有名ブランドのサングラスといえば、2~3万円が普通になった。サングラスが高額になってきた理由のひとつに、広告費や選手のスポンサー料が上乗せされている。
サングラスの材料費や製造コストを考えても原価率は相当低い。しかし、安すぎてしまうと性能面や品質面で不安が残ってしまう。製品には、価格と品質のバランスが必要になってくる。
今回紹介するALTALISTのサングラスは価格帯が6,000円~9,000円ながら、価格と性能のバランスが絶妙に設定されている。価格を抑えつつも、他社ハイエンドサングラス並の性能を備えていた。
パッと見は市場に出回っているハイエンドサングラスとそれほど変わらない。フレームの細部の作り込みや、レンズの見やすさ、つけやすさも愛用しているOAKLEYと大差がなかった。
要するに、広告費。
という下世話な話はともかくとして、ALTALISTのサングラスについて製品の細部にわたる詳しい作り込み、使い勝手をみていこう。
調光+VIV20レンズ
ALTALISTのレンズには、「偏光」と「調光」がある。
偏光は可視光線透過率が一定の透過率に固定されたレンズだ。例えば、80%~100%なら光を通しやすいクリアレンズ、8~18%なら光をあまり通さない強い日差し向きだ。
一方で調光は、レンズの可視光線透過率が環境の明るさによって変化する。例えば、早朝の暗い時間帯は80~100%、日中の明るい時間帯は18~43%といったように、ひとつのサングラスで可視光線透過率が変化する。
調光とあわせて、OAKLEYのプリズムレンズと似たような性能をもつ「VIV20ハイコントラストカラーシャプニングレンズ」がある。景色をより鮮やかに、立体的に見えるようRGBのコンストラストを強化、レンズに当たる光を調節し色調やコントラストを強調して細部まで鮮やかな視界を実現している。
肉眼で見るときと比べて、物体に奥行きが出て、景色や路面状況のディテールがはっきりとする。高速で走行中でも、路面と異物の境界線が鮮明になるので、不意な段差やガラスの破片などを識別しやすくなる。
「調光」と「VIV20」の組み合わせは珍しい。OAKLEYで例えるなら、PRIZM調光で他社製品ではあまりみられない高価なレンズだ。調光レンズのメリットは、薄暗い出発の時間帯からサングラスをかけることができ、日が出ているときはコントラストがはっきりとした視界になる。
雨が降ってきても、調光であればレンズの可視光線透過率がクリアレンズに近づいて行くためサングラスを外す必要がない。偏光レンズで可視光線透過率が固定されていると、薄暗い時間帯は見づらくなるため外す手間が生じてしまう。
調光であれば、環境の光の強さでレンズが変化するため1日中、朝から夕方まで身につけておくことができる。レンズ自体は歪みを抑え、薄く軽量で偏光との相性のいい素材「トリアステート」や耐久性と光学性能に優れた「ポリカーボネイト」などが使い分けられている。
各モデル別のレンズの可視光線透過率は以下の通り。
- SP1偏光:8~18%(カテゴリー3)全レンズ共通
- SP1調光:グレーレンズ:43~80%→8~18%(カテゴリー1→3で変化)
- SP1調光:ブルー、レッドレンズ:80~100%→18~43%(カテゴリー0→2で変化)
- SP2調光::43~80%→8-18%(同規格カテゴリー1→3で変化)全レンズ共通
レンズの濃度 | 可視光透過率一覧 EN1836規格:レンズ光線透過率5カテゴリー |
---|---|
cat 0 | 80 ~ 100% ほぼ透明に近く、どんな状況にも適応。 |
cat 1 | 43 ~ 80% 太陽光の遮断率は低めで、ほとんどの場合の装用が適している。 |
cat 2 | 18 ~ 43% 中間的なフィルター。平均的な日差しに適している。 |
cat 3 | 8 ~ 18% 暗いフィルター。強い日差し向き。 |
cat 4 | 3 ~ 8% とても暗いフィルター。かなり眩しい状況で装用します。 運転には適さない。 |
グリルアミドTR-90フレーム
ALTALISTのサングラスは素材にグリルアミドTR-90を使用している。この素材は、手で曲げても破断しづらく高い曲げ強度がある。素材自体は適度にやわらかく弾力性がある。よほどの衝撃を与えない限り損壊することもない。
重量
- SP1:28g
- SP2:29g
フィッティングシステム
- SP1:可変式ノーズパッドで前後左右に曲げて調整
- SP2:厚みが異なる2種類の交換式ノーズパッド。
KAKU SP1
KAKU SP1は流行りのビッグレンズだ。見た目が100%のHYPERCRAFTに似ており、フレームよりも一回り大きなレンズが全面を覆っている。そのため、視界が広く上下、左右方向全域で見やすいレンズだ。
