TOUR誌の風洞実験で判明!「世界最速のエアロロード」はあの意外なバイクに・・・。

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「世界最速のエアロロードバイク」はいったいどのバイクなのだろうか。各社が開発戦争を重ねる最中、ライダーたちはいったいどのバイクを選べばよいのかわからなくなってきている。そんな状況の中、ドイツの機関誌「TOUR MAGAZINE」の空力テストでついに最速のバイクが明らかになった。

テストの対象になったのは、

  • S-WORKS VENGE DISC
  • Cannondale SYSTEMSIX DISC
  • TREK MADONE DISC
  • Cervelo S5 DISC
  • RIDLEY Noah DISC

以上の5モデルだ。最新のエアロディスクロードがそろい、事実上の最強決定戦と言っていい。

TOUR誌のテストの特徴は、第三者機関の実験設備を用いて厳密な実験が一貫して行われる。実験のプロトコル(複数の者が対象となる事項を確実に実行するための手順を定めたもの)が一貫しており、過去に掲載されたバイクと比較してもどれくらい速いのかがわかるのがポイントだ。

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実験の内容は、速度45km/hの状況下において風向き-20度〜+20度の範囲で測定される。テストに用いるのはダミーライダー(TOUR誌で長年活躍しているライダー)だ。すべての空力テストにおいて共通したダミーライダーを用いることで、ライダーとバイクの間にどのようなエアロダイナミクスの相互作用を及ぼすのかシミュレートできる。

TOUR誌は、精度の高い実験環境と環境差分が出にくい手法を用いて、科学的な実験を行える唯一の雑誌と言える。

面白いのが過去に登場した「VENGE ViAS」や「MADONE 9」と比べたエアロダイナミクス性能の違いも確認できるということだ。TOUR誌が行ってきた数々の実験では、TREK MADONE9の204W(TOUR 2016年1月号)が最速だった。

今回の実験ではMADONEの204Wを超えられるかが「世界最速」のカギを握っている。テストの対象になったのは「S-WORKS VENGE」「Cannondale SYSTEMSIX」「TREK MADONE」「Cervelo S5」「RIDLEY Noah」の5モデルだ。早速、空力、重量、剛性、重量を確認していこう。

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エアロダイナミクス

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実験が行われたのは、ドイツのインメンシュタアートにあるGST風洞実験室だ。同風洞実験室は、ミサイル、自動車、鉄道車両、冷却塔、アンテナ、建物に対して空力試験を実施している。その歴史は古く、ドルニエ社(ドイツ)の攻撃機アルファジェット(1978年)からミサイルまでさまざまな風洞実験が行われてきた。

GST風洞実験室を使った実験は、TOUR誌以外のブランドも積極的に行っている。CANYON(ドイツ)のSpeedmax CF SLXの開発、swisssideのホイール、TRI−MAG(ドイツのトライアスロンマガジン)の実験と数々のブランドや雑誌がGST風洞実験室を利用している。

GST風洞実験室で得られた実験結果は以下のとおりだ。各社のエアロディスクロードが丸裸にされた。

  1. 203W:Cannondale SYSTEMSIX
  2. 206W:Cervélo S5
  3. 208W:Specialized VENGE
  4. 212W:TREK MADONE
  5. 213W:Ridley Noah Fast Disc

「世界最速」という目標を掲げて開発が進められたCannondale SYSTEMSIXは、ついにTOUR誌のテストでも歴代1位のエアロダイナミクス性能があることが証明された。開発には元Cervéloのエアロダイナミクスエンジニアのデイモン氏が携わっている。

リナード氏が歩んできた「エアロロード(エアロを追求してきた道のり)」は実に華々しい。トレックのスピードコンセプトの開発に始まり、そしてCerveloで数々のエアロダイナミクス設計に携わった。リナード氏が携わった頃のトレックとサーベロのバイクは、2015年Lava誌の「Kona Bike Count」において1位と2位の座に輝いている。

リナード氏の歩んできた「エアロロード」そのものが「最速の道」だった。

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リナード氏は、TREK、CERVELOでも世界最速を目指した。そして自ら作り上げた世界最速を今度はCannondaleで塗り替えた。まさにエアロダイナミクススペシャリストである。

今回の実験で重要なのはすべてディスクブレーキモデルだということだ。そして、TOUR誌の実験内容は使用する実験室や条件に一貫性があるため過去のモデルとも比較できる。SYSTEMSIXは事実上「TOUR誌のテストでも歴代1位のエアロダイナミクス性能」を備えている。

つまり、いままで最速だったリムブレーキ式MADONEの204W(TOUR 2016/1)よりも速いといことになる。「DISCロード=空気抵抗増」という思い込みは確かにあった。しかし、リナード氏のデザインしたSYSTEMSIXは「空力的観点から見ても不利ではない」ことを証明したのだ。

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ディスクエアロロード≠速いバイク

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「ディスクエアロロード=速い」という考え方はメーカーのプロモーションがうまく働いていると感じている(巧みな戦略だ!)。というのも「進化の幅」で考えたときにエアロディスクロードはそれほど速いわけではないのだ。SYSTEMSIXはこれまで最速だったTREK MADONE(2016)よりも1Wだけ速い。

1Wなんて、タイヤを替えてしまえば簡単にスポイルされてしまう幅だ。投資効果を考えるとディスクエアロロードにお金をかけるよりも、GP5000に変えたほうがよっぽど費用対効果が高いことは明白だ。

