乗ってはいけないフレーム 東洋ハイブリッドCX-D インプレッション

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photo:arihiro

男を落とすためにはギャップが必要だ。

「見た目は純粋そうだったけど・・・」とか「普段はツンツンしてるのに・・・」といった話はよくある。大抵、世の中の男はこのギャップにやられてしまう。ギャップにやられる理由は人それぞれ違うが、ある物事から物事へのふり幅が大きければ大きいほど大きな衝撃を受ける。2階からモノを落とすよりも、高層ビルの屋上から落としたほうが大きなエネルギーを生み出すように。

ギャップにも今存在している「位置エネルギー」が重要だ。

プラスの位置からマイナスの位置に移動することは「イメージダウン」につながるが、マイナスからプラスに遷移すると「イメージアップ」として扱われる。ということは、ギャップが生み出す評価は相対的な評価であって絶対的な評価にはならない、はずだった。ブログ史上、過去最速でインプレッションした東洋ハイブリッドCX-Dは持つと重く感じるが、いざ乗ってみるとものすごく軽く、そして進む。重量感は6.8kgのバイクそのものだった。

私は今この体験を記録として、今書き残しておかねばならないと思い記事を書き進めた。

東洋ハイブリッドCX-Dは、なぜそのような体験をライダーにさせてくれるのだろうか。今回は関西シクロクロス最終戦C1のレースに東洋ハイブリッドCX-Dをぶっつけで投入した。それからすぐに記事を書いた理由や竹之内選手、東洋フレームのビルダー石垣氏との会話も交えながら東洋ハイブリッドCX-Dについて迫る。

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コマツが持ってきた

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見切れてる小西、松木、藤田、小松、松井のチームTT。リーダージャージを着用する松木さん。懐かしい一枚だ。

昔のチームメイトだった小松くんに「今度に東洋乗ってみてください」と言われたの10月のシクロクロス開幕戦だった。私は5年ほどTREKのBOONEを乗っているが、海外のトップレースで圧倒的な使用率だし、最近ではベルギー選手権でトーン・アーツがBOONEに乗って勝利している。

最新のISO SPEED(振動吸収構造)がシート部分と、ヘッド部分に仕込まれており振動吸収が非常に高い。シクロクロスバイクで最先端を行っているバイクの1台だ。BOONEの現行最新型を乗っていることもあって、東洋フレームにはそこまで興味がわかなかったのも無理はない。確かに海外で活躍する竹之内選手や中村(旧姓:福本)選手が乗っていたことでも知っていたが、やはりカーボンの軽いバイクが好みだった。

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7戦目の堺ステージのレース後に、小松くんが白い東洋のバイクを持ってきた。試乗車だという東洋ハイブリッドCX-Dは、ハンドル、ステム、シートポストすべてがNITTOのアルミだった。持った瞬間、「重い」と思った。私のバイクはフルカーボンの上にハンドルもボントレガーの軽量&振動吸収、ステムもSLで軽く、サドルはS-WORKSのPHENOMで150g台。クランクは現行最新のDURAACE9100、ENVE CX(リム重量280g)とクリスキングR45、CX-RAY、Dugastで重量は7.4kgとS-WORKS VENGEと同じ重量で軽い。

普通に考えると、どちらをレースに投入するかは明らかだ。特に軽量一辺倒のロード乗りだからなおさらだ。

小松くんとは個人的に焼肉に行ったり、今のロードチーム発足時にも一緒に走っていた仲なのだが、だからあえて正直に言った「次は最終戦で総合ランキングがかかっているから、試走では使うけど実際にレースには投入しないと思う」と。どんなに仲が良くても期待させるのは申し訳ないので、機材のことに関しては正直に伝えるようにしている。

2週間ポジションだけ出して、近所のアスファルトを走る。ただ本気で踏むわけじゃなくて、流す感じのみ。特にバイクの性能もわからず、「持ったら重く感じるバイク」だった。

