泥と高圧洗浄機で試した KOGEL セラミックベアリング インプレッション

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泥まみれにして高圧洗浄機で水責めにして2週間放置
  • STEP1
    希望ヶ丘CXで泥まみれ
    業務用高圧洗浄機でしつこくBB付近を水責め。
  • STEP2
    2週間放置
    オイルもグリスもささず放置。
  • STEP3
    堺CXで試走
    業務用高圧洗浄機でしつこくBB付近を水責め
  • STEP4
    堺CXレース
    業務用高圧洗浄機でしつこくBB付近を水責め
  • STEP5
    いまここ
    クランクの回転とBBのダメージをチェック

ほんの少し前まで「セラミックベアリングなんて高いだけで意味はない」と思っていた。そして、記事でもはっきりとそう書いていた。それよりもスチールベアリングを2年おきに新品に交換するほうがよっぽど回転がいいはず(と思っていた)。ただ、ここ1年以内で変わったことがある。

「ボトムブラケットだけはセラミックがいい。」

そう思ったのはスペシャライズドのS-WORKS VENGEやTARMACを使ってからだ。セラミックスピード社製のBBが標準で採用されているのだが、スチールとセラミックを試したところクランクの回転があまりにも違うことに驚いた。その体験をしてからというもの、TIME ZXRSのBBにもセラミックを入れたし、VENGEにはセラミックニードルベアリングを試しているし、ENVEのリムで組んだクリスキングのR45ハブもセラミックに変えた。

ところがシクロクロスやMTBバイクにはセラミックベアリングを使う気にはなれなかった。理由は単純だ。ロード専用に作られたセラミックベアリングを泥で使ったり、水没させたり、厳しい条件で安心して使えるとは思えなかったからだ。そして、オフロードバイクは使い終わった後も高圧洗浄機でしつこく水責めにされる・・・。機材にとって、これ以上にない厳しさである。

そんな状況の中であるベアリングメーカーを知った。米国のKOGEL(コーゲル)だ。ロード用とオフロード用に特化したセラミックベアリングを製造し、ほとんどのBB規格に対応するベアリングメーカーである。使用するシチュエーション(ロード、CX、MTB)と非常に細かく細分化され、BB、プーリーとすべての製品がセラミックベアリングで構成されている。

そして、プロチームのユナイテッドヘルスケアやCXやDHのナショナルチャンピオンがテストに参加しレースに投入しているとあって、実績も十分だった。

今回の記事は、実際にCXレースでKOGELのセラミックベアリング(オフロード用)を投入し、低温下、泥、水、雨、そして高圧洗浄機での水責めと、ロードバイクではほとんど実現できない状況下でKOGELベアリングをテストした。その模様を交えながらKOGELベアリングの性能に迫っていく。

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KOGELの歴史

KOGEL Bearingsは、2013年にアメリカテキサス州エルパソで設立された。設立したのはベルギーのバイクショップのオーナーだったArd Kessels氏だ。Ard氏は、高級なバイクに得体のしれない安価なベアリングを取り付けて送り出すことに不満を持っていた。ホイールやフレームそしてコンポは高級品を求めるが、重要な回転部品であるベアリングは適当な安価品の場合が多い。

確かにそうだ。

カーボンフレームやコンポーネントには気を配るかもしれないが、ベアリングはほとんど注目されない。バイクは回転と回転ですべてつながっている。回転部にはすべてベアリングが使用されており、ペダルやクランクが回ることで生み出された力は、ホイールを回し推進力へと変わる。推進することこそ、バイクに求められる最大の役割だ。

KOGELが生まれた理由として、Ard氏が住んでいたベルギーという環境も大きく関係している。ベルギーは年間を通して雨が多いのが特徴だ。ベルギーで行われるシクロクロスのレースを見ていても雨が多く、空もどんよりして、観客も厚着だから気温も低そうだ。濡れた路面での走行が当たり前のように行われる。

