Nepest RELI 46が存在するのに、RELI 56が存在する意味はなんだろうか。単なるラインナップの拡大が目的なのか、それとも46と56を組み合わせるNepestお得意の”X”構成にしたいがためなのか。
RELI 46に乗ればわかるのだが、ほとんどのライダーは46が合うと思う。56で明確な空力性能の向上についてはNepestから提示されていないが、ハブとスポークはRELI 46と共通だし、重量を考えるとそれほど「軽い」が魅力的なホイールとは思えない。
ただ、実際に使うと考え方が変わってくる。
RELI 46は登りも平坦もオールラウンドにこなせるが、RELI 56は平坦を速く走る、これにつきる。明確な違いは減速感の少なさで、RELI 56はペダリングを止めた後の速度減衰が穏やかである。
40km/hから脚を止めたとき、46mmでは緩やかに失速を感じるが、56mmではその失速感がもうひと伸び先に延びる。だから平坦がメインのライドでほどほどの起伏がある程度なら、RELI 56が適任だ。
この速度維持特性の差は、リムハイトの物理的な原理に根差している。リムハイトが深くなるほど、リムが空気の流れを整流する面積が増え、スポーク周辺の乱流も抑制される。
50mm前後のリムハイトは、現在のロードホイール設計においてエアロ効果と重量のバランスが最適化される領域とされ、多くのプロチームがオールラウンドレースに採用する深度帯である。
56mmはそこからさらに一歩踏み込み、巡航速度の維持に特化した設計である。ただしその10mmの差は、登坂においてはわずかながら慣性モーメントの増大として感じられることもある。
RELI 56はその物理法則を理解したうえで、平坦巡航という一つの目的に焦点を絞ったホイールだ。
製品の位置づけ
ハイエンドのNOVAがDURA-ACEだとしたら、RELIはULTEGRAグレードなのか。いや、どうやらそうではないらしい。NEPESTでの位置づけも「グレードの違い」ではなく、構成する部品から方向性が違う。RELIは十分な軽さの中に快適性や耐久性、堅牢性をもたせた。
ハブは過度な肉抜きを行わず、サイクリストが好む軽量化をあえて狙っていない。どちらかといえば肉厚で、十分な剛性と強度を持たせていることがわかる。
Nepestの上位モデルNOVAは、Hambiniのレビューにおいてセミレクタンギュラー型(四角形に近いが、角が丸みを帯びていたり、一部が湾曲している形状)スポークホールによる荷重分散の最適化が評価されていた。
RELIのハブはそうした先鋭的な構造よりも、堅牢性に軸足を置いている。
この堅牢そうに見えるハブがホイールの硬さに直結していないのは、VONOAスポークのしなやかさが良い仕事をしているからだ。これはVONOA Gen4が登場してから何度も指摘している部分でもある。
VONOAの第4世代カーボンスポークは、断面積を従来比約30%削減しつつも引張強度を維持し、1本あたり約1.8gという軽量性を実現している。カーボンスポークは一般的に「硬くて振動が伝わる」というイメージを持たれるが、VONOAの第4世代はその固定観念を覆す。
スポークの柔軟性がホイール全体の微振動吸収に寄与し、ハブの堅牢さとスポークのしなやかさが相反するのではなく補完し合う設計になっている。ようするに、しなやかで乗りやすいのはRELI 46であっても56であっても同じである。
話は戻り、ユーザーのウケがいいギリギリまで攻めた肉抜き加工のハブではなく、スポークの固定方式も引っ掛ける方式から、スポークに通す方式に変えた。この変更は見た目以上に意味が大きい。
引っ掛ける方式、いわゆるオープンフランジのスポーク固定は、1本のスポークが破損した際に隣接するスポークが連鎖的に外れるリスクがある。Nepestは上位モデルのNOVAで特許取得済みの脱落防止フランジ構造を採用しているが、RELIはそもそもスポークがフランジを貫通する方式を選んだ。
引っ掛けるのではなく、通す。破損時にスポークがハブから離脱しないという構造的な安全マージンが確保される。普段使いでも安心してしばき倒せる安心感がRELI 56にはある。
思い返せば、初めて使ったNepestのホイールはあまり良くなかった。当時の記事でもそう書いた。前作のMAUIシリーズに対しては、硬すぎて初心者にはおすすめできないと率直に記した。
