パナレーサーが低圧用エアゲージを発売しましたので早速購入して試してみることにしました。シクロクロスやMTBの場合空気圧を1.8BAR(バール:圧力の単位)だとか1.7BARだとか結構シビアに調整しなくてはなりません。さらにデジタルを使用していると1.85BARや1.95BARといった0.01の位まで調整する人も居ます。今までは左のデジタルゲージを使用していましたが、アナログも使ってみたくなり購入することに。
ちなみに、どちらが正確かという議論については、電圧や電流を測るマルチメーター(デジタルテスターやアナログテスター)の場合を考えてみると正確さはダントツでデジタルマルチメーター(デジタルテスター)の方が圧倒的に精度が高いです。デジタルマルチメーターの場合は、機能が有りすぎて使い切れないので、安いアナログテスターの方でいいや、と私は考えてしまったのですが、今回のパナレーサーの場合はどうでしょうか。
今回はデジタルゲージとアナログゲージの使い分けから、今回発売されたパナレーサー 低圧ゲージについて検証していきたいと思います。
パナレーサー 低圧ゲージ
早速ですが、まず気になる測定誤差から見ていきましょう。というか、コレが全てです。
- パナレーサー低圧ゲージ±3%
- パナレーサー通常ゲージ±3%
- パナレーサーデジタルゲージ:±2%
- パナレーサー低圧ゲージ:アナログ計測
- パナレーサー通常ゲージ:アナログ計測
- パナレーサーデジタルゲージ:デジタル計測(0.01)
- パナレーサー低圧ゲージ:¥ 2,699 (Amazon パナレーサー低圧ゲージ)
- パナレーサー通常ゲージ:¥ 2,706 (パナレーサー 通常ゲージ)
- パナレーサーデジタルゲージ:¥ 2,457 (Amazon:パナレーサー デジタルゲージ)
というように、身も蓋もない言い方をしてしまえば価格面、精度面、全方位的にデジタルゲージを買えばアナログ計測ゲージを買う意味は無いのかもしれません(完)。
しかし、実際に使ってみると必ずしも「スペック上だけで良し悪しの判断ができない」という結論に行き着きます。これは実際にレース現場で使ってみて、アナログゲージには十分なメリットがあると気付かされました。
まず、スペック上は最強のパナレーサーですが、0.01測れるがゆえに私のような神経質な人は「今日の泥は・・・1.85BAR・・・、いや1.83BARのほうがよいな、、いやラッキーナンバーは7だから1.87(略」と「体感できないほどにシビアに精度を求めすぎる」という無駄なことをしていました。
実際にはアナログゲージにのようにざっくりと「1.8BAR、1.9BAR、1.9と1.8の真ん中だから1.85BAR」くらいのざっくり0.5BAR刻み位で問題ないと思います。私のような鈍感な人だけかもしれませんが、0.01と0.01の違いまでは、よほどのことがない限り体感できません。
また、デジタルゲージで1.85から1.84に減圧するのはとても大変です。もう一度空気圧を入れ直した覚えが何度もあります。
では次は実際に実験してみることにしました。精度が最も高く0.01刻みで計測できるデジタルゲージを基準に測定します。実験方法は単純です。初めにアナログゲージで空気圧を調整します。2.9BARから最も低圧の0.7BARまで計測します。なお、デジタルゲージが測定する際に必要な僅かな減圧は考慮していませんのであしからず。
左の表記が低圧ゲージBAR(目測)で、カッコ内がデジタルで計測した際の値です。またデジタルとの誤差をパーセンテージで示しています。
- 2.9(2.93)1.02 %
- 2.8(2.84)1.4 %
- 2.7(2.73)1.10 %
- 2.6(2.66)2.26 %
- 2.5(2.55)1.96 %
- 2.4(2.45)2.04 %
- 2.3(2.33)1.29 %
- 2.2(2.24)1.79 %
- 2.1(2.13)1.41 %
- 2.0(2.03)1.48 %
- 1.9 (1.93)1.55 %
- 1.8 (1.82)1.10 %
- 1.7 (1.71)0.58 %
- 1.6 (1.60)0.00 %(Perfect!!)
- 1.5 (1.50)0.00 % (Brilliant!!)
