世界一のチエン!IZUMI SUPER TOUGHNESS KAI インプレッション

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なぜ、この素晴らしい国産チェーンを日本のメディアは詳しく紹介しない(しなかった)のだろう。むしろ、海外で評価が高く、メディア、トラック競技系のサイトで絶賛されていた。にもかかわらず、日本のメディアに露出するどころか、プレスリリースの資料を貼り付けただけで、それ以上話題にすることはなかった。

確かに、トラック競技の人口が少ないのも理由の1つだ。そして、ロードバイクのインプレは多くの需要があるがトラック競技の「たかがチェーン」について記事を書くなんてことは、日本のメディアにとってみれば、費用対効果があまり良くないという事情もあるかもしれない。

もしかしたら、このチェーンを試すトラック(ピスト)バイクを持っていない、なんて根本的な問題があるのかもしれない。豚に真珠ではないが、確かにこのチェーンの価値を体感するためには、使わずして理解することは非常に難しいと感じた。

今回の機材レビューは、IZUMI SUPER TOUGHNESS KAIチェーンだ。

日本の和泉チエン株式会社が生み出した、優れた技術結晶である「IZUMI SUPER TOUGHNESS KAI(以下、改チェーン)」について記事を書かずにはいられなかった。オリンピックでも数々の選手が採用し、いくつもの金メダルを獲得、そして先日おこなわれたアワーレコードでも使用されたチェーンだ。

アワーレコード世界記録、未発表の機材と日本の和泉チェンを使用!
イギリス人のダン・ビンガム(イネオス・グレナディアーズ)が、UCIアワーレコードを更新した。スイスのグレンヒェン・ベロドロームで1時間に55.548キロメートルを走破した。 ダン・ビガムは、ベルギーのカンペナールがこれまで保持していたUCIアワーレコードを、459メートル更新した。2021年にビガムは同じくグレンヒェンのベロドロームで54.723キロのイギリス新記録を出している。 ビガムは...

これほどまでに使用されるのには理由がある。単純に、この世に存在しているどのチェーンよりも性能が良いからだ。極限まで無駄を排除した、自転車の完成形であるトラックバイクで使えば如実にわかる性能だった。

わたしはこれまで、和泉チエンの最高峰であったIZUMI SUPER TOUGHNESS V(ブイ)を使っていた。 Vから改に変えて、単純に感動してしまった。まだ、チェーンという機材がここまで進化できるのかと。

今回の記事は、「機材名作劇場」の第1話としてふさわしい和泉チエンの「IZUMI SUPER TOUGHNESS KAI」についてレビューをおこなった。実際に購入し、素晴らしさを和泉チエン株式会社の方に(一方的に)お送りしたところ、なんと貴重な内部技術情報をお送りいただいた・・・。

その資料も交えて、IZUMI SUPER TOUGHNESS KAIについて記していく。

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「レビュー」がおこがましいと思うほど

非常に恐縮している。

IZUMI SUPER TOUGHNESS KAIをレビューする、なんておこがましいと思った。確実に言えるのはこのチェーンは簡単に評価できない。というよりも、「チェーン」として1%のマージナルゲインを追求しすぎており、

「細かすぎて、すごさが伝わりにくいチェーン」

なのだ。しかし、その細かすぎて伝わりにくい部分こそ改チェーンの真髄だ。わたしは、自身のブログを使って改チェーンの良さをGoogleやTwitter、インスタ、Facebookの有料広告を使ってでも広めたいと思っているほどだ(やらないけど、そんな気持ちだ)。

このチェーンを開発した技術者の方はきっと、チェーンで考えうる、ありとあらゆる部分に対して、1%の妥協なく設計を煮詰めていったのだと思いを巡らせた。そして、技術的な部分のみならず、チェーンが「勝利」のために何が必要なのかを追求したことが製品をみてすぐに感じ取れた。

チェーンは、まだ進化している。

IZUMI SUPER TOUGHNESS KAIをみてそう思った。前置きは長くなったが、改チェーンの1つ1つの作り込みについて次章からみていく。

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KAIチェーンとは

KAIチェーンは、IZUMI SUPER TOUGHNESS V(ブイ)を凌ぐ性能をもつ、考えられる限りのさまざまな技術が盛り込まれた究極のチェーンだ。KAIは以下のとおり、さまざまな処理が施されている。