RELIは真逆だ。今では、本当に良いホイールを作るようになったと思う。RELIで確信に変わった。無闘矢鱈な見せかけだけの高性能化ではなく、ホイールという機材をどこに向かわせたいのか、何に特化させたいのか、テーマが明確にされている。RELIにはそれがある。
長時間でも疲れにくい
長時間疲れないホイールとはなにか。RELIに乗ればそれがすぐにわかるが、ホイールの硬さを決定している要素を整理したい。タイヤとタイヤ空気圧(リム内幅を含む)を抜きにすると、スポークの剛性がホイール剛性に対して支配的であるようだ。
ホイール工学の研究によれば、プリテンションされたスポークホイールの垂直方向の剛性は極めて高く、荷重下におけるリムとハブの相対変位は数十ミクロン単位にすぎない。
タイヤのコンプライアンスはスポークの数千倍であり、純粋な垂直方向の剛性差だけでは、ホイール間の乗り心地の違いを説明しきれない。
しかし、ライダーが感じる「硬さ」や「柔らかさ」は確実に存在する。それは垂直方向だけでなく、横方向のコンプライアンスや、高周波振動の減衰特性、スポークテンションのバランスが複合的に作用した結果として体感されるものだ。
それゆえ、RELIの快適性はスポークの張力調整と前後穴数の最適化によるものも大きい。スポークのしなやかさとあわせて、どれくらいスポークテンションを上げるか下げるか、そしてどのような組み方をするかで乗り味は変わってくる。
2:1の組みパターンは、駆動側と非駆動側のテンション差を最適化し、横方向の安定性を確保しながらもスポーク全体のエネルギー吸収特性を高める。
RELI 56は長時間でも疲れにくいホイールであることは間違いない。荒れた路面でも振動や嫌な突き上げが本当に無い。56mmというリムハイトは、一般的には剛性が高まる方向に作用するが、RELI 56ではVONOAスポークの柔軟性がその硬さを相殺している。
46mmのRELIと比較してもこの快適性が維持されていることは特筆に値する。リムハイトが10mm深くなっても、ライダーの身体に伝わる不快な振動は増えていない。
この特徴は、レーシングホイールを使い慣れたライダーからすると物足りないと感じるかもしれない。しかし、一般的なライダーであれば必要十分以上であると思うし、レースを走らなければ実際のところこれぐらいが十分だと思う。
「穏やかに速く」
RELI 56は穏やかに速い。
このホイールが向かう特徴と方向性はレーシングホイールではないのだ。レーシングホイールは多くの人にとって必要が無いかもしれない。どこまでも、速く、遠くに連れて行ってくれる懐の深さがRELI 56にはある。
長距離でも「疲れにくさ」を重視するライダーによいだろう。
ところで、レーシングホイールは本当に、レースに出ないようなライダーに必要なのだろうか。プロモーションでは、「ツール・ド・フランスで使用」「プロが求める性能」なんてキーワードが並び、あらゆるサイクリストが手に取る。
しかし、一般ライダーにとって、無用の長物である可能性は高い。ホイールに何を求めるかは人によるが、レーシングホイールのような反応性と硬さを期待する人には、残念ながらRELIは合わないと思う。
一方で、100kmを速く快適に走りつつも、疲れをためたくない人はRELIが合う。そしてトラブルなく家に帰ってくるという重要なミッションにもRELIは適切だ。ロングライドにおいて最も大切なことは、速さではなく帰還である。
その帰還の確実性の中に「速さ」が足される。それがRELIだ。しなやかさ、体への負担の少なさ、走らせた時の脚あたりの少なさは特筆すべきものがある。しかし、コンフォート系ではない。都合よく、よく走る。そんなホイールだ。
安定した高速巡航
RELI 56が光るのは高速巡航だ。ある程度の登りが想定されるならRELI 46が良いだろう。どちらも疲労を最小限に抑えつつ、走りの質は高い。
安定した巡航と、56mmながら40mmのような軽さが実はある。だからこそ巡航速度の維持ができるが、登らせるのにはちょっとリムハイトが高すぎる。
ホイールの慣性モーメントはリムの質量分布によって決まり、リムハイトが深くなればリム外周部の質量が増え、回転を変化させるのに必要なエネルギーは大きくなる。
しかし、その慣性は一度回り始めれば速度維持に有利に働く。56mmのリムハイトが持つ慣性エネルギーの蓄積効果が、平坦路での「減速しにくさ」として体感される。
