ソニーがプレイステーション5の仕様の一部を公表した。マイクロソフトの Xbox Series Xと同じAMD製のプロセッサを採用しており共通点も多い印象だ。ただ一方で、両社のハードウェア設計思想には大きな違いが見える。両者共にもはやゲームマシンではなく、ハイエンドゲーミングPC並(もしくはそれ以上)の演算性能を備えていた。
ざっと確認してみたところ、
- CPU:AMD Ryzen Zen 2(8コア/16スレッド)MAX 3.5GHz(可変)
- GPU:AMD Radeon RDNA 2.23GHz 可変(10.3 TFLOPS)
- RAM:GDDR6 16GB(バンド幅:448GB/s)
- SSD:825GB(読み込み:5.5GB/s(Raw))
- 映像出力:4K(120Hz) TV、8K TV
まさに考えられる限りのハードウェアスペックを詰め込んだ性能を備えている。時代は4Kディスプレイ出力でリフレッシュレートは120Hzだ。8Kのリフレッシュレートの記載はなかったが、このあたりの話は別の記事で詳しく紹介している。
プロセッサ
CPUとGPUはAMDだ。CPUはAMDのRyzenの7nmプロセスのZen2プロセスをベースに開発された。8コアの16スレッドのZen2世代プロセスといえば、「Ryzen 7 3700X」や「Ryzen 7 3800X」が相当する。クロック数は3700Xが3.6GHz Baseの4.4GHz Boostで3800Xが3.9GHz Baseの4.5GHz Boostだ。
もちろん、プレイステーション5用に特化したCPUを開発しているため完全にPC版Ryzenからの流用ではない(実際のローンチでも触れられている通り)。ただ3.5GHzの可変ということになるとRyzen 7 3700X相当と考えても良さそうだ(TDPは公開されていないため厳密には異なる)。
Ryzen 7 3800XのPCゲーミング性能については、Intel Core i7 9700Kと同等のパフォーマンスを発揮する。先般、ZWIFT用に構築した自身のPCにもRyzen 7 3700Xを導入している。Ryzen 3800XやRyzen9の導入も考えたが、Ryzen 3700XはTDPが65Wであることと、ZWIFTはコア数よりもクロック数を稼いだほうがパフォーマンスが向上するので見送った。
「プレステ5でも3700X相当のスペック」
という事もあり、自作PCのスペック選択はあながち間違えたわけではなかったな、と言うのがホンネだ。
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GPU
GPUはRadeon系を搭載している。GPUの性能はnVIDIA RTX2080相当ということもありハイエンドゲームPC相当(もしくはそれ以上)だ。スペックは2.23GHzの可変で10.3 TFLOPSで動作する。単純にプレステ5とPC用のGPUを比較することはできないがPC用のGeForceと演算能力を比較してみる。
- 13.4TFLOPS GeForce RTX 2080 Ti
- 11.3TFLOPS GeForce GTX 1080 Ti
- 10.3TFLOPS PlayStation 5
- 10.0TFLOPS GeForce RTX 2080
- 08.8TFLOPS GeForce GTX 1080
「本来はRADEONで比較するのが(以下略」
というのは理解している。とはいえ、ZWIFTと相性の良いGPUといえばGeForceだからあえてGeForceで揃えた(おい)。
ローンチ通り「PlayStation5はRTX 2080相当」というのは演算能力で単純比較しても間違いなさそうだ(SONYのプレゼンでもGeForceと比較してる・・・)。ZWIFT用に構築したPCにも同性能のnVIDIA GeForce RTX 2080を導入している。
ZWIFTをプレイする場合は、AMD RADEONよりもnVIDIA GeforceのGPUのほうが相性がよい結果が出ている。RTX 2080を使用して4KでZWIFTをプレイしたところ140~200FPSで動作することを確認している。
ただ、ZWIFTにおけるフレームレートの変動は自身から半径100mにどれだけのライダーが存在するかで大きく変動する。例えば、グループイベントで参加者が多く半径100mに何十人もユーザーが存在する場合は、いくらRTX2080であっても60FPSを下回った(4K 2080pの場合)。
「ZWIFTにはハイスペックなPCは不要だ」
と、よく聞くが、解像度とフレームレート次第ではまったく当てはまらなかった。もしもそんな事を言う人が居たら、実際にハードウェアを用意して実際にZWIFT上で動作検証を実施していない証拠だ。机上の空論でしかない。