SYSTEMSIXがエアロダイナミクスに優れていることは間違いないが、エアロディスクロードだからと言って飛躍的にエアロダイナミクスが向上するわけではない。むしろ、2016年に発売したMADONE(リムブレーキ)よりも新型MADONE DISCは8W抵抗が増してしていることも触れておかねばならない。

必ずしも「ディスクエアロロード=速い」という考え方は通用しない。むしろ、遅くなるケースも有り得る。ただし、昨今のディスクエアロロードの魅力はエアロダイナミクス以外の改善に見ることができる。それは重量面やメンテナンス性だ。

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重量

「エアロディスクロード=速い」という考え方は思い込みだが、「エアロディスクロード=重い」という想像は正しい。ヒルクライマーたちがエアロディスクロードを使用する日は当分先だろう。完成状態での実重量は以下のとおりだ。

  1. 7,100g:Noah Fast Disc(Forza R45:1,481g)
  2. 7,190g:S-WORKS VENGE (CLX64:1,538g)
  3. 7,440g:S5 Red eTap Disc(DT ARD1400:1,517g)
  4. 7,700g:TREK MADONE Disc(Aeolus XXX6:1,578g)
  5. 7,780g:SYSTEMSIX Hi-mod Dura Di2(KNØT64:1,564g)

最も軽いNoahと最も重いSYSTEMSIXの重量差は680gだ。軽いフロントホイール1個分の差になる。順位だけ見るとどれも重く感じてしまう。VENGE ViASは8キログラム台だったことを考えるとVENGEのトータル800gの軽量化は本当に技術力と開発の賜物である。

メンテナンス性に目を向ければ、VENGEやMADONEのステム周りのケーブルルーティングや、ポジションの調整を考えるとディスクエアロロード2世代目のTREKやSpecializedのバイクは成熟しつつある。SYSTEMSIXのヘッド周りの作り込みはいまひとつといったところだ。

またNoah Fast Discはホイールが軽いしテストバイク中でリムハイトが最も低い。もしもS-WORKS VENGEに同等のリムハイト相当の50mm(F:645, R:770g, 合計:1,415g)を組み合わせると、7190g→7,067gになる。重量面と空力のバランスを考えるとVENGEが頭一つ抜けている。

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コラム:サイスポのテスト結果との違い

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TOUR誌の様々な実験は過去何年にも渡って、一貫した手法と実験が行われてきた。そのため、精度も高く他メディアからも引用される機会が多い。国内の雑誌でもエアロロードの比較検証が行われたが、今回のTOUR誌とは全く異なる結果だった。

TOUR誌は風洞実験室を用いてダミーライダーを使用したテストを実施した。対するサイスポはベロドロームで実際のライダーが走り、パワーメーターで測定を実施した。純粋にバイクのエアロダイナミクス性能を測定するのならば、もちろん風洞実験が最も確からしいデータを取得できる。

そして実走行の場合、空気抵抗以外にもタイヤの転がり抵抗が大きな影響を及ぼす。サイスポ誌もこの点をもちろん理解しており「結果は空気抵抗の差というより走行抵抗の差が現れることになる」という一文が記されていたのが好印象だ。純粋にエアロダイナミクス性能の比較ができていないことを明記している。

なお、タイヤの6.9barにおけるCRRは以下のとおりだ。

  1. 0.00333:SPECIALIZED Turbo Cotton 11.1 Watts
  2. 0.00366:BONTRAGER R4 12.2 Watts
  3. 0.00378:Vittoria Rubino Pro Speed 12.6 Watts
  4. 0.00387:GP4000SII 12.9 Watts

走行抵抗に大きな影響を及ぼすのはタイヤだが、タイヤだけで1W以上もの差が生まれる。また、ライダーのポジションはさらに影響を与える。TOUR誌では、今回のエアロロードの実験と合わせてライダーのポジションの違いは、どのようにエアロダイナミクスに影響を及ぼすかを測定している。その実験結果は以下のとおり。

  1. 136W:下ハンドルポジション
  2. 163W:ブラケットポジション
  3. 190W:バートップポジション

・・・。1Wのせめぎあいをする「世界最速のバイク」を追い求めるよりも自身のエアロポジションを煮詰めたほうが(以下略)こうなってくると、走行抵抗は「タイヤが支配的」であるが、エアロダイナミクスは「ライダーのフォームが支配的」であることは数値から見ても明らかである。

コスト0円、ポジションの研究は最高の費用対効果が望める。

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まとめ:総合的なバランスが重要

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「ディスクエアロロード=速い」ということはSYSTEMSIXの登場で確かなものとなった。しかし、今までTOUR誌がテストしてきたバイクの中で最もバランスの良いバイクは2016年に発表されたリムブレーキモデルの「TREK MADONE 9.9 」だ。

エアロダイナミクス性能はSYSTEMSIXからわずか+1Wの204W。そして、実重量は6,870g(メーカー公称値:6.800kg)である。

リムブレーキ式とディスクブレーキ式それぞれ合わせた場合、総合的なバランスが最も高いのは2016年のTREK MADONE9.9だと言える。最近はディスクエアロロードの話題ばかりだが、リムブレーキ式モデルは当分現役であることは間違いない。

これからディスクエアロロードを購入する方は、エアロダイナミクスだけではなく、重量面、メンテナンス性、といった総合的なバランスを考えて最適な1台を見定める必要がある。

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