サラリーマンの視点から
我々サラリーマンは自転車のプロではない。しかしプロではないサラリーマンサイクリストが書いた本書がレースに勝つための最強ロードバイクトレーニングである。私もいちサラリーマンとして興味深く本書を拝読した。そしてサラリーマンが勝つためには何が必要なのか、その手がかりを本書から紐解く。
常に国内のホビーレースやプロツアーを走る高岡さんの強さは目を引く。フルタイムワーカーは時間がない。それは、仕事をもつサラリーマン皆同じだ。そこからの目線で書かれたロードバイクの本書レースに勝つための最強ロードバイクトレーニングは他に類を見ない。
プロが書いた書籍はサラリーマンからすると「時間の不一致」がある。あきらかに我々本業を持っているサイクリストにとって合致する内容ではない場合が多い。
プロと我々サラリーマンはどの様に違うのだろうかか。私は考えたことがなかったが、その相違点をどうしたら埋められるか、それら環境に合致したトレーニングの整理を具体的に書かれている。私はすぐさま読み進めた。
本書では、面白いアプローチが幾つかある。「就業時間が遅い時」「就業時間が早い時」とトレーニングをどうすべきか。正直、コーガン本にも、フィロソフィー本にもそんなアプローチはない。ただ、プロではない本業を持つ我々にとって、むしろそれこそ重要な要素と言える。
前半は単純にサラリーマンが自転車競技に向き合うために、水と油をうまく混ぜる為のノウハウが書かれている。読み物として単純に読みやすい。例えば、先般の土井選手の書籍は、ある程度の量の本を読んでいる方ならある種「文章が上手すぎる違和感」がある。
敗北のない競技は、文章と構成があまりにも「プロ」過ぎる。
本書(レースに勝つための〜)はある程度編集が入ってるだろうが、強烈な編集が入っていないのが良い。何が言いたいのかと言うと著者の血が通った本が読みたい、それだけだ。
おっと、私の文章の趣味趣向はともかく内容に戻りたい。
好物の機材
私も機材が好きである。したがって、機材章は読んでいて非常に参考になる。ハンドルやサドルやステムやシューズと拘りは多岐に渡る。正直私もBONTを使ってみたが足に合わないし痛いのでやめた。ただ、使って見て結果どうだったか?が重要であり、機材を自由に使えるサラリーマンだからこそできる楽しみである。
機材は調べ、見て、考えるのが楽しい。また、なぜその機材が良いのか考えるのが楽しい。給料からママチャリが何十台も買えるロードバイクの機材を選ぶのは博打だ。その中でも、確かに自分に合うのか合わないのかは重要な要素である。
では、どのようにして取捨選択すればよいのだろうか。
通常のロードバイクに関する書籍ならば、機材に対する話はそこまで突っ込んでない。栗村さんの書籍は意外と「クランクの剛性なんてわからん」と書いてあるので好印象だ。本書も同様だ。ただ違った側面で、ハンドル、バーテープからステム、フレームそしてシューズとそれぞれのこだわりが書いてある。
私は、普段ブログからでは見られない細かなこだわりがあるのだと驚いた。
しかし唯一書いてほしかった(個人的な)内容がある。クランク長だ。高岡さんは確か確か172.5mmだったと記憶している。恐らくそこに至るまでには色々試されたと思う。その辺の話は本のスペースの都合上、掲載されなかったのかもしれない。ただ、脚の運動を決める要素なので、その辺の話も知りたかった。
書いていないのであまり重要ではないかもしれない。私は165mn,167.5mn,170mm,172.5mmと使い、今のサイズに落ち着いた。色々試したのでもし試されていたらどんな感覚だったのか知りたかった。ただ、本書にもあるように長く使わないとその真価はわからない、そこに異論はない。
駆け出しのサイクリストならば、憧れの選手の機材を真似るのも一つのてだろう。ただ、それが合うのが合わないのかは別の問題である。「私にはあっていませんでした」とダイレクトに言ってくれる人の方が情報ソースとして貴重だ。そんな機材情報ソースの話については次で紹介したい。
機材のソース(情報源)
正直、ショップと近ければ近いほど「売る戦略」が見て取れる。その辺もやはり書いてある。私はたまたま商売っ気がない(?)メカニックと仲が良かったから、例えば投資額に対して性能が伴わない(とされる)バーナーなどの機材をつかまされずに済んだ。性能を求めず、ルックスなら買いだと思うので一概には言えない。
海外の「うぇっ」とする残念な数値データーの記事を見るたびに、私は自分の中に閉まっておく。
悪いものは悪いと言えるクチコミは大事だ。確かにインターネットはソースとして低品質であることは間違いない。特にショップの機材紹介は、そもそも見ないようにしてる。と、私がいうとなんとも誤解を受けそうだがそれが事実である。
正直、利益率の良い物が多く売れる方が店にとってはありがたいからだ。
