新型ENVE SES 4.5 PRO登場!リム内幅が縮小!フックドに原点回帰!1,295g軽量化!

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ENVE SES 4.5 PROは、単なる既存モデルの軽量版ではない。

これは、タデイ・ポガチャルという特定のトップアスリートの要求に応え、グランツールの山岳ステージを制覇するという極めて限定的な目的のために、ENVEが自社の設計思想(「ワイドリム」「フックレス」)さえも再定義して生み出した、究極のレース専用兵器だ。

リム内幅25mmから23.5mmへの縮小、フックドリムの原点回帰、そして1,295gという設計はENVEが新たに定義するホイールシステムの思惑が見え隠れしている。

SES 4.5 PROの開発背景から、物議を醸す「ミニフック」リム、新開発ハブシステムの技術的詳細、そして市場におけるその特異なポジショニングまでを、多角的に分析し、その真の価値と展望を明らかにする。

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ENVE SES 4.5 PROの技術的特長と設計思想

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本章では、ENVE SES 4.5 PROを構成する技術的な要素と、その根底にある設計思想を客観的なデータに基づき、製品の「何が」新しいのか、そして「なぜ」そのような設計が採用されたのかを深く掘り下げることで、このホイールセットの本質的な価値を明らかにしていく。

設計思想:勝利への特化

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SES 4.5 PROの核心には、特定の目的、すなわちプロレースでの勝利への徹底したこだわりが存在する。

その開発背景は、タデイ・ポガチャル選手とUAEチームエミレーツとの緊密な共同作業にある。彼らは、既存のSES 4.5の空力性能を維持しつつ、グランツールの勝敗を分ける山岳ステージで決定的なアドバンテージを得るための軽量化を要求した。

この要求が、モデル名に「PRO」を冠する、プロスペック専用モデルの誕生へと繋がったのである。

重要なのは、『SES 4.5 PROが既存のSES 4.5の代替品ではない』という点だ。

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ENVEは、この二つのモデルを異なる目的を持つ「ツール」として明確に位置付けている。荒れた路面やパヴェを含むクラシックレース、あるいは平坦ステージでは、よりワイドなタイヤ(30mm)に最適化された標準モデルのSES 4.5が使用される。

一方、PROモデルは滑らかな舗装路やアップダウン、起伏に富んだ地形、ヒルクライムに特化した決戦用機材である。

この戦略は、ハイエンド市場におけるENVEの洗練された製品哲学を示唆している。市場の主流である「オールロード」や「リアルワールドファスト」という汎用性の高いコンセプトを体現する標準モデルと、特定の状況下で一切の妥協を排して性能を追求するPROモデル。

この二つの選択肢を用意することで、ENVEは多様化するトップレベルの要求に応え、一つのモデルが全てのライダーにとって最適解ではないという、成熟した市場認識を提示しているのである。

スペック詳細:数値が示すポジショニング

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SES 4.5 PROの技術的な立ち位置を明確にするため、その主要スペックを前身モデルであるSES 4.5(標準モデル)、および市場で頻繁に比較対象となるRoval Rapide CLX IIIと並べて比較する。

この比較表は、全体を通じて、性能や価格に関する議論の技術的な文脈を理解するための基準点となる。

表1: 主要ホイールセット性能比較
モデル リムハイト (F/R) リム内幅 最適化タイヤ幅 リム形式 ハブ ベアリング 公称重量 (セット) 参考価格 (税込)
ENVE SES 4.5 PRO 49mm / 55mm 23.5mm 28mm ミニフック (機能的フックレス) ENVE INNERDRIVE PRO セラミック 1295g 649,990円
ENVE SES 4.5 (Standard) 50mm / 56mm 25mm 30mm フックレス ENVE INNERDRIVE ステンレス 1432g 約430,000円
Roval Rapide CLX III 51mm / 48mm 21mm 35mm / 31.3mm フックド Roval LF Hub セラミック 1305g 約484,000円

表から明らかなように、SES 4.5 PROは重量において最軽量クラスだ。リムハイトが同等でありながら、150g近い軽量化を実現している点は特筆に値する。

また、リム内幅を25mmから23.5mmへと狭め、最適化タイヤ幅を28mmに設定したことは、近年の「ワイド化」トレンドとは逆行する動きであり、純粋なレース性能を優先した設計思想の表れである。

革新的技術:3つの主要な進化

SES 4.5 PROの卓越した性能は、主に3つの技術革新によって支えられている。リムの素材と構造、物議を醸すビード設計、そして完全に刷新されたハブシステムである。

新素材と軽量カーボンレイアップ

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軽量化の最大の要因は、リム構造の抜本的な見直しにある。ENVEは、より高い弾性率を持ち、単位面積あたりの重量が軽い新しいカーボンファイバー素材を採用した。

