SuperSixEVO4はTarmac SL8などの最新バイクの方向性を示している

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UCI新レギュレーションに対応したバイクと、そうでないバイクの間には大きな壁が生じている。規定に対応したバイクはいくつか登場してきたが、そのなかでも新型のSuperSixEVO4の実車を手に取りショックを受けてしまった。

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最新モデルの薄さ

  1. Cannondale SuperSixEVO4 LAB71:15.26mm
  2. Pinarello Dogma F:15.53mm
  3. TREK Madone Gen7:16.56mm
  4. CANYON AEROAD CFR:18.87mm

1~3は新レギュレーション、4は旧レギュレーションのバイクだ。

以前、BRIDGESTONEのRP9の記事の中で次のように書いた。

RP9の納期はとうぶん先だという。こうなってくるとどこまで待てるかだ。厄介なのは、UCIの新レギュレーションの超高速バイクが登場し始めているということだ。それは弱小メーカーが巨大ブランドを食う状況になるほど革命的な規格改定になっていることは先日お伝えしたとおりだ。

のんびりと納期を待っているあいだに、SPECIALIZEDが、TREKが、CANNONDALEが、CANYONが、「世界最速の◯◯」や「◯◯史上最速の」というキャッチコピーを引っさげてUCIの新レギュレーションに特化したバイクをリリースしてくる。

すでにPINARELLOはVENGEの空力性能を超えるオールラウンドバイクをリリースした。規定緩和という、これほどわかりやすい変化などない。そして千載一遇の機会に対し、われ先にと、空力改善がほどこされた新製品をメーカーがリリースしないわけがない。

そういう意味では、ブルー・オーシャン状態の今だからこそ「SIMPLON」と「STORCK」のバイクは魅力的にうつる。それも全て、ここまでに述べた「時代背景」によるものだ。では、これから新レギュレーションを採用したバイクが登場したらどうなるだろう。

いつの間にかその時代は到来しており、バイクの最新設計は「新規定か、それ以外か」の大きな隔たりを生み出していた。旧レギュレーションで世界最速のAEROADももはや過去のバイクになりつつあるのだ。

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新規定か、それ以外か。

Photo: Cannondale

薄い。うすすぎる。全く別物だ―――。

新型のSuperSixEVO4はこれまでみてきたどのバイクよりも、シートチューブとシートポストが薄く作られている。新レギュレーションで作られたバイクは、こんなにも薄く作れるのかと単純に驚いてしまった。

Dogma Fも新規定で作られており、たしかに薄かったがさらに薄い。ところが、SuperSixEVO4は危うささえ感じられる程に薄い。なぜこんなにも飛躍的にフレームが別物に進化してしまったのか。バイクの設計に大きな影響を及ぼしたであろう新規定の緩和のポイントは2つある。

  1. 3:1の撤廃
  2. 最低厚み10mmの撤廃

この2つのポイントは、これから登場してくるであろうフレームの方向性をはっきりと教えてくれる。どのバイクも「薄さ」がどんどん追求され、空力性能が高まっていく可能性がある。

薄くなれば単純に前方投影面積が減り、空力性能を稼げる。そしてさらに軽くできる。この傾向は、フレームのみならず、フォーク、ハンドル、ハブなど全てに波及していくだろう(ただしリムは別)。

ただし、薄くなればなるほど別の問題も出てくる。横からバイクを見たときの「太さ」は空力性能に密接に関係している。このタテ・ヨコの比率をどのようなに調整し落ち着かせるかは、各社の開発思想や解析能力が試される。

また、「薄さ」は以前から疑問に思っていた答えにつながるヒントが隠されていた。

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「極太チューブ形状」は過去に


薄さと対象的なのが、ダウンチューブだ。

最近登場してきた空力性能が良いバイクは、これまでのエアロ系ロードバイクの特徴でもあった「極太チューブ」が必ずしも採用されていない。それなのに風洞実験データーを確認すると空力が優れている。

TOUR Magazineの最新の風洞実験結果によると、新型TREK Madoneと新型SuperSixEVO4の空力性能は207Wとまったく同じだった。MadoneはISOFLOWで後方の負圧領域を加速させる方法をとった。SuperSixEVO4は驚異的な薄さで負圧領域そのものを削減した。

Photo: Cannondale

しかし、両者のバイクの間には「重量」に大きな差が生じている。複雑な構造のMadoneはどうしても重量増が目につく。そして、太いダウンチューブもエアロ系ロードバイクらしい。対して、SuperSixEVO4は細身と、前作と変わらないダウンチューブの細さがある。

