「いつかはTIME」という言葉かある。TIMEフレームに対する最大限のリスペクトと、憧れが凝縮された言葉だ。タイムフレームを買う(time教に入信すると)と厄介なのは、絶版になった過去の名車に乗ってみたくなる。
そんな思いにとりつかれるわけだが、過去の名車を眺めながらふと部屋で佇む。見とれるほどに美しく、今見ても全くと言っていいほど飽きない。VXは今から15年も前のフレームだ。しかし、現代の「マンボウ」みたいなエアロフレームと対比され、むしろホリゾンタルは新鮮に感じる。
古くも、あたらしく
昨今のフレームはどれもこれも「高剛性」や「重量剛性比」、「使いにくいBB規格」とどこに向かっているのかわからない。何年も言い続けてきているが「スレッドBB」「適度な剛性」「美しいケーブルルーティング」があれば良い。BBなんて圧入にする意味がわからない。どう考えてもスレッド式が良い。
剛性を追い求めていった結果、無知なユーザーは進むと勘違いしてしまう。サイクルサイエンスにも記載されているが、昨今のある程度技術がこなれたカーボンフレームならBB付近のタワミによる熱損失は、ほとんど差異がない。ところが、計測器上では前作のモデルよりも何パーセント剛性がましたとか、そんな話題にやっきになっている。
前作から改良された点を示すには、数値データーとして表すのがとてもわかりやすいし、改善が見て取れる。ただ、自転車のフレームに至っては、そういう剛性面をもはやユーザー側が追い求めていないことにメーカーは気づくべきだ。
それよりも、フレームとしての質感や乗り心地、所有欲を満たしてくれるフレームを求めている。そういう意味ではTIMEはある程度の信者を抱えつつも、最近は迷走しているように見える。タイムにエアロはいるか?カチカチの剛性は必要か?ユーザーは望んでいない。
私は昔ターマックSL2,3,4と乗っていたが、もし今それらを大事にとっておいたとして、こんなふうに並べてみても湧き上がるような高揚感など、微塵にも思わないだろう。タイムは時代時代で名車を生み出し続けてきた。
現行のラインナップは3種類しかない。まるで車メーカーのスバルのようなモデル展開だがスバリストが存在するようにタイム信者がいる。プロダクトを精鋭化することは、信者を生み出す。
この10年以上前のフレームたちを眺めながらおもう。2017年のフレームとしてどう組もうかと、彼らの前に座って考えるのだ。いつかはタイムよりも、いつでもタイムというのは、とても贅沢な「時間」なのかもしれない。