TREKがついに新型Emondaを発表した。前作からのアップデートは大幅に行われ全く新しいバイクに進化した。Emondaは「削ぎ落とす」という意味のとおり軽量性を売りにしていた。先代モデルの軽さを踏襲しながら、新型Emondaはエアロ性能を高めた。そして、「トレック最速のヒルクライムバイク」という称号を携えて私たちの目の前に登場した。
しかし、新型Emondaの設計思想を見ていくと「ただ軽くて速いだけのバイク」ではなかった。空力や乗り心地、剛性を無視して「ただ軽いだけ」のバイクを作ることはTREKのカーボン技術を用いれば容易いことだったという。新型Emondaは軽量性、エアロ性能、乗り心地というバランスに極限までこだわった。乗り心地やバイクを進ます感覚、数値では表せない部分にまでチューニングを施したという。
様々な先進的なアップデートが盛り込まれた新型Emondaは、旧作からの変更点が膨大である。本記事は、ローンチ内容を余すことなく記載しお伝えするため少々記事が長い。記事は読者が理解しやすいようにすべての資料とローンチ内容を精査し内容を咀嚼し掲載している。まずは、新型Emondaの全体像と要点を抽出し箇条書きにしてまとめた。
- トレック最速のヒルクライムバイク
- Emonda SLR フレーム重量698g (未塗装, ハンガー込み)
- Emonda SLR フォーク重量365g (未塗装, 220mm steerer)
- ディスクブレーキバイクのみ。
- KVF形状をフレームのあらゆる部分に搭載。
- 旧Emondaよりも、勾配0%の平坦で60分あたり60秒速い。
- 旧Emondaよりも、8.1%の登りにおいて60分あたり60秒速い。
- 現行TARMACよりも、8.1%の登りにおいて60分あたり13秒速い
- 新しいOCLV 800を採用した。
- T47BB(スレッド式)採用した。
エアロロード一辺倒になっていたロードバイク市場にEmondaが大きな変化を及ぼそうとしている。軽量化とエアロ性能を両立したセミエアロロードEmondaの登場だ。「セミエアロロード」という新しいカテゴリーのバイクとして新型Emondaは走り始めた。
まずはその全容を知るべく、新型Emondaの開発に携わったTREKの開発エンジニアたちの話から新しいEmondaの全容を探っていこう。
開発者が語る新しいEmonda
世界的に広がったCOVID-19の影響によって、Emondaのローンチはストリーミングで行われた。数々の開発ストーリー、新しいOCLV800の採用、そして「トレック最速のヒルクライムバイク」という位置づけ。日本の富士ヒルクライムのコースを用いた開発と日本市場を強く意識した興味深い開発内容を紹介していく。
Trek-Segafredoテクニカルディレクター マット・シュライヴァー
最先端のプロレースの現場でバイクに何が求められているのか紹介していく。Trek-Segafredoテクニカルディレクター マット・シュライヴァーは次のように語る。
MadoneとEmondaの選択で迷うライダーはとても多い。Emondaは優れた軽量バイクで、ディスクブレーキ、ペダル、サイコンを含めても規定ギリギリの6.8kgの完成重量だ。しかし、MadoneとEmondaの間にはエアロ性能で大きなギャップがある。この差を埋めてくれ、というのがTrek-Segafredoプロチームからのリクエストだ。
ディスクブレーキであっても”絶対に”6.8kgより重くなってほしくはない。登りでアタックするときは、重量もエアロもとても重要になる。重量6.8kgのエアロマシン。これがチームが強く望んだことだ。予想だが(もちろんステージや好みによって変わるとは思うが)10レースあったら7レースは新しいEmondaを使う。
特にウィメンズチームは男子チームよりも小柄だ。したがって、軽量なEmondaを選ぶことが多い。彼女たちもEmondaにエアロが加わってとても喜んでいる。チームのために最高のバイクを作ってくれたTREKに感謝したい。
エアロの教祖、ジョン・デイヴィス
新型Emondaのエアロダイナミクスを担当したのがエアロの教祖ことJohn Davis(ジョン・デイヴィス)氏だ。アメリカ屈指の名門大学であるプリンストン大学を卒業後、ジョージア工科大学で修士号(航空宇宙工学)を取得した
もともとDavis氏は、亜音速から極超音速領域までのミサイル設計を行っていた。その際に、STAR-CCM+ CFDを使用して空力設計に取り組んでいた。
現在はTrek Performance Researchで研究を行っており、バイクをより速くするためのCFD分析や空力を最適化する研究に注力している。TREKのプロチームと共に ライダーのパフォーマンスやレース戦略を最適化する研究も行っており、ソフトからハードまで手広くこなすエンジニアだ。
上記の内容は、TREK公式ではなくLinkedInで筆者が調べた内容。