この特性は、35km/hから40km/hの巡航帯域において顕著であり、ペダリングのムラを慣性が吸収してくれるため、一定ペースの維持が楽になる。
登坂における反応性は46mmに譲る。そこは、巡航維持のしやすさと反応性のどちらを取るかというトレードオフだ。目をつぶれるのなら、46よりも56mmがよい。
平坦基調のコースで仲間と走るとき、集団内での速度変化に合わせやすく、巡航からちょっとした中間スプリントへの移行もスムーズだ。RELI 56は平坦が好きなライダーのために存在している。
高すぎる剛性よりも「扱いやすさ」を
このホイールの方向性を考えると、高い剛性よりもホイールの扱いやすさ、走らせやすさを求める方に向いていると思う。
RELI 46もそうだったが、GR86のようなレーシングカーではなく、速いけど操縦しやすく、長距離でも疲れないプリウスのような大衆受けする性能を持っている。
プリウスが速いことは意外と知られていない。プリウスの0-100km/h加速が約6.7秒と、GR86(約6.5秒)はほとんど変わらない。ただ、遠出するときに使うなら、燃費や快適性を考えてプリウスを選ぶだろう。
この例えはホイールにも当てはまる。レーシングカーに乗っていることが好き、ならレーシングホイールを選べばいい。バイクに装着した瞬間の所有感、ペダルを踏んだ瞬間の反応の鋭さ、それ自体が目的であるならそれが最適解だ。
しかし、日々の快適性やどんな状況でもそこそこ速く、日々の御供として、走りも少しは堪能したい。そういう場合はRELIが合う。RELI 56は、プリウスに高速道路での追い越し性能を足したような存在だ。
日常の扱いやすさはそのままに、速度域が一段上がったときの余裕が加わる。
硬すぎるホイールに疲れた人
カーボンスポークやレーシングホイールはカタログ上は魅力的であり、使ってみたいと思わせてくれる。使えば速くなるような期待も持てる。しかし、乗ってみると違うと感じてしまうこともある。
あまりにも硬すぎてしまい、ホイールを手放してしまった経験をお持ちの方がいらっしゃるかもしれない。
ここ数年は、また業界が無闇矢鱈な高剛性化に流れてきた。唯一、ROVALは「剛性をあえて下げた」と勇気ある開発設計を公にしている。これには最大限の賛辞を送りたい。
Rovalは最新のRAPIDE CLX IIIで剛性を落とし、さらにTerra CLX IIIグラベルホイールにおいて、横方向の剛性を21.52%意図的に削減し、ラフな路面でのコントロール性とコンプライアンスを向上させたと発表している。
「剛性を下げた」ことを性能向上として訴求する。これは、高剛性至上主義が蔓延する業界において、ライダーの身体と走りの現実に向き合った稀有な姿勢である。
この業界の悪しき風習である「高剛性ほど優れている」という、実際に使用するライダーを置き去りにした誤った方向性は、走らせられない、走らないホイールを数多く生み出した。
私はLightweightを4本ほど所有してきたが、まさにこれだった。床の間に飾ったり、バイクに取り付けたりすると素晴らしいのだが、いざ「速さ」を求めて200km以上のライドやレースで使おうとすると、「使えない」のだ。Lightweightは硬すぎて私には合わなかった。
20年以上やり続けてきて、硬くて高価なホイールだから速いというのは、単なる思い込みであることがわかった。RELI 45のレビューでも紹介したが、Zippの元エンジニアであるJosh Poertner氏がSilcaのブログ「The Road to Roubaix」で興味深い指摘をしている。

パリ~ルーベ用ホイールの開発において、浅いアルミリムの方がディープカーボンより「快適」だとライダーが感じていたが、垂直コンプライアンスを計測すると実際にはディープカーボンの方が柔軟だったという。
ライダーの知覚する「硬さ」と物理的な剛性値は必ずしも一致しない。振動の周波数特性や減衰の仕方が、体感としての硬さや柔らかさを形成する。RELIはこの知覚の設計に成功しているホイールだと感じる。数値としての剛性を単純に下げたのではなく、振動の質を変えている。
振動吸収や安定感を重視する
木の車輪を想像してほしい。路面のあらゆる衝撃がそのまま伝わり、乗り味が悪く乗っていて疲れる。サスペンションのない馬車の不快さを思い浮かべれば近い。高剛性のホイールはたいていそうだ。
路面のあらゆる情報を増幅してライダーに伝え、それを「ダイレクト感」と呼ぶ。しかし、距離が伸びるにつれ、そのダイレクト感は暴力に変わる。
