ロードバイクの買い時は”いま”ではない。

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ロードバイクを買うタイミングなんて、数年前は人それぞれ千差万別にあると思っていた。

人それぞれ、収入や置かれている状況、バイクの使用用途は無数にあり「○○月か20XX年が買い時!」など言うことは、株で「うさぎ年に値上がる銘柄はこれ!」という経済アナリストのあてにならない予想となんらかわりがない。

しかし、2022年以降はロードバイクの「買い時」が多くのサイクリストの頭を悩ませているようだ。いろいろ調べていくと、その理由は大きく3つにわけられる。

  1. 値上げが続き、いまが一番安い
  2. 価格高騰で買いたいが買えない
  3. 良い機材がない

これ以外にも、先程述べたとおり人によって考え方や購入への動機は千差万別だ。話題が発散しないよう、今回は大きく3つに分けることにした。まず1番目の「値上げが続き、いまが一番安い」という問題からみていく。

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「値上げが続き、いまが一番安い」のワナ


もしも、私がショップ店員やYoutubeでPVを稼ぎたいのなら、あえて消費者の「不安」や「恐怖」をあおるような口車や見出しでモノを売る。

「今後、自転車機材はまだまだ値上がりし続けます!」

「いまが一番安いから、いまが一番買い時ですよ!」

と。

その昔、どこかの国で、バブル時代に土地神話というものがあった。その話と似ているが、自転車のほうが資産価値が低いし、流動性はもともと低く、リセールバリューも期待できない。とはいえ、「値上げが続く」とみれば今が買い、というのは一理あると思う。

スペシャライズドが認定中古車を始めた件について。
2022年8月8日に業界初の認定中古車ストアである「スペシャライズドCPO」が西新宿にオープンした。CERTIFIED PRE-OWNED(CPO:認定中古車)はスペシャライズドが認定した中古車であり、定価よりも安く購入できるという。 クルマの認定中古車といえば、どのメーカーも展開しており一般的な認知度も高い。筆者自身のクルマもホンダの認定中古車であり馴染み深い。クルマの場合はディーラーとの付き合...

重要なのは、どのような状況の人がその言葉と向き合う”必要がある”かどうかだ。受け止める必要がある人は「すでに購入するモノが決まっている人」であって、検討中の人や、迷っている人は、この言葉をそのまま購入への理由や動機に結び付けない方がいい。

自身が納得して商品を喜んで買うのならいいが、「迷っていたら値上がるかもしれない、買うしかない」という「不安」から逃れたい一心で、購入の決断をするのは本末転倒だ。さらにダメなのは、何も買う気がないのに焦って「買うものを探す」という行為が一番カネをドブに捨てている。

自分にはあてはまっていない、ショップ店員のセールストーク(彼らはこれが仕事)に丸め込まれて、ふらっと立ち寄ったお店で高額なバイクを購入してしまうかもしれない。自分がショップの店員なら、日々の生活や勤め先の売上を上げるために、いま最も消費者の心を揺さぶるパワーワード、

「値上げが続くので、いまが一番安いですよ!」

を使いまくって、やはりバイクを売りまくる。自分の生活と仕事の評価が優先だ。ただ、この言葉は何度も言うが「検討中の人」や「迷っている人」に対して使うのは好ましくないし、使ってほしくない。彼らが必要としているのは、彼ら自身の中に存在している購入するうえで障害になっている「迷っている理由」が解決されることだ。

その理由が解決できれば、次の課題として価格が浮かび上がってくる。そうすると、「すでに購入するモノが決まっている人」に昇格し、「値上げが続くので、いまが一番安いですよ!」というセールストークはよりいっそう重みを増し、効果が高くなる。

ただ、「値上がりが続く」というのは、決して青天井ではない。どんな”モノ”であってもいつか高止まり、それなりの価格帯で落ち着く。賃金とのバランスも影響し、高すぎると逆に売れなくなってしまうからだ。そのサジ加減をいま、各メーカー、代理店が探っているのだ。

これからは、富裕層だけをターゲットとする販売戦略もある。金払いもいいし、良い機材を少々の交渉で買ってくれる。しかし、販売のコアとなるのはいつもエントリーからミドルの領域だ。エントリーグレードのバイクも買いづらくなっている状況にもあるが、ある程度モノの値段は落ち着くところで落ち着く。

だからこそ、「値上げが続く!いまが一番安い!」という口車に乗らず、自分の迷いや悩みが解決したら購入すればいいと思う。そして、こういった判断基準を自分の中に確実に持っておくほうがいい。

ひとつ意地悪なことを言うと、「迷う理由が値段なら買っておけ、買う理由が値段ならやめとけ」という格言がある。ただ、この格言は「モノの価値」がわかる場合であって逆に、クソ機材を高つかみしてしまうことだってある。