新しいEmondaプロジェクトのゴールはエアロだ。私たちは新しいMadoneを開発するかのように、Emondaを開発した。Emondaは第3世代になったが、エアロダイナミクスの改善は第2世代、第3世代のときにはそれほど実施していない。そのうえで、Emondaの個性である軽量性を犠牲にするわけにはいかなかった。たとえば、エアロを無視してとにかく軽いバイクを作れば、アルプデュエズを登るのに最速のバイクができる。
ただ―――、
トレックが目指す理想のレースバイクは、最高のバランスを持つバイクだ。開発ではHEED(ヒーズ)を用いた。HEEDはプロジェクトのすり合わせを行う管理ソフトウェアだ。1つのプロジェクトで複数の矛盾するゴールを同時に達成するために、異なる分析をするデータを結びつけていくことができる。
たとえば、重量、エアロ、強度、乗り心地は、1つがよくなると、別の1つが悪化する関係にある。軽量化を追い求めればエアロは悪化する。いわばトレード・オフの関係だ。バランスをうまく取っていく必要がある。たとえば社内でこんな事例がある。エアロダイナミクスを担当しているチームが「エアロダイナミクスに優れた形状」をフレームを設計開発チームに修正内容としてメールで送る。しかし、形状が優れているもののフレーム重量が100g増えるからやりおなし・・・という繰り返しが発生する。
そんなやり取りでは、3年で新しいEmondaを世に送り出すことはできない。しかし、HEEDはこれらを自動化してくれる。先代のEmondaでもHEEDを用いたが、あくまでも重量を削るために複数の要素をすり合わせるだけだった。エアロダイナミクスの分析と重量や構造の分析をすり合わせるためにHEEDを用いたのは初めての試みだ。
異なる要素のすり合わせという意味でいうと、先代と同じシートマストを採用している。新型Emondaをさらにエアロ形状にすることも可能だった。しかし、重量と乗り心地を考えると現在の形が最適解だ。開発では、有名なヒルクライムのコースをいくつかモデルケースとして用いてる。重量とエアロなどのバランスを取りながら最速のバイクを開発していった。
実はこの中で、日本の富士ヒルクライムのレースコースをほぼそのままモデルにして分析した。日本はハイエンドロードの有数のマーケットで、日本の多くのヒルクライマーが目指すレースコースでEmondaが速いことを証明するということは非常に大きな価値がある。もちろん、新型Emondaは富士ヒルでも旧モデルより圧倒的に速い。
スピードコンセプトのようなTTバイクのエアロダイナミクスと、Emondaにおけるエアロダイナミクス開発は別の話題として考える必要がある。理由として、登りでは速度が平地ほど速くないこと。そして、大きな山の登りでは風が強く吹くことが多い。スピードコンセプトは非常に安定した状態で淡々と走るが、Emondaはダンシングをしたり、様々な気象条件に遭遇したりと、不安定な条件を走行する。
そのため、比較的ゆっくりとした速度で風が強い状況を想定したシミュレーションにフォーカスした。私たちはこれを「クライミング・エアロダイナミクス」と呼んでいる。結果として、アルプデュエズを想定した場合で、1時間の登りで18秒の差がつくエアロダイナミクスを獲得した。もちろん、平坦をハイスピードで走っても新型Emondaは速くなっている。
ヨーアングルを変えながら風洞実験で試験を行った結果、平均で180gも空気抵抗が減った。これはパワーに直すと18W/hに相当している。ある条件で平坦で1時間走ると1分の差が産まれる計算だ。たとえばダウンチューブをよく見てもらうと、ダウンチューブの上部と下部で微妙に形状が違うのがわかると思う。
これはホイールとタイヤ、そしてボトルケージの存在によって空気の流れがダウンチューブの上下で異なるため設計を細かく変更している。
また、バーとステムの開発にも多くの時間を費やした。一体型バーステムは人間が触れる場所であることから、人間工学を考慮したバランスを取る必要がある。実はカムテール形状を取り入れることも考えたが、人間工学の視点で断念した、最終的にいまの形になっている。考慮すべき要素が多いと、開発にも時間がかかるのだ。
エアロの開発というと、風洞施設で実験を行う様子をイメージされる方が多いと思う。しかし、風洞施設よりもコンピューター上でのCFD解析の方が重要だ。より多くのフレーム形状や、あらゆる仮想条件、たとえばアルプ・デュエズを時速15km/hで上って風速10m/secの状況などを再現できるからだ。風洞施設は最終のチューニングとしてテストを行った。
ロード責任者 ジョーダン・ロージンが語るEmonda
次は、OCLV800という新しい素材を用いてEmondaのカーボンフレームを開発したジョーダン・ロージンの話を紹介しよう。新型Emondaにおいて「エアロ化」し「軽量化」を両立するためには、既存のOCLV700カーボンでは不可能だった。いままで最高だったOCLV700をもってしても、TREKが設定したゴールにはたどり着けなかった。
Emondaに課したゴールに辿り着くためには、新素材を開発する必要があった。新たに開発されたOCLV800は強度があがり、そして軽量化している。まさに新型Emondaのために生まれた素材だ。
フレーム重量を増やさずにエアロを獲得するためには、フレームに使用する素材の見直しが必要でした。重量、反応性、そして強度。この3つをフレームに最適化していきました。OCVL 800カーボンは700に比べて引っ張り強度が30%増した結果、カーボン素材の使用量を減らすことに成功しました。
