GT-Roller Flex 3 インプレッション 優れた設計思想を備えた本格ローラー

誤解を恐れずに言わせてもらうと、製品を売る際「プロモーション」や「販売促進活動」といった「見せ方」の部分はとても重要な事だと思わされる。いまさらなぜそんな事を私が言うのか?と不思議に思われるかもしれない。その理由は今回紹介するGT-Roller Flex3を使い考えさせられたからだ。

GT-Roller Flex3は私の知る限りWEBメディア等、プロモーション活動が行われていないため「得体のしれないローラー」であった。このローラーの最大の欠点は、乗らずしてその良さが伝わりにくいという点にある。正直乗らないと本当にわからない、と先に本記事の結論を述べておきたい。

WEBや紙媒体で紹介される製品は、当然プロモーションをかねて多額の広告費が投じられている。もしかしたらとんでもなく良く書かれている記事も、実は巧妙に仕組まれた記事だったりするかもしれない。むしろ昨今のWEB事情を勘案すると、ステルス・マーケティングに代表される異様なプッシュが実施される製品には違和感すら感じる。

ただ、本GT-Roller Flex3はむしろその逆を走っているのかもしれない。本当に良い製品というのは大々的なプロモーションや、ある種の売り文句など必要ないのだ。使ったら良さを理解できる。そこに尽きる・・・。ただし、知る方法が無いと、、、。と、さらに結論を言ってしまいかねないので、早速GT-Roller Flex3をご紹介したい。

なお本記事はEnglish versionの「Impression of the GT-Roller Flex 3: Rollers with an excellent design concept」も用意しています。

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GT-Roller Flex3の開発思想を紐解く

本インプレッションを書く前に、GT-Roller Flex3に関する資料をくまなく読んだ。私は技術書や仕様書を読むことが好きだ。そこに記されていたのは「このローラーは凄くいいです!」とか「まるで実走のような」といった月並みな記載ではなかった。設計者の本製品に対する熱い「設計思想」が綴られていた。

わたしも技術者として仕事をしているのだが、設計段階でプロダクトに関する思想部分(ここは譲れない、製品が向かうべき到達点)を明確にすることは非常に重要であると感じている。開発の途中から、「あれも、これもいいね、全部盛りこもう!」なんて製品はだいたいコケる。

GT-Roller Flex3の設計思想を見ていて、ある事を思い出した。やや古い(2009年)内容になるが「サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか」で紹介されている「ゴールデンサークル」の話だ。TEDで紹介されていたので、見たことがあるかもしれない。

内容は日本語訳も備わっているので、一度ご覧頂きたい(吹き出しマークの”Japanese”を選択すること)。10分少々の時間でiphoneを題材にしてわかりやすい内容で構成されている。簡単に補足すると、人は「何を(What)」ではなく「なぜ(Why)」に動かされるという。いわば開発者の思想や信念を語ることで、多くの共感が生まれ、人を惹きつけるという考え方だ。

すこし大げさかもしれないが、GT-Roller Flex3はその「なぜ」の部分が非常に強い。「このローラーで実現したいこと」「ローラーとの一体感がなぜ重要なのか」と。GT-Roller Flex3はその根本的な思想部分が優れている。これは他の多くのローラーでは表現できていない部分だ。

「パワーが測れますよ」「1000Wまで使えますよ」「静音性に優れていますよ」という言葉巧みな文章の兄弟のような「何を(What)」の類(たぐい)ではないのだ。ではGROWTAC社が信じる「ローラー」とはなんだろうか。GT-Roller Flex3の思想はこう綴られていた。

GROWTACが考える「自転車との一体感」(実装感)とは、トレーナー上で”全身の筋肉と自転車”を調和させ、効率的な推進力を得ることが出来ること(結果として、実走でそのトレーニング効果を発揮できること)

出典:GROWTAC GT-Roller Flex 3

いかがだろうか。ローラという製品の特性上、負荷はどこまで上げられるか、静音性はどうか?という「何を(What)」の部分を各社これでもか!と述べている。しかしGROWTAC社は「なぜ(Why)」という着眼点からローラーの説明を述べ始める。

そして徐々に「自転車との一体感」+「安心・安全」を「実現する技術」の説明をしているのだ。初めに「実現する技術」の「何を」ではなく根本的なローラーの思想を元に作成されたローラーは他に類を見ない(もしくは各社が伝えきれていない)部分だろう。

今私が見ているGROWTACの資料は以下から参照できる。

GT-Roller Flex3 詳細カタログ PDF 2015.6.9版

設計思想は乗った瞬間にわかる

細かな構造や優れた設計のありとあらゆる説明はカタログに書いてある。時間の許す方はくまなく見ることをお勧めする。ただ先ほどの話ではないが、このローラーの技術的、構造的な面をいくら私がプッシュしたとしてもユーザーは全くと言っていいほど惹きつけられはしないだろう。

それよりもGT-Roller Flex3で目指した思想部分をどれ程体験できるのか、その事実を綴る方がよほど有益である。早速GT-Roller Flex3に乗った率直な感想を言うと「怖い」という事だった。固定されているのに怖いのである。どういうことだろうか。その理由は、予想以上に揺れるので「怖い」と感じた。