したがって、最後は自分が納得するような購入動機を自分の中に設定する他ない。

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価格高騰で買いたいが買えない


価格高騰は、なにも自転車機材に限った話ではない。

現代はあらゆる”モノ”の物価が上がっている。主な原因は、「燃料・資源価格の高騰」と、「円安による輸入コストの増加」だ。身近なものでは電気代で、筆者の2023年1月の電気代は25000円だった。電気を発電するための燃料資源の価格が上がっている。

自転車機材に最も影響を及ぼしたのは、「円安による輸入コストの増加」だ。シマノのコンポーネントは日本製であるものの、ほとんどのバイクブランドは海外メーカーで日本の代理店が輸入して国内に販売している。

最近では完成車で200万円を超えるバイクが登場して話題になった。主にドルの影響を受けるバイクブランドが価格の上昇傾向にあるが、主要通貨がユーロのCANYONなどはあまり影響を受けず、日本代理店の企業努力も相まって小幅な値上げにとどまった。

新型cervelo S5発表!ツール制したエアロロード 220万円!!!
ツール・ド・フランスを制したcervelo S5が新UCI規定を採用しついに登場した。新しいS5は前作のS5と違いが無いようにみえる。しかし、フレームは軽く、エアロが改善され、構造が単純化した。 新UCI規定を採用したことによりフレームは分厚くなった。フロントエンドを簡素化するための新しいフォークと、主流になるワイドタイヤに対応したタイヤクリアランスを備えている。 新しいS5は、以前のS5と比較し...

「価格高騰で買いたいが買えない」という問題の対応はいくつかあるが、高くて買えないのならば、単純に買わないという決断をすればいい。なぜこのようなことを言っているかというと、前の章で「値上がりは今後も続くから、いまが一番安い。」という、あおり話をよく見聞きするようになったからだ。

さらには、「借金してでも買ったほうが得」というような、自転車機材を買うには、少々合理的ではない購入方法を勧めているYoutuberもいた。自転車機材は資産価値が低く、嗜好品に近い商品であり、決して必需品ではないため、よほどのことがない限り、利子を支払う借金をしてまで買うものではない。

買いたい気持ちはわかる。「買いたいが買えない」というのは、生きていく上で常に付きまとう。「家がほしい」「車が欲しい」「ブランド物がほしい」という欲求と常に付き合っていく必要がある。

が、そこはあえて自分自身の身の丈にあった機材を選ぶべきだ。正直なところ、DURA-ACEやULTEGRAの性能差は小さい。重量くらいだろう。ハイエンドではなくミドルグレードや、ローエンドでも十分だ。SNSに上げたりすることで承認要求は満たされるかもしれないが、走りが劇的に変わることはない。

105もDi2化と12速化により高額商品路線へと進んでいるが、11速の105でも十分だし価格もこなれている(入手性はまた別の話としてだが)。

あえて「高いとわかっている機材」をどうにかして手に入れようとする必要はない。お金持ちは気にせず買えばいいが、ハイエンド機材は性能が高止まりしている一方で、価格だけ上がっている状況になっていきている。

飽きっぽい性格で、どんどん乗り換える人ならばしょうがないが、あえて高いとわかっている機材をいろいろな物を犠牲にして買う必要はない。そのお金は他の様々なことに使う方がいいと考えている。

「買いたいが、買えない」

というのは恥ずべきことではない。むしろ「買いたい衝動に対して、買わないという決断をした」という自己コントロールができている証拠だ。これからは、「買いたいが、買”わない”」という前向きかつ自己をコントロールをしているという考え方で、自転車以外の体験や経験に投資するということを私はし始めている。

そして、「お金」は自転車だけに使えるものではない。流動性が高く、ありとあらゆることに対して使うことができる。私は、継続的な投資をおすすめする。

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良い機材がない

Photo: TREK

2022年は「これは!」という機材がとても少なかった。さらにコロナでそもそも”モノ”が極端に入手することが難しくなった、という理由もある。したがって、「ロードバイク機材の買い時は”いま”ではない」というよりも、いま欲しくても手に入らないというほうがしっくりくる。

限られたモノの中から、さらに良いものを探し当てるのは難しくなった。そして、価格の妥当性も怪しく、明確に「買わない」という結論にも結びつけやすくなった。

市場には魅力的、最新設計、革新的な機能を備えたバイクが多数存在する。空力性能がその最も良い例だ。しかし、2022年~2023年はレギュレーションが大幅に緩和されたあとの、いわば”よどみ”の状態であり、次の最新機材にシフトしていく過渡期にある。

世界最速クラスのCANYON AEROADや人気のS-WORKS TARMAC SL7も、発表から数年以上が経過しており設計が古くなってきたと言わざるをえない(ただし、いまだ最前線で活躍している)。

これらのバイクは現段階ではベストなバイクかもしれないが、SIMPLONのPRIDE II(プライドツー)や、STORCKのAerfast.4 Pro Discとメジャーではない小さなメーカーが新しいレギュレーションを採用して、資金力と開発力のある巨大メーカーのバイクの性能をあっさりと超えてしまった。

世界最速のエアロロードバイクが”また”登場!CANYON AEROADを超えた2台とは?
世界最速のロードバイクの記録があっけなく塗りかえられてしまった。これまで世界最速の座を譲らなかったCANYON AEROAD CFRの記録を破ったの1台ではない。空力性能が優れたバイクが同時に2台登場したのだ。 理由は単純だった。2021年1月にUCIのレギュレーションが変更され、フレームの設計が緩和されたためだ。UCIはフレームのトライアングル形状をより大きく、より薄くすることを許可した。フレー...

