愛車にガラスコーティングを行ないたい。バイクがピカピカになってキレイになるイメージは思い浮かぶ。しかし、コーティング自体に意味があるのか、そしてどんな効果があるのかはあまりよくわからない。
「あなたの愛車が見違えるように美しくなります!」
いや、定期的にメンテナンスして洗車をしていればキレイなバイクだ。だからこそ、ガラスコーティングに何万円も払って行なう価値があるものなのか―――。
そんな引っ掛かりと疑問を持ちながらも、これまで何台ものバイクやホイールにガラスコーティングを施してきた。今だからわかることはガラスコーティングとは、
「時間が経てば経つほど、その効果を実感する」
ということだ。長い時間をかけてさまざまな環境と条件にさらされてきたバイクを、ふとあるとき眺めたときに、徐々にガラスコーティングの意味と価値を実感するのだ。今回の記事はガラスコーティングで得られるメリット、その効果についてまとめた。
塗装の3倍の硬度
自転車用のガラスコーティング剤はいくつかある。その中で最も知名度が高いのがクレストヨンドが開発した特殊コート剤「ガラスの鎧」だ。フレームの塗装面をガラス被膜でコーティングする。クリスタルガラスに匹敵する表面硬度があり、塗装面の約3倍の硬度だ。
クルマ用のガラスコーティングは数あれど、「自転車用」とはいったい何が違うのだろうか。自転車用のガラスコーティングは自転車フレーム特有の「しなり」に対応するように配合を特化している。塗装面はライダーのパワーで微妙にたわんだり、しなったりする。
その変形に対応できるように、ある程度の弾性がある。これがクルマ用と自転車用のコーティング剤の違いだ。ガラスの鎧は自転車専用に開発された、唯一無二のコーティング剤ということになる。
ガラスコーティングの性能試験結果
自転車用のガラスコーティングを展開しているクレストヨンドが性能試験を実施している。試験は3パターン行われた。
- 皮膜テスト
- 撥水テスト
- 防汚テスト
1つめの皮膜テストは、以下の条件で行われた。
- 厚さ1ミリの鉄板を研磨し、半分にガラスの鎧を塗布、残り半分は未加工とした。
- 十分に乾かした後、食塩水に浸した。
- その後屋外に一定期間放置した。
結果は未加工の部分は錆がすぐに発生した。ガラスの鎧を塗布した部分は錆の発生が見られなかった。皮膜が十分にあり、塗布面の酸化を防いでいる。ただし、防さび効果を保証するものではない。
2つめの撥水テストは、以下の条件で行われた。
- 黒く塗装したアルミパネルを粗めのコンパウンドで擦り撥水を無くした。
- 半分にガラスの鎧を塗布し、残り半分を未加工とした。
- 十分に乾かした後、ハンドスプレーで水を噴霧した。
結果は未加工部分はベタッとした水滴のはじき方だった。ガラスの鎧を塗布した部分は水玉だった。撥水性能があるため、水や汚れを付きにくくする効果が期待できる。
3つめの汚水テストは、泥をフレームに付着させ拭き取った。未加工部分は泥が表面に残ったが、ガラスの鎧を塗布スた部分は撥水性能があるため汚れの残留が非常に少なかった。
経年変化でわかる効果
ガラスコーティングを行なったバイクは、時間が経てば経つほどその効果が如実に現れる。ガラスコーティングを行なうことによって得られるメリットは大きく分けて5つだ。
- 表面硬度が高まる
- 汚れがつきにくい
- 汚れが落ちやすい
- 撥水が高まる
- 汗から守る
この中に「輝き」や「キレイさ」が入っていないのには理由がある。ガラスコーティングを行なった車体はキラキラして美しく見える。あれはガラスコーティング前にクリア塗装の表面をコンパウンドで磨いたからだ。したがって、ガラスコーティングは関係ない。
ガラスコーティングは磨いたクリア塗装をそのまま閉じ込めておくための蓋のようなものだ。したがって、磨いていないフレームに対してガラスコーティングしたところであの美しは現れない。
スマホの画面にキズが着いたままガラスフィルムを載せたとしても「キズがついた画面を保護」するだけだ。フレームのガラスコーティングも同じである。という、前提条件を理解した上でガラスコーティングのメリットを見ていこう。
1つめの「表面硬度が高まる」は冒頭でもお伝えしたとおりだ。ガラスコーティングは、クリスタルガラスに匹敵する表面硬度があり塗装面の約3倍の硬度がある。キズがつきにくくなり飛び石がフレームにあたったとしても、欠けたりヒビが入る可能性が低くなる。
2つめの「汚れがつきにくくなる」ということは、撥水が良くなることと関係している。実際にガラスコーティングを施したフレームは水がはじかれるように流れ落ちる。フレーム上の水分は「じと~っ」としたアメーバのような状態から球体に変わる。
3つめの「汚れが落ちやすい」というのは洗車の際にサッと拭けばたいていの汚れが落ちる。これはシクロクロスで汚れた自転車を洗車する際によくわかる効果だ。
4つめはガラスコーティングを行なうと撥水性能が高まる。水や汚れをつきにくくする効果が期待できる。撥水スプレーを施したレインウエアのように水玉が勢いよく滑り落ちていく。
5つめが最も重要だと思った効果だ。汗から守るということは室外に限った話ではない。最近ではZWIFTで室内トレーナーで汗を流す人も多くなった。その際、大量の汗がしたたり落ちる。フレームには間違いなく塩分を含んだ汗が流れ落ちる。
人によっては水たまりができるほどに汗をかく人もいるだろう。ガラスコーティングを行なうと塩害からフレームの塗装を守ってくれる。残念ながらベアリングなどは守れないがグリスアップなどで対策を行なうと良い。
野外で走るときだけガラスコーティングの効果があると思われがちだが、室内で使用するバイクにもガラスコーティングを施すことによって機材が長持ちする可能性があるのだ。
まとめ:時間が経てばわかるその効果
ガラスコーティングは施工した瞬間は「美しい」としか思わない。どちらかといえば、愛車を美しくしたいというその場限の要求を満たすだけの役目だ。しかし、実際にガラスコーティングを行なうとその考え方は間違いであることに気づく。
ガラスコーティングは、長い月日をかけて少しづつ蓄積されていくさまざまな外的要因から愛車を守る役目が大きい。それは1日2日ではわかりにくいのだが、ガラスコーティングを施したバイクと、そうでないバイクとの間には大きな差が生じる。
クリア塗装面の洗車キズ、ダウンチューブの飛び石、そしてクリア塗装の色の変化など、通年を通して知らぬうちに生じてしまう問題を遠ざけてくれる。それゆえ、これまでガラスコーティングをしてこなかったバイクは不幸であるが、まだ遅くはない。
長年使ったバイクであっても、コンパウンドとポリッシャーを使った研磨で新車のような輝きを蘇らせることもできる。その後、ガラスコーティングを行ない美しさを閉じ込めておけば良い。新車であればフレームの段階で施工をするのが理想だろう。
私は、フレーム、ホイール、ヘルメットなどさまざまな機材にガラスコーティングを行なっている。自転車のガラスコーティングはガラスの鎧を行なうのが最も手っ取り早い。自分でクルマ用のコーティング剤を買ってきて試したが、確かにヒビのような症状が発生した。
素人がガラスコーティングを行なうのは非常にハードルが高いため、施工を行なるショップを探して確実に実施するほうが良いだろう。まだガラスコーティングを試していない方は、愛車をこれからも末永くよい状態に留めておくために検討してみてほしい。