インターバルとLSDで向上する能力としない能力

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結局どんなトレーニングをやれば良いのだろうか。ある本ではLSDをやれと言われ、ブログではパワートレーニングやインターバルが有効と、情報が多ければ多いほど本質は煙に巻かれて見えなくなり我々の前から消えていく。これでは本当に何が必要なのかすらわからない。

先般のバイクジャーナルに寄稿された短時間高強度の優位性とLSD不要論、トレーニング方法を拝見しおどろいた。トレーニング理論は時代で変わるかもしれない、しかし負荷に対する身体の中の生理的な変化は不変である。

実際にメニューや、パワーウェイトレシオやレースに合わせたトレーニングを積むことは理解できるのだが、我々の体の中でどのような反応と、変化が起こっているのだろう。

それを紐解く手がかりを、筑波大学に提出された論文から紹介したい。高強度練習と、LSDでは毛細血管の発達が同様なのか、もしくは違うのかを調査し、まとめられた論文だ。

「スプリントおよび持久トレーニングがラットの骨格筋線維および毛細血管の発達におよぼす影響」

それぞれ今ホットなネタなので興味深く読み直した。「筋」といっても、「心筋」と「骨格筋」は全く異なり、筋という冠はついているが、全く質の異なる筋だ。骨格筋は骨についている筋肉であり、多くの筋線維が束となり構成されている。筋線維の1本1本が収縮することで筋肉を動かしている。一方、心筋は心臓の壁でたえず働き続ける筋で、自分の意志で動きをコントロールすることは出来ない。

■①の実験要約
15匹のラットを用い、3通りのトレーニングを実施。それぞれ以下のように分類される。
C群:なにもしない
E群:持久力トレーニング(30m/分 60min)
S群:スプリントトレーニング(72.5m/分 20sec*20set 160sレスト)
※1日1回、週5回というメニューを9週間繰り返えす。
※ラットにとってこのトレーニングはどの程度の強度かというとVo2Maxでいうところの84%の運動です。

■結果:
1.筋繊維1本あたりの「平均断面積」の変化について
・C群よりもS群は10%〜25%の肥大率が認められた。
・このうちFOG繊維(遅筋と速筋の間の筋)はおよそ10%程度増加した。
・E群はトレーニングの肥大は見られず、C群よりも下回った。

2.単位面積当たりの「毛細血管数」と「筋繊維1本あたりの毛細血管数」の変化について
・E群だけが高い値を示した。
C群 423
E群 654
S群 446

3.筋繊維1本を取り囲む毛細血管数の変化について
・SO筋繊維群(遅筋)には差が見られた
C群を100%とすると
E群は137%
S群は120%
速筋には差が見られない。

■まとめ:
LSDは毛細血管数の増加が見られ、スプリントトレーニングよりも優位である。

スプリントトレーニングでは特に筋繊維の断面積の肥大が認められる。

※「毛細血管数がLSDの方がより増える」という数値データが重要ですね。

■最後に
重要なのはどちらかが良いという判断ではなくて何を目的とし、どのような能力を向上させたいのか、につきる。例えば自転車を乗り始めたばかりの方なら、冬場の乗り込みの比率を増やし毛細血管を優位に増やした方が良いと考える。普段から何キロも毎日走り、自転車に乗る為の持久力が着いているならば、ここぞという時のアタックを処理できるようにインターバルも必要になってくる。

XCOの世界王者がLSD不要だからと言って、サイクリスト全員が不要であるということにはならない。
何事も条件や環境、能力、今までしてきたことがあっての結果だ。
自身が世界王者の次にゴールした「世界で二番目」なのか、「今年自転車を始めたばかり」なのか条件は多岐にわたる。

だからトレーニングは人それぞれ異なる。現状の能力に対して最適解はあるかもしれない。しかし全てのサイクリストに当てはまる最適解はない。だからこそ、自分を知ることから始め、トレーニングの最適解を常に模索したい。

「どうやったら自転車速くなりますか?」

の答えは単純だ。

「人によって異なる」

真理は常に単純である。

————–
今回、論文検索のために国立情報学研究所のCiNiiを利用しました。
一般の方でも利用することが可能です。

①参考文献
スプリントおよび持久トレーニングがラットの骨格筋線維および毛細血管の発達におよぼす影響
CAPILLARY ADAPTATION IN RAT SKELETAL MUSCLE AFTER SPRINT AND ENDURANCE TRAINING
NII論文ID(NAID) : 110001943276

②参考ブログ
クラブシルベストN村監督 中切れは万死に値する 

 

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