これにより、リムの壁面を薄くしても十分な剛性と強度を維持することが可能となり、リム単体で約50gもの軽量化を達成した。この新しいカーボンラミネートは、単に重量を削減するだけでなく、路面からの衝撃を効果的に吸収し、よりしなやかでコンプライアンスの高い乗り心地にも貢献するとされている。

「ミニフック」リムの構造と戦略的意図

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SES 4.5 PROで最も注目すべき、そして議論を呼ぶのが「ミニフック」と呼ばれるリムのビード形状である。

これは、高さわずか0.5mmの微細なフックであり、従来のフックドリムとは全く異なる概念である。ENVEは、製造精度と安全性の観点からフックレス設計の優位性を一貫して主張しており、このミニフックの採用は哲学の転換ではないと強調している。

この設計の第一の目的は、徹底した軽量化である。プロチームからの要求に応えるため、ENVEはピンチフラット耐性のために設けられたワイドビードの内側部分を削り取るという決断を下した。

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この部分の素材を削除することで、リムあたり15gから20gの重量削減が実現され、その結果としてミニフック形状が生まれたのである。

第二の目的は、レギュレーションへの対応と戦略的な柔軟性の確保である。このミニフックは、UCI(国際自転車競技連合)の規定上「フックドリム」として分類されるための保険的役割を果たす。

これにより、将来的なフックレスリムに関する規則変更のリスクを回避しつつ、UCIが要求するETRTO(欧州タイヤ・リム技術機構)のガイドラインに準拠した28mmタイヤの使用が可能となり、チームのタイヤ選択の自由度を高めている。

ただし、このリムは機能的にはフックレスであり、使用できるのはチューブレス対応タイヤのみである点は、利用者が正確に理解すべき重要な制約である。

INNERDRIVE PROハブとベアリング

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ホイールセットの心臓部であるハブも完全に刷新された。

新開発の「INNERDRIVE PRO」ハブは、極限まで肉抜きされたCNC加工のシェルを採用し、ハブセット全体で281g(フロント87g、リア194g)という超軽量設計を実現。これは標準のINNERDRIVEハブから約60gの削減に相当する。

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内部機構では、コースティング時の抵抗(ドラッグ)を低減することが最優先された。ラチェットリングの直径を縮小して周辺部材を削減し、さらに最小限の力で確実な噛み合いを実現する、より軽いアクションのスプリングを備えた40Tラチェットシステムを新たに開発した。

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そして、このハブにはENVEが独自開発した「PROセラミックベアリング」が搭載されている。ENVEはこれまで、コストに対する性能向上のメリットが限定的であるとして、セラミックベアリングの採用に慎重な姿勢を示してきた。

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しかし、PROモデルにおいては、わずかな摩擦抵抗の削減であっても、勝利のためには正当化されるという判断が下された。これは、SES 4.5 PROがコスト度外視で純粋なパフォーマンスを追求する、エリートレベルのレーシングツールであることを明確に示している。

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エアロダイナミクス

エアロダイナミクスについては、他社を名指しで比較している。横軸は重量で、右に行くほど重いホイールだ。縦軸が平均Dragで下に行くほどエアロダイナミクス性能が優れている。

新型SES 4.5 PROは32km/h、48km/hにおいて空力性能と重量のバランスが最も優れたホイールの一つになっている。Roval Rapide CLX IIIは掲載されていないが、Rapide CLX IIの空力性能を遥かにしのいでいることは注目に値する。

Yaw角ごとの空力性能についても、SES 4.5 PROの27mmタイヤを使用した条件が最も優れていることがわかる。ROVAL Rapide CLX IIやZIPP 454、Princeton Carbon Works Dual 5550、Scope Artech 4など、並み居る最強クラスのエアロホイールをしのぐ空力性能だ。

「クラス世界最速」と銘打ってもよさそうではあるが、ENVEは今回の発表で一切そのような言葉を使っていない。

速度が増してもSES 4.5 PROの性能は優れている。SES 6.7よりも優れており、前作の立場がないような状況だ。ENVEの技術革新は、前作のエアロホイールを食ってしまった。興味深いのは29cのタイヤよりも27cのタイヤの空力性能が優れている点にある。

データーからもわかる通り、29cのタイヤをつかうよりも27cのタイヤを使用したほうが空力性能が優れている。空力性能が優れているセットアップをもとに、リム内幅を25mmから23.5mmに狭めるという合理的な設計に至っている。

このリム内幅を据え置く、広げすぎない傾向は、新型ROVAL RAPIDE CLX IIIや、DTSWISS ARC 1100 Gen3でもみられる。理由はタイヤとのインテグレーションが理由であり、空力性能やタイヤのヒステリシスロスを考慮した、速さへの合理的な回答といえるだろう。