実際にハイエンドゲーミングPCを導入してフレームレートを確認すると心底理解することができる。動かしてみないことには何もわからなかった。これから発売される超ハイスペックの最先端ゲーム機であるPlayStation5相当の演算能力相当のゲーミングPCであっても、ZWIFTの4K設定では60FPSを割ってしまう場合がある。
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SSD 5.5GB/s(Raw)
PlayStation5に搭載される予定のSSDは読み込み速度が5.5GB/s(Raw)だ。容量はおよそ825GBだが、容量よりも読み込み速度が重要だ。ゲームのロード時間に影響を及ぼす読み込み速度は早ければ早いほどいい。PS5のSSDコントローラは12チャネルアクセスで、PCI Express 4.0対応のカスタムSSDを搭載する。
これから発売する最新のゲーム機といえども、2020年末に登場が予定されている7GB/sクラスのSSDよりは遅い(それでも超早い)。現在の自作PC市場で主流となっているPCI Express 3.0のSSD(3.5GB/s程度)よりは高速だ。
今回ZWIFT用に導入したSSDもできるだけ高速なものを用意した。PCI Express 4.0で接続し新型PlayStationとまではいかないものの読み込み速度が5.0GB/s(Raw)(500MB/s遅い)である。
ただし、CPUが早い、SSDが早い、GPUが早いと単体のスピードを上げていってもチップセット側がついていけなければ意味がない。PlayStation5は高速なSSDストレージとメモリ間のボトルネックを解消するためにカスタムチップを採用した。最大22GB/sの処理が可能になっている。
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それでもZWIFTにはこんなスペックいらない
色々と細かなチューニングを実施して、PCに投資してきた。しかし、冷静に俯瞰してみるとこんなスペックのPCはZWIFTには不要だ。もちろんPlayStation5でZWIFTは動作しないから、4KでZWIFTを楽しみたいのならばハイエンドなゲーミングPCが必要にはなる。
これから登場する最先端のPlayStation5とほぼ同一スペックのゲーミングPCを組み上げて思うことがある。確かにZWIFTの4Kで最高のグラフィックパフォーマンスを引き出せるが、それでも「2万円のapple TV 4Kが最強」だというのが結論だ。自分で資金を投じ、チューニングしまくったからこそ、心底思う。
逆に2~3年前の(ゲーミングではない)ノートPCや非力なオンボードGPUのデスクトップ、タブレット、スマホを使うくらいならapple TV 4Kの演算能力と表現能力が最もコストパフォマンスが高く性能も高いということも理解しておきたい。ムーアの法則ではないがそれほどに進歩が早いのだ。
ではなぜ私はここまでのゲーミングPCを用意してしまったのだろうか。インターネット回線は10Gbpsで(レイテンシ3msec前後)に乗り換え、ディスプレイ応答も0.83msの低遅延 4K対応TVパネルに変え(てしまっ)た。
パワーをかけたら、ZWIFTの中のバーチャルな私はすぐさま反応する。ほとんどリアルタイムでラグは皆無だ。「ZWIFTラグい問題」は無くなった。ただ、それでも1台のロードバイクを組み上げるのと同じように「悩んでいるうちが楽しい」だけだった。正直何十万円もかけて構築したZWIFT環境は、19800円で買えるapple TV 4Kとできることは大差ない。
先般の記事に引き続き、揺るがない結論としては「ZWIFTをプレイするには安定しているapple TV 4Kが最適」である。今も以下の記事で記した内容は揺るがない。
超ハイエンドのゲーミングPCを作って比較プレイしたから安心してほしい(個人的な思いとしてはぐぬぬぬ、、、という気持ちもあるが)。机上の空論でもなく実体験から導き出した結論だ。
ZWIFTは実際に仮想空間上のライダーと共に競い合えるメリットが有る。それは生み出したパワーが動力となりバーチャル空間のライダーを動かす。そこには確かにハードウェアスペックは推奨レベルは必要だが、ZWIFTのソフトウェア側でなんとかなる。ハードウェアスペックの違いによる勝敗はごく僅かだ。
重要なのはZWIFTでの体験を向上させることであり、ゲームをプレイすることを心底楽し(苦し)めばいい。ハードウェアスペックを高めて高解像度でプレイすることで没入感は高まるかもしれないが、それでもZWIFTの本質部分は揺らぐことはなさそうだ。