OCLV 700で新型Emondaのフレームを再現した場合、60gほど重量が増加しターゲット重量の700g以下は達成できませんでした。Emondaはもともと軽いバイクですので、この重量域で60gを減らすということは非常に大きな数字なのです。
また、新しい素材の開発に成功したからといって、すぐにフレームの金型に使用することはできません。新しいカーボン素材に着手する際は、およそ2年をかけてさまざまなカーボンレイアップを試します。スクラップ&ビルドを繰り返し、250ものフレーム形状を試しました。OCLV 800カーボンはトレックだけが所有権を持っており、他のブランドが使うことはできないのです。
特にプロライダーのフィードバックを参考にしました。彼らが最もエクストリームなユーザーになりますから。複数のプロトタイプを持ち込み、ブラインドテストをし、反応性、ハンドリング、乗り心地などについて好みを聞かせてもらいました。そして、PROJECT ONEにICONカラーを3つ追加しました。特に、Sweet Gold Leafは本物の22金の金箔を使用するゴージャスな仕上がりです。
ここまでが、TREKの開発者が新型Emondaについて語った内容だ。次章からは新型Emondaについてさらに深く掘り下げていく。
トレック最速のヒルクライムバイク
昨今、各メーカーがエアロダイナミクスの開発の競争にしのぎを削っている。理由は単純だ。楽に早く走ることができ、プロモーション的にも受けがよい。ただ、エアロダイナミクスを高めることの代償は重量の増加や、乗り心地の悪化といったさまざまな問題が発生する。対して、軽量化を求めていけば行くほどフレームは細くなり、シャープになる。そうなると、エアロダイナミクスが損なわれてしまう。
「何かを得るためには、何かを失わなくてはならない」グレッグ マキューンのエッセンシャル思考のとおりだ。エアロと軽量化、微妙なバランスをどの位置に落ち着かせるのかが新型Emondaのもう1つのテーマだ。新型Emondaにはどのような革新的な改善が施されたのだろうか。進化のポイントを一つ一つ見ていこう。
クライミング・エアロダイナミクス
フレーム開発はCFD解析が主流だ。TREKもCFD解析を積極的に行っている。冒頭でも紹介したとおり、TREKのエアロダイナミクスを担当するエンジニア曰く、「風洞施設よりもコンピューター上でのCFDの方が重要」だという。というのも、より多くのフレーム形状や、あらゆる仮想条件、たとえばアルプデュエズを時速15km/hで上って風速10m/secの状況などを再現できるからだ。
Emondaが実際に走る場所は、自然条件が刻々と変化する外の世界だ。決して風洞実験室の中ではない。
風洞実験は人体模型を乗車させて行なわれた。人体模型をよく見ていただくと膝に関節のような可動部がある。この部分が稼働しペダリングの動作を行う。実際のライダーを用いた場合、微妙なポジションの変化や、疲れとともに動作が異なってしまうためデータにノイズが入ってしまう。
風洞実験では実際にホイールも回転させ測定が行われた。静止状態ではなんの意味もない。実際に走る際に生じる様々な影響を風洞実験で調査する。しかし、それでもTREKはCFD解析に重点を置いているという。
CFD解析でさまざまな条件をシミュレーションした後、最終調整で風洞実験を3回ほど実施したという。どちらの開発手法が好ましいのかは開発の方向性によって異なるのだろう。新型Emondaの場合は、「最速のヒルクライムバイク」というゴールを設定しているとおり「実際の山」で速いことが条件になる。
その場合、登りでは速度が平地ほど速くないという条件や、大きな山の登りでは風が強く吹くといった自然条件を考慮する必要がある。Emondaでエアロダイナミクスを追求する際、ダンシングをしたり風が吹いたりと、不安定な条件を考慮した。
「クライミング・エアロダイナミクス」では風洞実験で最も速いバイクではなく、実際のレースコースで最も速いバイクを追い求めた。その結果生まれたのが新型Emondaだ。
ヒルクライム短縮データ
Emondaは「クライミング・エアロダイナミクス」をベースに開発が進められた。気になるのは、どれほど実際の環境で速いのかだ。TREKが最も意識しているであろうライバルメーカーのSPECIALIZED TARMACよりも18秒速く走れる。TREKは実在する山を登る想定してシミュレーションした結果を公表している。最も注目すべきは「富士ヒルクライム」だ。
富士ヒルクライムを想定したシミュレーションでは、1時間あたり22.3秒早く走れる。タイム更新を目指すヒルクライマーたちは旧型Emondaから新型Emondaに乗り換える準備を始めるかもしれない。次にラルプ・デュエズ、Taiwan KOMと続く。そして、最後にZWIF EPIC KOMが登場する。どうやってバーチャルの世界に新型Emondaを登場さればよいのか・・・。ということは近々新型Emondaがアンロックされるイベントが登場するのかもしれない!