- 1.4 (1.37)-2.19 %
- 1.3 (1.26)-3.17 %
- 1.2 (1.17)-2.56 %
- 1.1 (1.07)-2.80 %
- 1.0 (0.95)-5.26 %
- 0.9 (0.85)-5.88 %
- 0.8 (0.75)-6.67 %
- 0.7 (0.64)-9.38 %
- 0.6 (0.53)-13.21 %
測定器という特性を考えてみると、あえてデジタルゲージとアナログゲージの誤差を比べても(パワーメーターでもよくある実験)あまり意味がありません。もうすこし測定精度が高いゲージを使って測定すれば(測定器を校正するような測定器)意味があると思いますが、今回は念のためアナログゲージの数値的な傾向を知るために(皆好きだろ!)、記載しています。見ての通りデジタルと比べても誤差はほぼ無く、概ね良好でしょう。
特性としては、1.6と1.5の純トロを境に、だんだん誤差が悪化していきます。デジタルゲージが悪化しているのか、アナログゲージが悪化しているのか、誰でもできるような(必要なのは根気だけ)実験方法で用いた測定器自体の誤差が大きいので、結果だけ見ても低圧域の誤差の原因はわかりません。ただ、私達が使うようなMTBの2.0BAR、シクロクロスの1.4BAR〜2.0BARにおいてはかなり信憑性の高い数値をアナログゲージは測定してくれました。
という前置きをいちおうおいてから、横軸がBARで縦軸が%のグラフです。%はデジタルと比べて何%差があるか(何回も言うけど、測定器と測定器を比べるのはあまり意味ない)です。が十分すぎるほどにアナログゲージは使えそうです。
このグラフを見て私は「アナログゲージ」を今シーズンシクロクロスで使うことに決めました。ただし「不確かなものと不確かな測定器を比べている」という事をしているため、デジタルゲージが1BAR以下の低圧域で誤差が大きいのか、アナログゲージが1BAR以下の低圧域で誤差が大きいのかを判断することは出来ません。しかし、デジタルが確からしい値だとすると、アナログゲージは1BAR以下の測定は大きく誤差が出やすい傾向にあるようです。
もしもデジタルゲージの測定精度を盲信するならば、アナログゲージを信用して使用できる範囲は1.4BARから2.9BARの間といえます。
デジタルとアナログの使い分け
さて、ここからは少し話が脱線しますが、アナログとデジタルの使い分けについてです。空気入れに限った話ではないのですが、冒頭でも少し触れたと通り、デジタルとアナログそれぞれに短所と長所があります。エアゲージにかぎらず、電流や電圧を測るテスターの場合、基本的にはデジタルの方が優れています。テスターの話で言えば、デジタルテスターが主流です。
しかし、性能面でデジタルテスターが優れているもののアナログにはアナログのメリットがあります。それは「張りのフレ」です。実際にテスターを使用された事がある方はおわかりかと思いますが、アナログの場合テスターの針のフレを見て体感で測定対象の変化が感じ取れます。
で、今回のエアゲージですがパナレーサーのデジタルとアナログ式で空気圧を1.8BARジャストにする場合(そもそも0.01刻みで測定粒度が異なるものの)明らかにアナログの方がドンピシャに決まります(大味、ざっくりとも言う)。レース会場で一刻を争う事態の時に使用するとしたら、アナログです。
確かにデジタルのほうが、測定粒度が細かく、精度も2%と非常に性能が高いですが、経験上多少ざっくりと(0.5BARぐらい)していたほうが今日のCXレースでは気分が良かったです。「今日の泥は・・・1.85BAR・・・、いや1.83BARのほうがよいな、、いやラッキーナンバーは7だから1.87(略」となりがちな私なのでアナログのほうが向いているのかもしれません。
真面目な話、「体感で減圧調整がうまくいくのがアナログ」という事を本日のレース(雨天中止)で確認しました。
まとめ:アナログの時代が・・・!
今回通常用(8BAR)のロード用タイプで同様の実験を行いました。結果から行くと、試した測定(3〜0.6BAR)を行った所およそ10〜15%程の非常に大きな剥離が生じたのでブログ掲載を取りやめました。あまりにも不利な戦いだったようです(ということは2.0BAR以下のシクロクロスやMTBでは、、、使い物にならない地雷)。
2BARに設定したらデジタルだと1.7BARですからシクロクロスやMTBだと笑えません。
最後に素材的な面でのアナログゲージのメリットも記載してみます。
- 電池いらない
- 口が頑丈(←これ一番重要です)
- ざっくりと測る
結構困るのが、デジタルの口はゴムですり減ってきます。交換部品を大量にのむラボで注文したのですが、これは改善の余地があります。ちなみにこのパナレーサーデジタルゲージは、全く同じものが、黄色の別会社のロゴで売られています。それはともかく、アナログは口も頑丈でなかなか使い勝手も良い感じです。
もう一つ、特に重要だと思う点を述べて最後にしたいと思います。ゲージは人から毎回色々と借りてきたゲージなどではなく(そもそも測定精度も個体差があるため)、自分専用のゲージを1つ持っておき、あらゆる空気圧をその1つのケージで「測定し続ける」という定量化がもっとも重要です。パワーメーターもそうですが、何より「マイ測定器」を持つことが何より重要です。
実際にゲージには個体差がありますし、人から借りたゲージが狂っているなんて(ことのほうが多い)わけですから、「このマイゲージで2.0BAR」という正しい基準を備えておくこともゲージを正しく使う上で重要になってくると私は考えています。
これからシクロクロスシーズンが本格化していきますが、サイクリストにとって「一家に1ゲージ」という事が当たり前になってくるのかもしれません。