  1. 部品ごとに適切な表面処理
  2. ピンはCrC処理と特殊研磨
  3. アウタープレート、ブシュ(インナー)、ローラーは、PTFEメッキ処理
  4. インナープレート、ブシュ(アウター)は、ファインポリッシュ処理
  5. シームレスブッシュとピンは冷間鍛造。

KAIチェーンが凄まじいのは「部品ごとに適切な表面処理」をおこなっていることだ。細かすぎて伝わりにくいかもしれないが、以下の画像のとおりチェーンにはさまざまな「部品」がある。KAIチェーンは、部品ごとに適した処理を使い分けている。

 

チエンの構造 (c)和泉チエン株式会社

アウタープレート(外)とインナープレート(内)は、役割が異なるため異なる処理が施されている。アウター側はPTFEメッキ処理、インナー側はファインポリッシュ仕上げだ。

単純に考えて、アウターとインナーの処理を分けることは、通常のチェーンよりも倍の手間とコストがかかる。普通のチェーンはアウターとインナーの処理が同じものがほとんどであり、処理を分けてしまうとその分コストもかさんでしまう。

しかし、KAIチェーンは、その手間とコストを度返しにして性能面に全振りしている。次は「ピン」だ。

え、ピン?

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ピン

チェーンのインプレッションは数多くしてきた。しかし、「ピン」について話すのは今回が初めてだ。

ピンはCrC処理と特殊研磨が施されている。このピンの処理がわかる瞬間がある。チェーンを切るときだ。チェーンの長さを調整するために、チェーンカッターでピンを押した際にいままで感じたことのない「ヌルヌル感」が楽しめる。

いや、本来は楽しむ必要のない行為なのだが・・・。

しかし、KAIチェーンはチェーンカッターでピンを押し出すときの「リニアな抜き心地」が楽しめる数少ないチェーンだ。実際の使用とはなんら関係のない話である一方、チェーン好きはこれまで体験したことのない「リニアな抜き心地」に興奮してしまうかもしれない。

この、狂気にも似たピンの「抜き心地」はいったいどのような理由から生み出されたのだろうか。和泉チエンの中の方に伺ったところ、

KAIチェーンはより精密な研磨を施し、表面粗さを下げ、ブッシュとの接地面をなめらかにすることで摩擦抵抗の低減を図っているという。Vチェーンと、改チェーンのピン材は同一のものを使用しているが、はっきりとした違いがある。

下のグラフは、「Vチェーン」と「改チェーン」のピンの表面粗さを比較した表だ。

ピン表面の粗さ(c)和泉チエン株式会社

「V」と「改」どちらも非常に硬い鋼材を使用している。そのうえに、さらに硬化処理を施している。改チェーンはこれまでとは異なる硬化処理を施してあり、Vチェーンと比べて10%ほど硬度が「低く」なっている。硬化処理後の表面は「改」のほうがなめらかだ。

チェーンカット時、ぬるっとするのはピンの表面がなめらかなのと外プレートの表面処理によるものだという。ピン1つだけでも、その違いがわかるほどだ。

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ブッシュ外径と圧出力

KAIチェーンの設計において、ブッシュの外径を0.01mm単位で変更し最も適切なブッシュ圧出力になるようにチューニングされている。

ブッシュ経と出力(c)和泉チエン株式会社

ここでもう一度チェーンの構造を確認してみよう。(3)のブッシュは、(2)の内プレートに圧入されている。例えるなら、レゴのようにはまっている状態だ。圧入されたブッシュは内プレートを保持している。

チエンの構造 (c)和泉チエン株式会社

しかし、チェーンリングやコグの歯がチェーンに当たって、負荷がかかった際にプレートを外方向に押し広げようとする力が加わる。

内プレートが外側に開くと外プレートと接触し、干渉して屈曲不良(リンクがなめらかに動かなくなること)が発生する。したがって、圧入されたブッシュの「抜けにくさ」も強度と製品寿命を保つうえで必要な要素になっている。

和泉チエンによると、ブッシュを「どの深さまで圧入するか」も非常に難しい問題で、0.01mm単位で調整していることとは、また別の技術的な設計の話だという。

Vチェンは継ぎ目がある。(c)和泉チエン株式会社

KAIチェーンは継ぎ目がない。(c)和泉チエン株式会社

改チェーンでは、つなぎ目のないブッシュ(ソリッドブッシュ)を採用している。和泉チエンによると、KAIチェーンに合わせて設計された完全な新規製作部品だという。ブッシュの外径を1/100単位で製造し、テストをおこない最も「抜けにくい」外径を採用したという。