距離 (km) | 2018 Emonda(分) | 2019 Emonda(分) | タイム差 (秒) | 1時間あたりの差(秒) | |
富士ヒルクライム | 23.62 | 56.62 | 56.27 | 21 | 22.3 |
ラルプ・デュエズ | 13.85 | 47.00 | 46.75 | 15 | 19.1 |
Taiwan KOM | 86.5 | 291.68 | 290.35 | 80 | 16.5 |
Flagstaff | 4.09 | 11.83 | 11.73 | 6 | 30.4 |
Angliru | 7.45 | 34.13 | 33.95 | 11 | 19.3 |
Etna Short | 15.25 | 45.15 | 44.88 | 16 | 21.3 |
Etna Long | 28.21 | 75.32 | 74.95 | 22 | 17.5 |
Mt Evans | 14.65 | 32.00 | 31.82 | 11 | 20.6 |
Stelvio | 21.3 | 65.55 | 65.20 | 21 | 19.2 |
Willunga | 5.98 | 14.42 | 14.35 | 4 | 16.6 |
Zwift Epic KOM | 10.42 | 29.00 | 28.82 | 11 | 22.8 |
KVF形状
新型のEmondaはフレームの至るところにKVF形状を確認することができる。先代のEmondaはエアロダイナミクスを無視した丸い形状が印象的なフレームだった。丸い形状は空気の流れが悪く、乱流が発生しやすい傾向にある。新型Emondaはシートステイ、シートチューブ、ダウンチューブ、フォークすべてにKVF形状を採用した。
形状は、いくつかのサンプルが用意され最適な形状が選択されている。もちろん、開発者の説明にもあったとおりフレーム重量をできるだけ軽くしながら、エアロダイナミクスを高めていく作業の末に生まれた形状である。Madoneとは異なり、見るからにエアロフレームではないことが断面図からもみてとれる。
断面図からイメージすることは難しいが、実際のバイクを確認するとダウンチューブはMadoneよりもおとなしい印象だ。太くもなく、細くもなく。程よい「セミエアロフレーム」という言葉がよく似合う。
形状が大きく進化したのはヘッド周りだ。注目すべきポイントは、ヘッドとフォークの境目である。フォークの最もヘッドに近い部分の形状がダウンチューブ方向に伸びるような形状に変化している。ヘッドチューブからダウンチューブに風が流れる際に、無駄な乱流を発生させないためだろう。
ブレーキホースやDi2ケーブルはヘッド部分から取り込まれる方式だ。ハンドルを切っても違和感がなく、見た目もスマートである。
断面図はある一部分だけを切り取った情報しか得られないが、実際には隅々までエアロダイナミクスに特化した形状を採用している。Madoneのように、とにかく細く平らな形状ではなく「TREKらしい」コブがある艶やかさがある。TREK独特のヘッド周りの「エロさ」はTREKユーザーにしかわからないポイントだ。新型Emondaにもその流れは残っている。
OCLV 800
新型Emondaで大きなトピックスといえばOCLV800の採用だ。OCLV(Optimum Compaction Low Void)とはカーボンファイバーの製法そのものを表している。カーボンを超高密度で圧縮(Optimum Compaction)し、かつカーボンとカーボンの間を極限まで減らす(Low Void)製法技術だ。
誤解されやすいのだが、「OCLV」というカーボン繊維で作られているわけではない。OCLVを支える技術は頭文字のとおり「Optimum Compaction」と「Low Void」の大きく2つだ。
「Optimum Compaction」はカーボンを適切に圧縮する方法だ。TREKでは超高密度圧縮と呼んでいる。カーボンフレームの製造方法では、熱と圧力を加えながら複数のカーボンシートをカーボンラグに圧着していく手法が行われている。
どれだけの「熱」が必要で、どれだけの「圧力」が必要になるのか。その「さじ加減」が重要だ。さじ加減のノウハウは企業秘密である場合が多く、製品の良しあしを左右する重要な製法技術といえる。
Low Void(すき間が非常に少ない)技術は、カーボンファイバー同士のすき間を極限まで減らすことを目的としている。すき間が増えることで問題となるのは、コンポジット自体(複数カーボン繊維を組み合わせて1つのフレームした状態)の強度と耐久性が落ちてしまうことだ。
OCVL 800カーボンはOCLV 700と比べると引っ張り強度が30%増した。その結果、新型Emondaで使用するカーボンの量を減らすことに成功している。というのも、フレーム重量を増やさずにエアロを獲得するためには、フレームに使用する素材の見直しが必要だった。
そして、OCLV 800カーボンはトレックだけが所有権を持っており、他のブランドが使うことはできない特殊な素材と製法なのだ。
T47の採用
TREKは独自規格のBB90を廃止した。新たに採用されたのはT47である。T47はPF30 BBと同サイズでスレッド化した新型のボトムブラケット規格だ。T47はCHRIS KINGが主導している。どこまでも自由な規格で、CHRIS KINGに許可を取ることはおろかロイヤリティも必要としない。そして、特許や商標登録もされていない。まさにソフトウェアのオープンソースに似ている。誰でも利用することが可能だ。
T47のTはスレッドを意味している。47はネジの外径だ。これまで親しまれてきた実績のある従来のネジ付きボトムブラケットと同様にT47は右ネジと左ネジを有している。ネジピッチは47x1mmだ。T47は従来のプレスフィット型の定番でもあったPF30のBBシェルにネジを立てても使用できる。T47 BBが使用可能になるクランクシャフト側は、24mmと30mmスピンドルクランクに対応する。
ただ、TREKが採用しているT47の規格は少々寸法が異なっており85.5mmだ。T47のオープン化された規格寸法86.5mmとは異なっている。既存の86.5mm用のT47BBを使う際には1mmのスペーサーを挟めばいい。これはCHRIS KINGの説明書にも書いてあるとおり、オフィシャルの使い方である。したがって、T47のBBを購入した際はスペーサーを挟むだけで使用することが可能だ。