そのような厳しい状況下では、低品質の鋼鉄製ベアリングはうまく動作してくれないばかりか、回転が悪くなって足かせになった。このようなベルギーでの環境も影響してかArd氏は良いベアリングを生み出そうと決意しKOGELを設立した。

精密機器を得意とする日本にはNTN、NSK、JTEKTといったベアリングブランドがある。しかし、ベルギーにはそれらをしのぐブランドはおめにかかることが無い。完成車はメーカーが大量にベアリングを発注できるかもしれないが、フレーム1本1本を扱いメンテナンスを生業とするショップとなるとそうはいかない。

これらの背景から、以下の3つのポイントに絞ってバイク用のベアリングを生み出すことを決めた。

  • 高級バイクに見合うハイエンドベアリングを開発する。
  • ロード用とオフロード用に特化したシールを開発する。
  • アダプターを使用せずさまざまなBB規格に対応する。

目標は最初から明らかだった。

「高級バイクに見合ったハイエンドベアリングを開発する」という理念は、バイクを構成するパーツとしてベアリングの重要性を改めて認識させてくれる。ベアリングは回転を支える重要な役割を担っているものの、品質やグレードに気が回されることは少ない。使用しているコンポやホイールのグレードは気にするがベアリングが「ついていればいい」その程度だ。「高級バイクに見合う」ということは、完成車としての「機材間のつり合い」を是正してくれる。

「ロード用とオフロード用に特化したシールを開発する」ということは、まさに望んでいたことだ。KOGELはロード用とオフロード用に特化したシールを開発した。今回シクロクロスバイクでテストしたオフロード用ベアリングは高い防塵性を備えているという。実際に厳しい状況で使用したインプレッションは後ほど記す。セラミックベアリングで明確に「オフロード用」と定義したベアリングはそう多くはない。

対してロード用のベアリングはある程度の雨やホコリを防いでくれればいい。あとは回転性能だ。回転性能を求めるがあまり、シールを抜くライダーもいる。ただし、回転性能を極限に求めることは防塵性を著しく低下させる。回転の良さと防塵性能はトレードオフの関係だ。これらの関係もインプレッションでポイントになってくる。

そして3つ目の「アダプターを使用せずさまざまな規格に対応する」というテーマだ。多くのサイクリストたちがうんざりしている各社のBB規格戦争に対応した形である。各社は「自分の好みの穴」を作ることに今でも飽きることはない。しかし、あらゆる組み合わせ(BB規格とクランクシャフト径)にKOGELは対応している(100%ではないが)。

これらの3つの理念をベースに、KOGELのベアリングは開発されている。そして、ロード、シクロクロス、マウンテンバイクのトップ選手からのフィードバックを集めてベアリングのアップデートを常に欠かさない。ユナイテッドヘルスケアPro Cycling team、CXのHelen Wyman(9度のイギリスチャンピオン)、Maxxis Shimano、Amanda Nauman team、トライアスロンのJohannes Moldan teamといったトップライダーたちの回転を支えている。

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磨きは3週間

「1つのボールを生み出すのに三週間磨き続ける」KOGELのベアリングの研磨に費やされる時間はとても長い。それほど品質と精度にこだわっているのだろう。それらの模様はブログで公開されており、ベアリングに関するかなりマニアックな話題が掲載されている。

優れたボールベアリングを作るための重要な鍵は、仕上げにあります。まるで両手で団子を丸めるように、ベアリングも回転する二枚のプレートの間で転がされます。その際に硬くするために熱処理が行われます。ボールの品質はこの磨きに費やす時間で決まります。Kogelのベアリングは磨きに3週間以上費やして1つのベアリングを生み出します。この手間暇が価格に反映されますが、その分高品質でベアリング寿命の長い製品が生み出されます。