ただ、安心してほしい。乗車中に転倒するといったような、落車につながるような揺れではない。どこか自転車上でバランスを上手く取らないとグラグラと揺れるようなそんなアトラクション的な要素がある。左右のバランスが悪いとどちらかに簡単に傾いてしまうのだ。本ローラーの思想部分でこう綴ったのを覚えているだろうか。

“GROWTACが考える「自転車との一体感」(実装感)とは、トレーナー上で”全身の筋肉と自転車”を調和させ、効率的な推進力を得ることが出来ること”

私は乗った瞬間にこれら設計思想で語られた思いを実際に体験したのだ。この「体験」を製品で再現することは、簡単なことのようで非常に難しいことだ。人間の感性に訴えるように製品を作り込まなくてはならないし、ありとあらゆる動きを当たり前のように再現しなくてはならない。平然と(しかもペダリングする前に)人間が思想を体験できる類を見ないローラーである。

ローラーではなく矯正機器

つまる所、本GT-Roller Flex3はローラーであってローラーではない。ローラーというと後輪が固定され、実際の走行とはあまり結びつかない状態でペダリングを行う。固定ローラー上で、負荷をかけつつ、実走のような体の使い方はとてもできたものではない。初めて自転車に乗った時を思い出して欲しい。あの頃のようにバランスを崩しながら進む動きような自転車独特の動きを、固定ローラーでは再現できないのだ。

もう少し身近な例で捉えると、ウェイトトレーニングの器具が良い例だろう。ウェイトトレーニングにおいて、バーベルと重りだけのシンプルなフリーウェイトと、マシンを使った固定タイプのウェイトマシンがある。双方持ち上げられる重さは同じだが、持ち上げようとする際の体の使い方は全く異なる。

バーベルなどを使ったフリーウェイトはバランスを取りつつオモリを持ち上げるのに対し、マシンはある可動域の範囲で固定された中でオモリを持ち上げる。根本的なオモリの重さは一緒だがフリーウェイトの場合より厳密にフォームを要求されるし、やり方次第ではうまく持ち上げられない。

一方マシンはすこし不恰好なフォームでも上げられる。体がねじれていたり変な格好であろうと、とりあえず上げられる。バランス感覚なんて不要だし、とにかく上げられる。勘の良い方は気付かれているかもしれない。そう、GT-Roller Flex3はフリーウェイト寄りのローラーなのだ。

ただ、完全なフリーではない。それらは実走が相応しい。ではGT-Roller Flex3はというと、フロントは固定されているがバランスを取らないとまっすぐ乗ることができずグラグラしやすい。ただのローラーというよりも「矯正器具」という扱いで捉えてもなんら問題のないプロダクトではないだろうか(メーカーの思惑と異なるにせよ)。

体幹トレーニングとしても

事実、有名なトレーニングスタジオ「スマートコーチング」でも用いられている。詳細な内容は実際の動画を参照して欲しい。エアペダリングを用いてブレる体幹を矯正している。ビフォーアフターが特に秀逸で、下死点における不要な踏みが無くなっていることが見て取れる。

GT-Roller Flex3が目指したその思想の根本には「”全身の筋肉と自転車”を調和」があった。文字通り本ローラーを使い炙り出されるライディングスキルの事実は「自転車と調和できているか」という点につきる。自転車は「進まないと転んでしまう」のだ。ただ、本ローラーの秀逸な点は、「静止状態で様々な動き」を試せることだ。

いやいや、そーいうのは実走で得られなきゃダメでしょ、と思われるかもしれない。それらは上級者にとっては当たり前のバランス感覚の話かもしれない。しかし、誰しもが忘れかけている自転車に乗れなかった頃を思い出して欲しい。だれしも初めは自転車の後輪に「補助輪」を付けていなかっただろうか。

右に倒れる動きを、補助輪が支える。左に倒れようとしても同じように支える。では、少しステップアップすると、左を取って乗り方に慣れる。最後は両方の補助輪を取ってメデタシメデタシおしまいだ。ただ、我々はここで重要な本質を見落としている。

乗れるまでの手助けとして、いわばセンサーの役割をしていた補助輪の意味だ。「転ぶ」という動きはバランスを崩してしまうという「結果」である。一方で、そんな事は当たり前の話だ!と思われるかもしれない。そう、単純に転ぶ前にバランスを取り戻せないから転ぶのである。

より深く本質を追求して行けば、「バランスを崩す連続の中でうまく補正しながら進む乗り物」が自転車だと定義付けたい。無意識のうちにバランスを取りながら我々は自転車を進ませているのだ。ある一定のところまで来たら転ぶのに気付かない、だから転ぶ。しかし、補助輪は転倒する一歩手前で食い止めてくれる。