しかし、TREKはなぜBB90を廃止してT47を採用したのだろうか。そして、TREKが従来のBSAではなくあえてT47にした理由が知りたくなった。そこで、本件についてTREKに質問した。T47 BBを採用した経緯と技術的回答は以下のとおりだ。
TREKは新しいBBを選択する際に4つのメリットに着目した。1つ目は、TREKは全く新しい規格を作り上げるつもりはなかったこと。業界の誰もが利用できる規格の中から、TREKが定めた目標のすべてに適しているものを選びたかった。2つ目は整備性のよだ。プレスフィットシステムは整備性だけで考えるとベストとはいえない。
BBを簡単に着脱できるように切削されたネジ切りのシェルを探していた。3つ目は互換性だ。市場には30mm径のスピンドルを用いたクランクが多数存在している。これまでのBB90はこれらのスピンドル径に適合しない。4つ目。TREKのフレームにはBB90が発明されて以来、用いられてきたデザイン哲学があること。
BB90ならダウンチューブを太く作れるため、BBの剛性を高めつつ、より応答性に優れたフレームを作ることが可能だ。T47もそれと同じ幅のダウンチューブとBBを実現できる。それでいてTREKのバイクならではの応答性を与えられる。以上が、T47 BBを採用した理由だ。
BB90の設計思想を踏襲しつつ、整備性にすぐれたスレッド式BB、かつ反応性がよい、誰もが使用できる規格。これらを突き詰めていった先にベストな選択だったのがT47を採用した理由だ。
感覚的な魅力
新しいEmondaをひと目見て誰もが思うのは造形美だ。エロい。「官能的」と表現しようとしたが、昨今では性的で卑猥な印象を与えてしまうため、「感覚的な魅力」という表現が適切だ。したがってEmondaは感覚的な魅力が備わっている、と表現する。
新型Emondaはフレームのどの部分を見ても非常に美しい造形だ。フレームが描く曲線に感覚的な魅力を感じる。エアロダイナミクスを追求するためにKVF形状を採用しつつも、細部には「不思議な形状」を確認することができる。1つはトップチューブがシートポストと交わる部分の形状である。
クロモリフレームやアルミフレームでよく見かける「つぶし」が上側と下側双方に確認できる。気になってTREKに確認したところ「つぶし」には意味があるという。トップチューブとシートマスト、シートチューブが構造として一体になりバイクの挙動の安定性が向上する。という裏話を伺うことができた。
おそらく、小さなポイントであり(しかし、大きな意味があるものの)カタログやローンチ内容でも紹介されていなかった部分である。他のメディアも紹介しないだろう。新型Emondaは「セミエアロフレーム」というエアロが全面に押し出されてしまいがちだが、フレームとしての味付けや全体のバランスにも抜かりはない。
TIMEには「TIMEらしさ」があるが、TREKにもTREKらしさがある。Emondaはエアロダイナミクスを全面に押し出したプロモーションをしたいはずだが、「つぶし」のような細かなこだわりによってフレーム全体のバランスが向上するという設計に魅力を感じてしまった。
「無意識に、なでてしまう。」
新型Emondaを手にしたユーザーはまず「つぶし」をナデナデしながら、聞いてもいない説明を友人のライダーにしてから乗車してほしい。
Aeolus RSL 一体型ハンドルバーステム
新型Emondaのリリースと合わせて新型のAeolus RSL Handlebar/Stem Comboも発表された。ハンドルとステムが一体化した構造を採用している。内装式ケーブルマネージメントを採用している。メンテナンス性にも優れており、フル内装ではない。
M4 六角ボルトを5Nmのトルクで締め付ける。セミ内装式であり、ハンドルトップの下部にケーブルを沿わせるようにしてルーティングを行う。旧モデルのハンドルよりもより約10%速く、7Wh分の出力を節約する
使用するカーボンはOCLVだ。超軽量で振動吸収性に優れ、丈夫な独自のOCLV カーボン構造を備えている。可変半径コンパクト(VR-C)デザインを採用し、長めのリーチとドロップで手の置き場を複数選べ、カーボンやアルミのステアリングコラムで使用可能だ。
別体式のXXX バーとステムより軽くて速いため極限の軽量化を行いたいサイクリストは新型Emondaとアイオロスハンドルのセットは必須と言える。
新旧Emondaの比較
ローンチでは一切触れていなかった(触れたくなかった?)内容をあえて書き添えておきたい。旧Emondaの詳細な重量についてだ。以前、旧Emondaについてインプレッションを書いた。そのときの記憶が残っていたため「あれ、新型のフレーム重量はそこまで軽いのか?」という疑問を持っていた。
新しいモデルが出るたびに、「いまだからいえる旧型のイケてない部分」みたいな記事がメディアでアップされる。既存のユーザーのことを考えていない残念な記事である。今回は、旧作の軽さがあえて際立つ内容を添えておく。事実としてのデータであり、ユーザーも知っておくべき内容だ。そして旧型Emondaユーザーは多少喜ぶかもしれない。
次に新型Emondaの重量データだ。
Emonda SLR Frame 重量 (未塗装, ハンガー込み) | 698g |
SLR Fork 重量 (未塗装, 220mm steerer) | 365g |
結果的に、旧Emonda DISCよりもフレーム重量が33g増加した。フォーク重量は15g増加した。しかし、ここまで読み進めた読者の方たちはもう理解していると思う。重量増によって、エアロダイナミクスを手に入れたのだ。そして、「トレック最速のヒルクライムバイク」が生まれたのである。重量は軽ければ軽いほどよい、という常識は一方で正しく、一方で間違えている。
速さへのアプローチは、決して軽量化だけではない。たとえ重量が増したとしても、エアロダイナミクスが高まれば速く走ることが可能だ。「速さ」へのアプローチは1つではない。複雑な条件がからみあって、1つの最速を生み出す。その結果が、新しいEmondaだ。
重量
Emondaのスペックを確認していこう。重量は未塗装で698gだ。ハンガーが15gほどだからそれらを含んでも十分軽い。ディスクロードバイクのフレーム重量もいよいよここまで軽量化したかと感慨深い。ただ、塗装で数十グラム重くなることは覚悟しておかねばならない。プロジェクトワンではさまざまなペイントが選べるが、色やパターンの違いで重量は多少変化するだろう。