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CX最終戦C1

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photo@keitsuji

勝負するために東洋ハイブリッドCX-Dを選んだ。

優勝はできないが、どうにか上位に食い込んで今年目標としてきた総合TOP10には入りたい。というよりも、入るために最終戦へ向けて準備をしてきた。首の皮一枚でつながった微妙な位置。スタート前にMCのガラパさんに「10位争いも熾烈ですw」と話を振られる。ミスったり、ポカしたら終わる重要な最終戦だ。

試走はTREK BOONEと東洋ハイブリッドCX-Dをそれぞれ使い分けながら何周も試した。空気圧はフロント1.43barでリアは1.47barに設定。この日のコースは川の増水で砂が積もって地面が固まっていてバイクが跳ねやすい印象だ。まずはTREK BOONEで走る。自分のバイクだからもちろん使いやすい。やや跳ね上げ感は強いが、走れないほどでもない

そして東洋ハイブリッドCX-Dに乗り換える。

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photo@keitsuji

フレームテストもかねていたため、ホイールまるごと交換。乗り換えると、妙な違和感がある。地面の震動が大人しく感じる。そして、荒れた路面では、明らかに東洋ハイブリッドCX-Dのほうが進む。後ろ三角のおそらくチェーンステイ寄りの部分がわずかにしなって、踏み込むごとに押されるように進む。そして、「持ち上げたときの重さ」とは打って変わって「異常に軽い」と思う走行感だ。2008~2014年ころに開発されたTIMEフレームは「脚が残せるバイク」だったが、まさにあの流れを継いでいるのかのようだ。

「こりゃエライもん乗ってしまったな」と思いつつ、様々なセクションのタイムを計る。特にコーナーリング中の操作感と抜けるスピードが好印象で最終戦のコース状況であれば明らかに東洋ハイブリッドCX-Dのほうが速くクリアすることができた。これがたとえば登りの多い日吉や全日本が開催されたマキノだとTREK BOONEにアドバンテージがあると思う。

タイヤもそうだが、コースコンディションによってフレームも変えるというアプローチもアリだなと思った瞬間だ。

オールラウンドに軽いバイクが良ければTREK BOONEを選ぶ。ただ、平坦メインで跳ね上げがきつく、コーナーが多ければ、東洋ハイブリッドCX-Dを選ぶほうが早く走れる。その理由はどこにあるのだろう。現段階での私の結論としてはインピーダンスロスにあると考えている。インピーダンスロスについては以前記事でも紹介したが、地面の突き上げがきつくなればきつくなるほどその分抵抗も増えていく。

【なぜ?】タイヤ空気圧を上げ過ぎると、転がり抵抗が増す実験結果
はじめに 本記事はもともと、「MAVIC UST」の記事の一部として執筆した内容だ。ところがあちらの記事自体が膨大な文字数で構成されてしまったため、別の記事として起こした。本記事で言わんとすることは、「空気圧を上げすぎると抵抗が増して...

ガタガタの路面を走ることで、幾度となくバイクが上に持ちあげられてまた着地する。この位置エネルギーの変動は少なければ少ないほどいい。まるで檻カゴの中に入れられたハムスターのように、宙に浮いてスピンしつづけたとしても進まないのだ。東洋ハイブリッドCX-Dはまるでフルサスのバイクのように路面を追従していく。

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photo@keitsuji

いまここで「追従している」という表現をしたが、実は試走をしたあとになぜこのようなことが起きているのかさっぱり気づくことができなかった。そこで、竹之内選手にこの体験を話したところ、「路面の追従性能が良いから速く走れる」ということを教えてくれた。ここでやっとインピーダンスロスの話とつながった瞬間だった。

マウンテンバイクであればサスペンションが仕事をしてくれるからガタガタ道でも簡単に走れる。しかし、シクロクロスはリジットだ。衝撃の吸収はタイヤで行うのが定番だ。しかし、東洋ハイブリッドCX-Dはフレーム全体がサスペンション(特にリア三角)として働き、衝撃を吸収する。そして、もう一つ重要なのは「バイクのどの位置にライダーがいるか」だ。