その対極にRELIがある。RELIは路面情報を消し去るのではなく、必要な情報を残しながら不要なノイズだけを取り除く。
良いスピーカーがホワイトノイズを除去しながら音楽のニュアンスを再現するように、RELIは路面のうねりやグリップの変化は伝えつつ、高周波の微振動を吸収する。
それがVONOAスポークとハブ、リムの三位一体の設計から生まれるフィルタリング効果である。RELI 56はリムが深い分だけこのフィルタリングが効きそうに思えるかもしれないが、実際には46と同等の振動吸収特性を維持している。
リムハイトの増加による剛性増を、スポークの特性が相殺するように設計されているのだろう。
完成車付属ホイールからのアップグレード
RELI46と同じく、完成車に付属しているホイールから、アップグレードしたいと考えていたとき、外さない選択としてRELIの存在意義がある。レース用途ではなく、「汎用的に速いプリウス」として選択できる。
それでいて使用しているカーボンリム、スポーク、ハブなどもこの値段以上の価値がある。
中華カーボンホイール市場は玉石混交であり、同じOEMから供給されたリムやスポーク、ハブをブランドごとに異なるパッケージで販売しているケースも少なくない。
RELIが使用しているToray T800カーボンファイバーリム、VONOA第4世代スポーク、CEMA製セラミックベアリングといった構成パーツは、19万円台という価格に対して明らかにオーバースペックだ。
これらを個別に調達して手組みすれば、パーツ代だけでRELIの販売価格に迫る。売るところが売れば20万円後半でもおかしくない構成である。Nepestの良心がRELIだ。
初めてのカーボンホイール
中華ホイールは玉石混交、それはいまでも変わりない。ただ、RELIを選べば一定の安心と性能を担保できる。それは私が数多くのレースに投入し、手荒に使っても性能が変わらないことで実証済みである。
このホイールは、初めてのカーボンホイールに安心感を求めている人に適切だと思う。
Nepestは2017年からOEM生産の経験を積み、2022年にブランドを立ち上げ、EuroBikeへの継続出展、UCI認証の取得、日本国内での正規販売店展開と試乗会の実施と、地道に信頼を積み重ねてきた。
Nepestのホイールは初めは本当に使えなかったが、今ではレースに投入したり、CXレースで無茶なコースに使用しても安定した性能を発揮してくれる。
RELIはさらにNepestの技術と安定性を合わせた非常に優れたホイールに仕上がっている。初めてのカーボンホイールで何を選んだらよいかわからない、性能の善し悪しがわからないけど良いものを使いたい、ハズしたくないという人にぴったりだ。
RELI 56を選ぶなら、平坦基調のコースが多い人、巡航速度の維持を重視する人に向いている。登りが多いなら46を、平坦が多いなら56を。この使い分けができること自体が、RELIシリーズのラインナップとしての成熟を示している。
まとめ:RELI 56はだれのために
RELI 56は買いか。
この問いに対する答えは、身の丈にあった速さを求めるライダーにこそRELIを使うべきだと思う。レースに出るわけではないが、速さを求めつつ、日々使い込んでも壊れない安心感、それでいて扱いやすく、走らせやすい。
純粋なレース機材までは必要ないが、速くは走りたい。そんなあなたのわがままな二律背反を解決してくれる。
ホイール選びとは、つまるところ「何を信じるか」という問いである。これはRELI 46でも記したが、カタログスペックを信じるのか、ブランドネームを信じるのか、それとも設計思想を信じるのか。
RELI 56は最後の選択に応えるホイールだと思う。速さのためだけにすべてを犠牲にするのではなく、走ることの本質的な喜びを、長く、安全に、快適に続けるために設計された。
そして56mmのリムハイトが加える「もうひと伸び」の巡航感が、46では到達しなかった速度域での余裕をもたらす。
それがRELI 56なのだ。
RELI発売記念として、定価\185,000から20,000円引き売り出される。実質165,000円になり、クーポンコード「8Nepest」で8%offになるので、最終的に151,800円になる。4/25~5/12までの期間限定、Nepestは発売時が最安だ。






