フォークは軽すぎないほうがいい。重量365gは重くもなく、軽くもなく適度だ。新型EmondaのフォークはKVF形状を採用しており、ダウンチューブ近くのフォーク形状もエアロになっている。以上のことからも365gは優秀な重量といえる。タイヤサイズは28mmまで。ジオメトリはH1とH2が統合したH1.5だ。BBはT47でスレッド式を採用した。
ディスクブレーキ式だけラインナップする。リムブレーキ自体は開発も行っていないという。
Emonda SLR Frame 重量 (未塗装, ハンガー込み) | 698g |
SLR Fork 重量 (未塗装, 220mm steerer) | 365g |
タイヤサイズ | 28mm |
Geometry | H1.5 Race |
Bottom Bracket | T47 |
Axle Spacing | 100×12 F / 142×12 R |
Time savings 斜度0% | 60s/hr (vs old bike, at 350W) |
Time savings? 斜度8.1%? (Alpe d’Huez想定) | 18s/hr (vs old bike, at 350W) |
ジオメトリ
以下にフレームサイズ別の適正身長をまとめた。
- 47サイズ: 152 – 158cm
- 50サイズ: 158 – 163cm
- 52サイズ: 163 – 168cm
- 54サイズ: 168 – 174cm
- 56サイズ: 174 – 180cm
- 58サイズ: 180 – 185cm
- 60サイズ: 185 – 190cm
- 62サイズ: 190 – 195cm
Emondaのジオメトリ設計はエアロロードに乗りたい小柄な日本人(男女問わず)に希望の光を差し込んでくれる。他のメーカーにありがちな「小さいサイズはスローピングがきつくてカッコ悪い問題」は新型Emondaでは気にしなくてもよい。小さなサイズでも美しい造形美を楽しめる。
ジオメトリは男女の区分けがない。すべてユニセックスモデルでジオメトリーも共通だ。昨今のメーカーは女性用モデルを作らずに小さなサイズを用意する。新型Emondaのジオメトリを見ると小さな日本人サイズの設計も満足の行く設計に仕上がっている。
女性や小柄なライダーを想定したフレームサイズ47cmだ。小さなフレームサイズで素晴らしい設計をしているメーカーといえばBRIDGESTONEアンカーと東洋フレームだ。両メーカーのジオメトリと見比べてもTREK Emondaの47サイズの設計は美しい。多少フレームのスローピングはきつくなるかもしれないが数値的に見ても安心して女性が乗れるサイズだ。
筆者の身長は169.5cmだが、52サイズをテストしたところポジションもしっかりと出せた。そして、女性や女子高生の平均身長158cmであれば迷わず47を選ぶといい。さらに152cmという身長は、中学1年生女子の平均身長(153.6cm)と近い。小学校6年生から中学に上がる際、もしもエアロロードバイクをせがまれたらEmondaをおすすめしたい。
「エアロロード」で小さなサイズはなかなか存在していないのだ。たとえばVENGEは小さなサイズが無い。セミエアロロードというジャンルは、軽さとエアロダイナミクスを備えており小柄な日本人や女性との相性がよい。エアロロードを諦めていた方はセミエアロロードのEmondaが候補に上がる。
PROJECT ONE
ここでブレイクタイム。Emondaの美しいPROJECT ONEの一部をご紹介する。クリックすると拡大して詳細を確認することが可能だ。
TREKに1問1答(32の質問)
ここまで新型Emondaについて紹介してきた。しかし、まだ知りたい部分や疑問に思うポイントがあった。そこで、疑問に思ったことを素直にプロの開発者に伺った。予想外なことに、懇切丁寧に回答していただいた。VENGEのローンチの際のキャメロンさんもそうだったが、最近のアメリカ系メーカーはユーザーに近くて優しい。そして、なによりフレンドリーだ。
まずは、ローンチの説明内容に対して質問を行った。私の質問内容に対して、TREKは包み隠さず回答をしてくれたためそのまま掲載する。ストリーミングの内容はすべて英語だったため、何度か聞き直す必要があった。よって、私が意味を取り間違えて質問している部分もあるが、そのままのリアルを載せている。
私が質問した内容は、エンドユーザーたちが疑問に思う単純な内容だと思う。まずは、最も興味があるMadoneとの比較や、他メーカーとの比較について伺った。
Q1.「他のどのメーカーよりも速く登ることのできる軽量バイク」という説明についてです。他社ブランドと比較したデータはありますか。
A1. 現行のSPECIALIZED TARMAC SL6よりも8.1%の登り60分あたり13秒速いというデータが得られました。しかし、TARMACもモデルチェンジするでしょう。あまりTREKからはプッシュしません。
Q2. シートステイのデザインについてです。トレンドの下にさがったドロップドシートステーにしなかったのはなぜですか。業界のトレンドから外れているように感じました。
A2. トレックもドロップドシートステーについては慎重に研究をしています。そして、その形状がわずかですが、空力に優れることを把握しています。トレックが採用を見送った理由は3つあります。その形状にするとおおむね50gほど重量が重くなります。Emonda SLRはアルプデュエズを速く上ることがゴールです。登りという条件において、「重量増のデメリット」が「空力のメリット」を上回ることがわかりました。フレームの強度をあげる必要もあり、快適性が損なわれます。また、風洞実験においても現実世界でもライダーの脚の周りには乱流が発生します。シートステーの空力は重要度が低いことが実験でわかっています。
Q3. 「MadoneかMadoneに近いバイクをデザインすることだけ」という説明についてです。どれほど現行Madoneに近づきましたか。
A3. Madoneとの比較ですが、新型Emondaは、旧Emondaと現行のMadone SLRのちょうど中間に位置しています。空力、巡行だけでいえばまだMadoneが有利です。Emondaはエアロ全振りでなく全体のバランスを整えつつエアロダイナミクスが向上しました。
Q4. エアロダイナミクスのデータがありますが、ウィンドトンネルを用いたデータでしょうか。それともCFD解析での結果でしょうか。
A4. CFD解析後に風洞実験を行った実験データを用いています。
