半年間ほどかけて、普段の練習からレースまでさまざまな天候でAEROADを試してきた。はじめはよくわからなかったが、次第に良いところも、悪いところも、徐々に見えてきた。AEROADは完全無欠のバイクではなかった。
確かに世界最速級のバイクであることには間違いない。しかし、ポジションの自由度の低さやフィッティングを受けたとしても調整できるパーツに限りがある。そして、シートポストの異音問題はずっと付き合わなければならなかった。
今回の記事は、AEROADの光と影の「影」の部分についてまとめた。
動画で解説
本記事は動画と連動しています。Yotubeでご視聴いただくとよりわかりやすいかと思います。
ハンドル問題
AEROADはハンドルとステムを変更できない。特殊なクイル形状のステムはエアロを追求した結果、調整の自由をせばめてしまった。確かに、ハンドル幅は40mmの調整幅(XS/Sサイズでは芯-芯 370/390/410mm)がある。しかし、380mmや400mmといったサイズを使いたい場合は、そもそもあきらめなければならない。
一体型ハンドルであるため、ステム長も一切変更できない。私が使用しているXSサイズのステム長は90mmだ。これまで100mmを使用してきたのだが、フィッティングで適正と判断されたステム長100mmよりも、10mm短い長さを無理やり使うことになる。
この一体型ハンドルの制限は、フィッティング時における調整の自由度を狭めてしまう。フィッティングの際にAEROADで調整できる箇所は、ハンドル高さ、ブラケット位置、サドル高さ、サドル後退幅の4とおりしかない。この限られた調整範囲でベストなポジションを出す必要がある。
フォークコラムをカットせずにハンドル高を15mm調整可能ではあるものの、レーシーなポジションをとる必要があるため、ロードバイクに乗り始めたばかりのライダーにとっては辛いポジションになる可能性がある。
ステム長が固定されていることによって、しわ寄せがくるのがサドル後退幅だった。筆者の場合はステムが10mm短くなってしまったため、サドルを7mmほど後方に移動した。やっかいなのが、単純に10mmサドルを移動すればよいというわけでなく、実際に乗りながら力を入れやすいポイントにサドルを調整していく必要があった。
それゆえ、AEROADを購入する場合はバイクフィッティングにおける調整幅の自由度が大幅に減ってしまうことを理解しておかねばならない。したがって、ある程度自分のポジションが出ている方や、ジオメトリとステム長を見てポジションが出せるかどうかを判別できる方向きのバイクと言える。
音鳴り問題
シートポストから発生する音鳴り問題は一時的には解消する。しかし、根本的な解決方法は存在していない。AEROADに乗るのならば必ず付き合っていく必要のある問題だ。だいたい3000kmを目安にクランプダイスにアッセンブリーペーストを塗る必要がある。
グリスを塗る部分はシートチューブのパッキン部分”だけ”だ。そして、アッセンブリーペーストはクランプダイス部分”だけ”だ。当初、わたしは勘違いをしていてシートポスト自体にグリスを塗ってしまっていた。
そして、使用する部位がパッキンなのかクランプダイスなのかで、グリスやアッセンブリーペーストを使い分ける必要がある。このメンテナンスは定期的に行なう必要がある。異音が発生すればシートポストを取り外す必要があるため、メンテナンスを行なう際はサドル高をもとに戻せるようにあらかじめ記録しておく必要がある。
1つ注意としては、このシートポストの音鳴りがBBのキシミ音と非常によく似ているということだ。わたし自身、BBの異音と勘違いしてBBを外してグリスアップした。しかし、異音はおさまらかった。異音の問題はシートポストからだったが、特定するまでけっこうな時間を要した。
異音の簡単な判別方法としては、シッティング時は異音がし、ダンシング時は異音がしない。この違いをそれぞれ試してみると異音の出どころがわかりやすくなる。
まとめ:完成度は高いが、完璧ではない。
これまでAEROADの良いところばかりまとめてきた。しかし、実際に使うと重箱の隅をつつくような小さなことが見えてきた。それはAEROADの完成度が高いがゆえに、しかたがないことなのかもしれない。
「一体型ハンドル」も「シートポスト異音」も特徴をつかめば、ある程度の対策は可能だ。完成度が高いバイクであるものの、フィッティングを行なう際にライダー側の制限があるということ理解しておく必要がある。
異音問題に関しては、異音が発生してからではなく鳴っていないうちに定期的に点検を行なうほうが良いだろう。クルマも一緒で5000kmでオイル交換をするようなものだ(最近のクルマは10000kmらしいが)。
これらのデメリットを許容さえすれば、AEROADは素晴らしいバイクだと思う。可能であればメーカーにはアッセンブリーペーストの販売や、ステム長と角度が異なる一体型ハンドルのセンター部分だけ販売してほしい。
最速を追求しすぎたがゆえ、自由度の低いバイクになってしまったがAEROADだとおもう。しかし、それらは、後からでも変更できる可能性があるため今後のメーカーの企業努力に期待したいところだ。
なお、同時にアップした動画ではここまでのデメリットの話に加え、以下のコンテンツを追加した。
- 半年乗ってみて
- 登りは得意か
- 距離を乗ってみて
- 合う人合わない人
- CFRかCF SLXか
- ホイールは何が合う?
- 試乗するときに気をつけること
本記事は動画と連動しています。お時間のある方は、ぜひ視聴してみてください。
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