例えば最近良く「なかった」機材といえばクレのスプレーオイル。油切れが早すぎて100kmも走ったらシャリシャリ音がしてもう使ってない。これもやはり、チーム員の中からクチコミで同じようなことが言われてる。
バーナーも価格に見あった価値なし。これも口コミの事実である。両者とも当ブログでは今まで機会が無く書かなかったが、これがクチコミとネットの情報の差異である。口コミの方が情報が早く、ネットの方が裏を読まなくてはならない。
まぁ、割と当ブログも怪しい時はある。ただわりと機材に関しては書きたいことは書いている。ようはユーザーが求めているものは何か、それは「ホンネ」なのだろう。
こんな細かい話も掻い摘まみ、本書内に書いてあるから面白い。消費者は購入にシビアだ。ただ、取捨選択を機材においてしなくてはならない。あ、また脱線したので本書に戻ろう。
パワーは指標であり、そうでない
パワーの話が書かれている。ただ、コーガン本のようなタイプではない。どちらかというと、パワーに対する考え方や使い方の話がメインだ。ただ我々サイクリスト(むしろホビーのほうが)に急速に普及しているパワーメータは指標として明確である。
ではそれらとうまく付き合い、どの様にして使うのか。パワートレーニングは数値解析をするコーチがいないと意味がないと本書にも書かれている。ただそれを踏まえてどう使うのか。本書で一番注目したポイントだ。わたしはチャプター4-7が一番役に立った。
ここには、当然内容は書かない。実際に読んで確かめてほしいのだが、ただ私に足りない考え方が書かれている。割と単純なことだが、重要な「極めて単純なこと」だ。これはパワーを基準にしていたら、不可能なことだろう。
ようは捕らえた方、考え方次第だ。私は痛感している。バカとパワーは使いようなのである。耳が痛い。
以外とパワー一辺倒だと見落としてしまいがちな点が緩やかにまとめられている。また、、、4-8も耳が痛い。私はこの事を知り、気づいただけでも本書を購入してよかったと思う。わりとトレーニングノウハウ本に無い、思考の部分が書かれていることは私にとってありがたい事である。
今一度、パワートレーニングのコーチがいないリーマンとして、本質を見直す必要がありそうだ。
レースの立ち回り
後半は多くのホビーサイクリストにとって役に立つかは不明だ。少なくともJPTや、JETならば関係する。ただヒルクライムやエンデューロで集団からちぎれてしまった後に気にする内容ではない。
わりと、基本的なことが書かれているが、高岡さんがどんなことを考えながら走っているのかノウハウ的な(私が知らないだけかもしれないが)点がコンパクトにまとめられている。視点がそもそも海外のサーカスに近いプロの話ではなく、国内のレースで走って得たことなのだろうから参考になる。
ロードーレースは戦略だ。単純にウェイトレシオ勝負ではない場合もある。どの様にして走り、少ない勝機を引きずり寄せるか、やはり頭を使うスポーツなのである。この辺は経験が少ない私にとって価値のある点であった。
1800円の本は買いか
実際1800円の価格と本書の内容のバランスは、どうだったのだろうか。事実、当チームのある人は予約当時「1800円?高い」ともらしていた。今読み終わり思うのは、1800円出して不満のないボリュームと内容である、ということだ。
サラリーマンの時間管理に始まり、機材、練習、ポジショニング、フォーム、テクニックと内容は十分だ。
もうひとつ突っ込んで書いて欲しかった部分をあげたい。それは高岡さんの回想だ。本の最後と、途中端々に僅かながら割かれている話をもっと読みたかった。本書はロードバイクとサラリーマンが向き合う本なので、必要ないと言われればそれまでであるが。
ただ、コラムを読む本ではないし、昔話ばかり書かれても読者が本書に求めているものとは違うだろう。そう考えるとロードバイクの本として非常にまとまっている(サラリーマン問わず)内容だった。
いつもJPTで走る姿を見て、遠くに感じていた人は、本書を通し少しばかり(当然全てではないが)知ることができた。ブログの向こう側、違うレースのステージで走る「アマチュアサラリーマン」はロードバイクにおいてはやはり「プロフェッショナル」だった。
我々サラリーマンも時間のやりくりをしながらそこまでできるんだ、と高岡さん自身の走りや結果が示された結晶が本書である。パワーメータよりもよっぽど「サラリーマンの練習指標」になる内容である。
私は本書を読み「時間がない」などと言ってる事がいかに「無駄」なのか自覚した。事実として時間は無い、だからどうするか。我々サラリーマンが勝つためにすべきこと、それが本書に詰まっている。
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FBページへ本書を読んだ感想を記載してみてほしい。ただ私が人の書評を読みたいだけであるが。