下ハンドルを持ちながら、やや上目遣いでもレンズごしに目の前の状況を把握しやすい。安価なレンズにありがちなレンズのひずみもないため、平衡感覚を狂わすサングラス酔いをすることもなかった。違和感がない視界を確保することができる。
使用したのはブルーミラーの調光レンズだ。朝方の薄暗い時間帯は可視光線透過率が80~100%、日差しが強くなると18~43%に変化(調光)する。夕暮れ時に走るライダーも重宝するだろう。
レンズの下部にはエアベンド(通気口)があり、レンズ内の空気を循環させることができる。そのためレンズが曇りにくくなっている。
フィッティングはアジアンフィットで、顔幅が広く鼻筋が低い日本人の骨格に合わせて設計されている。レンズやフレーム前面のカーブが緩く、フレーム幅が広く設計されておりほお骨にレンズが当たることもなかった。
可動式のノーズパッドで、ほお骨への干渉やひたいとレンズの間隔を自由に調整することができる。
総じて、最近流行りのビッグレンズで汎用的に使用できる。偏光と調光の2種類のレンズタイプがあり、偏光であれば6,000円台で購入できる。
KAKU SP2
おすすめなのがSP2だ。
調光なうえにVIV20による色調とコントラストの調整で、路面の起伏がシャープにかつ鮮明にとらえることができる。VIV20のレンズはKAKU SP2のみに採用されている。VIV20を搭載していないモデルと比べると視界のシャープさに違いがある。
VIV20を通して見える景色は、まるで画像加工ソフトで色付けされたような雰囲気に様変わりする。カラーテーマの「ヴィヴィッド」と「シャープネス」のレベルを強めたようなイメージだ。インスタグラムの栄える投稿写真のように、色の濃淡がはっきりと主張してくる。
あわせて路面の起伏が、肉眼で見るよりも立体的に見える。シャープネスが強まるため、鮮鋭な印象にかわる。路面に落ちている破片などもよく見えるようになるためパンクなどを未然に防ぐことも期待できる。
VIV20で見る景色は肉眼で見るよりも色鮮やかに映る。空の抜けるような空の青さと、ぽっかりと浮かぶ白い雲のコントラスト、田んぼに生える緑の稲の葉、実る米の黄金色。すこし強調しすぎているような色付けがされるが、景色を見ることが楽しめるようになる。
基本的な構造や素材はSP1もSP2も変わりがない。アジアンフィットで細いテンプルデザインと骨格に沿ったカーブで左右の視界の広さを確保している。レンズ上部中央を山なりデザインにすることにで前傾姿勢時の視界の広さも考慮している。
ノーズパッドは高と低の2種類が付属しており、ほお骨やひたいとの間隔を調整可能だ。
カラー展開 SP1
カラー展開SP2
仕様
モデル | KAKU SP1 | KAKU SP2 |
---|---|---|
レンズ素材 | トリアセテート、 ポリカーボネイト | |
フレーム素材 | TR-90 | |
重量 | 27g | 29g |
価格 | ¥6,380(偏光) ¥8,580(調光) | ¥9,350(調光+VIV20) |
まとめ:調光+VIV20レンズがお値段以上
アルタリストのサングラスは、安価なイメージから安かろう悪かろうだと思っていた。ところが、6,000~9,000円の価格を考慮するとお値段以上の性能を備えていた。ふと、思ったのはサイクリング関連の製品は価格がマヒしているように思えてならない。
6,000~9,000円という価格帯で、他社ができる性能や品質以上のことが詰め込まれていた。使用前に最も気になっていたのはレンズのひずみだった。安価なブランドの場合、カーブを描くレンズに歪みが生じ視認性に難があるケースが多々あった。
しかし、アルタリストのレンズは極めてクリアで端から端まで歪みが全くない。レンズの性能が低いと、どんなにデザインが優れていたとしても使いたいとは思えない。
調光レンズはどんなに安くても1万円以上はする。OAKLEYのPRIZMのように色調を鮮やかにする調光レンズは数が少ない。今回SP1とSP2を両方試したが、おすすめは調光+VIV20のレンズを使用したSP2だ。3000円ほど高いが、足して買った方がいい。
早朝から走る方や、夕方の帰宅時にもサングラスを身につける方は調光+VIV20のSP2を一度使ってみてほしい。クリアレンズとまではいかないが、クリアレンズに近い可視光線透過率80%まで変化する。
1本あれば、さまざまなライド環境の条件に対応できる。あれこれサングラスを付け替える手間も無くなるだろう。ALTALISTは新興メーカーで不安だったが、実際に使ってみるとお値段以上の性能を備えたサングラスだ。
6,380円 ALTALIST ( アルタリスト ) サングラス KAKU SP1 ( カク エスピーワン )
9,350円 ALTALIST ( アルタリスト ) サングラス KAKU SP2 ( カク エスピーツー )