次第に体は慣れてきて、転倒する閾値を覚えて行く。

GT-Roller Flex3は、スポーツバイクにおける少し高度な閾値を覚えていく。私が使って思わされたのは、まだまだ自転車を上手く乗れていなかったと気づかされたことだ。乗った瞬間にグラグラと左右に揺れる。かと言って触れを抑えようとするとペダリングがぎこちなくなる。しかしGT-Roller Flex3は、「身体のブレをなくしてうまくペダリングするにはどうしたらいいか」静止状態で試行錯誤できるのだ。

そう、いつの間にか過去に忘れ去られた補助輪のように。

GT-Roller Flex3は固定こそされているものの、動きは実走そのものだ。幼い頃転倒しようとした際に助けてくれた補助輪はいつの間にか忘れ去られていく。ロードバイクに乗りいつしか「自分はうまく乗れている」という錯覚にも似た思い込みは、忘れていたバランス感覚を呼び覚ましてくれるだろう。

まさに、トレーニング器具というよりも矯正器具と呼ぶにふさわしい。GT-Roller Flex3はローラーであって、ローラーではないのだ。

リニアでなめらかな負荷

ただ、乗り物としてバランス感覚や自分の癖を炙り出すには好都合な装置だとわかった。ただ、昨今のパワートレーニングに代表されるようにローラーの負荷もほしい。昨今のパワーメーターブームからもわかるように、強烈な負荷を望む人も多いだろう。では、本ローラーは華奢な接合部と、小さなローラーだが負荷はいかほどだろうか。

負荷は高く、そして実に滑らかだ。踏んだ時にしっかりとトラクションがかかり、いびつな負荷を感じさせることは全くない。細かなアップデートがかかっているようで、ローラーとローラーの間隔や素材に関しては相当研究されているようだ。実際に一番思い負荷で試してみたが、不快な負荷ではなくまるで峠を攻めているかのような感覚だった。

そう、どこか実走感にも似た、不必要な負荷を発生させないローラーと言って良いだろう。調整方法も小さなつまみを動かすだけだ。ただ、見た目がなんとも無骨であるが、無駄なものは排除した結果なのだろう。調整する際は、少し屈みながら手を伸ばさなくてはいけないが、特に不自由は感じなかった。

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出典:GROWTAC GT-Roller Flex 3

負荷の調整つまみは、パチパチとリズム良く変更することができる。実際使ってみると予想以上に調整ツマミは軽い。ミノウラのダイヤルを「ゴリゴリ」やる感覚とはやや異なる。この辺は小さなポイントであるが、細部にまで手を抜かない製品は使っていても楽しい。

なお、最大負荷は1400W程まで行くというので一般的なサイクリストであれば十分事足りるだろう。ファビアンカンチェラーラには少し物足りない負荷かもしれないが。

高い静音性の理由

本ローラーは静音性にも優れている。ローラー部の白い樹脂のようなモノが良い仕事をしているのかもしれないが、GROWTACが独自に開発したブルカットという振動や騒音を減衰させる装置が備わっている。この日本の住宅問題を考慮した専用の騒音対策は、マンションやアパートに住むサイクリストにとって非常に嬉しい。

実際の騒音を何デジベルで表記することは難しいが相当に静かである。EliteのFluidよりも静かである。要するに普通に使う程度であれば満足のいく静音性を備えている。相対評価で申し訳ないところだが、マンションで使うには申し分ない静音性と言って良いだろう。

三本ローラーを使いたいが、騒音が気になる。かと言って固定ローラーの実走とは程遠い実走感は嫌だ、かといって固定ローラーの静音性は捨てがたい、、、と様々なサイクリストの葛藤をうまく吸収し、製品に落とし込んだ構造を兼ね備えている。

まとめ: 乗らずして良さはわからない

私は今回GT-Roller Flex3を使い反省した。本ローラーが国内の有力雑誌に掲載されるまで、ほとんどメディアと言ったメディアとに露出がなかったからだ。なぜ、ここまで少ないかは感の良いサイクリストならわかるはずだ。メーカーは当然売ろうと広告宣伝を行う。いわゆる見せ方がうまいと、製品が良いと錯覚してしまう。

広告費はプロダクトの価格に当然上乗せされる。しかし、製品の良し悪しは価格やプロモーション一つでは当然決定されない。

私は、ほとんどインプレや広告などを見ることなくWebでチラッと見た程度で「なんか不恰好なローラーだな」程度にしか思わなかった。しかし、使ってみてどうだろう。自分自身で初めて使って「これは良い!」と感性に訴える製品はそこまで多くはないのではないだろうか。体験して、使ってみて初めて知ることもある。

なお「GT-ROLLER FLEX 試乗可能店舗」というものが有るので是非試して欲しい。

何事も、先行する話題やブームにとらわれず本質的な部分を自身の目で見て体験する。そうしないと知り得ないことは沢山あるのだなと考えさせられたプロダクトである。本当に良い製品というのはまさしく広告など打たなくとも「口コミ」で緩やかに広がって行く。

なお、開発した方はファンライドの最速列伝にも掲載された、名門なるしまフレンドの元選手。さらにエンジニアというのだからここまでの完成度で仕上がっているのだと思う。願わくば、多くの人がGT-Roller Flex3を体験し、プロダクトの良さに気づいてくれることを期待している。

by カエレバ