チタンの鎧、長期インプレッション。効果と寿命をテスト

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チタンの鎧イメージ画像2(チェーン)

チタンの鎧に関して記事を書いてから、1年以上が経った。発表当初は様々な議論が行われていたが、試験機上で抵抗が下がる結果が出ているため私も実践投入した。チタンの鎧は、東京五輪ロードレースで與那嶺選手がしようしたり、シクロクロス日本チャンピオンなどがこっそりと使っている(らしい)。

単純な話、「施工したら抵抗が下がるのか」という事が知りたい。その答えは、実験上は抵抗が下がる結果が出た、という1つの結果に収束する。チタンの鎧を施工するとドライブトレインの抵抗が下がるのだ。

今回の記事は、実験結果を振り返りながらチタンの鎧を施工したドライブトレインを使ったレポートをまとめた。

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実験

フリクション

実験は、サイクリストにおなじみの「ローラーで40km/hで300Wだった」というような実験とは異なる内容だ。非施工品、チタンの鎧施工品を用意して一定速度に必要な電流値(電力値)をテスターを使用し電力値から求める方法が用いられた。

電動モーターを一定速度にタイヤを回転させ、そのときに投入された電力値を測定する。電圧が一定(5V)のため、電力値の相対値は電流値から把握できる(電力=電圧×電流)。

重量30kgの重りをリアホイールに負荷をかけつつ行った実験結果は以下の通りだ。

  • 30km/h走行を想定: 非施工品: 1.75-1.8A、施工品: 1.65-1.7A
  • 60km/h走行を想定: 非施工品: 2.8-2.9A、施工品: 2.75-2.8A

測定電流値幅の中心値を計算に採用すると、

  • 30km/h想定では5%(1-1.675/1.775=0.056)程度が改善できている。
  • 60km/h想定では3%(1-2.775/2.850=0.026)程度が改善できている。

これらの実験結果は、フリクション軽減の根拠になる結果だ。結果だけみれば、冒頭の「施工したら抵抗が下がるのか」の問いに対する答えになる。あとは、実際に使ってみてどうであるかだ。普段の練習からレースまで実際に使ってみたところ、感覚的な違和感があった。

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インプレッション

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チタンの鎧を施工したのは、チェーン、チェーンリング、プーリー、スプロケットの3つだ。ドライブトレインすべてに施工を行った。結論を先に箇条書きにしてまとめておく。

  • 噛込み感が増す。
  • 汚れが付きにくい。
  • 干渉音が減る。

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金色に見える部分は下処理をしたためだ。チタンの鎧とは関係がないとのこと。写真ではよくわからないが、スプロケット自体も摩耗している部分が金色になっている。

抵抗が下がったのかは、正直わからなかった。実際には数ワットの抵抗削減であるため体感できるほどではないというのが本音だ。実験データー上で抵抗が下がっているという報告を信じるしかない。ただし、実際に使ってみるとフリクションロス以外で、変わったことがいくつかあった。

一番の違いは、「噛込み感が増す」ということだった。この表現は非常に感覚でありあいまいな表現だ。別の方向からこの感覚を表現すると、「スターラチェットを36Tから54T」変えたときの感覚と似ている。さらにONYXハブの遊びが無いラチェットの感覚とも似ている。

釣りをする人はスピニングリールの、インフィニットアンチリバース(ダイワ)やローラークラッチ(シマノ)のような機能を想像してほしい。チタンの鎧を施工すると踏み込んだ時の感覚が、リールのローターが逆転しないようにする仕組みとよく似ているのだ。

実際にチタンの鎧を施工したドライブトレインを使うと、抵抗が小さくなることはよくわからないが、明かに踏み込んだ時のかみ合わせが増す感覚がある。この感覚がカタログ説明にもある「伝達効率が向上する」と結び付けると言えば聞こえがいいが、実際に伝達効率の向上の結果を「かみ合わせが良い」と感じているのだろう。

スターラチェットの36Tから54Tに変えたときにも、かみ合わせが早くなる。この感覚と似ているということは、かみ合うまでの時間が短縮される、すなわち伝達するまでの時間が減少する。というように考えていけば、あながち伝達効率が上がるという触れ込みも嘘ではないようだ。

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また、トルクをかけて踏み込んだ時にわかった感覚として、思いっきり踏み込んだ時にドライブトレインに滑るような感覚がある。これまた感覚的な話で恐縮だが、チェーンリングの上をチェーンが滑っている感じだ。別の言い方をすると、いままでドライブトレインにざらつきがあったのだが、つるつるとした氷の上をすべるような感覚に変わる。

この感覚は、低負荷では感じられない。トルクをかけたときの高負荷の場合に感じるだけだ。メーカー側は「トルクの分散」と呼んでいるようだが、チタンの鎧は負荷が上がるほど、比例して抵抗が減るという傾向にある。この点は確かに感じられたので、スプリンターやシクロクロス、マウンテンバイク、トラック競技に相性が良いのはこれが理由なのだろう。

そして、走行性能に関係が無いが汚れが付きにくいことは確かだった。目で見てわかる。2週間ほど掃除しなかったロードバイクのドライブトレインは非常にきれいなままだった。しかし、いつも以上にワックス系潤滑材の飛び散りが多かった。

ファンデルワールス力による自浄効果らしいが、ワックス系の潤滑材だとチェーンのコマに入ったワックスも掻き出すのかもしれない。

一つ疑問なのは、自浄効果によりチェーン上の汚れを排出し奇麗になるのならば、チェーンの潤滑材と相性が悪くなるのではないかと懸念している。この点についてはオフィシャル側も触れていないため確認が必要な部分だ。

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まとめ:チタンの鎧をすべきか

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チタンの鎧をかなり使いこんだ結果、今後も使うことを決めた。まず、実験上抵抗値が下がっているのならば使わない手はない。アドバンテージは1ワットでも欲しいからだ。さらにかみ合いやダイレクト感が増すことも実際に体感できている。

また、チェーンリングの減りが目に見えて少ないことがわかる。ギアを長持ちさせる効果は確かにあるようだ。1000km程度では摩耗が見られなかった。実際には5000kmほど使えるとあるので、機材を長持ちさせるためにも良い施工といえる。

チタンの鎧の技術は、素人には理解しにくい。とはいえ、サイクリストの立場としては難しい話は抜きにして、純粋に抵抗値が下がり機材が長持ちすれば良いと考えている。ただ、まだ原理的に理解できていない部分もある。

ドライブトレインの伝達効率が向上する理由は、高トルク下で粒子と粒子が綿密に食い込み合い伝達効率が向上するからだという。そこで単純に疑問に思ったことがある。「ベアリングの役目をしているのに、なぜ逆の動きのように噛み合うのか」と。

この「噛み合って伝達効率が向上する」と「ベアリングの役目でフリクションが低減する」というのは相反するように思える。この部分が、理解できなかった。

とはいえ、常にあらゆる手段を使って抵抗値を下げたいという思いは変わることは無い。チタンの鎧はナノレベルでまさに「目に見えない」世界の話なのだが、実験上、体感上明らかに違いが判る施工だ。新しいテクノロジーは常に受け入れがたいが、まずは実際に自分の脚でチタンの鎧の真価を確かめることから始めてみてほしい。

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