Viper Red

それでも、この2つのバイクの空力性能は同じだ。

御存知の通り、空力性能に関しては「ハンドル」が支配的で、「トップチューブ」と「ホイール&タイヤ」が大きなウェイトを締めている(ライダーを除外した場合)。

AEROADやVENGEでだれもが想像するような、横から見ると極太の「エアロっぽい形状」は、今後減少していく可能性が高い。チューブの厚みを薄くするのはよいが、横から見た側面方向を太くしすぎてしまうと、Yaw角にもよるが空気抵抗が悪化してしまうからだ。

だからこそ、薄さとチューブの太さのバランスの最適解を探っていくことが、今後各社が空力性能が高いバイクを生み出せるか否かの分岐点になっていく。そして、表面積を減らしていくと、別の恩恵も得られる。

「規定緩和で薄くなる」→「適度な太さになる」→「表面積が減り軽くなる」

単純にこの流れがあり、最終的には表面積が減ることで使用するカーボンの量を少なくできる。ただしこのメリットは、「剛性とトレードオフの関係」にある。薄くなると横剛性が低下することは想像しやすい。


剛性の確保は、SPECIALIZEDのエートスのようにチューブの形状を工夫することによって、フレーム全体で力を受け止める方法、SuperSixEVO4のようにBBへ向かって幅広になる構造など、剛性を高める方法は各社の設計思想がみえる部分だ。

剛性以外にも様々な設計に問題が波及してくる可能性がある。主流になっている電動変速用のバッテリーの”太さ”だ。

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バッテリー位置の問題


薄していくと、Di2のバッテリーは邪魔な存在になる。SRAMの電動を使うのならば関係のない話だが、フレームは様々なコンポーネントブランド対応する必要があるためシマノDi2用のバッテリーをフレームのどこかに内装しなければならない。

したがって、Di2バッテリーの厚みはフレームの薄さの限界値になる。「どの部分に格納するか」の設計が重要だ。

SuperSixEVO4、AEROAD、Dogma Fはダウンチューブ側にバッテリーをうまく収納している。新型MadoneはFD付近で固定されている、フレームの薄さが追求されていくと、シートポスト付近にバッテリーを搭載するバイクは少なくなっていくだろう。

ほとんどのバイクが、BB下からダウンチューブ方向にDi2バッテリーを収納する方法になり、シートチューブやシートポストは限りなく薄く設計されていくだろう。

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ヘッドベアリングの制限


空力性能を高める際に、ハンドルと同じくらい重要なのがヘッドチューブだ。ヘッドチューブを薄くする際にヘッドベアリングの存在がネックになる。Di2バッテリーの経と同様に、ヘッドベアリングの経はヘッドチューブの薄さを支配している。

そのため、これまでのバイクよりも極端な「ひょうたん型」の中央に向かって絞ったようなヘッドチューブ形状になっていく可能性がある。

さらに厄介なのが、Di2ケーブルやブレーキホース類をフレーム内装にするために、コラムとベアリングの間にいくらかのスペースが必要になる。コラムを細くすれば剛性が落ちる。ベアリングを小口径にすれば空力性能が改善されるかもしれないが、ケーブル類を通すスペースを圧迫する。

ヘッド周りの構造は各社のアイデアがはっきりと見える部分と言っていい。「こっちを優先すると、こっちが立たなくなる」という構造的なジレンマが数多く存在するのがヘッドチューブまわりだ。

これから登場する各社の最新バイクは特にヘッドチューブ周りの内部構造をよく確認しておいた方がいい。おそらく、Tarmac SL8のぶっとい「コブダイヘッドチューブ」の造形には、このあたりの事情があるのかもしれない。

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まとめ:薄さと引き換えに

新レギュレーションに対応したバイクは、これまで見てきたバイクとは別物だ。”旧レギュレーション世界最速”のAEROADと比べてみても明らかだった。今後各社がリリースするバイクは、薄さ(空力性能)と軽さにこだわったバイクにシフトしていく可能性が高い。

おそらく、ここまでの流れに沿うならば噂されている新型Tarmac SL8も同様の流れになるだろう。薄く、軽くだ。これまであった縛りがなくなり、新レギュレーションで解放されたバイクは、これまでとは一線を画すほどの威力がある。

これまで得られた以上に、「空力性能」と「軽さ」は向上していくだろう。今愛用しているAEROADが少しばかり古く感じてしまうほどに、新レギュレーションのSuperSixEVO4 LAB71には衝撃を受けてしまった。

次回は、いよいよSuperSixEVO4 LAB71のインプレッションをお届けしたいと思う。

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