Vチェーンに採用されている、つなぎ目のあるブッシュ(巻きブッシュ/カールブッシュ)と比較すると、ソリッドブッシュのメリットは、内プレートとの「はめあい」強くなる。

巻きブッシュは、板を丸めて形成しているため圧入時にわずかながらも微妙なズレが生じるという。ソリッドブッシュは、つなぎ目がないため段差がなく抵抗が減る。また、ブッシュ内のオイル保持が優れている。巻きブッシュの場合は、つなぎ目から少量のオイルが流出してしまうという。

以上のこだわりぬいた技術と設計で、改チェーンはスムーズな摺動性能、強固な嵌合、優れた動力伝達を実現している。

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性能試験

和泉チエンで使用されているチエンの抵抗を測る測定器、個人的にほしいです。(c)和泉チエン株式会社

衝撃的なのは、性能試験の結果だ。結果をみていく前に、どのような条件でKAIチェーンの試験がおこなわれたのかを以下にまとめた。

  • フロントギア:デュラエーストラック 54T
  • リアギア:デュラエーストラック16T
  • 回転数:100rpm

測定手順は以下のとおり。

  1. リア側を一定負荷で制動する
  2. フロント側のトルク(N・m)を測定する
  3. トルクを作業量(W)に換算する
  4. 測定サイクルは1t/sec
  5. 測定時間は20分

 

損失が少ないほど性能が高いチエンといえる。(c)和泉チエン株式会社

原理としては、チェーンは動力をロスなく伝達する媒体であり、ある負荷をかけたときのトルクを測定することでチェーンの性能を評価している。このとき、チェーンの性能は、  「f(パワー) = f(負荷) +損失」で示される。

補足として、f(パワー)はトルク(W)で表され、損失はチェーンのパフォーマンスを表している。損失が少なければ少ないほど、チェーン自体の抵抗が小さいと評価される。生み出した力が、チェーンの損失で失われないほどよいチェーンと言える。

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結果

Vよりも改の抵抗が非常に小さいことがわかる(c)和泉チエン株式会社

基本性能を評価するために、KAIとIZUMI Vを「潤滑剤なし」と「潤滑剤あり」でテストをおこなった。潤滑剤「なし」の場合の結果は以下のとおり。

  • V:363W(中央値)
  • 改:287W(中央値)

潤滑剤「あり」の場合の結果は以下のとおり。

  • V:330W(中央値)
  • 改:278W(中央値)

チェーン1つでこれほどまでに性能差があることが、信じられないという人も多いだろう。それが、アワーレコードやオリンピックで使用された改チェーンのすごさであり、和泉チエンの技術力の結晶なのだ。

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まとめ:世界最高のチェーン

長年使用してきたVチェーンも満足していた。しかし、改チェーンはさらにうえを行く機材だった。いや、これは単なる機材ではなく、日本の和泉チエンが生み出した1つの工業芸術作品といえる。

非常に残念なのは、トラック用のチェーンはナローであってもロードバイクには使用できない。トラックチェーンに用いられている、ボルトピンとプレートがスプロケットに干渉してしまうからだ。したがって、トラックバイクやシングルスピードをお持ちのほうだけが楽しめるという至高の名作といえる。

日本の和泉チエンが生み出したKAIチェーンを使わずに、自転車を辞める日が来るサイクリストもいるかもしれない。

それはもったいない話だ。この改チェーンを使うために、トラックバイクを1台用意しても(逆に)良いかもしれない。わたしは、PINARELLOのMAATと、TIME ZXRS PISTEに和泉チエンを取り付けている。極限まで無駄が省かれたトラックバイクは、みていても美しい。

そこに、和泉チエンの「改」が合わさることによって、至高の乗り心地が完成したと言ってもいい。それほど、使うほどに、踏み込むほどに、異次元の乗り心地が楽しめる。チェーン1つで何か変わるのか?

改チェーンを使えば、その疑問は一瞬にして、理解に変わるだろう。和泉チエンのような優秀な技術力を持った企業が日本にあることを、わたしは誇らしく思う。

ITさん
ITさん

実験データーや測定器の画像は、和泉チエン株式会社様のご厚意で提供頂きました。ほんとうに、ありがとうございました。なお、今回記事執筆にあたり、チェーンの提供や記事作成依頼を受けてません。ほんま良いチエンです。アマゾンで買っていますw😄 あと和泉チエンさんのTwitterは面白い上に、チェーンに関する有益な情報を配信しています。

和泉チエン公式Twitter

 

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