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加速性と登坂性能:軽さがもたらす絶対的優位性

SES 4.5 PROの性能を語る上で、最も支配的な要素はその驚異的な軽さである。公称重量1295gという数値は、リムハイトが49mm/55mmというミドルプロファイルのエアロホイールとしては異次元の領域にあり、よりリムハイトの低いSES 3.4(1380g)のようなクライミングホイールさえも下回る。

この軽量性は、実走において鋭い加速性と応答性となって現れる。特に、勾配が変化する山岳地帯や、アタックとペースアップが繰り返されるレースシーンにおいて、ペダル入力に対するダイレクトな反応は絶大な武器となる。

このホイールが「山岳や丘陵地帯」向けに特化して設計された理由が、この瞬発力にあることは明らかである。ライダーが最も直接的かつ明確に体感できるメリットであり、このホイールセットの存在価値そのものと言えるだろう。

空力性能と巡航維持能力

Photo : ENVE

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軽量化を最優先しつつも、ENVEは空力性能に関しても妥協を見せていない。公式には、PROモデルの空力抵抗は、よりワイドな標準モデルのSES 4.5と比較して、時速48km/h走行時に1ワット未満の差しかないと主張されている。

これは、ENVEが長年培ってきた特許取得済みのSESリム形状を維持することで達成されている。

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この主張は、技術的な観点から見ると非常に野心的である。一般的に、エアロダイナミクスはタイヤとリムが一体となったシステムの幅が広い方が有利とされる傾向がある。PROモデルは、標準モデルよりもリム内幅が狭く(23.5mm対25mm)、最適化されたタイヤも細い(28mm対30mm)。

この条件下で空力性能を同等に保ったという主張は、ベースとなるSES形状がいかに優れているかを示すと同時に、大幅な軽量化というメリットを、空力的なペナルティをほとんど伴わずに実現したという、マーケティング上の強力なメッセージでもある。

標準モデルのSES 4.5は「速度を維持する能力」が高く、深いリム特有の風切り音がその効率の良さを物語る。PROモデルも同様に、その軽さにもかかわらず、ディープリムホイールのような高速巡航性能を体感できると期待されている。

横風安定性とハンドリング

ENVEのSESシリーズは、フロントリムを浅く、リアリムを深くする非対称プロファイルを採用しており、これはフロントホイールの横風安定性とリアホイールの空力性能を両立させるための設計である。SES 4.5 PROもこの思想を踏襲し、フロント49mm、リア55mmという構成になっている。

標準モデルのSES 4.5の横風安定性は概ね良好と評価されているが、体重の軽いライダー(64-65kg)からは突風時に影響を感じる場合がある。

競合製品であるRoval Rapide CLX IIが、非常にワイドなフロントリム(外幅35mm)によって卓越した横風安定性を実現しているという評価が定着しており、しばしば比較のベンチマークとして挙げられる。

SES 4.5 PROは標準モデルよりわずかにリムハイトが低く、幅も狭いため、理論上は同等かそれ以上の安定性を持つと推測され、テクニカルな下りでも自信を持って扱えるハンドリング性能が期待できる。

剛性と乗り心地のバランス

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剛性に関しては、ENVEホイールは一貫して高い評価を得ている。特にスプリントや高速コーナリング時におけるたわみの少なさは、Roval製品との比較においてENVEの優位点として挙げられることが多い。PROモデルでは、より高弾性なカーボン素材を用いることで、軽量化を図りつつもこの高い剛性を維持している。

一方で、乗り心地(コンプライアンス)については、相反する要素が内在する。ENVEは、新しい薄肉のカーボンラミネートが「しなやかな乗り心地」をもたらすと主張している。

しかし、フックレスシステムはタイヤビードを確実に保持するために、比較的高い空気圧と硬いサイドウォールを持つタイヤを必要とする傾向があり、これが硬質な乗り心地として感じられる可能性がある。

実際の乗り心地は、リム自体の柔軟性、選択するタイヤの銘柄や構造、そして空気圧というシステム全体の組み合わせによって大きく左右される、非常に繊細なバランスの上に成り立つと言えるだろう。

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メリットとデメリット

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これまでの技術的分析と性能評価に基づき、ENVE SES 4.5 PROの長所と短所を総括する。

メリット

  • 圧倒的な軽量性: 49/55mmハイトのエアロホイールとして1295gという重量はクラス最高レベルであり、登坂において絶大なアドバンテージをもたらす。
  • 最適化された空力性能: 重量削減を最優先課題としながらも、ベースモデルのSES 4.5と同等の優れた空力性能を維持しており、平坦路での速度維持にも貢献する。
  • 先進的なハブシステム: 新開発のINNERDRIVE PROハブと専用セラミックベアリングは、機械的抵抗を極限まで低減し、細かなワット数の削減を追求している。
  • プロレベルの応答性: 軽量なリムと高剛性な構造の組み合わせは、スプリントやアタック時の鋭い加速感を生み出し、レースの決定的な局面でライダーのパフォーマンスを最大化する。
  • Made in USAの品質と保証: 米国ユタ州での一貫した設計・製造による高い品質管理と、ENVEの手厚い保証プログラムは、製品に対する信頼性の証である。

