メーカーの完組ホイールと手組ホイール。明確なせんびきはないにせよ、その境目は年々曖昧になってきている。ROVALやENVEは明確に「ハンドビルド」いわゆる手組と明言しているし、FFWDも同じように手組をアピールしていた。というよりも、世の中に出回るほとんどのホイールは人が組んでいる。
大量生産のママチャリのホイールだって手組だ。そうすると、メーカーの完組ホイールは何で差別化をしているのだろうか。私は自分でリムメーカーにお願いして、オリジナルのリムを作成してもらった。シクロクロスシーズン前からテストしていたリムは先日完成して現在、INTHEWOODSのRyoOkamoto氏がデザインしたリムに生まれ変わろうとしている。
私は自分でリムを設計したが、明らかに市販品とは異なる内容を考慮する必要があった。それらを重要な順にまとめると以下のとおりになる。
- スポークホールニップル側の大きさ
- スポークホールリムベット側の大きさ
- スポークホールの角度ニップル側
- リムプロファイル
- 使用素材
手組ホイールで使用されるリムは「汎用品」であるため、無難なあたりさわりのないスポークホールの角度で設計されている。この角度が影響してくるのはハブ側の設計だ。実際にスポークホールの角度とハブ側の設計がアンマッチするとスポークが真っ直ぐに張れず、一旦湾曲するといった問題が出てくる。
また、スポークとスポークが交差する部分が接触してしまうなど問題も多い。また、多くの手組ホイールの場合Jベンドスポークを多用する。Jベンドスポークはストレートスポークよりもスポークテンションを上げられない。まっすぐ引っ張るものに対して、曲がったものを引っ掛けているためその分ロスがある。
メーカーの完組ホイールのリムというのは、「使用するハブ」との相性が良くなるようにスポークホールの角度を設計する。またROVALやCADEX、HUNTのように昨今の「軽量化マジック」で多用されるスポーク本数をギリギリまで減らしたホイールもメーカーならではだ。スポークホールが少ないハブを設計できるのもメーカー完組ホイールの強みと言える。
実のところ、良いスポークを使えばディスクブレーキで体重制限さえすれば片側24本以下のスポーク本数でホイールを作れる。ただ、私の場合はDTSWISSの新型ハブに拘りたかったため、24本が最低本数になる。実際に昨今のホイールが軽くなっている「軽量化マジック」の背景には、「スポーク本数を減らしたこと」とさらには「新型dtswissハブが軽い」という2つの要素が大きい。
最近、妙にディスクブレーキのホイールが軽くなってきたが、リムブレーキのようにリム外周を強化する必要がなくなったにせよどこのメーカーも軽い。ハブは前後で300g以下、実際にdt180expは283gだ。そこにcx-rayやエアロライトであればニップル込みで4.8g程だ。rapideが42本のスポークだからハブとスポークでおよそ500gほどになる。
とてもじゃないが、メーカーのプロモーションに「リム重量は据え置きですがスポーク本数とハブ重量が大幅に軽量化したので完成重量が見せかけで軽くなりました」とはとてもかけないだろう。そしてそんな正直に書く必要もない。
重要なのはいつもリムの実測重量だ。ROVAL RAPIDEのリム実測重量の推定は1424g-500gで、単純にリム重量は461g、前後でリムハイトが異なるから450g/471gとしたら、リム重量はそれほど昔と変わっていない。このリム重量は見た目的にはかなり重いと思うが、rapideのリムプロファイルを考慮するのならば「超軽い」部類だ。おそらく、通常のメーカーでは構造もそうだし重量ももっと重くなるだろう。このあたりまでくると、メーカー品の完組ホイールを買う価値がある。
最近のホイールで買う勝ちがあるのはROVAL RAPIDEだと思う。しかし話題のZIPPやENVE foundationはスペックを確認していくとそれほど魅力的ではない。
zipp303sやenve ENVE foundation45,65といった廉価版リムフックレスはチューブレスだけ使う人ならばよいとおもう。しかし、GP5000のクリンチャーのように「フックレス禁止」と明確に書いてあるタイヤが使えない。私はラテックスチューブを使ってGP5000を使うからこれらのホイールは問題外だ。チューブ専用ホイールはシクロクロスでしか使わない。さらに、淡い期待を込めてフックレスリムにクリンチャーを入れるのはやめたほうがいい。
私はENVEのロード用フックレスリムのAR DISCに自己責任でクリンチャーをはめたが、高圧にするとビードがリムから飛び出る。したがって、クリンチャーを使う事と高圧で運用するようなことはやめたほうがいい。シクロクロスにはフックレスを5年ほど使っているが、それでもロードには全く使う気になれない。
このような自身の実験の経験からクリンチャーを少しでも使うのならばフックレスリムはやめておいたほうがいい。私は選択肢から外した。
メーカー品であれば、数を作れるのでかなり自由度が高い。それでも、ハブやスポークが廉価版だったりするから注意だ。手組ホイールよりも完組ホイールのほうがメリットは多い。いわゆるハブ設計とリム設計を一つのホイールシステムとして構築できるからだ。あとは真っ直ぐなストレートスポークを使えばいい。
その上で、「完組ホイール」と呼ばれるホイールは組み上げは手組みだが、設計はハブとリムを専用設計してある。そのうえでスポーク本数も減らして軽量化できる。このあたりがメーカー品の完組ホイールの強みと言える。とすると、ハブの設計を軸にしてリム側を専用設計にするとどうだろう。
ある程度メーカー品のホイールに劣らないホイールが作れそうだ。そんな考えで自身が設計したリムとホイールの話はまた後日紹介していきたい。
八重洲出版 (2018-12-20T00:00:01Z)
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