東洋ハイブリッドCX-Dに乗ると気づくことがある。「私は今バイクの真ん中に乗って、バイクを支配している」と。自分の支配下でバイクを操作できている感覚を覚える。しかし、それは錯覚だ。バイクのジオメトリ(トレール量がどのブランドよりも最適値に近い)と使われている素材がよい仕事をしている。

東洋フレームの技術者たちが生み出した設計が「そう思わせている」のだ。勘違いしてはいけない。決して、ライダーがうまくなったわけではない。それはフルサスのMTBなら急な坂でも楽々下れることと一緒だ。東洋ハイブリッドCX-Dはライダーをサポートしてくれるバイクだ。「走る」、「曲がる」という基本性能を極限まで追求したバイクと言っていい。

そのような「味付け」なのだ。

ただ、この味付けの話はもう少し深いところまで続く。

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選手用と市販用

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photo:etchant55

バイクを返しに行くとたまたま竹之内選手がいて、「僕のハイブリッドCX-Dも乗ってみてください」と。。。シクロクロッサー冥利に尽きるが、どうやら選手用は「何か」が違うらしい。それを感じられるかどうか試されることになった(汗)私が今回使用した東洋ハイブリッドCX-Dは市販されているモデルだ。竹之内選手と私が乗っていたモデルは両方ハイブリッドCX-Dだ。外観からは全く違いがわからない。

「違いがわからなかったらどうしよう・・・」と、不安になる。

かなりのプレッシャーだ。しかし、乗ってすぐに何が違うのか理解することができた。そして今こうやって「言語化」できるレベルにまで落とし込めている。選手用と市販用では回転半径が全く違う。竹之内選手のバイクはやや大回りするように設計されており、市販用は小回りするように設計されている。ステアリングがクイックというわけではなく、バイクが移動していく半径が全く異なる。見た目もサイズも同じバイクだが「味付け」が全く異なっていた。

スキーの板でも「ラディウス 9m」といったように板にそれぞれ回転半径の表記がある。GS系の板はラディウス30mとかだし、スラローム系の板は10mだったりする。ダウンヒルになると50mになる。まさにこの回転半径が違うのだ。

という「何が違うか」という私の答えを竹之内選手に告げると、どうやらその違いは正解だった(嬉)!しかし、なぜそのような設計にしているのか疑問だ。そこで、その秘密を聞くと、快く教えていただくことができた。

選手用の味付けの理由はプロの速度域と海外のコースレイアウトにある。確かに海外のコースレイアウトを見ていると、直線からなだらかなカーブが続くようなスピードコースが多い。さらにプロの速度域で曲がっていく必要があるため、環境に合わせた味付けに変更していると言う。

シビアすぎる・・・。

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photo@keitsuji

対して市販用はと言うと、国内のJCXや関西CXで使うにふさわしい味付けがされている。国内アマチュアライダーのスピード域にベストマッチするように設計され、細かなコーナーが多い関西CXなどのレイアウトに最適なハンドリング設計だ。コーナーが苦手でも、バイクがサポートしてくれる。もしも、選手用と市販品どちらかを選べるとしたら私は間違いなく市販品を選ぶ。

ここで「双方のフレームには違いがある」と簡単に書いているが、何か引っかからないだろうか。サイズも同じで見た目も同じバイクだ。しかし、いざ乗ると全く違う乗り物なのだ。東洋フレームは「ライダーがどのような操作性を求めているか」を明確に理解し、フレームにまで落とし込んでいる。

そして使うサイクリストが「そう、この動き」という感覚レベルにまで伝わってくる。まさに神がなせる技、職人が生み出した芸術作品である。味付けは間違いなくライダーが明確に認識できる。そのような細かいチューニングを東洋フレームはやってのけるのだ。

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東洋フレーム

東洋フレームは知る人ぞ知るブランドだ。そして、この映像を見ればわかる。職人が一つ一つ手作業で作り上げる。その品質は国内にはとどまらない。当ブログの読者はすでにご存知かもしれないが、Specialized、Ritchey、テスタッチのOEMも行ってきている。