デメリット

  • 高額な価格設定: 649,990円という価格は、市場で最も高価なホイールセットの一つであり、その性能が価格に見合うものか、投資対効果を慎重に判断する必要がある。
  • 限定的な使用用途: 滑らかな路面でのクライミングやレースに特化しており、荒れた路面での走行や日常的なトレーニングといった汎用性を求めるライダーにはオーバースペックとなる可能性がある。
  • タイヤ選択の制約: 「ミニフック」という名称にもかかわらず、機能的にはフックレスであり、適合するチューブレスタイヤの使用が必須となる。これにより、タイヤの選択肢が制限される。
  • トレンドとの逆行: よりワイドなタイヤを好み、快適性や転がり抵抗の低減を重視するライダーにとって、リム内幅を23.5mmへ縮小した設計は、現在のトレンドから外れるものであり、デメリットと捉えられる可能性がある。
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スペック一覧

ビルドスペック

Spec Table Front Rear
Hub Offering ENVE INNERDRIVE™ PRO Straight-Pull – Includes Lockring
Wheel Size 700c
Spacing Front: 12×100 | Rear: 12×142
Spokes Alpina Ultralite Aero R5 with TCX 2/1.5/2
Nipples Alpina Nylock Alloy
Brake Type Centerlock

ジオメトリ

Spec Table Front Rear
Effective Rim Diameter (ERD) 563mm 553mm
External Rim Width 30.8mm
Internal Rim Width 23.5mm
Hook 0.5mm
Hole Count 24
Depth 49mm 55mm
Tubeless Valve Length 66mm 72mm
Spoke Length (Innerdrive Pro Hubs) 276mm/278mm 270mm/272mm
Spoke Tension 120kgf

リムスペック

Spec Table Front Rear
Rim Weight 369g 383g
Wheel Weight 587g 708g
Wheelset Weight 1295g (Includes Tape and Valves – HG Freehub)
Hub Weight 87g 194g (HG Freehub)

対応タイヤ

Spec Table Front Rear
Aero Optimized Tire Size 27-28mm
Min. Tire Size 28mm (27mm ENVE)
Max Tire Pressure 100PSI (6.8 BAR)
Tire Type Tubeless Ready
Tubeless Tape Width 29mm
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まとめ:SES 4.5 PROが市場に与える影響と展望

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ENVE SES 4.5 PROは、単なる高性能ホイールセットという枠を超え、現代のプロサイクリング機材開発の最先端と、今後の市場動向を示す重要な製品である。その真価は、純粋な性能数値だけでなく、製品が持つ思想と市場に与える影響の中に見出すことができる。

このホイールセットは、一般的な市場トレンドから生まれた製品ではない。世界最高峰のアスリートの、勝利という一点に絞られた妥協なき要求から生まれたプロダクトである。その存在は、ENVEというブランドがパフォーマンスの頂点に君臨していることを示す象徴であり、技術力を誇示する役割を担っている。

SES 4.5 PROの登場は、ハイエンドホイール市場の細分化と専門化を加速させるだろう。

汎用性の高い標準モデルと、特化型のPROモデルが並存する状況は、もはや「唯一最高のホイール」という概念が過去のものとなり、用途に応じた最適な機材を選択する時代への移行を明確に示している。

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これは、競合他社に対しても、同様の専門的な製品ラインナップの検討を促すことになるだろう。

また、「ミニフック」の導入は、「フックドかフックレスか」という二元論的な議論に、新たな視点をもたらした。フックレスの熱心な推進者であるENVEでさえ、軽量化という特定の性能目標と、UCI規則というリスク管理のために、技術を適応させる柔軟性を示した。

これは、将来的にハイブリッド設計や用途に応じたビード形状など、より洗練されたインターフェースが登場する可能性を示唆している。

結論として、ENVE SES 4.5 PROは、そのターゲットユーザー、すなわち登坂性能を最優先するエリートコンペティターや、資金に余裕のあるエンスージアストにとって、エアロホイールにおける軽さと応答性の新たなベンチマークを打ち立てた。

しかし、その極めて高い価格と特化された性能は、より幅広い層のパフォーマンス志向のサイクリストにとっては、標準モデルのSES 4.5や他の多才な競合製品の方が、バランスの取れた賢明な投資となる可能性が高いことを意味する。

SES 4.5 PROの真の重要性は、その路上での性能に留まらず、高性能サイクリング機材が向かう未来の方向性を指し示している。

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