いままでこのような事例は少なかった。しかし、レギュレーション緩和によりバイク設計の自由度がさらに高まったことで飛躍的に性能が向上した。これまでは、「旧レギュレーションの最速」の設計の縛りがあり、極限まで性能を高めたのがCANYON AEROADだった。

これから各社が、規制緩和後の設計でフレーム、ハンドル(すでにSPECIALIZEDのハンドルがリーク)などさまざまな機材の性能が高まっていくだろう。また、PINARELLO新型BOLIDEやCANYONのCFRに採用されているM40Xといった新素材が使われ始め、よりいっそう高剛性化と軽量化も進んでいく。

現段階では、旧レギュレーションの縛りの範囲で限界まで性能が高められている。しかし、これから確実に新レギュレーションと新素材を使ったバイクが数多く(特に北米メーカーから)登場するだろう。

新しいレギュレーションは、下位グレードにももちろん適応される。カーボンの質を落としつつも、金型を流用し、安価なコンポを使いつつも、全体の性能は現在のバイクを凌ぐ性能を備えることができるのかもしれない。

いま、目新しい機材はそれほど多くない。逆に言うと、メーカーが発表を控え、今は部品の確保と移行期間である可能性もある。だからこそ、良い機材がそこまでなく、さらには「在庫の中から選ぶ」という、高い買い物で一番やりたくない購入パターンを強いらるのが現状のようだ。

では、いつまで待てばよいのかはわからない。ただ、確実にモデルチェンジの時期は来ている。

それでも何か1台選べといわれたら、TREKのMADONE、GIANTのPROPEL、CANYONのAEROADが思い浮かぶ。それ以外のハイエンドモデルでTARMAC SL7も候補にあがるが、個人的には今の難しい状況の中、どうせ買うなら前者の3台(TREK、GIANT、CANYON)が良いと思う。

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まとめ:買い時は、ない。


だれにでもあてはまるような「買い時」など、ない。

ひとによって、条件や趣味趣向が違うからだ。どうしても欲しいバイクがあれば買えばいいと思う。しかし、世の中の「不安」や「恐怖」といったものは、私たちから正常な判断を奪ってしまう。だからこそ、このような話からは身を遠ざけておいた方がいい。

「不安」や「恐怖」を売り物にしている最たる例は「保険」だ。保険は「不安」や「恐怖」をあおり、安心感を売り物にしている。保険商品に対して、まっとうな判断ができればよいが、保険屋の言いなりで無駄な保険を選ぶのは合理的な話ではない。

昨今、自転車機材は高騰化している。だからこそ、「値上げが続くので、いまが一番安いですよ!」という言葉は消費者を不安にさせ、購買意欲をかりたてる。確かに値上がりは止められないし、間違えていない考え方だ。

しかし、この言葉は「すでに購入するモノが決まっている人」が正面から聞くべき言葉であって、検討中の人や、迷っている人は、この言葉を真に受ける必要はない。「不安」や「恐怖」はすぐに買ってしまうという衝動を誘発する可能性がある。

「いま、ロードバイクを買ったほうがいいですか?」

という質問には、「買うモノが決まっていればすぐ買った方がいいし、買いたいモノがなければあえて探してまで買う必要はない」と答える。

それほど人によって購入への解は千差万別であるし、一概に「買い時です」とは言うことは難しい。私自身は「3.良い機材がない」という理由で買いどきではないと判断している。正直なところ、高止まりした速いハイエンドバイクを1台持っていればあとは練習するだけなのだ。

それ以外の所有しているバイクは、単なる嗜好品で床の間バイクに成り下がる。「こんなバイクを購入しました!」という承認要求を満たすだけのバイクは、なんと寂しいことか。

現代は、様々な答えがある珍しい時代になった。それは物価高騰、所得格差、デフレ、円安、それでも賃金が上がらない日本人という特有の問題もある。このような状況の中、ロードバイクという機材がなければなりたたないスポーツは、今後衰退していってもおかしくない。

さらに過剰在庫、購買意欲の低下、業界の未来はあまり明るくはないかもしれないが、このスポーツが好きであるし、良い機材を探せば結構隠れた名品がある。そういう機材を当ブログでは紹介して、少しでも間違いのない賢い機材選びを手助けをしていきたい。

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