最近では「スペシャライズド 40th Anniversary ALLEZ Limited Edition」を手がけたのも東洋フレームだ。

そして、あのゲイリー・フィッシャーも次のように語っている。

「彼らが作るバイクはフローレスでビューティフル。ホント“素晴らしい”のひとことだね。オレが最初に買った日本製バイクは、大阪のTOYOフレームが作ったものなんだ。当時の職人だった石垣さんの息子さんが、現在も家業をしっかりと継いでいるようだね。われわれはみんなビスポーク、カスタムメイドのバイクを作るメーカーだけど、日本でも仲間がこうして頑張っているのはとても嬉しいことだね」

ゲイリー・フィッシャー

WIRED.JP:INTERVIEW 自転車界の生ける伝説、ゲイリー・フィッシャーが語る自分のこと&日本のこと

Specialized、ゲイリー・フィッシャー、もはや説明は不要だろう。そして、そのブランドが日本の大阪は柏原市にある。

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まとめ:乗ってはいけないフレーム

東洋フレームは手で持つだけにしておいたほうがいい。乗ってしまったら最後、その乗り味の虜になる。乗ってはいけない。欲しくなってしまうから・・・。そして今回のインプレッションは、「パイプがどうの」「溶接がどうの」は一切書かなかった。理由はもうおわかりだろう。私が言語化できる領域を超えていた。ただ、乗ればわかる。

パイプが繋ぎ合わさったラグ部分。。もはや「はじめからこの状態」であったかのようなつなぎ目だ。息を飲む美しさ、狂気に満ちた恐ろしい仕上げである。

「重いから」という表現にはフルカーボンフレームと比べてという意味では全面的に同意する。私もそう思う。ただし、正確な表現や解釈をするのならば、「重いが、軽く、そして進む」と。私は自分の経験と、この衝撃的な体験からぜひ提案したい。まず持ってみて重さを感じてほしい。

そして乗ったときの強烈なギャップを「楽しんで」ほしい。

私は、総合がかかった大事な最終戦で「速く走れるバイク」を選んだ。バクチにも近かったが、フルサスのように路面を追従してくれるバイクに惚れ込んだ。レース直前の試走で、クランクを変えてでも使いたいと思った東洋ハイブリッドCX-Dである。そして、本当にレース直前に整備してくれたネクストステージの島本さんに本当に感謝してもしきれない。

昨シーズンまで島本さんも東洋フレームに乗っていたからいろいろと話すことができたが、はやりフレームの精度が恐ろしく高いらしい。高い精度から生み出される「芸術作品」は所有することでも満足できるかもしれないが、あのフレームの独特の感覚は、一種の「麻薬」のようなものだろう。私は食わず嫌いだったのだ。

価格はROAD-2フレームが115,000円から。トップチューブにカーボンを使ったT-Carbon ROAD フレームセットでも250,000円である。しかも、メイド・イン・ジャパン。東洋製だ。値段は高いだろうか?いや、東洋フレームの作りの良さ、日本人の名工が作るフレームを考えたら、今の時代安いぐらいだ。

東洋フレームはまるで高級時計のようだ。1万円の時計でも、30万円の時計でも同じように一秒を刻む。しかし、一秒を生み出す仕掛けや構造、作り込みは全く別物なのだ。高級時計の精度と作りに惚れ込み、その意味を理解すれば時計といえど何十万円万も出せるのである。東洋フレームも同じだ。

東洋フレームはまるで時計界のグランドセイコーである。

あの独特な乗り心地はひとたび体験したらやみつきになる。決してカーボンフレームでは味わえないムーブメントをぜひ体感してほしい。※今回いろんな方から「なんで東洋乗ってるの?」という質問が多かったため急遽記事を作成しました。めちゃくちゃいいです。まじで。

東洋ロードフレーム

東洋シクロクロスフレーム

なお、オーダーや細かな問い合わせは松井くんにしてもらえればサポートしてくれるとのこと。工場と直通なのでこっちのほうがええと思います。m.hibiki12@gmail.com

また今週末は大阪の工場見学があるのでマジでいきたいんだが。。。

東洋フレーム:経営者の思い

東洋フレーム:オフィシャルサイト

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