。これまでずっと4位だったけど、やっと表彰台に登れた。1位以外に意味はないのはわかっているが、この日の走りやセクションの処理は自分でも出来すぎなくらいだった。

Photo: Yuya.Yamamoto/GIANT JAPAN

走っていて、これほど応援をいただけるとは。

あの完全に終わった位置から最後まで諦めずに走ったのは、少しは成長したのか。

というのも、おっさんには残された時間がない。いつまでも走れるわけではないという、その終りが近づいてくる危機感もある。だからこそ、1戦1戦悔いのないように走るし、悔いのないように挑戦している。

それが、あの位置から18秒まで縮められた理由だと思う。

これで全日本選手権は終わるが、まだまだ楽しいシクロクロスは続く。スキルはまだ💩レベルなので平日のバイクコントロールの基本動作の練習は続けていく。フィジカルも鍛えないといけない。

レース翌日の今日は、また練習を再開した。いつも通り、75分ほどSSTで負荷をかけ続ける。やることは変わらない。今週末もまた、みんなとCXで競い合えることが楽しみだ。

熱量のある応援、本当にありがとうございました。

来年の全日本選手権は、関西の二色の浜公園だ。ホームこそ、表彰台に乗るために走ろうと思う。

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