WHAT MAKES A GOOD BALL BEARING A GREAT BALL BEARING FOR BICYCLES? PART 1

「どれだけ転がりが良いベアリングか」についてアピールするメーカーは多く存在しています。しかし、Kogelはさらに「シールの種類」や「グリスの量」もアピールしています。特に自転車用ベアリングのシールの種類は見落とされがちです。Kogelはロードレース用は非接触シールを採用し、シクロクロスとマウンテンバイク用は高耐久性のシールを採用しています。そして、目的の用途に適したグリス(異なる粘度)と量を充塡しています。粘度が高いグリースで完全に詰まっているベアリングは、高い耐久性と高い摩擦をもたらします。 理由としてボールが円を一周するときにグリースを通過する必要があるためです。 対して粘土が低いグリースと低い充填度は低摩擦になりますが、耐久性は低くより頻繁にベアリングを修理する必要があります。

WHAT MAKES A GOOD BALL BEARING A GREAT BALL BEARING FOR BICYCLES? PART 2</p>

他にもベアリングに関する興味深い話が続く。すべて紹介したいところだが、次章からは実際にシクロクロスの厳しい条件下で使用したインプレッションをお伝えする。

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インプレッション

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ここまでのおさらいをすると、Kogel Bearingsはロードとオフロード用の特殊シールを備えたハイブリッドセラミックベアリング(Avec5 & Grade3)を採用した製品(BB、プーリー等)で構成されている。オフロードシールは シクロクロスとマウンテンバイク用に専用設計されている。同社はボトムブラケット、ディレイラープーリー、ホイールベアリングに差をつけることなく、すべてに共通して高品質なベアリングを採用した。

KOGELのベアリングはベアリングと受け側の両方にセラミック使ったフルセラミック仕様だ。そして、Avec5とGrade3を採用している。ABECはベアリングの精度等級を表している。ABEC1,ABEC3,ABEC5,ABEC7,ABEC9とグレードが上がっていき、ABEC7が実用範囲で最高の精度だ。ABEC9は精度は高いがその分価格も一気に上がるため、実用性を考えると採用することは現実的ではない。

Grade3は真球度が3/1,000,000であることを表している。セラミックボールの中でも最高レベルの真球度だ。Grade5は真球度5/1,000,000である。数字が小さいほど真球度が高い。DURA-ACEのハブはGrade25(25/1,000,000)と言われている。カンパニョーロのセラミックはGrade5であるため、KOGELはさらに真球度が高いセラミックボールを採用していることになる。

今回はオフロード用のボトムブラケット用ベアリングを試した。オフロード用の使用感が良ければ、おのずとロード用も期待できるし、使用しても良いという判断材料にもなる。冒頭でもお伝えしたとおり、今回のインプレッション記事を書く前に試したことは以下のとおりだ。

泥まみれにして高圧洗浄機で水責めにして2週間放置
  • STEP1
    希望ヶ丘CXで泥まみれ
    業務用高圧洗浄機でしつこくBB付近を水責め。
  • STEP2
    2週間放置
    オイルもグリスもささず放置。
  • STEP3
    堺CXで試走
    業務用高圧洗浄機でしつこくBB付近を水責め
  • STEP4
    堺CXレース
    業務用高圧洗浄機でしつこくBB付近を水責め
  • STEP5
    いまここ
    クランクの回転とBBのダメージをチェック

このように毎レース2~3回は高圧洗浄機で洗う。さらに泥や砂の中を走る。本当に「オフロード専用のシール」なのかテストするためには都合のいい条件だ。本来であれば長期的に経過を見つつ、ハードに使用することが望ましい。そのため今回の記事は長期インプレッションとし、後日追加アップデートする予定である。

私のシクロクロスバイクはTREK BOONEだ。BBの規格はBB86である。純正の鋼鉄製ベアリングからKOGELのセラミックベアリングに打ちかえた。クランクを手で回した瞬間、回転の違いははっきりとわかった。相対的に見ても明らかにクランクが勢いよくまわる。リアハブはクリスキングのR45Dで、リアディレイラーはシマノアルテグラRXのDi2だ。今までの純正ベアリングがいかに回っていなかったのかがよくわかる。