Q5. OCLV700からOCLV800に変更したことで剛性が30%上がっているという説明についてです。ユーザーを置き去りにした過度な高剛性化はメーカーのエゴ、プロモーションに有利なだけで誰も望んでいません。対象的に「快適性を確保した」とありますが、アプローチとしては単純にOCLV800カーボンの使用量を減らしただけなのでしょうか。
A5. 剛性ではなく「強度」です。強度が増すことで、素材の使用量を減らせます。シート部のチューブはあえてエアロにせずに従来のシートマスト構造にして快適性を確保しました。
Q6. 先程の質問に関連して疑問がもう少しあります。OCLV800で剛性があがった結果フレームは硬くなりそうなイメージがあるのですが、やはり硬いのでしょうか。
A6. 誤解されやすいポイントです。「剛性」ではなくフレームの「強度」が向上しています。シートマスト部分だけ、あえてエアロ化をせず乗り心地をよくした工夫を施しています。
Q7. 剛性に関してもう少し質問させてください。フレームの剛性はSPECIALIZEDのライダーファーストエンジニアードのようにサイズ毎に異なるチューニングを施した設計をしているのでしょうか。ライダーの多くは身長の違いで体重が異なります。
A7. はい。サイズごとに乗り心地や性能の違いを少なくするように開発しました。
Q8. 私はT47の採用を心底待ち望んでいました。いま、2台所有しているTREK BooneがT47になるならすぐ買い換えるほどの規格変更です。そのうえであえてT47の優位性をTREKから教えていただけませんか。
A8. メリットは整備性、音鳴りが減るということです。やや重量が重くなるデメリットはあるものの、フレームが軽くなっており気にならない重量の増加といえます。それらを凌ぐほどT47のメリットは多いです(T47BBの章を参照のこと)。
Q9. T47BBに関して追加で質問があります。TREKに採用されているT47の設計は85.5mmです。T47BBのオープン化された規格とは異なっています。設計を考えると、1mmのスペーサーを挟めば既存の86.5mm用のT47BBを使えるという認識です。間違いないでしょうか。
A9. そのとおりです。既存のT47BBを使用できます。
Q10. 別メーカーのようにBBは付属しますか。
A10. プロジェクトワンでお好きなT47BBを選択できます。T47BBの種類はたくさんありご自身の機材にマッチしたBBを選択できます。
Q11. ジオメトリは既存のEmondaを踏襲したのでしょうか。
A11. H1とH2をH1.5に統合しました。ヘッドチューブ長とリーチが異なっています。
Q12. 女性用サイズも同様にH1.5から選択すればよいのでしょうか。
A12. すべてユニセックスモデルで、ジオメトリーも同じです。小さなサイズも用意しています。
Q13. Emondaは日本人の女子中学生の平均身長である身長153cmでも乗れます。小さなサイズでもトレール量がしっかりと確保されていました。いままでエアロロードに乗りたくてもそもそもバイクが存在していなかった女性や小柄な日本人にとって、すばらしいジオメトリだと思います。
A13. ありがとう。
Q14. 新型ハンドルは私の好みではない一体型です。あえて伺いたいです。既存のハンドルとステムは使用できますか。
A14. できます。
Q15. 新型ハンドルのサイコンマウントはTREKのブレンダーでしょうか。
A15. 専用ハンドルを使う場合、専用のブレンダーマウントを使用します。
Q16. 新型ハンドルのステム長は選べますか。
A16. プロジェクトワンで選べます。
Q17. フレームセットにハンドルは付属しますか。
A17. フレームセットはプロジェクトワンでの販売します。ハンドルありなしが選べます。
Q18. ケーブルの取り回し方法はガイドに沿わせるだけでしょうか。ケーブルフル内装型で取り回しが不便になったりしないか気にしています。
A18. ハンドル下部のガイドに沿わせたうえで、ステムと交わるあたりでボルト止めする方式です。
Q19. モデルの違いについて質問します。SLとSLRの違いについてです。違いとしてはOCLV500かOCLV800を使用するかの違いだけでしょうか。
A19. 完成車ではハンドルバーが新型ではなく通常のハンドルとステムを採用します。
Q20. リムブレーキモデルは販売しますか。
A20. ディスクブレーキバイクだけです。リムブレーキバイクの開発はしていません。
Q21. スルーアクスルのネジピッチを教えてください。
A21. ネジピッチは1.75mmです。
Q22. Di2の調整スイッチのマウント位置を教えてください。
A22. バーエンドにマウントします。
Q23. シートマストの重量を教えてください。
A23. シートマストキャップはショートが130g、ロングが150gです。
Q24. シートマストのセットバック量は選べますか。
A24. 5mmと20mmから選択可能です。
Q25. ダイレクトマウントリアハンガーは純正品がラインナップしますか。
A25. リアハンガーは提供はしていない予定です。
Q26. フレーム単体の販売はありますか。
A26. PROJECT ONEでフレームセットの販売をします。
Q27. トレックのハイエンドモデルは他社製品と比べて非常にコストパフォーマンスが優れていると思います。塗装も美しいです。たとえばPINARELLO Dogmaのフレームセットは73万します。しかし新型のEmondaは39.6万(税抜)です。
A27. そうです。1ついえるのは、PROJECT ONEは高いイメージがありますが、お買い得な価格設定です。この事実を多くの人に知っていただき、PROJECT ONEをぜひ利用していただきたいです。
Q28. フレーム単体価格、完成車の価格帯を教えていただけませんか。
A28. 完成車の価格はコンポーネントの選択で変わるので、P1サイトでカスタムしてみてください。PROJECT ONEのオーダーの場合アップチャージのない5色は39.6万円(税抜)です。現行の価格を据え置きました。
Q29. 個人的にSRAMの完成車を好んでいません。油圧のブレーキレバーが大きすぎるからです。TREKとSRAMがウィスコンシン州のご近所さんであることも理解しています。そのうえで、あえてSHIMANOコンポーネントの完成車はありますか。
A29. SLクラスはすべてシマノ、SLR 7もアルテグラDi2ですです。Project Oneではスラムもシマノも好きに選べます。シマノアルテグラDi2の完成車を初回入荷だけ用意しました。