使用感を書く前にひとつだけ白状せねばならないことがある。堺シクロクロスではKOGELのベアリングを使用していることを「忘れていた」のだ。というのも、もともと付属している純正のベアリングを入れていると勘違いしていた(実際はKOGELのベアリングが入っていた)。高圧洗浄機で洗った後にクランクを回して思ったのは、「BBのグリスが抜けてるな。CXシーズンも後半だしBB交換しないと。」と思ったのだ。

KOGELのベアリングがどれくらい回るかについては、Youtubeに動画が掲載されているが、もしも文章で回転性能を表すと「BBのグリスが抜けてるな。CXシーズンも後半だしBB交換しないと。」と思ってしまう回転性能だ。いや、高圧洗浄機を使ったし実際に抜けてるんちゃうか・・・、と悪い方向へ考えてしまいがちだが、そこはオフロード用に特化したBBとしてなんとか耐えていてほしい。

クランクの回転は申し分ないが、問題はBBへのダメージだ。メンテナンスがてらクランクを外してベアリングをチェックしてみることにした。その画像はこちらだ。

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本来であればシールを取り除いて中を開けたいところだが、専用のダストカバーが良い仕事をしていて、シールまでドロや水が到達しないように保護してくれている。

幾多の厳しい状況を潜り抜けてきたKOGELのベアリングは、まるでタイムカプセルのごとく”あのころ”の状態を保管しつづけていた。KOGELのベアリングは出荷時の状態をほぼそのまま保存していた。「タイムカプセルベアリング」そのような新しいネーミングをつけたいぐらい程だ。どんな厳しい状況であっても、オフロード専用設計のシールの効果が十分発揮されていると理解できた瞬間でもあった。

耐久性と回転性能はトレードオフの関係にあるが、セラミックスピード社製品やプラクシスワークスのニードルセラミックベアリングと比べても遜色のない回転性能である。問題は長期的に使用することで発生するボールの摩耗や、シールの耐久性だが、これらは長期的にインプレッションを行って確認していく予定だ。

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ラインナップ

BBの価格は2万3000円~2万8000円(税抜)、ディレーラープーリーは1万5000円~3万9000円(税抜)だ。価格的に見ると高く感じてしまうが、セラミックスピード社の製品と比べるとおよそ半分の値段である。はじめは高額だと思ったが、三週間かけて磨かれた品質の良い製品であることを考えると妥当である。

KOGEL PRODUCTS GUIDE (製品情報)

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まとめ:バイクに見合ったベアリングを

私は今までフレームやタイヤ、ホイール、オイルとさまざまな機材に投資してきた。その最後の砦として残っていたのはベアリングだった。というのもセラミックベアリングは懐疑的にとらえていた機材だった。しかし、私はKOGEL創業者の「高級バイクに見合うハイエンドベアリングを」という考え方に共感したのだ。

セラミックベアリングといえば回転性能ばかりに目が向けられる。KOGELのベアリングは基本となる回転性能に加え、ロードとオフロードでの使い分けや、品質面という実用的な付加価値を加えた。そして、「高級バイクに見合うハイエンドベアリング」という重要なことを気づかせてくれた。ベアリング自体の価格は安いとは言えないが、実際に使用して思うのは品質に見合った価格であるということだ。

今回は「オフロード用のセラミックベアリング」というニッチな機材として紹介したが、KOGELの製品はロードとオフロード双方に対応した豊富なラインナップで構成されている。そしてこれらすべてに共通のセラミックベアリングを採用している。回転性能、防塵性能ともに満足のいく珍しい製品だが、「バイクに見合うベアリング」をまだ採用できていないとしたら、KOGELのベアリングでぜひ穴埋めをしてほしい。

今回の結果から、MTB用のBBとスペアロード用もテストする予定だ。セラミックベアリングにたいして懐疑的であったが、BBに採用するとその効果は手で回しても足で回しても体感できる。

KOGEL PRODUCTS GUIDE (製品情報)

取扱は大阪であればベックオンや全国チェーンのワイズロードなどで買うことができる。

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