Q30. 本物の金箔を使用した新色ゴールドの販売価格を興味本位で伺ってもよろしいでしょうか。
A30. フレームセットで531,000です。
Q31. 新型Emondaはいつから受注しますか。
A31. 2020/6/19(金)です。同日よりPROJECT ONEの受注を開始します。完成車はアルテグラDi2モデルだけ初回限定展開します。
Q32. 細かいポイントまで包み隠さず教えてくださってありがとうございました。
A32. こちらこそ。
余談ですが、ネイス神、トーンアーツ、ラルスの大ファンです。本社の裏山のTREK CX CUP見てみたいです。
(^^)
補足:ダイレクトマウントハンガー
(補足:メーカー発表ではない内容)私が把握している限り、アメリカの本家TREKのオンラインショップでは「Bike hangers & dropouts」にWheels Manufacturing Derailleur Hangerが多くラインナップしている。
新型Emondaに適合するダイレクトマウントハンガーのラインナップはwheelmanufacturingのサイトにはないが、おそらくDerailleur Hanger 396が適合するかもしれない。このモデルは、Emonda SLR DISC 2019やBoone DISC 2019に適合するDMハンガーだ。そのため、人柱で2つ購入した。その結果は後日お伝えしたい。
なお、ダイレクトマウントハンガーの互換性情報は以下のとおり。
- Boone (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2018-2019
- Domane ALR Disc (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2018-2019
- Domane SL Disc Thru Axle (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2017-2019
- Domane SLR Disc (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2017-2019
- Emonda ALR Disc (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2019
- Emonda SL Disc (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2018-2019
- Emonda SLR Disc (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2018-2019
- Madone SL Disc (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2019
- Madone SLR Disc (w/ Shimano DM Rear Der.) – 2019
まとめ:セミエアロロードと軽量化
ここまで、新型Emondaについてできるだけ細かい情報を紹介した。「トレック最速のヒルクライムバイク」というキャッチコピーも日本ウケしそうだ。Emonda SLRのフレーム重量は698g (未塗装, ハンガー込み)であり、フォーク重量365g (未塗装, 220mm steerer)であるため、50mmディープホイールを使用しても6.8kgの重量に収まる可能性はある。
先代のEmondaも非常に人気のあるモデルだった。しかし、新型はエアロダイナミクスに特化した形状と新しいOCLV800を採用、TREKを象徴するBB90を廃止し、スレッド式T47BBを採用した。ジオメトリも秀逸でサイズの関係でエアロロードを諦めていた小柄な日本人や女性が乗れるサイズのラインナップを用意したことに好感が持てた。
新型EmondaはUSメーカーでありがちな「小さなサイズでスローピングがきつくてカッコ悪い問題」をほぼ払拭している。完全に美しい造形とまではいかないが、見た目が非常に美しい。感覚を刺激する艶やかさがある。ロゴの大きさは賛否両論あると思うがPROJECT ONEでさまざまなカラーを選べる。
EmondaはSLとSLRが発売される。詳細なスペックと価格はオフィシャルサイトで確認していただきたい。
- Émonda SL 5
- Émonda SL 6
- Émonda SL 6 Pro
- Émonda SL 7
- Émonda SL 7 eTap
- Émonda SL Disc Frameset
- Émonda SLR 6
- Émonda SLR 7
- Émonda SLR 7 eTap
- Émonda SLR 9
- Émonda SLR 9 eTap
- Émonda SLR Disc Frameset
価格については、Emondaのようなハイエンドモデルかつ新しい設計ながら39.6万円(税抜)から購入できるというのは他メーカーにはないメリットだ。むしろ、高価だと思って手が出せなかったPROJECT ONEでさまざまなカラーを選択できるのだからコストパフォーマンスに優れた1台といえる。
肝心のバイクインプレッションであるが、後日公開予定だ。新型アイオロス37とBONTRAGERタイヤの組み合わせた場合や、禁断のROVALのホイールとGP5000を使用してテストも実施した。異なるメーカーのホイールを使うことには意味がある。理由はタイヤやホイールは乗り心地に対して支配的であるためだ。
先に結論めいたこというと、TREKやEmondaを気に入っているユーザーは素直にEmondaを選んだほうがいいと思う。そして、いままでTREKに乗ったことのないサイクリストも試してほしい1台だ。私は7年での5台のTREKフレームを購入しているが、あの独特のライディングフィールと操作性の高さが個人的に気に入っている。
新型Emondaは軽量性、エアロダイナミクス、そしてよい乗り心地とバランスが取れた1台に仕上がっている。TREKは「セミエアロロード」という新しいステージに踏み入れた。ヒルクライマーのみならず、オールラウンドバイクを求めている方にとって新型Emondaの改良は快く受け入れられる内容である。
次回は、実際に新型Emondaのインプレッションをお伝えする予定だ。